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39話 恐ろしき迷宮へ

 迷宮で死にかけ、ギリギリ命を繋いだ3日後。


 俺たちは行動を開始する。


 さすがに翌日は休息日とし、その次の日には防具の修復を行った。まあ、俺の装備品はほぼ駄目になってしまったけどね。


 シロとクロの迷宮産武具は、魔力を注ぐことで修復される能力を持っている。そのおかげで、何とか修復できていた。


 ただ、修復に魔力をほとんど使ってしまったので、その日は狩りに出ることはできなかったのだ。


 シロとクロは竜の力を得て成長したせいか力を持て余しており、すぐにでも狩りに行きたそうだったが。そんな2人もいざ迷宮に再挑戦するとなれば、ただ勢いのまま突っ走ることはできないらしい。


「……いくです」

「……わう」


 土魔法によって開いた入り口を見て、神妙な顔をしている。ただ、その様子を笑うことはできない。


 俺だって同じだからだ。


 黒い影――迷宮の悪意に殺されかけた記憶が蘇る。


 シロとクロを死なせないために必死に抗った。だからこそ、記憶は鮮明だ。あの時の痛みまで思い返せるのではないかと思うほどに。


 正直、恐ろしい。それでも俺たちは、恐る恐る迷宮へと足を踏み入れていた。


 またあの化け物に出会ってしまうのではないか? 今度こそ、殺されるかもしれない。その恐怖は、残る。


 だが、生きるためには迷宮へと潜らねばならなかった。


 食料確保というだけではなく、呪いを解くためにも、俺たちには迷宮への恐怖で身を竦ませている暇などないのだ。


 1人なら、泣き叫んで立ち上がることもできなかったかもしれない。しかし、俺にはシロとクロがいる。


 高々1年程度の付き合いだが、2人はもう家族だった。この世界で得た、新しい家族なのである。


 俺にとっては娘であり妹たちでもあるこの2人を護るためだったら、俺はいくらでも気力が湧き出た。


「呪い、とくー」

「迷宮攻略です!」


 シロとクロは自分たちに言い聞かせるように、力強く宣言する。彼女たちの強い意志が、俺の背中をさらに押してくれた。


 もう恐怖心は、消えている。


「ああ、そうだな。絶対に呪いを解くぞ」

「にゃう!」

「わふ!」


 呪いに関しては、シロとクロには教えないでおこうかと考えていた。ただでさえ肉体の一部が竜化してしまったところに、死ぬ未来が確定している呪いだぞ?


 普通の少女であれば、精神的に参ってしまうだろう。もう少し落ち着いてから明かそうと思っていたのだ。


 しかし、シロとクロはこの呪いについての知識を持っていた。本人たちもどこで聞いたか分からないようだが、迷宮の黒印などと呼ばれるこの模様を見たことがあるらしい。


 2人が同じことを知っているということは、奴隷商に捕まっている間に知ったことなのだろう。奴隷の中に、黒印持ちがいたのかもしれない。


 そして、2人の持つ知識は、俺が両親から聞いたものとほぼ同じだった。


 俺たち3人の胸元に浮かび上がった、翼を広げたコウモリのような黒い呪印。


 この黒い模様が浮き出た人間は、魔獣を引き付け狙われやすくなるらしい。どれだけ高位の聖魔法でも解呪はできず、1年後に必ず命を落としてしまう。


 もう、間違いないだろう。残念ながら、俺たちの余命が1年というのは間違いなさそうだった。


 ならば、なおさら迷宮に潜らねばならない。解呪の可能性があるのは、迷宮踏破で得られる女神の奇跡のみなのだ。


 チートがあるとはいえ、俺はまだ子供でしかない。クロとシロも、未だに獣人としての才能を完全に発揮できているわけではないだろう。


 そんな俺たちにとって新たに得た竜の力と、シロとクロの急成長は大きな力になるかもしれなかった。


 いや、力にしなければならない。でなければ子供が一年で迷宮攻略などという荒唐無稽な目標、達成することなどできないだろう。


「よし、いよいよ最初の部屋だ。魔獣の気配がある。大丈夫か?」

「もちろんです!」

「やってやらー」


 2人ともやる気満々だ。開き直ったことで、ポジティブなマインドに切り替わったんだろう。


 なんというか、今までのシロとクロそのままって感じだった。急激に肉体が育ったとはいえ、中身は能天気な5歳児だからな。長い間シリアスは維持できないのかもしれない。


 そして、俺たちは一気に部屋へと踏み込んだ。


「じゃあ、まずは俺がやるぞ! いざという時はトドメを頼む!」

「分かってるです!」

「がんば」


 部屋の中にいたのは、ポイズンビーストであった。いつもの敵だ。こいつなら、比較もしやすい。


 俺は冷静に相手の動きを見て、魔法を発動した。もっとも使い慣れた魔法の1つ、水針の術だ。


 俺の脳内では、数本の針が黒い獣を串刺しにするイメージだったんだが――。


「はっ?」


 イメージを大幅に超える魔法が発動してしまっていた。10本を超える剣のようなサイズの針が、凄まじい速度でポイズンビーストに殺到したのだ。


 ドババババン! という衝撃音と共に、ポイズンビーストの肉体が粉々に砕け散っていた。


「いや、なんでだ……?」


 今まで、イメージ以下の効果しか発揮されないことは多々あった。だが、逆になったのは今回が初めてだ。


「しゅげー。トールすごい」

「凄いです! 超強い魔法です!」


 クロとシロは喜んでくれているが、これじゃ肉が……。強力な魔法とかの前に、早急に手加減の方法を身に付けなくては!


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― 新着の感想 ―
トールは喉と内臓が竜化してるんだろうな。なんか凄そう。
[一言] さあ、どのくらい食材を無駄にするのか?!ww
[一言] 竜の肉はトールだけじゃなく、大勢の人が手に入れたんだよね?と言う事は地上では多くのハイレベル冒険者がいるんだろうな。
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