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122話 寄生茸の影響?


 傭兵団に寄生茸の危険性を教えるため、俺たちは彼らの野営地にやってきた。


 村外れにいくつもの天幕を張って、寝起きしているらしい。夕暮れ時なので、煮炊きの煙が上がっているのが見える。


 想像していたよりもかなりの大所帯であるようだった。傭兵だけではなく、炊事番や雑用係などもいるんだろう。


 どうやって声をかけようかと迷っていたら、見覚えのある子供が歩いているのを発見する。ライアン少年だ。


「ライアン!」

「え? おー、トールさんたちか! どうしたんだ?」

「ちょっと、シュリーダに話があってな。会えないか?」


 ライアンに橋渡しをお願いすると、普通に団長の下へと案内してくれた。知り合いだから信用してくれているんだと思うけど、他人をあっさりと中へ通していいのか?


「団長! トールさんが話あるって!」

「お前が案内役かい?」

「入り口で会ったからさぁ」

「……つまり、あんたの判断で勝手に連れてきたってことだね?」

「え?」


 やはり、顔見知りとは言え、部外者を勝手に野営地に招き入れるのはマズいらしい。シュリーダ用の天幕の中を少し見ただけでも魔道具のランプや水差しが置かれており、人を無防備に招くのは迂闊に思える。


 傭兵団なんて敵も多いだろうし、その辺をなあなあにしちゃいかんよな。


 とは言え、俺を放置するのも失礼になると考えたんだろう。シュリーダはライアンの頭をゴンと叩き、その場で正座させた。


「すまんね。まだまだ馬鹿でな」

「いや、俺も突然押し掛けて悪かった」

「こいつに聞かせられない話なら、外に出すが?」

「大丈夫だ」


 むしろ、ライアン少年にも聞きたいことがあるし。


「実は――」


 俺はシュリーダに対して、寄生茸の情報を全て語った。村人たちは全く聞き耳を持たず、このままでは最悪の状況になりかねないということも。


 説明が終わると、シュリーダは難しい顔だ。


「うちの傭兵が、村の食堂であんたらから寄生するキノコに関して話を聞いたって報告があったが……。キノコに支配されるなんて、ゾッとしないねぇ」


 シュリーダも、本来はこの大陸に存在しない寄生茸のことは知らないらしい。だが、疑いつつも、否定の言葉を口にすることはなかった。


「信じてくれるのか?」

「……この村の異変は、知っているかい? 前はクソみたいな村だったのに、急に村の奴らの態度が急変したんだ」

「ああ、それは俺も不思議に思っていた。前情報と違い過ぎて……。なるほど、寄生茸の仕業だって考えているのか?」

「ああ」


 シュリーダは村人たちが寄生茸に寄生されたことで、性格が変わったと推測したらしい。寄生茸の情報を聞けば、そう考えるのも当然だろう。


 ただ、俺はその意見に懐疑的だ。


 寄生茸は数週間の潜伏期間を経て、宿主を支配するまで数ヶ月、最長で半年ほどかかる。聞いた話では、この村で迷宮が発見されてまだ2ヶ月も経っていないはずだった。


 マキナがキノコを発見して村に卸すようになってからと考えると、1ヶ月くらいか?

 

 村人の性格が激変するには短すぎる。


 それに、変化した性格に関しても、俺の知識にある寄生茸の症状とは全く違っていた。


 寄生された宿主は初期段階では短気になり、末期では胞子を撒き散らすことだけを考えるゾンビのようになるらしい。


 明るくなって、人当たりが良くなるなんて話聞いたことがなかった。それに、怒り出すまでは受け答えがしっかりしており、そこも寄生茸に侵食された者の症状とは違っていた。


 俺はそう告げるが、シュリーダには違う考えがあるようだ。


「この村のキノコは、迷宮産なんだろ? だったら、亜種や変異種ってことは考えられるんじゃないかい? 変異しているなら、侵蝕速度や症状が違っていてもおかしくはない」

「な、なるほど……」

「寄生茸ってやつは、宿主に自分たちを増やすための行動をとらせるって言ってたね? 素人考えだが、村人を明るい性格に変えて、滞在者を増やすのは寄生茸にとってはアリなんじゃないかい?」


 以前みたいな排他的な村では旅人が寄り付かず、寄生茸の宿主が増やせない。だから、明るく開放的な村にして、旅人が滞在するように仕向けている?


 あり得るのか? だが、シュリーダの考察通り、亜種や変異種だったらあり得ない話ではないかもしれん。


 迷宮の専門家でもある傭兵のシュリーダの言葉だ。可能性は高いのではなかろうか? 考えれば考えるほど、それしかないと思えてきた。なまじ知識がある分、常識に縛られてしまっていたな。


 そこで、ふと思った。


 最初に伝え聞いていたこの村の状況である、村人が短気で排他的。そして無気力。それは、寄生茸の初期症状に似ている。


 変異種であっても、初期症状は同じ可能性はあるだろう。つまり、その頃にはすでに寄生茸の影響が出ていた可能性はないか?


 マキナがキノコを採取していると聞いて、彼女が最初に寄生茸を村に持ち込んでしまったのだと思っていた。だが、本当にそうだったのだろうか?


 実はもっと前に誰かが寄生茸を迷宮から持ち出し、皆に食べさせたのだとしたら? 何らかの理由でそれを黙っているのだとすると、迷宮の発生時期すら怪しくなってきた。


「村人の性格の変化……。あれはもしかして末期症状なのか?」


 だとすると――いや、どうなるんだ? この後、普通の寄生茸のようにゾンビみたいになって胞子を撒き散らす? それとも、全く違う症状が発症する?


 これ、傭兵団と一緒に村を脱出した方がいいかもしれない。


体調不良で熱が……。文章変だったらごめんなさい。

次回更新は6/25とさせてください。

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― 新着の感想 ―
マキナが実はトサカ君の同郷ではない説。 悪魔辺りが変化してるとか。 安直かな?
逃げた方が良いのは間違いありませんが、そう簡単に逃がしてくれるとも思えない。 最後に気になるのは、黒髪コンビ。 マキナは本当に黒幕なのか? ヤンキーはキノコに操られているのか? 物語が動いている実感…
まずは村からの脱出・ジオスと直接会って報告・エルネ草の確保を最優先するべきでしょうね。次点で傭兵団の救出。 エルネ草を大量確保しなければ傭兵団すら助けようがない。エルネ草飲んでないと傭兵団もジオスに殺…
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