50話 迷宮の罠
メルト・スライムを倒した俺達は、天井を見上げて首を捻る。
「どっから出てきたんだ?」
「穴ないー?」
「でも、急に出たです」
「だよな」
天井から落ちてきたメルト・スライムだが、その気配は突如出現した。それこそ、転移でもしてきたんじゃないかってくらいに。
でも、上位種とは言えスライムが転移なんてするか? アシッド・スライムなんかは天井に開けられた穴に潜み、獲物が下を通ると一気に襲い掛かるのだ。
探索に慣れてくると、その穴の存在にもちゃんと気づける。
だが、今回はどれだけ天井を見つめても、そんなものは全く見当たらない。
「少し調べてみるか」
俺は石の棒を生み出し、それで天井を突いてみた。コンコンと叩いていくと、ある場所で音が変わるではないか。
明らかに、空洞がある。
その場所をよくよく見れば、ほんの少しだけ色が変わっていた。あそこが怪しそうだ。蓋のような感じになっていて、人が通ると開く感じかね?
それでも、魔力を全く感じなかった理由は分からんが……。魔力を遮断するような性質があるのだろうか? だとしたら相当えげつない。
ともかく、ここからは敵も罠も迷宮の仕組みも、全てがレベルアップしたと考えていいだろう。
慎重に、ゆっくりと攻略を進めていかないとな。迷宮を発見したての頃を思い出すぜ。また、少し進んでは撤退してを繰り返して、マップを埋めていく日々だ。
だが、あまりのんびりもしていられない。
1年で迷宮攻略をせねばならないのだ。多少無茶をしても、攻略を推し進めなくてはならない。
「じゃ、いくぞ」
「にゃぅ!」
「わふ」
天井、床、壁の異常を調べつつ、魔獣にも気配を尖らせる。そうして歩き続けると、道が三又に分かれていた。直線と、左右への曲り道だ。十字路というよりは、三又の槍みたいな形状っていうのかね?
道幅も同じで、どちらへ進めばいいか全くわからん。こういう時は、シロとクロの野生の勘にお任せだ。
まあ、その勘が目に見えて仕事をしたことはないんだけど。でも、俺よりは直感力がありそうな気がするのだ。
「どっち行きたい?」
「うーん……こっちです!」
「あっちー」
見事にシロとクロが逆を指さしたな。互いに驚きの表情を浮かべて、相手を見ている。
「こっちの方が、なんか魔力が濃い気がするです!」
「えー、こっちのほーが、魔力の匂いが強いー」
「にゅうぅぅ!」
「わうぅぅぅ」
「にゃー!」
「わふー」
こんなところで睨み合うんじゃない! こういう場合は仕方ない。
「じゃあ、間を取って真ん中を行きます!」
「……にゃー」
「わふ」
俺が決めたら仕方ないって感じだな。よかった3択で。2択だったらしこりが残っていたかもしれん。
「慎重にな!」
「にゃう」
「りょー」
三又路の探索を始めてから4日。
俺たちは三又路の全貌を解き明かしていた。まあ、先で繋がってたんだけどさ。
道を先へと進むとさらに分かれ道になっており、正に迷路といった様相であった。そんな迷路の中で、メルトスライムが何度も奇襲を仕掛けてくるのだ。
罠も、非常に危険な罠が設置されていた。数自体は非常に少ないものの、即死級の槍衾や毒矢、吊り天井など設置されているものは殺意が高い罠ばかりである。
というか、数が少ないことそれ自体が罠だった。数が少ないせいで罠に対する警戒が時間とともに薄れる。そうして注意が逸れた頃に、罠が出現するのだ。
床から迫り出す槍衾に巻き込まれかけて、腕を貫かれた時は心底ビビったね。痛いし毒だし血はヤバいし。3日目はそのせいで早々と退散することになったのだ。
そして、迷路を完全にマッピングし終えると、俺たちは酷い事実を知る。
どの道を通っても、最終的には同じ場所に辿り着くのだ。何なら一度も曲がらずに真っ直ぐ進む真ん中のルートが一番楽だった。
罠やメルトスライムが一番少なく、1時間ものんびりあるけばそれでゴールなのである。それに気づいたときは、さすがに力が抜けたね。
あと、もう1つ大きな発見があった。
それは、俺たちの体内魔力に関してだ。
ヘルキマイラ料理によって上昇した体内魔力は、全く減っていなかった。メルト・スライムなどを倒してはいるが、それだけでこれ程の上昇量は維持できないだろう。
つまり、俺の強化に対する考え方が間違っていたということだった。
俺はてっきり、魔法効果というのは期間限定のバフのようなものだと思っていたのだ。食べたその日は強くなるが、翌日になれば元に戻ってしまう類のものだと。
しかし、そうではなかった。永続かどうかは分からないが、想像よりも長い効果があるらしい。
気づかなかった俺は相当間抜けだが、今まで強化を自覚できる機会がほとんどなかったというのも災いしているだろう。
微や少の効果では、自覚できるほどの上がり幅がない。そして、中以上の効果が付く場合は、全て天竜肉を使った料理だった。
天竜料理には必ず竜の魔力も付随するため、増えた魔力や身体能力はてっきりその効果だと思い込んでいたのである。
だが、それだけではなかった。生命強化、体力強化、魔力強化。全てが俺たちを強くしてくれていたのだ。
もし、魔法料理の効果が永続、もしくは長時間続くのだとしたら? 魔獣を倒したことで強くなったと思っていた俺たちの能力も、半分くらいは料理のお陰なのかもしれなかった。
「魔法料理人……改めてチートだな」
まあ、やることは今までと変わらないだろう。高位の魔獣を倒し、その素材で料理を作り続けるのだ。そのサイクルを続ければ、俺たちはもっともっと強くなれる。
「よーし! 帰って飯だ! ガンガン食べてドンドン強くなるぞ!」
「にゃぅー!」
「わふー」
7月に入ってから3話目です。前話を見逃している方はそちらからお読みください。
また、本日から7/10の第1巻発売日まで、毎日更新をさせていただきます。
これからも呪われ料理人をよろしくお願いいたします。
書泉様で行われるサイン会ですが、もう少しだけ在庫があるようなので、よろしくお願いいたします。
前回は初サイン会で緊張していたのであまり喋れませんでしたが、今回は挨拶を返すくらいはできるはず! 多分。




