27話 宝箱
「今日の宝箱はハズレだったな~」
「布いらないですー」
「はずれれー」
部屋にいた変異個体のヴェノムラットを倒した俺たちは、久しぶりの宝箱を発見していた。
ここは、迷宮を発見した時に変異ポイズンビーストと戦った、一番最初の部屋だ。
あの時も宝箱を発見したが、それからも不定期に宝箱が出現することがあった。その際、部屋に出現するのは必ず変異個体で、こいつを倒すと確定で宝箱が出現した。
出現は完全にランダムなようで、1ヶ月で再度現れることもあれば、4ヶ月近く音沙汰がないこともあるのだ。
また、宝箱は必ず3つとは限らなかった。1個しか出ないこともある。というか、一番最初が一番豪華だった。
それ以降は、俺たちの感覚では一段も二段も落ちるアイテムばかりなのである。今回も宝箱は1つだけで、中には白く綺麗な布が入っていた。折り畳まれているが、広げたら結構な大きさになるだろう。
良い布なのだろうが、俺たちに縫製技能はない。切って体に巻き付けたり、シーツ代わりに使うくらいしかないのだ。
これだったら、以前のような胡椒の小袋1つの方が遥かに嬉しい。というか、宝箱の番人として現れる変異個体の素材の方がありがたかった。
今回倒した変異個体のヴェノムラットも、毒抜きをすればかなり美味しいと出ている。
「久しぶりにステーキにでもするか。分厚いやつな」
「にゃう! おっきいお肉です!」
「でも、塩だいじょぶー?」
「ああ、こないだ傭兵から拝借したやつが残ってるよ」
「ならいー」
「すてきなステーキです!」
塩には、まだ少し余裕がある。その入手先は傭兵だ。
とはいえ、交渉して手に入れたわけじゃない。お金と同じで、落とし穴にかかった傭兵の遺体から頂いたものだ。
迷宮に吸収される前に拝借すると消えなくなるのだ。所持者が移るからなのだろうとは思うが、不思議な現象である。
まあ、迷宮なんて存在そのものが不思議なんだから、そんなこともあるのだろうと納得しているが。
グチャグチャの落下死体から拝借した塩や保存食でも、シロとクロは気にならないらしい。皮袋に入っていて血に濡れてるわけじゃないんだが、人によっては口にしたくないという人もいるだろう。たくましいね。
「おっしおーおっしおー!」
「お塩のステーキー」
今から分厚いステーキに想いを馳せ、ご機嫌なのだ。
あと、傭兵の遺体からは武具が得られることもあるが、あまり期待できない。
罠にかかるような傭兵は腕が良い方ではないらしく、身に着けている武具の品質も良くはないのだ。
それ故、落下時の衝撃で壊れてしまうことがほとんどだった。何とか使えそうな布類でも、傭兵の血や体液で汚れてしまっていてちょっと使いづらい。
そもそも、クロとシロは1年前に発見した従者服を今でも着ている。防御力はそこそこでも、サイズ調整、自動修復、自動浄化の機能があって、メチャクチャ優秀だったのだ。
俺の装備は以前から着ている黒い服だが、そこに宝箱から発見した肩掛けマントを羽織っている。これも2人の装備と同じで、サイズ調整、自動修復の機能があった。
浄化はないが、その分防御力が高いらしい。スライムの酸くらいなら弾いてくれるのだ。そのおかげで、スライムの奇襲から命を救われたのである。
一応、幾つかの防具は住処に持ち帰ったが、ほとんど放置状態だった。
武器の中にも無事な物がたまにあるので、そっちも一応ストックしてある。ただ、傭兵は威力重視で大振りの鈍器を使うことが多いので、俺たちでは使いこなせない物ばかりだけどね。
因みに、今まで宝箱からゲットしたアイテムはこんな感じだ。
初回、短杖、メイド服、見習い執事服
2回目、金属製の短剣、革の靴
3回目、砂糖の小袋、食器3セット、肩掛けマント
4回目、胡椒の小袋、高級葡萄酒1瓶
5回目、闇の魔導書
6回目、大きな布1枚
最初と2回目は結構よかったんだが、3回目以降は少しショボイ。いや、有難いんだが、魔道具とかの方が嬉しいのだ。
因みに、2回目に手に入れた短剣は、魔力を流すと切れ味があがり、革の靴はサイズ調整、消臭の効果があるっぽかった。
短剣はシロ、靴は俺が使っている。その代わり、闇の魔導書に関してはクロにあげた。まあ、クロしか使えないってこともあるんだが。
これは読み込んでいくと精霊との親和性が上昇し、特定の魔法を教えてもらえるというアイテムだ。俺たちが手に入れたのは暗眼、闇盾という魔法を覚えることができる書だった。
完全な暗視に加えてゴーストなども視ることが可能となる術と、闇で魔力を弾く盾を生み出す術だな。どっちも下級の術だが、悪くない魔法だろう。
「次に出た魔獣はシロがやるです!」
「ずるい。クロもー」
「じゃあ、早いものがちです!」
「わふー」
勝手に決めちまいやがったな。まあ、変異個体じゃなければそこまでの危険はないし、いいけどね。
「ふっふふーん! 今日はステーキー♪」
「にくにくー」
「美味しくってほっぺ落ちちゃうですー♪」
「それはたいへんー」
2人の即興ソングが響く通路を、俺たちは先へと進んだ。




