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116話 傭兵団とヤンキー


 子供たちと薬草採取をした翌日。


 何やら村が騒がしい。宿の外に出ると、大人たちが連れ立って村の外へと歩いていくのが見えた。


 殺気立っているってわけじゃないんだが、どこか物々しい。持っている鍬や鋤が武器のように見えるのだ。


 特に知っている人はいないが、声をかけてみることにした。この村の人なら、邪険にすることはなさそうだし。


 それに、魔獣でも出たんなら、手助けできるかもしれないのだ。


「何かあったのか?」

「おう! 村のそばで毒草の繁殖が確認されたって話でな! その駆除に行くんだ!」

「毒草?」

「なんか、紫色の草らしいぜ? 冒険者ギルドから情報が回ってきたんだ」


 うわー、それって完全にエルネ草のことじゃん。昨日の今日で、もう情報が出回っているらしい。


 でも、駆除って……。そこまでするのか? いや、村だとそれくらいはするのか?


 勿体ない気もするけど、毒だと思われている草をくれとも言えんしなぁ。自分たちの分は確保しているし、変に関わらんとこ。


 危険なことはなさそうだし、俺たちは彼らと別れて予定通り迷宮へと向かうことにした。


 迷宮の前では、複数の傭兵たちが探索の準備を行っている。昨日宿屋で話をした傭兵がいたので、声をかけてみた。


「これから探索か?」

「お? 昨日の! ははは、先行偵察があらかた終わったんでな。そろそろ本腰を入れようって事さ」

「なるほど」


 傭兵たちがこちらを競争相手として疎む様子はない。子供たちを救ったことで、いざとなったら協力できる商売仲間という扱いになっているらしい。


 迷宮内部のお宝は取り合いになるが、オルヴァン傭兵団からすれば出来立ての迷宮のショボいお宝だ。そこまで血眼で探しているわけじゃないんだろう。


 最終的な目標である、迷宮最深部で与えられる神の恩恵は辿り着いた者全てが得られるからな。それさえゲットできればいいと考えているらしい。


「そろそろエルンストの迷宮に戻る時期だしなぁ」

「エルンストですか?」

「毒のめーきゅー?」

「お? 嬢ちゃんたちも知ってんのか?」


 なんと、彼らは元々エルンストにいたらしい。毒の迷宮の攻略を目指していたそうだ。しかし、実入りが良くないうえに難易度が高い毒の迷宮の攻略を一時諦め、他の町へと稼ぎの場を移していたという。


 エルンストの迷宮が攻略されたという話を聞き、再度攻略に挑もうと移動している最中にこの村へと立ち寄ったのだとか。


「一度攻略された迷宮っていうのは待てば待つほど攻略情報が集まるもんだし、焦る必要ないからな。その前に、未踏のここを攻略しちまおうってことだ」

「シロたちも負けないです!」

「クロたちがこーりゃく一番のり」

「はははは! もしここを攻略できたんなら、ぜひその情報を売ってくれ! 高く買うからよ!」


 完全に子供の根拠のない自信だと思われたかな? まあ、馬鹿にしてる感じはないから、微笑ましく見守ってくれてる感じだが。


 応援されたと思って満足げなシロとクロを促し、俺たちは迷宮へと突入した。前回の地図を頼りに、1時間ほどで前回の最終到達地点へと辿り着く。


 ここから毒キノコゾーンとなるので、気合を入れ直さなくては――なんて思っていたんだが、集中を乱す怒鳴り声が迷宮内に響き渡るのが聞こえた。


「雑魚が俺様の狩場をウロチョロするんじゃねぇ! 潰すぞ!」

「はっ。ここは別にお前の持ち物でもないだろう?」

「うるせぇ! 俺様が入るなって言ったんだから、お前ら現地民は黙って従っておけばいいんだ! 群れなきゃ何もできないカスのくせによ!」


 朝から聞きたくない声を聞いてしまった。どうやら、黒髪コンビがオルヴァン傭兵団と揉めているようだ。しかも、傭兵たちの中にはシュリーダの姿もある。


 これは、何事もなくとはいかないんじゃないか? 正直、無視して先へと進みたいんだが、奴らが揉めている場所が問題だった。


 先へ進むための唯一の道と思われる、狭い通路の目の前だったのだ。


「ここに隠れて少し様子を見る」

「わかったです」

「りょー」


 通路の陰に身を隠し、俺たちは両者の諍いを見守った。


 傭兵側は大人の対応で受け流そうとしていたんだが、ヤンキーのブラックが絡み続けている。マキナもそれを止めようとはせず、ただ俯いて黙っているだけだ。


 すると、団員の1人が遂に我慢の限界を迎えたらしい。


「さっきから上から目線でゴチャゴチャうるせぇんだよ! クソガキが! ぶち殺すぞ!」

「やってみろよ三下が!」

「ぐはぁ!」


 怒鳴った傭兵に対し、ブラックが先制攻撃を仕掛けた。顔面を殴られ、吹き飛ぶ傭兵。ブラックはそれで止まらず、さらに攻撃を放っていた。


 狙いはシュリーダだ。素早い動きで殴り掛かる。だが、シュリーダは動かない。


 驚きのあまり、反応できていないのか?


 違う。反応するまでもないと、理解していたのだ。


「……ふん」


 盾役の男性が、ブラックの拳を盾で受け止めていた。僅かによろめくことすらしない。


「ちっ! 俺のワンパンを受け止めるとは、モブの癖にまあまあやるな! だが、手が痺れて次は受け止められないだろ!」

「……」

「黙ってねぇで何か言えよ!」

「……」

「うぜぇ! むっつり野郎が!」

「……」


 ワンパン? 油断大敵だけじゃないのか? いや、チートの強さによって、1~3つ貰えるらしいからな。あいつは複数持ちってことなんだろう。


 ブラックが怒鳴るが、盾役の男性は黙ったままだ。その態度に、ブラックの怒りゲージが上がり続けている。


 うーん、殺し合いになったら、さすがに止めないとまずいか?


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― 新着の感想 ―
トサカがなんかする度に俯いて黙ってるマキナが怪しく見えてきたw
所詮はチートに頼りきりでロクに技術も磨いていない素人のパンチじゃ、鍛えた傭兵には通用しないと思うけどな
ヤンキーは、勇者じゃないと思います。 一緒にされるとアレスが可哀想。
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