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148話 青の魔神


 最後に残った俺は、女神像と向き合った。


「俺の実績は、どうなってる?」

『転生者の魂・特殊招待者、第一階梯迷宮の試練、第一階梯魔王の討滅、確認』


 転生者の魂・特殊招待者は、毎回実績扱いになるらしい。前回に続き、今回も実績として勘定されていた。転生者ボーナスってことなのかもしれない。


 あと気になる項目は、第一階梯魔王の討滅だろう。傲慢のシュリーダのことで間違いないと思うが、あれだけ強くても第一階梯? 威圧感だって、デザートドラゴンを超えていたんだぞ?


 受肉したばかりで、実際はあまり強くなかったってことか? それか、悪魔という高位存在に対して、人としての本能が過剰に畏れを抱いたのかもしれないな。


「さて……何を願うかなんだが」


 いずれは呪いの解除――に見せかけた、竜の肉体の隠蔽を願うつもりだった。シロとクロは女の子なんだし、いつまでも異形の肉体を抱えたままは可哀そうだ。


 だが、呪いに見える竜の肉体を奴隷商人避けにしている現状、この体を失うわけにはいかない。理想は、自分の意思で自由に変化させる能力なのだが……。


『実績が足りません』

「だよなー」


 肉体の再生や重病の治療は第三階梯迷宮からということだったので、肉体を変形させる力もそれくらいからだろうとは思っていたのだ。


 エルンスト出発時の計画では、変身能力が貰えない場合は魔力の強化を願うつもりだった。だが、今回はもっと重要度が高い願いがある。


「なら、青い魔力について質問に答えてほしい。そして、知りうる限りの知識を教えてもらいたい。どうだろうか?」


 急に使えるようになった力について、俺は何も知らない。今後使うかどうかも含めて、もっと知識が欲しいのだ。


『分かりました。トールに、青い魔力についての知識を授け、質問に応えます』


 よし! うまくいったらしい。しかもブラックみたいに3つまでみたいな制限もないぞ。


「あの青い魔力は、悪魔に関係するのか?」

『青色魔力は暴食の悪魔に由来する力です。その名の通り、他者を食らい、自身の飢えを力に変える属性となっています』

「やっぱりそんな感じか……。なあ、俺はどうして悪魔由来の青い魔力が使えた?」


 そもそも、そこが謎だ。赤い魔力は、竜の肉体由来だろうとは思う。じゃあ、青い魔力はどこからきた?


『あなたが青い魔力を宿している理由は――』

「うん?」


 なんだ? 声が止まったぞ? もしかして、これで終わり? それにしたって、こんな中途半端なのは想像してなかったんだが……。俺が困惑していると、女神像から今までとは違う声が発せられた。


『久しいのう。トールよ』

「その声は……! 女神様、ですか?」

『その通りじゃ。ここからは、儂が説明してやろう。そのレベルの迷宮を攻略した程度の恩恵では、ろくに情報は得られんじゃろうしな。これは悪魔と戦い、生き延びたことへの褒美だと思っておけ』

「は、はぁ」


 つまり、女神様がより詳しく教えてくれるってことか?


『とはいえ、何でもかんでも教えてやれるわけではないがな』


 じゃあ、何で出てきたし!


『相変わらずじゃのう』


 あ! そういえば心読めるんだった! すんません! マジすんません!


『ふん。心が籠っておらぬわ! まあよい。我が可愛い使徒の不敬くらい、笑って許してやらねばな』

「え? 使徒? あの、神様の使い的なやつですか?」

『お主、儂の力で転生しておいて、今更何を言うか』

「でも、使命なんかないみたいに言われてましたよね?」

『そこは大丈夫じゃ。使徒だからといって、我のために働けとは言わぬよ。まあ、お主は見ているだけで面白いからのう』


 つまり、ずっと見られてるって事? 娯楽扱い?


『転生の駄賃にしては格安じゃろ? それよりも時間が限られておるのに、無駄話をしていていいのか?』


 女神様が色々言うから!


『とりあえず、知りたがってることを教えてやるかのう。まず、お主が青い魔力を宿している理由じゃが……。お主の魂に悪魔の力が混ざり込んでいることが最大の要因じゃな』

「え? それって、チーターみたいな感じですか?」


 転生する時に与えられた力が、悪魔由来だったって事? じゃあ、この女神は――。


『まあ、そう結論を急くではない。儂も干渉はしたが、最も大きな原因はお主の死因にあるのじゃよ。あの日、お主が助けたのは将来的に我らが世界に転生し、勇者となる宿命を持った人間じゃった』

「はい」


 そもそも俺は勇者――つまり、前世のアレスを庇った褒美として、異世界転生させてもらったんだからな。あとは死んだときに異世界の力が混ざり込んだことで、異世界に転生可能になったんだったか?


『じゃが、おかしいとは思わぬか? 将来勇者になるとはいえ、あの時点ではただの人よ。それを救ったからと言って、魂に異世界の力が混ざり込むわけもないじゃろ?』

「え? でも、勇者を助けたことで、異世界の力が混ざり込んだとかなんとか……」

『正確には、勇者の魂を汚染するために地球へと送り込まれた悪魔の力が混ざり込んだ、じゃな。本来は勇者の魂を穢して変質させるための悪魔の力が、お主へと流しこまれてしもうたのじゃ』


 あの時生前のアレス少年を襲っていた暴漢は、悪魔に乗り移られていたそうだ。ただ精神操作を受けていただけではなかった。


 そして、あの時俺が刺されたナイフには、悪魔の力が宿っていた。それが誤って俺に対して使用されてしまったわけだ。


『悪魔の力のせいで魂が不安定になっておったお主を見つけ、逆に我が世界に相応しいように形を整えたというわけじゃな。あのままでは魂が崩壊し、どの輪廻にも入れず消滅しておったのじゃぞ? 感謝せい。まあ、これだけの力をみすみす逃すのは大きな損失じゃからな。実際、何も指示しておらずとも悪魔を倒しよった』


 やはり女神様と悪魔は敵対しているらしい。女神様たちにとっては、相手方の力を自分の陣営に取り込むチャンスだったってことなんだろう。


「ちゃんと説明しておいてくれれば……」

『転生時に時間がなくて、その辺は詳しく説明できなんだ。それに、悪魔の力を元にして魂に力を与えるなんぞと言われても、胡散臭いだけじゃろ?』


 まあ、それは確かに。あの時、悪魔云々の説明を受けていたら、転生を拒否していたかもしれないのだ。


『お主が暴食の魔力に自力で目覚めたのも、それ故じゃ。あのナイフに宿っていた力が、暴食の魔力だったのじゃ。結果、お主の魂には暴食の青が宿っておる』


 実は最初っから悪魔の力を持っていたってことなのか……。俺が青い魔力を使うことができた理由は分かった。


『まあ、これほど相性がいいとは思わんかったが……。想定をはるかに超えた出力じゃった。よほど相性が良いのじゃろう』

「……この力、使って大丈夫なんですか?」

『大丈夫じゃ。悪魔の魂は浄化しておるし、お主には我の――青の魔神の加護もあるでの。欲に呑まれさえしなければ、大丈夫じゃよ。気を強く持つのじゃな』


 それが一番怖いんですけど! 青い魔力を使用している間、明らかに俺は食欲を抑えきれていなかった。あれがもっと酷くなったら、正常な判断力を失っていたかもしれない。


 結局、楽に強くなれる道はないってことか。


「……青の魔神様、なんですか? 色が青なのは何か意味が?」

『ほう? そこに気付いたか』


 声だけの筈なのに、女神様がニヤリと笑った気がした。


『悪魔どもが我らの力を利用できるということは、その逆もまたしかりということじゃ。そうは思わんか?』

「は、はぁ。言われてみれば確かに?」

『くっくっく。我ら七女神は、最上位の悪魔どもを喰らい、力を奪ってやったのよ! その結果、我はただの女神から青の魔神となり、悪魔どもの力を操るに至ったのじゃ! お主にはその加護がある。青の魔力の制御にはいい影響があって当たり前なのじゃ』


 悪魔と対峙した時とよく似た――いや、それ以上の威圧を感じた。のじゃロリ神は、本当に悪魔の力を持っているらしい。俺が言葉を失っていると、青の魔神がその圧を収めた。


『さて、そろそろ時間じゃ。最後に忠告しておこう。悪魔の力は確かに強いが、使い過ぎぬことだ。魔の気配は、魔を呼び込む故な』

「え?」

『まあ、お主であればそれらも喰らい尽くし、悪魔に近づくことになるかもしれんがなぁ』


 なんかすんごい不吉なこと言われた! どういうことですか! あ、もう気配がしない! 最後に爆弾落としていかないで!


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― 新着の感想 ―
 感謝しろと言われてもなぁ、勇者システムを解析されて悪魔に悪用されたのは神々の失態だし、アレスが悪魔の手先に襲われたのも神々の失態。それを何も知らないながら命がけで阻止したのは主人口の功績でしょう。感…
魔の力を宿して転生した主人公が、ケモ娘の保護者となって、魔を倒して力を取り込みながら成長していく物語。 こうまとめると転剣と構造が良く似てますね。
というか今作でも主人公のトールは、賢者でも勇者でも無く使徒なのか。 転剣でも混沌の使徒だったし、今度は青の魔神の使徒って感じ?
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