59話 スケルトン戦の後
シロの謎の魔法のおかげで、何とかスケルトンに勝利できた。本当に危なかったが。
ただ、クロの燃える闇も、シロの光る風も、相当魔力を必要とするらしい。それどころか、無意識に竜の力も使っていたんだろう。
魔力切れに空腹と、ダブルパンチで2人は動けなくなっていた。高位の魔獣を倒したことで体内魔力が増えているが、一瞬で魔力が全回復する訳でもないしな。枯渇寸前であることは間違いない。
仕方ないので、この場でおやつ休憩を取ることにしたんだが……。
「がふがふがふがふ!」
「もぐもぐもぐもぐ」
「よく噛まないと喉に詰まらせるぞー」
2人は皿に盛られた肉と芋のごった煮を、フォークを使ってかき込んでいる。煮物はおやつじゃないだろうって?
最初はジャーキーと果物を食べさせていたんだが、それじゃあ全く足りないようだったのだ。あの謎の魔法の消費は、俺の想定以上に凄まじいものだったのだろう。
「にゃぐにゃぐにゃぐにゃぐ!」
「わうわうわ――うぐ!」
「焦ってかきこむから! ほら、水だ!」
「ごきゅごきゅ……ぷはー。あぶなー」
額の汗をぬぐう仕草をするクロ。
「だから言っただろう。シロも気を付けろよ」
「もぐもぐもぐ!」
口をパンパンにしながら頷いても信用できんのだが!
まあ、2人の食いっぷりはいい。むしろ気持ちいいほどだ。いや、死体の横でよくあれだけ食えるなーとは思うが。
そう、問題なのは傭兵たちの死体だろう。放置してはマズいよな?
数日もすれば迷宮に吸収されるとはいえ、その前に誰かが見つけるかもしれんし。それで俺たちの存在がバレる可能性は低いと思うが、魔法なんて便利なものがある世界だ。
サイコメトリー的な魔法とかもあるかもしれない。悪いのはこいつらだし、止めを刺したのはスケルトンだ。俺たちが罪に問われる可能性は低いと思う。
ただ、シロとクロの存在が奴隷商人たちにバレる可能性はあった。まあ、本当に低い確率だが、用心に越したことはない。
ああ、保存庫に仕舞うのは、できればなしだ。気分が良くないし、持ち帰ったところで処分する当てもない。ずっと仕舞っておきたくもないし。
実は、ギズメルトの死体もずっと保存庫に入れっぱなしだったんだよね。ちょうどいいので、ここで纏めて処分してしまうことにした。
おっと、その前に使える物は頂いているぞ? 武器やテント類、あとはポーション類と食料だ。ポーションは入れ物が割れてしまっているものもあったが、油紙に包んでいた食料類はほぼ無事だ。
よく見る非常食に、塩。あと、見慣れない粉があった。これがなんと、ハーブ塩だったのだ。肉の臭み取りに使うんだろう。迷宮では見たことがないハーブだったので、非常に有難い。
穴を掘って、そこに傭兵たちとギズメルトの死体を投げ入れる。そして、黒炎で骨まで灰にした。あとは埋めてしまえば、迷宮に吸収されるまでの時間を稼げるだろう。
ここまでやって見つかったら、どうしようもないのだ。
ギズメルトを殺した時もそうだったが、良心の呵責とかほとんどないな。いくらクズどもが相手とはいえ、俺ってここまで無感動な人間だったか? 過酷な異世界で生きた経験のおかげか? それとも、神様に精神面でも弄られた?
まあ、こっちの世界で生きるにはこの方がいいんだろうし、気にしても仕方ないか……。これで下手に迷いを持ってしまえば、シロとクロを危険に晒すかもしれないのだ。
というか、迷宮って怖いな。死体も痕跡も消え去るせいで、完全犯罪が可能なのである。そりゃあ、治安が悪くなるはずだ。
「さて、あとは宝箱も確認しておかんと」
モンスターが召喚されるトラップは、何度か遭遇したことがある。しかし、今まではアシッド・スライムか、ロック・ゴーレムくらいしか召喚されるところを見たことがなかった。
それが、あんな化け物が喚び出されるとは。今後、注意せねばならないだろう。
俺は慎重に、横倒しになって半開きになった宝箱を確認する。蓋の裏には、薄っすらと光る塗料で魔法陣のようなものが描かれていた。解除せずに開くと、召喚魔法が起動する仕掛けなのだろう。
あの男たちがこの宝箱を確認しにきたってことは、トラップを起動せずに開ける方法があるはずだ。それが何かは分からないが……。
とりあえず、今は放置でいいだろう。それよりも今は、中身の方が重要だ。攻撃されても壊れることなく、無事だったのである。
宝箱の中に入っていたのは、小ぶりな水晶だった。白濁した、どこにでもありそうなピンポン玉サイズの水晶である。魔力も感じない。
形状はすでに研磨されており綺麗だが、それ以上の価値はありそうにもなかった。まあ、地上で売り払えば多少の現金にはなるのかね?
光にかざしてみたりしたが、やはり特別な何かは感じられない。ワンチャン、先へ進むためのキーアイテムとかかと思ったんだが、魔力がないんじゃな……。
まあ、メインは召喚トラップなんだろう。
あと気になるのは、スケルトンの残骸だ。灰になってもまだ魔力を放っている。一応これも魔獣の素材と言えるのだろうか?
とりあえず収納しておこうと保存庫を発動したんだが、灰に混じって変なものが入っていた。魔石とも違う、謎の石だ。魔石は魔石で別にあるし。
取り出してみると、先程手に入れた水晶とよく似た形の赤水晶だった。比べてみると形が全く一緒だ。色だけが違う。あと、微かに魔力を帯びているな。
白水晶よりは価値がありそうだった。まあ、換金する術がない俺たちには意味がないけど。カロリナに渡したら、上手くお金に換えてくれるか?
「あとは……シロとクロの使ったアレだよな」
食事を終えてマッタリ中の2人の下に戻った俺は、軽く聞き取りをしてみた。魔力も腹も空っぽにはなるが、いざという時の切り札になるだろう。
だが、クロもシロも、自分がどうやってあの魔法を発動したのかよく分っていなかった。
「ちょっと使ってみるとかも無理そうか?」
「うーん? クロ、なにしたー?」
「シロもよくわからないです」
そもそも、2人とも自分が発動した魔法に関してあまり覚えていなかった。それだけ極限状態だったってことだろう。
もしかしてあれが、特殊魔法ってやつなのか? 俺も聞き齧っただけだが、特別な種族や魔獣だけが使う、特化型の強い魔法が存在するらしい。
だとしたら、2人は普通の獣人じゃないのだろうか? 1年以上も追われている理由の答えは、そこにあるのかもしれなかった。
「とりあえず、今日は戻ろう」
「さんせー」
「シロも疲れたです」
体力オバケの2人が未だにぐったりしているからな。もっと成長すれば、使いこなせるようになるのだろうか?
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