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106話 黒髪少女とヤンキー君


 大人しそうな黒髪の少女は、村に色々と貢献しているらしい。食材が少し増えただけでも、寒村にとっては大きいことなんだろう。


 俺たちも少し前までは同じような状態だったから、よく分かる。美味しいキノコが手に入るようになるだけで、非常に有難いのだ。


 村人たち全員が、黒髪少女をべた褒めである。


「同じ黒髪でも、クソガキの方とは大違いだよ。あっちは騒ぎばかり起こしててなぁ。お前らも近づかない方がいいぞ?」

「そいつの言う通りさ、気を付けなよ?」

「は、はぁ」


 傭兵さんの言葉に続き、横のテーブルにいたおばちゃんも小声で同意してきた。少女に聞こえないようにってことなんだろう。


 事前情報と違ってメチャクチャ人当たりの良い村人たちが嫌うって、あの黒髪ヤンキー君は何したんだ?


 どうやら、村の入り口で見たような喧嘩騒ぎを何度も起こし、注意されても全く反省した様子も見せないらしい。それどころか、自分は選ばれた人間だから命令するな的な感じで、村人を怒鳴ったりするのだ。


 まあ、そんだけやらかしていれば、そりゃあ嫌われるよな。


 そんな話をしていると、件の黒髪ヤンキーが食堂に姿を現した。和やかだった食堂内の雰囲気が一変し、村人たちがヤンキー君を横目で睨みつけている。


 だが、そんな空気にも一切構わず、ヤンキー君は黒髪少女の座っている席に足早に近づいていった。


「おい! いつまでメシ食ってるんだよ!」

「あ、ごめんなさい。もう食べ終わるから」

「ちっ。早くしろ!」

「う、うん」


 やはりこの2人は一緒に行動しているらしい。少女の方もチーターで間違いなさそうだ。


 ヤンキー君に急かされた少女は残っていた食事を無理矢理お茶で流しこみ、慌てて立ち上がる。


「遅ぇんだよ!」

「ご、ごめん……」


 完全に少年が上位者というか、少女を使っている感じだ。どう見ても気が合いそうには見えんが、少女は弱みでも握られているのか? それとも同郷同士ってことで、一緒にいるだけなのか?


 食堂を出ていった2人を見送っていると、食べ始めてまだ5分くらいなのに可哀そうだと、村人たちがヤンキーへの怒りを募らせていた。いつもあんな感じらしい。


 彼らの関係も気になるが、もう一つ気にしなくてはならないことがある。2人は迷宮に潜っているんだろうか? だとすると、迷宮で鉢合わせする可能性もあるだろう。


 厄介なことにならなければいいんだが……。しかし、シロもクロも迷宮を楽しみにしてしまっているし、俺も気にならないと言えば嘘になる。


 それに、迷宮を踏破できれば恩恵を授かることだってできるだろう。出来立ての迷宮で死者蘇生や、竜の肉体を元に戻すことが可能とは思わないが、肉体や魔力を強化してもらうだけだって今後の旅が楽になる。


 むしろ、迷宮が育っていない今がチャンスかもしれなかった。


 まあ本格的に潜るのは明日からだけどね。今日は入り口の確認だけだ。とりあえず村の中で買い物をしつつ、迷宮や黒髪たちの話を聞いて回る。


 そうして、最後は教えてもらった情報をもとに、村の外へと出た。森を歩いていくと、子供の足でも10分かからず迷宮の入り口を見つけることができたのだ。


 地震か何かで隆起したと思われる高さ10メートルほどの断層に、小さな洞窟がポッカリと開いていた。


 入り口の高さが1.5メートル程度しかなく、一見しただけで迷宮であると見抜けるものはいないだろう。


 この天井の低さも、傭兵が調査をしづらい理由らしい。まあ、俺たちなら普通に歩けるだろうが。


 ここまでは問題なかった。そもそも、村の傍の洞窟を見にきただけだからね。問題は、帰りの道中で起きた。


「あ? 見たことないガキがいるな」

「え? あの髪の毛……」


 黒髪コンビとすれ違うことになったのだ。どちらも、俺のことを凝視している。まあ、黒髪黒目はこっちじゃ珍しいしね。


 声をかけてくるようなことはなかったが、すれ違う間だけではなく、通り過ぎた後も視線を感じた。


 ヤンキー君は俺を見てシロとクロを見て、また俺を見るっていうのを繰り返していたのだ。少女の方はずっと俺を見つめていた。


 完全に俺のことを値踏みする目なのだ。


 自分たちのお仲間とでも思ったかね? 厄介なことにならなければいいんだが……。


 俺が悩んでいると、両サイドからググーという音が聞こえた。


「お腹減ったです」

「はらへりー」

「もうそんな時間か」


 正確な腹時計を持つ2人の言葉だ、そろそろ夕食の時間だろう。今日は昼めしはガッツリ食べずに、食堂でおやつを貰ったくらいだ。


 結構食うだろうなぁ。


「宿に戻って、食事にするか。夕飯は俺が作るよ。新鮮なキノコも手に入ったし」

「やた」

「やったです!」


 2人も食堂の食事の味が微妙に感じていたんだろう。俺が作ると言ったら大喜びだった。


 まあ、村で買ったキノコと、森で摘んできた野草、干し肉でスープを作るだけだが。後で消臭の魔法を使うとは言え、さすがに宿の部屋で焼き物は難しいからな。


 迷宮でキノコが発見されて出回っているというだけあって、マイタケモドキ、シイタケモドキ、エリンギモドキと、色々なキノコが売っていた。ああ、名前は俺が勝手につけた。


 本当はもっと長い名前があるんだけど、それぞれがマイタケ、シイタケ、エリンギにそっくりだったのである。


 キノコの出汁たっぷりなうえ、エルンストで作っておいた固形コンソメで味付けをしたスープはかなり美味しかった。魔法効果はほぼないけど、味の方が重要だ。


「うまうまです!」

「うーまーいー」


 2人もペカペカの笑顔で喜んでいる。保存庫の料理を消費せずとも、美味しい物が食べられそうでよかった。


「よし、迷宮でとにかくキノコを探そう」

「賛成です!」

「クロはキノコハンターになーる」


 俺もちょっと迷宮が楽しみになってきたな。


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― 新着の感想 ―
二人には、悪魔に狙われている事を忠告しないと。
少女の方は生産職かな 戦闘能力が低いからヤンキー君に頼るしかないのかもね
女のほうは何か訳ありっぽく見えるな。しかもキノコを判別出来る能力は戦闘系じゃないな。
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