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23話 スライム麺

 住処に無事帰還した俺は、早速手に入れたスライムの核で料理を作った。


 量はさほど多くはないので、細かく刻んで麺風にする。子供3人分でも足りないが、メインは肉ってことで。


 数分湯がいたスライム麺を毒鼠の出汁に投入し、そこに毒抜きしたポイズン・ラットの肉、野草数種、ビネガーマッシュの酢、トウガラシモドキなどを加えて、塩で味を調整したら完成だ。


〈毒鼠と粘獣麺の酸辣麺・穴倉風』、魔法効果:生命力回復・微、体力回復・微、魔力回復・微、魔力強化・微が完成しました〉


 大きめの肉がドーンと入ったスープに、気持ちばかりの麺だったんだが、料理魔法は麺料理と判定したらしい。


 シロとクロのために辛味は相当抑え気味だが、前世の酸辣湯麺っぽさは微妙に出ていなくもないかな?


「おいしーです!」

「すっぱっぱー」

「ちょいヒリヒリもよきです!」

「よきー」


 2人も美味しく食べてくれている。ただ、麺を啜ることができないようなので、少し苦戦しているな。


 啜れないかと聞いたら、その直後には普通に啜り出していた。麺料理が初めてで、食べ方自体を知らなかったらしい。ダメならフォークで巻けと教えるつもりだったが、元日本人としては啜り食い推奨なのだ。


 でも、こっちの世界でのマナー次第か? いずれ外で活動できるようになったとき、調べればいいか。


「にしても、魔法効果が微ばかりだな」


 下水に出現する雑魚魔獣たちとほとんど変わらない。あれだけ強かったのだが……。


 変異個体が別格なのはともかくとして、アシッド・スライムもポイズンラットやガブルルートとさほど変わらないランクってことか?


 だとすると、それよりも上位の魔獣っていうのはどれだけ恐ろしいのだろうか?


 迷宮に入るのが少し怖くなってしまったが、それでも成長するため、食材集めをするため、あの場所に赴かねばならない。


「どしたです?」

「こまってるー?」

「うん? いや、大丈夫だ。迷宮は怖いけど、頑張らないとなって思っただけだよ」

「シロもがんばるです!」

「クロもー」


 2人はニコーッと笑いながら、シュタッと手を上げてやる気をアピールしてくれる。


 その顔に、迷宮への恐怖など微塵もなかった。本当に頑張ろうと思っているらしい。能天気なだけなのかもしれないが、今はその能天気さがありがたい。


 俺の中に僅かに残っていた迷宮への恐怖心のようなものが、スーッと消えた気がした。守ろうって決意した相手に気を使われて、何やってんだろうな俺は。


「よーし! それなら特訓だ! どんな敵が相手でも先に見つけて、しっかりと対処するためにな!」

「にゃう!」

「わう」


 ということで、やる気があるうちに魔法の特訓だ。少し考えていたんだが、2人の魔法なら感知の真似事ができるんじゃないかと思ったのだ。


 シロの風魔術なら、広範囲の索敵ができそうな気がする。いや、できるだろう。


 問題は、俺がその魔法を使えないから、教えられないってことだ。


 それでも、俺は風を介して周囲の情報を探る術のイメージを伝え、練習してもらうことにした。


 こっちの世界の魔法を新たに習得するには、こんな魔法が使いたいなーと思いながら精霊に魔力を与え続けるのが一般的な修行法らしい。


 たとえ発動しなくても、魔力を介してイメージは伝わっているので、いずれ精霊が近い効果の魔法を授けてくれるのだ。


 本人の実力が足りていなければ習得は無理らしいが。


 初心者が、山を消し飛ばす超魔法が欲しいと願ったところで、無理ってことだろう。


「風で、敵さがす……? うにゅにゅにゅ」


 中々難しそうだが、これができるようになれば相当な戦力だ。頑張ってほしい。


「トール。クロはー?」

「クロは闇魔法で、物陰に潜んでる奴を探したり?」

「おー、なるー」

「あと、火魔法も使えるなら熱を感じられるかもしれんぞ?」


 温度を計る術などもあるので、熱源感知も可能かもしれん。そう説明すると、クロはすぐに試行錯誤し始めた。


 こう言っちゃなんだが、シロに比べて遥かに期待ができそうだ。魔法も得意だし、集中力も長く続く傾向にあるからね。


 で、俺もある魔法の訓練を開始する。


 多分、俺は脳内にインプットされた魔法しか使えない。だって、精霊のことを感じられんし、今まで新しい魔法を教えてもらえたこともないのだ。


 その分、最初から100種を超える術を習得してるんだから、十分だけどさ。


 つまり、もうある術から使える術を探さねばならない。その中で俺が目を付けたのは、水源感知という術だ。


 外で水を用意しなきゃいけない時用の術なんだろう。魔法料理人の守備範囲って……。だが、今はありがたい。


 この術を使用してみると、シロとクロの体内の水分がしっかりと感じられた。ただ、精度は非常に低く、漠然とした方向くらいしか分からない。


 でも、もっと練習してイメージを練り上げていけば、隠れている魔獣の水分を探し出せるようになるかもしれなかった。水分ゼロの魔獣がいたら感知できないかもしれんが、それはおいおい考えよう。


「うにゃー!」


 おっと、わけわからな過ぎてシロが爆発したな。少し手伝ってやろう。


 あと、装備品をどうしようかね。せっかく手に入れた迷宮品の装備が、もうおしゃかになってしまった。


 謎の魔法パワーで修復されたりやしないかと期待していたんだが、2人の服はアシッド・スライムの酸に溶かされたままだ。


 だが、俺が見ている前でシロの装備品が光り輝いたかと思うと、あっという間に穴が塞がっていた。まるで新品のように、綺麗な状態に戻っている。


「は? え? 何が起きたんだ?」


 次いで、クロのメイド服にも同じ現象が起きていた。どうやら、装備者が修復する意思を込めて魔力を注ぐと、自動で修復されるらしい。


 シロは最初、背中がスースーするから直らないかなーと思いながら、風の魔法で寒さをどうにかできないかと魔力を操作したらしい。


 クロはシロの服が直ったのを見て、魔力を込めたら自分の服も直るかもしれないと思ったそうだ。


 本当に偶然だが、メッチャいい機能を発見したな。ただ、修復には相当魔力を消費してしまうらしい。


「にゃふ……」

「あふぁ……」


 魔力枯渇寸前のシロとクロは、眠たげに大きな欠伸をするのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ちょーつよ!まあ、大人20人分の装備だしなあ…
[良い点] 迷宮装備便利ですね。 魔力残量の管理が大変そうw [一言] 序盤のコツコツ進めてる感じが楽しいです。
[良い点] サクサク読み進められて追いつけました! シロクロかわいいですがまだまだ始まったばかりで謎もあり、地上の情勢は不穏ですな… 書籍化も決まっているとのことでおめでとうございます 続きが早く読…
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