表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/150

58話 白霧


 突如出現したスケルトン。


 動く骸骨は近くにいる傭兵たちを当面の獲物と定めたのか、問答無用で攻撃を加えていた。


「カタカタ!」

「くぺっ?」


 驚きのあまり呆けていた傭兵が、スケルトンの振るった剣で一刀両断にされてしまった。数メートルは距離があったはずなのに、一瞬で傭兵の隣にいたのだ。


 左右に分かたれる人間だったものの断面が、綺麗に見える。


 ほんの数秒で2人分の死体ができ上がっていた。


「骨、です?」

「アンデッドってやつだ……!」


 この迷宮で初めて見た。だが、傭兵たちはこいつを知っているらしい。残った傭兵が、絶望的な声色で呟く。


「ひぃぃぃ! 白霧だぁぁ! やっぱ出たぁぁ!」


 それが、男の最期の言葉であった。振り返りもせずに振り払われた剣が、その首を刎ね飛ばしたのだ。


「カタカタカタ!」


 スケルトンの虚ろな眼窩が、俺たちを見つめている。そりゃあ、俺たちだけ見逃してくれるわけないよな。


 どうやら、傭兵たちに異名を付けられるほどに有名な変異個体であるらしい。それも納得の動きだったのだ。どれだけの犠牲者が出ているのだろうか?


「カタカター!」

「ってぇぇ!」


 いきなり目の前に……! マジで動きが見えなかったぞ! 念のために張っていた風壁のおかげで軌道が逸れ、肩口を斬られただけで済んだが……。


 長期戦はマズい! というか、次に攻撃されて大怪我をしない自信がない!


「どうすれば――」


 うん? おい、骸骨野郎。どこ見てる! そっちには、倒れ込んだクロしか――。


「うおぉぉ!」


 俺は咄嗟に風魔法を使い、疾った。ズキンと襲ってくる足の痛み。それも無視して一気に駆けると、クロに覆い被さりながら風壁を起動する。


 その直後であった。


「カカカー!」

「ぐぅぅぅぅ!」


 背中に激痛が走り、熱が溢れ出す。スケルトンに斬られたのだ。


「ちくしょー! くらえ!」

「カタカタ!」

「なっ!」


 魔法が完全に回避された! 数発程度じゃ牽制にしかならんか! もっと広範囲に攻撃する魔法じゃないと……。だが、詠唱する余裕がない!


「カタカター!」

「うおぉぉぉ!」


 土壁、風壁を無理やり発動させるが、一撃で砕け散る。それでも諦めずに壁を張っては壊されを繰り返した。10回も続ければ、もう限界が近い。


 魔力には余裕がある。だが、その魔力を使うための、体内魔力経路がジンジンと痛みを発し始めていた。無茶な魔法発動を続けたせいだろう。


 魔力の流れる速度が低下し、魔法の発動が少しずつ遅れている。


「があぁぁぁぁ!」

「カタ!」


 一か八か口から炎を吐き出したが、それも躱された!


「カタカタカタ」


 まるで無駄な努力を嘲笑うかのように、骸骨の歯が耳障りな音を立てる。


「くっそ……」


 スケルトンが、手に持った剣をこれ見よがしに振り上げた。明らかに俺たちを嬲り、絶望を与えることを楽しんでいる。


「カタカタ!」


 スケルトンの剣が振り下ろされようかという、正にその瞬間。俺は残った魔力全てを使い切り、全力で攻撃を仕掛ける覚悟を決めたんだが――。


「トールとクロから、離れろおぉぉぉ! にゃあああぁぁぁぁぁぁ!」


 シロが悲痛な咆哮と共に、凄まじい光を放っていた。


 こんな危機一髪の時にあれだが、見ているだけで穏やかになれるような光だ。


 光とともに周囲を流れる温かな風が、俺とクロを癒す。傷が治っているというわけじゃない。心が、精神が癒されていく感覚があった。


 だが、そう感じているのは俺たちだけであるようだ。


「カタカタカタカタカタ!」


 スケルトンはその場で動きを止め、苦しむかのように頭を押さえている。いや、実際苦しんでいるのだろう。生者にとって気持ち良くとも、死者にとっては毒のようなものなのだろうか?


 これは、チャンス……?


 俺は魔力を一気に胸に集めると、力を振り絞って吐き出した。


「がああああぁ!」

「カカカ――」


 今度こそ、竜の吐息が当たった。スケルトンの頭部が爆ぜ、砕け散る。


 直後、残った体が崩れ落ち、ボロボロと崩れてあっという間に灰となっていた。


 炎が頭に当たったのはたまたまだったが、そこが弱点であったらしい。


「勝った……のか?」


 未だに何が起きたのか分からない俺の後ろで、シロが倒れ込んだ。慌てて近寄ると、シロはぜいぜいと荒い息を吐いている。


 クロと同じ症状だった。魔力切れだ。


「シロ、大丈夫か?」

「にゃー……」


 さっきの不思議な光は、クロの燃える闇と同じように消耗が大きいらしかった。それにしても、何だったんだろうな?


 ただの光じゃないだろう。クロのを燃える闇とするなら、シロのは光る風? 光魔法と風魔法を同時に使った?


 それだけで、スケルトンが動きを止めた理由にはならん気がするが……。浄化とかそっちの属性があったのかね?


「トール~……」

「どうしたシロ?」

「おなか、へったです……」

「グギュルルル」


 シロの切なげな呟きに同意するかのように、ちょっと離れた場所で寝ているクロの腹が大きな音を立てた。


「お前ら、燃費悪いなぁ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そういや、骨は出汁取りに使ってるけど、犬獣人のクロは骨をバリバリ食ったりせんの?
[一言] 良い出汁出ると思ったら崩れ落ちたら使えない
[一言] 宝箱の中も気になりますが、泊まりを想定していた傭兵達の荷物の中から何か良い食べ物が出て来たら面白いかもしれません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ