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104話 新たな迷宮

 傭兵ギルドの看板を掲げた建物に足を踏み入れる。


 中は小さいテーブルが2つと、小さいカウンターが1つという簡素さだ。寒村のギルドともなれば、この程度の規模で事足りるんだろう。


 しかし、そのギルド内には過剰に思えるほどの傭兵がたむろしていた。その数は10人を超えるだろう。


 ギルド内に入ってきた俺たちを、一斉に見つめる。しかし、貴族っぽく見える相手に絡むほど暇ではないらしく、すぐに視線を外した。


 まあ、何も起きないならその方がいい。俺たちも警戒を解いて、カウンターへと向かう。


 カウンターにいたのは、一人のおばさんだ。恰幅の良い町のおばちゃんって感じの人物だが、身の内に宿す魔力が感じられる程度には強い。元々傭兵なんだろう。


「おや? いらっしゃい。子供ばかりのようだけど、傭兵かい?」

「ああ。旅の途中で村に立ち寄ったんだが、どうも騒がしいみたいだな? 何があったんだ?」

「う、噂を聞いてやってきたってわけじゃないのかい?」


 おばちゃんは俺がリーダーっぽい感じで喋り出したので驚いたみたいだが、すぐに子供の姿の長命種であると勘違いしたらしい。


 驚きを消して事情を説明してくれた。


「実は少し前に迷宮が発見されてねぇ」

「やっぱりそうなんだな」

「まだ2ヶ月も経っちゃいないし、迷宮の探索もほとんど進んでいない。そのせいで、名前もまだ決まっちゃいないがね」


 最初に小さな地震が発生し、その後に村の外れで洞窟が見つかった。ただ最初は、地震による地盤崩落で、隠れていた洞窟が外に出てきたと思われていたらしい。


 村に居た僅かな傭兵も積極的に調査するようなこともせず、洞窟はずっと放置されていた。


 寒村で燻るような傭兵は一攫千金を狙うような真似は諦め、故郷や開拓村で細々と暮らすことを選んだような者たちだ。どんな危険が潜んでいるかも分からない洞窟に、積極的に潜るような者は少ない。


 村ではある程度噂にはなっていたが、それだけであった。


 その状況が変わったのは、ある傭兵クランが村を訪れた後のことだ。最初は、彼らも移動の途中で偶然立ち寄っただけだったらしい。


 しかし、彼らの一部が洞窟に興味を示し、探索を行ったことで迷宮であることが判明する。彼らは迷宮探索の経験も多く、すぐにただの洞窟ではないと見破ったそうだ。


 今この村に居る傭兵の大半が、そのクランの構成員であるらしい。つまり、このギルド内にいるやつらも、殆どがそのクラン所属の傭兵ってことだった。


 見た感じ、粗野ではあるが悪党って感じではなさそうだ。クランぐるみで略奪をするような悪質な集団ではないかな?


 この村も一月以上無事でいるわけだしね。


 また、現状では迷宮への立ち入りは自由らしい。村長やギルドで色々と取り決めを作っている最中なのだそうだ。とは言え、ここの傭兵ギルドにはマスターなんて役職の人間はおらず、仕事の仲介を行う事務員兼受付のおばちゃんだけだ。


 当然ながら迷宮運用のノウハウ等あるはずもなく、各方面へと申請して反応を待っている段階らしい。


 また、買取に関してもかなり曖昧で、他でも発見されているような素材ならともかく、未知の素材は現状ではほとんど扱いがないという。知らない物に適当に値段を付ける訳にもいかず、放置ってことらしい。


 村には薬師などもいるがそちらでも買取もしていないので、迷宮での実入りはほとんどないに等しかった。


 実際、傭兵クランも迷宮に潜ってはいても、稼ぎはほとんどないようだ。それでも、宝箱や迷宮最深部での恩恵を考えれば、探索するモチベーションはあるんだろう。


 迷宮の位置は教えてもらったが、地図などの販売はなかった。欲しければ、傭兵たちに交渉して彼らが作った地図を写させてもらうしかないという。おばちゃんが知っている情報は、表層に罠はなく、魔獣もかなり少ないということだけだ。


 それ以上の情報はなさそうなので、礼を言ってギルドを出る。傭兵たちの視線は俺たちを追ってはいたが、不快な色はなかった。


 まあ、迷宮探索で競合するようになったら、どう変化するかは分からんが。


「シュリーダ団長! お疲れ様です!」

「おつかれっす!」

「れっす!」

「おう。探索は順調に進んでるかい?」


 ギルドから外に出ると、そこでは傭兵たちが一人の女性にヘコヘコと頭を下げている場面に遭遇した。完全に体育会系の雰囲気である。


 なんと、シュリーダと呼ばれた彼女が傭兵クランの団長であるらしい。身長180センチ近い、燃えるような赤い髪の毛を無造作に伸ばした豪快な雰囲気の女性だ。


 とりあえず近づかないようにしておこう。そのまま、女性らを避けるように俺たちは移動した。


 歩きながら考える。


「うーん。出現したばかりの迷宮かぁ」

「迷宮です」

「めーきゅー」


 俺と一緒にシロとクロも首をひねるが、君たち何が悩みどころか分かってるのかね?


「いつ迷宮いくです?」

「たのしみー」


 やっぱ行く気満々だったかぁ。俺は行くか行かぬかで迷ってたんだけどな! 2人にとっては行くことは決定で、すぐ行くか明日行くかみたいな部分で悩んでいたらしい。


 あまり実入りは良さそうではないが、できたばかりの迷宮なら踏破も容易かもしれない。


 攻略に乗り出す価値はゼロではないが……。無駄に時間を浪費するだけで終わる可能性だってある。そもそも危険な場所だ、黒髪の自称チーターや傭兵クランの動きも心配だ。


 だいたい、迷宮に潜るとなれば予定が大幅に狂うだろう。まあ、聞いていた情報と違って長閑そうな村だし、滞在しやすそうではある。


「……迷宮行きたいのか?」

「いくです!」

「いく、ぜったい」


 おもちゃを与えられた子供のように、目をキラキラさせているシロとクロ。これは、しばらく滞在することになりそうだな……。


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― 新着の感想 ―
次回話も楽しみにしています‼
迷宮内で食べていける主人公達は、一旦潜れば長期間潜ってられるんだよね。 それにしてもチーター言ってた元日本人っぽいやつが気になる
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