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118話 毒キノコ除去


 シュリーダたちと別れた俺たちは、迷宮を先へと進んでいた。


 通路にびっしりと生えた毒キノコを少しずつ刈り取っては、保存庫へと仕舞い込んでいく。


 風魔法で胞子を抑えたりするのは多少手間だが、燃やしたり吹き飛ばしたりするとさらに胞子が舞ってしまって結局時間がかかるのだ。


 10分ほどかけて通路のキノコを除去し、さらに先へと進む。保存庫の中でソートされたキノコを確認するが、全て毒キノコだった。


 毒抜きすると食用にできるものもあるが、味が良くないので無理に食べるほどでもない。


「あー! またキノコです!」

「たいりょー」

「うわー、またか」


 5分ほど歩くと、再びキノコまみれの通路に遭遇していた。ここまでは罠が数個あるだけの一本道だったし、ここを通らなければ先へは進めない。


 さっきと同じようにキノコを除去して通ったんだが――。


「またじゃん」

「またです」

「またー」


 三度目のキノコ通路だ。嫌がらせか? 嫌がらせなんだろうな。面倒くさくても、キノコをどうにかしないといけないし。


 俺たちは魔法と保存庫の合わせ技で何とかなっているが、普通の冒険者では苦労するはずなのだ。


 俺たちが最初に考えたように燃やすか、息を止めて走り抜けるか、違う方法を模索するか。どちらにせよ、かなりの足止めになると思われる。


 シュリーダたちが目の前にあったキノコ通路を避けて違う通路に進んでいったのは、対処を面倒くさがったからだろう。


 というか、あえてキノコ通路を放置することで、俺たちに押し付けた……? いやいや、まさかね。


 三度目のキノコ掃除を終え、俺たちはさらに奥へと歩を進めた。すると、迷宮に大きな変化が現れる。


 今まで以上に通路が広くなり、魔獣との遭遇が増えたのだ。


「また暴れキノコだ!」

「シロがやるです!」

「クロがやったるー」


 出現する魔獣は、暴れキノコばかりだ。しかも、様々な種類が連携するように同時に現れる。ここはキノコの迷宮ってことで間違いなさそうだった。


 魔法で暴れキノコを倒し、保存庫に入れながら俺は首を傾げてしまう。


「うーむ」

「どーしたの?」

「何を悩んでるです?」

「悩んでるっていうか、疑問? ここまで来ても、食用のキノコを全然見ないなと思ってさ」


 生えているキノコも、暴れキノコも、全て毒キノコなのだ。マキナが毎日大量に手に入れている以上、この迷宮に食用キノコがあることは間違いない。それなのに、一向にその姿を見ることはなかった。


 もっと入り口付近にしか生えてないのか? だとしても、やはり俺たちが全く発見できないのは不思議だ。


「もし食用キノコがたくさん生えている隠し部屋とか秘密の通路があるなら、そっちが正解の道の可能性もあるんだよなぁ」


 俺の心配はそこなのだ。傭兵が自分たちが発見した隠し要素を黙っているのは、至極当然のことである。


 ただ、それが先へと進むための正規のルートなのだとしたら、俺たちはただ無駄な苦労をしているだけってことになってしまう。


 毒キノコを使って攻略の邪魔をしてくるってことは、こちらが正解なんだと思うが……。そう思わせておいて実はってこともあり得る。神の作った試練なわけだし、心理的に厭らしい部分をついているかもしれないのだ。


 とは言え、まだ行き止まりになったわけじゃないし、引き返すのも勿体ない。


 結局、先へと進んでみるしかないようだった。


 すると、奇妙な光景に出くわす。


「なんじゃこりゃ」

「魔獣からキノコ生えてるです?」

「死んでるー?」


 俺たちが発見したのは、地面に倒れてこと切れる犬のような姿の魔獣だった。だが、ただ死んでいるだけではない。なんと、その体から無数のキノコが生えていたのだ。


 茶色い毛皮は白い菌糸で薄く覆われ、一部は腐り始めている。


 死んだ魔獣を苗床に、キノコが増殖しているように見える。誰かが倒した魔獣を放置していって、そこにキノコの胞子が付着して増殖した?


「暴れキノコばかりだと思っていたが、こんな魔獣も出るんだな」

「食べられるです?」

「おいしーの?」

「ちょっと待てよ」


 一度保存庫へと仕舞って、魔獣を検分してみる。これは『赤い牙』というカッコイイ名称の魔獣だった。吸血能力を持っており、獲物を噛んだ牙が真っ赤に染まることから名付けられたそうだ。


 下級の小型魔獣だが噛む力が強く、迷宮などでは厄介な相手である。病原菌を除去すれば食用にはなるんだが、今回はやめておいた。


 キノコに養分を吸われているうえに腐敗もしており、とてもではないが食べられそうもなかったのだ。


 死体から生えていたキノコは、獣血魔毒茸という毒キノコだった。毒性の強い胞子を撒き散らし、それを吸って死んだ獣の血肉を養分に生えてくるらしい。


 俺たちが見た時はまだ生えたばかりで白かったが、育つと真っ赤になるらしい。その色が、まるで獣の血を吸い上げているように見えることから、獣血魔毒茸と呼ばれるそうだ。


 当然、毒の胞子は人間に対しても効果がある。

 

 とりあえず自分たちに解毒と浄化をかけておこう。気づいていないだけでキノコの胞子を大量に吸い込んでいる可能性もあるし、こまめに浄化しておく方がいいかもな。


「毒を吸ったと思ったら、すぐに言うんだぞ?」

「わかったです!」

「りょー」


 毒キノコのせいで、体力も魔力もガンガン消耗してしまう。できたばかりの迷宮でも、こんなに難易度が高いんだな。

予約の日時を1日間違っておりました! 申し訳ありません!

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― 新着の感想 ―
毒使いと見せて実はキノコ使いなのかもしれぬ。 致命的な毒や麻痺とかキノコ使いっぽくない? 毒抜きしたキノコを生やせば収穫できるし。 村人もキノコ効果でまろやかに! なぜかしわ寄せがトサカ頭にw
2章のタイトルがまだ未定である事について、前から気になっていたんですが、迷宮の名前が今後の展開の種明かしになってしまう可能性が濃厚になりました。 これでキノコ以外の名前が迷宮に付いたら、『え、じゃあ…
あらら、先にみんな言われちゃってるw マキナとヤンキーだけがきのこモリモリ取れて残るのは毒キノコというのは どうみても元々ダンジョンは普通のきのこの宝庫なのにヤンキーの指示かマキナの独断かはわかりませ…
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