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101話 エピローグ 旅立ち


「シロもクロも、いっぱしの傭兵っぽく見えるな」

「にゃ! トールもかっこいいです!」

「よーへーそーび」


 シロとクロはクルクルと回りながら、自分の装備を俺に見せてくれる。


 出会ったばかりの頃のボロを思えば、ジーンと来てしまうほどにちゃんとした格好だ。元々身に付けていた召使い装備はそのままに、フード付きの外套を羽織っている。


 蜘蛛型の魔獣の糸を使った、純白色の丈夫な外套だ。しかも、裏地に施された魔法陣の刺繍により、浄化の効果が付与されている。買えば相当高価だろう。


 さらに、色々な道具が入った袋を背負い、武器を見えやすい位置に提げている。武器を誇示しているのはしっかり戦えるのだと示し、襲われる確率を下げるためだ。


 獣人は子供でも強い場合があるので、いい装備を身に付けていればこれで十分抑止力になるらしい。


 俺は軽い革製の服に、2人とお揃いの外套だ。父親の遺品を無理矢理着ていた頃とは違い、しっかりと自分の体格にあった服である。これもシロクロと同じように、浄化の魔法陣が刺繍されていた。


 武器は大きめの杖を装備している。魔法を使える子供なんて悪党のいい標的かと思ったけど、それよりも無力であると思われる方がまずいそうだ。


 それに、成長が遅い長命種に見せかけることもできる。そういった種族は外見と戦闘力が合っていないこともあるので、襲われる危険が減るらしい。


「気を付けて行ってらっしゃい」

「いえ、これだけの物を準備してもらっただけで、十分です」

「にゃ! ありがとうです!」

「ありがとー」


 俺たちを心配げに見ているのは、ミレーネだ。この1年で、彼女が本当にいい人というか、お人好しなのは分かっている。


 俺たちが一緒に来てほしいって頼んだら、仕事全部放り出して本当についてきてしまいかねないのだ。


「1年で、教えられることは全部教えました。でも、世界には危険がいっぱいなんです。気を抜かないように」

「はい! 1年間、ありがとうございました」


 そう、俺たちがミレーネに師事して魔法を習うようになって、1年が経過していた。それはつまり、この町の迷宮を攻略して1年ということでもある。


 まあ、俺もシロもクロも外見的には全く成長していないが。竜の力で急成長したシロとクロはともかく、俺は育ち盛りの幼児なんだぞ? なのに、全く育たない。


 ただ、あの日から、俺たちの外見以外は大きく変わっていた。


 まず、住処。


 慣れ親しんだ下水の隠れ家を出て、今はミレーネが用意してくれた一軒家で寝泊まりしている。さほど大きくもない、むしろスラムに近い場所の寂れた家だが、今までよりはどこだってマシなのである。


 そこで暮らしながら迷宮に潜って魔力を成長させつつ、ミレーネに魔法や剣術を教えてもらっているのだ。


 現在、この町は領主不在だが、ジオスが仮の統治者として治めている。元領主のホルム子爵の配下の中で爵位も役職も最も上だったうえ、他の貴族たちはクズか無能しかいないような状態だったのだ。


 そこで、ジオスとミレーネが動いて、一時的にこの町での実権を得たらしい。動いてと言うか、武力にものを言わせたようだが。


 王様に嫌われているというジオスが領主代行なんて許されるのかと思ったが、辺境の小さな町の領主の名前なんぞ王がわざわざ知ることはないから平気らしい。


 その内正式な領主が派遣されてくるらしいが、それももう少し先のことになるという。ジオスたちが報告を遅らせたのもあるが、辺境の町の領主などという旨みの無い役職、やりたい者が少ないのだ。代行がちゃんと仕事をしている内は、中々後任は決まらないだろうとミレーネが話していた。


 そして、俺たちを放っておけないミレーネが色々と世話を焼いてくれて、この1年は修行をしつつ穏やかに過ごすことができたのである。


 今や、俺は高位魔法を暴走させずに使えるし、クロとシロも高位魔法をいくつか覚えた。剣に関しては、そこそこ?


 ジオスが感覚派で、教えるのが絶望的に下手だったのだ。それでもミレーネから基礎は習えたし、一応の扱い方は知れた。


「お金は人前でたくさん出してはいけませんよ?」

「はい」


 装備を揃えてもらっただけではなく、かなりの大金も預かっている。一応、正当な報酬としてもらったものだ。


 俺たちが手に入れた迷宮の羅針盤。あれをしばらくミレーネたちに貸し出したのである。どうやら、羅針盤の導きに従って進めば、各水晶や脱出の転移陣を効果的に回れるらしい。


 一度攻略した俺たちには不要なアイテムだが、まだ攻略できていない傭兵にとっては垂涎の品だ。そのレンタル料がかなりお高かったのである。


 ミレーネたちとしても間に入って傭兵へと貸しを作れるということで、かなり色を付けてくれた。装備品もその一環であるし、贅沢をしなければ数年は普通に暮らせてしまえる額だ。


 まあ、俺たちの場合は食費がとんでもないから、何もしなければ1年くらいで尽きちゃうだろうが。


「アレスさんに出会ったら、よろしく言っておいてください」

「わかりました」


 アレスは、俺たちよりも前にこの町を出ている。というか、数日休んだらすぐに旅立ってしまっていた。


 俺たちもアレスも知らなかったが、人の蘇生には驚きの制約があったのだ。なんと、死んでから3年経ってしまうと、生き返らせることができなくなるらしい。


 これは、ジオスからの情報である。娘が死んだ後、当然ながらジオスは娘の蘇生を願って迷宮を攻略した。攻略法が分かっている、第四階梯の迷宮だ。だが、実績不足で蘇生は叶わず、その代わりに情報を得たのだった。


 人の蘇生には第十階梯の迷宮攻略や、第十階梯魔王の討伐、もしくはそれに相当する実績の積み上げが必要。しかもそれを、魂が輪廻の輪に還ってしまう3年以内に為さなければならないという。


 第十階梯など、おとぎ話の存在だ。確認されたという記録すらない。ジオスは第九階梯迷宮へと潜ったことがあるが、中ボスと思われる魔獣相手に彼の師匠やその仲間の傭兵は全滅し、ジオスも死にかけた過去があった。ジオス曰く、今の自分でも師匠には届いていないという。


 そんな彼が第十階梯に挑むなど、余りにも現実味がない。その絶望こそが、ジオスの心を殺した最大の原因でもあったらしい。


 ジオスから蘇生の情報を知らされたアレスは、大慌てで町を飛び出していったという訳だった。彼には色々と聞きたいことがあったんだけどな……。


 転生勇者なのかどうかということもそうだが、前世で俺に命を救われたと言っていたよな? 命を救った経験なんて、1回しかない。来世で勇者になると言われていた、あの少年だ。


 それが、本当なのか確かめたい。確かめて何があるんだって言われると悩むが、やっぱ気になるし。


 あと、彼と揉める原因となった天竜の核に関しては、俺のチートが影響しているのだろうと思う。魔法料理人は、この世界でもかなりレアな肩書らしい。というかミレーネやジオスでも聞いたことがなかった。


 その能力によって天竜の素材の力が濃縮されたことで、天竜核に匹敵する効果が発揮されたようだ。もしかしたら、核が僅かに欠けたりして、その欠片が混じっていた可能性もある。


「悪魔――トールさん。ありがとうございました」

「カロリナ。もう1人で歩けるのか?」

「はい!」


 カロリナは助かり、目に見えた変化も起こらなかった。どうも、領主に力を吸われたことで竜の力の効果も弱まり、治癒の効果だけが残ったらしい。そのおかげで副作用も抑えられ、カロリナは死なずに済んだのだろう。


 ただ、しばらくは目を覚まさなかったし、半年くらいは車椅子生活だった。それでもリハビリに励み、最近では人の手を借りて歩けるまで回復していたのだ。


 しかし、何故か俺を悪魔さんって呼ぶんだよな。助けた際に、赤い魔力を纏った姿をしていた俺が悪魔に見えたらしいんだが……。


「お元気で」

「気を付けてくださいね!」


 女性2人に、シロとクロが笑顔を向ける。この1年で2人には本当に懐いたのだ。


「にゃ! またくるです!」

「呪いといたらかえってくるー」

「ジオス様の紹介状、使ってくださいね」

「呪いが無事解けるよう、お祈りしています!」

「ああ、いってきます!」


 目指すは北にある小さな町の小迷宮。攻略方法が解明されている、第一階梯迷宮だ。


 旅の目的は3つ。アレスの仲間の蘇生を手助けすること。俺たちの呪いを解いてくれた彼に、恩を返さなくてはならない。


 2つ目は、悪魔に関して情報を集める。目を付けられた可能性がある以上、座して待ってはいられない。


 そして、3つ目はシロとクロの種族に関しての情報を得ること。2人は銀虎と獄狼という稀少種族らしい。領主の執着具合からして、何か秘密があるのだろう。


 今後の身の安全のためにも、正確な情報を知っておきたかった。


「シロ、クロ。冒険に出発だ!」

「はいです!」

「わう!」


ここで1章完結です。

2章の開始は未定ですが、多分早くても来月後半くらいになるかと。

書籍化作業とかがありましてね……。

できるだけ早く再開を目指しますので、少しだけお待ちください。

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― 新着の感想 ―
これからトール達が解く予定の呪いというのは、これまで解呪を目標にしていた魔神の呪いではなく、天竜核のスープを口にした事で変化した体の事だと思います。 あれがある限りトールの喉もそうですが、特にシロ片目…
>俺たちもアレスも知らなかったが、人の蘇生には驚きの制約があったのだ。なんと、死んでから3年経ってしまうと、「生き返す」ことができなくなる可能性があるらしい。 言う分には問題はなさそうだけど文面に書…
とにかく皆んなの呪いが解けて良かった! 新章での新たなる食材・料理に期待してます。
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