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19話 服

 ポイズンビーストのスープを食べると、魔力が僅かに回復した感覚があった。これ、凄いんじゃないか?


〈『変異毒獣と野草のスープ、穴蔵風』、魔法効果:生命力回復・小、魔力回復・小、生命力強化・小、魔力強化・小〉


 スープの魔法効果は、魔力回復・小だ。小以上を見たことはないけど、微、極小、小、中、大、極大、究極の7段階に分かれるらしい。


 しかも、全身に残っていた打撲や、脇腹の鈍い痛みが綺麗に消えた。生命力回復の効果なんだろう。最下級ポーションなんて比ではない回復力だ。


 小でこれって……。中や大だったら、どうなってしまうんだ? まあ、それにはもっと高位の魔獣と戦わなきゃいけないってことで、今の俺たちには自殺行為だけどね!


 それに、ポイズンビーストの肉は、まだ5、6食分はある。かなり骨が太くて期待していたほど肉は取れなかったが、それでも結構な量だ。


 当面はこれで満足しておこう。


 しかも、この肉は非常に美味しい。この世界に転生してから食べた物の中で、1番美味しかった。味付け自体は塩と酢だけだが、出汁が非常に濃厚なのだ。


 骨は余るほどあるし、ポイズンビースト出汁を使うだけでも料理が1段美味しくなるだろう。いやー、良い獲物をゲットできたな!


 シロとクロもこのスープを気に入ってくれたらしい。会話も忘れてスープをかき込んでいた。


「がふがふ!」

「もぐもぐ!」


 このスープは誰にも渡さんという強い意志を感じる。作った甲斐があるね。


 ただ、がっつき過ぎじゃね?


「良く噛んで食えよー」

「がふがふがふがふ!」

「もぐもぐもぐもぐ!」


 結局2人は3分ほどで肉大盛りのスープを平らげたのであった。


「しゃーわせー」

「まんぷくー」


 寝転がる2人のお腹は超ポンポコリン状態だ。ちょっと怖いくらいに真ん丸である。つついたら破裂しそうだ。だ、だいじょうぶなの? 食べ過ぎじゃない?


「こんなおいしーの初めて食べたです!」

「生まれて初めてのこーふくー」


 考えてみたら、シロもクロも幼くして奴隷にされている。本当に、まともな食事をした記憶すらないのかもしれない。


「……うぐぅ」

「トール? 泣いてる?」

「どしたのー?」

「なんでもない! なんでもないぞ! 目からなんか水が出ちゃっただけだ! こ、これからも美味しいものをたくさん食わせてやるからな!」

「わーい!」

「やふー」


 毎回腹パンパンになるまで食ってえーんやで! おっちゃんがたらふく食わせたるからなぁ!


 やはり迷宮で魔獣肉を手に入れねば。それに、野草などが生えているとも聞いたこともあるし、宝箱などから素材や食材が手に入る可能性だってある。


「あ、宝箱!」


 そう言えば、服を手に入れていたんだった。俺は保存庫からメイド服を取り出した。いわゆる正統派のメイド服ではなく、ミニスカでフリフリなファンタジーメイドさんである。


「シロ、クロ。これ、着れるかどうか試してみてくれないか?」

「服です?」

「ひらひらー」

「動きづらそうです……」

「じゃ、クロきるー」


 シロはスカートが嫌であるらしい。逆にクロは目を輝かせているな。女子力対決はクロに軍配が上がったか。


「これを着てみてくれ。まずはスカートだ」

「らじゃ」


 今着ているブラウスの下に、白いスカートをはくクロ。すると、スカートのサイズが急に縮んだではないか。


「おー、ちーさくなった」

「すごいです!」


 その後、脱いでみるとスカートは元のサイズへと戻った。サイズ調節機能がしっかりと働いているようだ。


 サイズ調整機能が付いているってことは、魔法具ってことである。まさか、あんな入り口付近でこんないい装備が手に入るとは……。


 いや、サイズ調整機能が付いているだけの普通の服って可能性もある。ただ、俺たちにとっては十分だ。


 そもそもまともな服も持ってなかったわけだし。


 もっと詳しい性能が知りたいけど、鑑定みたいな便利な能力はないんだよね。俺が食材や素材の情報を理解できるのは、あくまでも脳内にインプットされた知識と、料理魔法の合わせ技だし。


 その後、ブラウス、エプロン、ニーハイ、パンプス、手袋と装備していくと、全てしっかりとサイズ調整が行われた。


 全体的に白黒のツートンカラーで統一され、非常に可愛らしいメイドさんの完成だ。


「おー、可愛いぞクロ!」

「わふー」


 クロがドヤ顔でクルリと回って、可愛くポージングを決める。フサフサの尻尾がフリフリと揺れ、完璧だ。


 俺が可愛い可愛いとクロを褒めていると、シロが指を咥えながら羨ましそうにクロを見ていた。


「いーなーです」


 スカートは嫌でも、クロが可愛くなったことが羨ましくもあるらしい。俺が褒めていたから、余計にそう感じたんだろう。


 うーむ、もう1つの服はシロに着せるか。ズボンだから俺も身に着けられそうだけど、2人を差別するのはよくないと思うし。


「じゃあ、シロはこっちを着てみようか?」

「にゃう! わかったです!」


 ベルトの着用に少し手間取ったが、シロもなんとか着替えを済ませる。こちらもしっかりとサイズ調整が利いてくれたので、シロにジャストフィットだ。


 黒い半ズボンに白いシャツ。白手袋に黒いクロスタイ。サスペンダーに革靴という、見習い執事風?


 でも、片方が短いアシンメトリーな灰色のニーハイは、明らかに女性向けだよな? 執事だけど女性向け?


 ともかく、シロに非常に似合っている。


「シロも可愛いぞ」

「にゃう!」


 俺だけ代わり映えのしない黒い服だが、杖を貰ったし今回はこれでいいだろう。


「動きはどうだ?」

「動きやすいです!」

「問題なしー」


 戦闘も可能であるらしい。


「シロ、クロ。俺はこれからも迷宮に潜るつもりだ。お前たちはどうする?」


 正直、相当怖い思いをしただろう。迷宮が嫌だというなら、留守番でも構わないと思っている。俺は内面が大人な訳で、子供の2人には無理をしてほしくはないのだ。


 しかし、2人は即座に首を振った。


「いくです!」

「いく!」

「次こそは、勝つのですよ!」

「いちげきひっとー」


 その顔に恐怖心は微塵もなく、やる気が満ちているように思える。どうやら油断して負けかけたことは悔しくはあっても、恐怖心に繋がってはいないらしい。


 す、すごいな2人とも。子供の頃の俺だったら、絶対にここで待つって言ってると思うぞ?


 この世界の住人だからか? それとも、獣人だから?


 ともかく、2人がやるというなら問題ない。むしろ、やる気があり過ぎて空回りしてしまうんじゃないかが心配だった。


「やってやるのです!」

「うおー」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 入り口なのかな?!ww
[一言] なんとなくけものフレンズ的イメージで読んでます わふー ふがー
[気になる点] 『変異毒獣と野草のスープ、穴蔵風』の生命力強化が19話だと小、18話だと極小になってます。 [一言] 魔獣スープそれだけ回復効果あるならカロリナさんにも食べさせてあげて。 いや聖魔法使…
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