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ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~   作者:
本編

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君の誕生に祝福を

 


 俺は非常に機嫌がいい。


 清々しい朝。天気は今日を祝うかのような快晴。


 これから自分が微妙な、非常に微妙な視線に(さら)される未来を知っている。

 同情、哀れみ、気遣い、嘲笑、様々な感情を孕んだ含んだ瞳と言葉を向けられる未来が数刻後に迫っていると知っていて尚、心は晴れやかだ。


 今日はマイエンジェル・最愛の弟ガーネストの誕生日!!!


 おめでとう!!

 そして俺の元へ生まれてきてくれてありがとう!!


 夕刻から夜にかけて本日我が邸・ルクセンブルク公爵邸では大規模な生誕記念パーティーが開かれる。


 ガーネストの16歳の誕生日。

 つまりは彼に爵位を正式に譲ると告げた歳。


 当の本人であるガーネストは爵位を継ぐことは決意したものの、自分が学園を卒業してからでいいのではないかと考えていた。……が、前陛下の前でしっかりと宣言しているし、なによりこういったことははっきりしていた方がいい。

 現に正式に爵位を手放す前に俺に取り入り阻止しようとする動きや、俺かガーネストかどちらにすり寄るのが有利か見定めようとする貴族もいるしね。


 正解としてはどちらにも過度に媚びないのが一番だけど。

 すり寄ろうとして相手を貶すなんていうのは愚策も愚策。


 何故(なぜ)なら俺らはブラコンだからね!!

 異母兄弟だろうと仲良しさ!!


 たまに嫌味のつもりで俺の前でガーネストを持ち上げてくる奴らとかいるんだけどさ、にこやかにうんうんって相槌(あいづち)返してると相手が「アレ?」って顔してたりする。


 ごめんね。劣等感刺激して悔しがらせたかったんだろうけど、弟を褒められて上機嫌だから。

 そもそも爵位要らないし。全部終わったら隠居して、スローライフなんてのもいいかも知れない。




 夕刻も近づき、小箱を手にガーネストのもとを訪れた。


「お誕生日おめでとう、ガーネスト」


 既に何度も口にした言葉が自然と口をつく。

 本日の主役は鏡の前で支度を整えられていた。髪を梳かれている途中にも関わらず、立ち上がろうとしてくれた彼を手で制し、鏡台の前へと歩み寄る。


 きらきらと光を反射して輝く見事な金髪が眩しい。

 しっかりとした頼りがいのある体躯に、長い手足。男らしく整った華のある美しい顔立ち。相手を射抜くガーネットによく似た灼熱の瞳が男らしさに拍車をかけている。

 白系の装いも多い彼だが、本日の意匠は黒。当主としての威厳を出す為かいつもよりシックで大人びた印象の服に身を包んだガーネストは、最近とみに装備しだした大人の色気が半端ない。


 つまりは……俺の弟、恰好いい!!


 そしてダークカラー、一辺倒(いっぺんとう)のお兄ちゃんと違って何色でもよく似合うねー。


「誕生日プレゼントだよ」


 手にした小箱を差し出せば、一瞬大きくなった瞳がついで綻んだ。


「ありがとうございます!」


 嬉しそうに受け取る弟の可愛いこと、可愛いこと。

 なんでこんな素直なの?男前イケメンなのにこんな可愛くていいのか!

 うん、きっといい。俺の弟妹は幾つになっても天使だから。

 自問自答の末に自己完結してみた。


 小箱の中身はガーネットのブローチとエメラルドのカフス。

 勿論(もちろん)、最近よく見ていた偽物ではなく本物だ。

 ガーネストの瞳の色と同じ深紅のガーネットは思わず眼を惹く見事な大きさの一粒石だ。宝石としては安価なガーネットなので、公爵家としての格を保つ為に石の質と装飾にも拘ってみた。繊細な金細工の台座のモチーフは炎。透かしの入った細かな装飾に職人技が光ります。


 エメラルドのカフスはシンプルかつ深い翠。ずばり、カトリーナ嬢の瞳と同じ色です。


 兄からのプレゼントという名目なら身に着けやすいかと思ってさ。

 余計なお世話?

 ウチの子はいい子だからそんなことは言いません。


 カトリーナ嬢も良い子だし、兄としてもお嫁さんに大歓迎。

 服を選ばないデザインだから普段使いとしても是非使ってね。

 お互いまだ告白とかはしてないみたいだけど、どうみても両想いだから他の装飾品は自分でどうぞー。


「綺麗ですね」


 翠のエメラルドを指先で撫でながら呟く声が甘いこと。

 もういっそ告白してしまえ!

 ゲームの俺様と違ってわりと奥手な弟に、心の中で呟いた。


 や、だって……これだけの優良物件よ?

 爵位を正式に継いだら奥方の座を狙った令嬢たちのバトルが激化するのは目に見えてるし、わりと本気でそう思ってる。ガーネストだけでなくカトリーナ嬢も競争率高いだろうし。



 ちなみにベアトリクスにも先程プレゼントを渡してきた。誕生日じゃなくったって、プレゼントをあげちゃダメな理由などない!


 今日のドレスは以前アイリーンが見立てて貰った大人っぽいデザインのドレス。夜のお姉さん風を危惧していたが、さすがにセンスはよくベアトリクスによく似合っていた。ウチの子は何着ても可愛いけど。

 色は紫でVネックのネックラインと大きく開いた背中の編み上げが大人っぽい。

 全体的にシンプルでセクシーな印象だが、カラーの紫は上品な色合いでミカドシルクを使用した高級感あふれる光沢と共にエレガントな仕上がりを見せていた。

 デコルテが大きく開いてるから、ダイアからのプレゼントのダイアモンドのネックレスも映えそう。


 俺が渡したプレゼントは髪飾り。

 アイリーンが見立てたドレスは事前に見せられたし、ダイアのネックレスの存在も知っていたから。邪魔にならず、かつ似合いそうな装飾品にしてみた。

 紫を主とした蝶の形の髪飾りだ。(はね)の部分は蒼から紫にかけてのグラデーションで、細い金の鎖が幾筋か連なり、その先端に煌めくダイアモンドが動くたびにしゃらりと揺れる。

 大喜びで受け取って髪に添えて見せてくれたし、気に入ってくれたようで良かった、良かった。



 華やかな宴が始まった。


 プレゼントした品を身に着け、堂々と客人たちの前に立つガーネストは立派な当主そのものだ。兄の欲目とか抜きにして素直にそう思う。

 綺麗に結い上げた髪にしゃらりと揺れる蝶の髪飾りをつけたベアトリクスも立派なレディーだ。赤い顔で固まったダイアに、彼が幼い頃ベアトリクスに一目ぼれした瞬間を思い出した。


「良かったのか?」


勿論(もちろん)


 問いかけるティハルトには簡潔に答えてグラスのシャンパンを傾ける。多忙な王である彼まで城を抜け出し顔を出してくれた。


「これから、お前はどうするつもりだ?」


「んー、秘密」


 ワザとらしく視線を流して、軽く答える。


 ゲームのエンディングまでベアトリクスを悪役令嬢にはさせず、かつ平和な結末を迎えさせるよう頑張る!……とか言えないしね。


 そしてその後は隠居してスローライフもいいな!……とかはもっと言えない。

 言ったらこの場で普通に頭叩かれそうな気がする。お口チャック。


 やりたいこと……前世の知識を生かして新たな商売とかも考えてるんだけどね。まだ未定だし。


 取り敢えずいまは、


「ガーネストの誕生を祝って乾杯」


 グラスを差し出せば、やれやれといった雰囲気でグラスを合わせてくれる親友。


 色々気を遣われてますけど、俺的にはなにも問題ナッシングでーす!!

 ビバッ!脱公爵家当主代理!!

 これで晴れて自由の身だ!!


 晴れ晴れとした気持ちでシャンパンを呷った。



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