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53話 深層

 今日は傭兵に出くわすこともなく、深層までたどり着くことができていた。


 ガイランドに遭遇した大部屋から伸びる通路を20メートルほど歩いたら、そこはもう深い森の中である。


「ここが、深層……」

「森です!」

「ふしぎしんりん」


 深い地下の底に、巨大な森があるなんて直接見ても信じられん。そもそも、ここって地下なのか?


 だって、空があって太陽もあるんだぞ?


 考えてみたら、迷宮って明らかに空間が歪んでいる。町の地下の遺跡にぶつかるようなこともなく、縦横無尽に広がっているのだ。


 多分、入り口を潜ったらもう異空間なんじゃなかろうか?


 一瞬、転移陣によって遠くにある森林まで跳ばされている可能性も考えたが、それも違うようだ。


 森林への出入り口から左右に壁が伸び、その壁はどれだけ上っても天辺までたどり着けないらしいからな。やはり、異空間なんだろう。


 まあ、どちらにせよここが危険地帯で、油断すれば命にかかわる場所であるという点に変わりはない。


「道はないけど、とりあえず真っ直ぐ進んでみよう」

「わかったです!」

「りょー」


 どんな獲物が出現し、どんな収穫物があるかも分からないしね。食べ物を得たい気持ちもあるが、先へ進むための道もしっかりと確保しなければならない。


 ガイランドの話によると、この深層森林より先へ進むルートはまだ開拓されておらず、どうすれば最深層へ辿り着けるか分かっていないそうだ。


 また迷宮の性質上、傭兵が残した痕跡は数日で消えてしまう。死体や、床に開いた穴すら元に戻ってしまうのだ。


 傭兵たちによる獣道ができることもないし、目印なども残せない。


 そりゃあ、マッピングも攻略も進まないだろう。


 だが、多くの一流傭兵が発見できなかったものを、子供の俺たちが見つけなくてはならない。あまり悠長にもしていられなかった。


 理想は、先へと進むためのルートを開拓しつつ、そこに至るまでの間に食べ物をゲットすることだ。


 初日の探索では、特に大きな問題は起こらなかった。


 他の傭兵の気配もないし、強い魔獣や罠にも遭遇しない。そして、ポイズンラット、ガブルルートといった下級の魔獣も倒せている。


 そう、深層と呼ばれる階層でありながら、弱い魔獣も生息しているのだ。上位の魔獣の餌なのだろう。生態系が出来上がっているのかもしれない。


 地上でも採取可能な野草類やトウガラシモドキ、ビネガーマッシュも採取できた。


 目新しい物はないけど、初日の成果としては十分か?


 いや、問題がないわけじゃないか。


 それが、マッピングやっぱりできない問題である。森林は余りにも広く、また目印となるものが少ないため、地図をかくことが素人の俺たちには難しいのだ。


 今までは薄い石板を収納に入れておいて、そこにチョークで地図をかいていた。建造物型の迷宮なら、それでよかったんだが……。


 森林では勝手が違っていた。


 決まった道があるわけでもなく、どこまで行っても似たような景色。変わった形の岩や木を目印にしてもみたんだが……。


 少し角度が変われば形は変わり、それが目印だったかどうかもあやふやになる。


 俺もシロもクロも森歩きの経験なんてないし、方角を見失わないだけでも一苦労なのだ。まあ、住処に戻ろうとして、どっちに向かえばいいのか分からなくなっちゃったけどね。


 最後は高い木に登って、そこから最も近い建造物を探したのだ。転移陣が設置された建物はそれなりに大きいので、なんとか見つけることができた。


 あの時はマジで焦ったね。


 そして深層探索2日目。


 今日は少し違う方角へと歩を進めたのだが、幾つかの収穫物を発見できていた。1つが、ギョウジャニンニクによく似た植物だ。


 味も匂いもまんまギョウジャニンニクである。毒もないし、非常に食べやすい食材だ。焼き肉がより美味しくなるぜ。


 もう1つの成果が、桑によく似たナナルという木の発見だ。ブルーベリーに似た、爽やかな香りがする青い実を付けている。味は、メチャクチャ酸っぱい葡萄って感じ?


 そのまま食べるのには向かないが、ジュースにしたり、ジャムにしたりすると爽やかで美味しいらしい。


 あまり量は取れないが、数回分のデザートにはなるだろう。


 やはり森は植生が豊かだ。他にも、食べられる野草をいくつも採取しているので、お肉を確保できれば今夜は御馳走である。


 そんな俺たちの願いが通じたのだろう。


 シロとクロが同時に足を止め、森の奥を見つめ始めた。少し遅れて、俺にも何かがいるのが分かる。


 木の陰に身を隠しながら待つこと数分。


 木立の間から姿を現したのは、不思議な姿の魔獣であった。


 体全体が甲虫の甲殻のような物に覆われているが、その形は四足歩行の哺乳類に近い。鎧を着こんだ牛のような姿だ。


 そして、顔は一つ目の虫って感じ? カミキリムシとかハンミョウとか、顎が強い系の虫に近いだろう。


 名前はパラライズアイ。あんなパワー系の見た目をしていて、麻痺の魔眼を持っていた。


 しかもこいつの麻痺は特に強力で、ただ体の動きが止まるだけではないようだ。なんと心臓や脳の動きを阻害することで、即死攻撃としても利用できるらしい。


 マジで恐ろしい相手じゃんか!


 ただ、その射程は非常に短く、遠距離攻撃としては使えないという。


「やつはまだこちらに気付いていない。魔眼の射程に入らない内に、目を潰すぞ」

「うん」

「りょ」


 さあ、深層で初めてのまともな戦闘だ。


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