24話 お勉強
「はい、それじゃあ、これは何と読むでしょう? シロくん」
「うーんと、うーんと……」
「クロわかる」
「だめです! クロ言っちゃだめです! シロが考えてるんだから!」
「わかってるー」
先日は迷宮で大変な目にあったし、今日は休養日だ。まあ、完全なお休みじゃなくて、勉強の日だけどね。
俺は食材集めの合間を利用して、シロクロに文字を教えている。
チョークは、町の中で見つけた石灰っぽいものを魔法で固めたら作り出せた。そのチョークモドキを使い、平たい壁を黒板代わりに勉強会だ。
「えーっと……わかった! こんにちはです!」
「不正解」
「えーっ?」
「じゃあ、クロくん」
「うん。答えはおはよー」
「はい正解」
「にゃー!」
俺の持つ神様からの恩恵の1つ、『言語能力』は自動翻訳機能ではない。喋ろうと思ったら自然に出てくるという、脳内に言語系知識が勝手にインプットされている系の恩恵だ。
なので、2人に文字を教えることも難しいことではない。
読み書きがある程度できるようになったら、簡単な計算も教えるつもりだ。この世界の数学がどこまで発達しているかわからないので、加減乗除くらいのつもりだが。
なぜそんなことをするかと言うと、いざというときのことを考えてだった。
例えば、狩りの最中に俺が死んでしまったら? 何かの事故で、離れ離れになってしまったら? 最悪、2人が奴隷商に連れ去られてしまったら?
生きるために、読み書きができて損はないはずだ。奴隷になってしまっても、読み書きができて戦闘能力まであれば、鉱山奴隷などで使いつぶされることはないだろう。
「トール、正解したよー?」
「うん? そうだな」
「正解したらー?」
「したら?」
クロが眠たげな眼で、じっと俺を見つめる。
「えーっと……」
「正解したよ?」
小首を傾げるクロ。
めちゃくちゃかわいい。
「よくやった?」
「言葉だけー?」
「こうか?」
俺は、催促するように目の前に突き出されたクロの頭を、よしよしと撫でた。
「わふー」
クロは気持ちよさげに目を細める。尻尾も千切れそうなほどにブンブンと振られ、とても嬉しそうだった。
「ふぬん」
「あーいいなクロ! シロも頑張るです!」
「次もクロがいただき」
「トール、早く早く! 次です!」
「わかったから! ひっぱるなって!」
齢は同じでもシロの方が体が大きい。そんなシロにガクガク揺すられたら、むち打ちになりそうだ。
「じ、じゃあ、次はこれな」
土魔法で作り出した石板に、やはり土魔法で作ったチョークで文字を書く。
「クロ分かった」
「クロずるい!」
「早い者勝ちー」
「にゃあ!」
シロは全然分からないのだろう。頭を抱えて叫んでいる。
「じゃあ、クロ」
「ごめんなさい、だと思う」
「正解!」
「わっふー」
「にゅぅぅ!」
再びクロの頭を撫でてやる。シロは本気で悔しそうだ。
シロより魔法が得意なクロだが、勉強もクロの方が得意なようだった。猫と犬という種族の差もあるのだろう。
クロは言われたことを忍耐強くやることができるし、もともと勉強もキライではない。
逆に、シロは一瞬の集中力と身体能力に勝る、アスリートタイプであった。しかも、典型的な勉強ギライ。
文字の勉強に関しては、クロが大幅にリードってところだな。
「ごほうび~」
「あいよ。ほれ」
「わふん」
「にゃぁ……!」
シロが服の裾をガジガジ噛んで、頭を撫でられるクロを羨ましそうに見ている。少しフォローが必要だろうか?
「シロ頑張る!」
グッと拳に力を籠め、何やら決意しているシロ。
まあ、やる気を煽れるようなので、このままでもいいか。
「にゃにゃにゃにゃー!」
「シロ、繰り返し書くのは良いけど、間違ってるから……」
「うにゃー!」
シロが頭を抱えている。
「ほれ、野草茶でも飲んで落ち着け」
「にゃぅ! これ好きです!」
「クロもー」
材料は、シソモドキと名付けた草を乾燥させた物だ。それを煮出しただけの色付き水だが、これが案外悪くない。
乾燥させたことでエグミや青臭さがなくなり、僅かな苦みが出ているのだ。味が薄い緑茶って感じ?
体にもいいみたいだし、落ち着きたいときにはいいだろう。飲み過ぎると、シロがまたおねしょしちゃうから、一杯だけだがな。
初レビューをいただきました! ありがとうございます!
書籍化が決まるのも早かったのですが、レビューをいただけるのも早かったwww
安定して面白いと言っていただけるのは嬉しいです。
今後も面白いと思っていただけるよう、頑張ります。




