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ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~   作者:
本編

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52/210

№1はアイリーンさんに決定です



「諦めろ」


 ポン、と肩を叩かれてティハルトに諦観(ていかん)の念で告げられ、アイリーンの部屋へと連れられるベアトリクスを成す(すべ)なく見送った。

 まぁ、本気で妙な展開になると思ってるわけではないのだが……。


 微妙に()る瀬ない気持ちを抱えたまま、仕方ないのでティハルトと小難しい話を再開する。

 そしてアレクサンドラたちを見送って合流したガーネストたちを交え、再び先程の話をした。


 対策を打っていないわけではない。

 バカな連中が出てくることは当初から予想済だし、怪しい連中の洗い出しだって随分前から手をつけている。だけど表に出ていない野心を隠したバカだっていくらでも居るわけで……。

 ましてや計画性のないバカが一番怖い。


 慎重にことを進められるのも問題だが、突発的にバカを起こされると前兆すらないからな。

 なにせヒロインたちは可愛いし、野心抜きにしても彼女たちに手を出そうとする男達だって居ても可笑しくない。


 正直、巻き込みたくはないのだが……。

 学園という大人があまり介入出来ない空間となると、ガーネストたちの手を借りるのが一番だ。


「巻き込むのは気は引けるけど、サフィア様にも事情を話してそれとなく様子を見て貰った方がいいかな」


「そうですね。僕らも気をつけますが、学年が違うと限界がありますし」


 なにせクラスメイトだしね。

 そしてなにより信頼出来る、普段の行いの賜物(たまもの)ですね。


「折を見てお願いしよう。あと本人たちにも自衛を促した方がいいね」


「兄上、サロンを予約しましょうか?人目のある場所で話をする訳にも行きませんし」


「ああ、有難う」


 出来る弟を持ってお兄ちゃんは倖せです。




「俺も一度、接触してみたいのだがな」


 腕を組んだティハルトは難しい顔だ。


「さすがに城に呼ぶわけにもいかないですしね」


 苦笑いをするダイアは本当にティハルトそっくりで、ベアトリクスの先程までの反応も頷ける。


「君が今彼女たちと接触したら周囲の反応を煽るだけだしね」


 だからこれまでだって控えてたわけだし。

 パーティーや茶会で自然に接触できる時を待つしかないか……と、いってもそれはそれで周囲の目が邪魔なんだけど。


「そうだな。最終手段としては俺がお前の家に出向く」


 断定形だし、別にいいけどさ……。

 ベアトリクスは彼女たちと仲が良いし、公の場で会うより彼女たちをウチに招いてティハルトがお忍びで訪れるのが一番穏便ちゃ穏便だろうけど。


 友達の家に遊びに来て陛下とご対面とか、どんなドッキリなの?

 同情すると共に、まずは家主に了解取ろうぜ?と思う俺が居た。


「ですがその訪問も危険ですよね。同じように彼女たちを友人として招いて接触しようと考える貴族たちも居るでしょうし」


 そうなの。ガーネストの言う通り正にそれ。

 学園外の人間が手っ取り早く彼女たちと接触する絶好のチャンスだよねー。だからって彼女らに四六時中見張りをつける……てのも現実的じゃないし。


「護衛は居るんだろうがな」


「それがどの程度の腕が立つか、だよね」


 ぶっちゃけ、ヒロインたちのお家の護衛にウチの影たちみたいな能力を期待するのは不毛だ。


 はぁー。

 頭が痛い……。




 憂鬱な雰囲気の俺達とは対照的に、ルンルンな雰囲気で帰ってきた女性陣。ルンルンなのは主にアイリーンだけど。


「あら暗い顔。美形が台無しよ?」


「君は随分とご機嫌だね」


 席に着いた彼女たちにメイドを呼ぶまでもなく、部屋に控えていた従者が音もなく華やかなポットを差し出した。鮮やかな花弁と紅い実は恐らくローズヒップティー。

 そしてお疲れ気味の俺達の前にはカモミールティーが提供された。


 心を安らかに、ってコトですかね?

 この世界の従者のスペックが高い件……。


 メイドも実は闘えたりすんのかな?

 アニメとかだとよくあるよね、戦闘メイド。

 ……リリアはともかく、メイド長とかなんか強そう。


 気遣いの籠った茶を有り難く頂きながら、つい思考が逸れた。


「ふふっ、内緒のハナシとドレスの相談をしてたの」


「ドレス?」


「アイリーン様が、ドレスを見立てて下さったんです」


 アイリーンが見立てたドレス……。


 大丈夫だよね??

 思わず男性陣が二人を交互に見た。


「失礼ねっ!ちゃんとベアトリクスちゃんに似合うものを選んだわよ!」


 憤慨するアイリーンには悪いが、思わず夜のお姉さん的なアレを思い浮かべてしまったのは仕方がない事だと思う。まぁ、彼女が着るともれなくそんな雰囲気になるってだけで、センスがいいのは知ってるけど。


「出来上がったら贈るから楽しみにしててね」


「有難う御座います!」


 嬉しそうな反応からしてベアトリクス本人も気にいったのだろう。兄として礼を述べる。


「ちょっぴり大人っぽいドレスだから、ダイア様も楽しみにしてらしてね」


「アイリーン様っっ!?」


 艶っぽい流し目を送りながら揶揄(からか)うようにダイアに告げるアイリーンにベアトリクスは大慌てだ。

 ダイアも白い頬を薄く色づかせている。

 もっとも、義姉のお色気満点な仕草にではなく、その発言内容にだろうけど。


 それからベアトリクスに来週にでもサフィアやリリー嬢たちをサロンへ招待を頼んだ。同じクラスの彼女が一番適任だし、放課後にそのままサロンで落ち合う手筈になった。


「わかりました」


 心持ち、固い表情で頷いたベアトリクスの手にダイアがそっと手を重ねる。


「ベアトリクス」


 零れた声は真摯で、なのに砂糖菓子のように甘い。


「大丈夫、君のことは僕が必ず守るよ」


「……ダイア様っ」


 王子様フェイスで告げるダイアとうるうるっっと瞳を潤ませるベアトリクス。

 少女漫画のように背後に薔薇が見えるのは幻覚なのかなんなのか。


 だが、残念だったなダイア!!

 それさっき俺が既にやりましたーー!!(ドヤァ)


 だけど兄がやるのと好きな相手がやるのは違うらしく、ベアトリクスの乙女な反応にお兄ちゃんは心が擦り切れそうです。

 隣のガーネストもちょっと憮然として違う方向見てた。

 困るよね、目の前でイチャつかれると。


 そしてアイリーンさん、めっちゃ楽しそうですね。

 あれですよね?若い二人の恋模様と俺達の反応含めて全てを楽しんでらっしゃいますよね。知ってる。



「そう言えば、アレク様はどうするの?彼をお相手に狙ってる連中も居るかも知れない以上、あの方にもお話をしておいた方がいいのではなくて?」


「確かにな。ジャウハラの王子になにかあってからでは遅いからな。それに……」


 眉間に皺を寄せて言葉を区切ったティハルトの言いたいことは俺にもわかった。


「権力やアンジェスの再興自体には興味はなくとも、彼女たちには興味を示しそうだ」


「美少女、って噂だものね」


 絶対口説く。

 賭けてもいい、多分みんなそっちに賭けるから賭けになんないけど。


「一応、彼も呼んだ方がいいか。ガーネスト、ダイア、頼んでいいかい?」


 そして頼まれた二人はあからさまに消沈していた。


 お疲れですね、苦手なんですね。

 わかります、俺もだよ。


「気は乗りませんが、わかりました……」


 引き受ける声も元気がない。


「なんなんですか、アイツ。話し中もメイドが側に寄る度に手を出すし……」


「君たちが来る前からそうだよ。挨拶するなり延々と義姉上を褒めたたえるわメイドを口説くわ、挙句の果てにはベアトリクスにまで……」


 おー、見事に黒い雲背負ってるし。


「お前は全く動じなかったけどな」


 そう呟くティハルトの声音はどこか憮然としていた。

 最愛の妻を眼前で口説かれるのは良い気がしないだろうし、それをさらりと受ける妻にも思うところがあるのだろう。


「しつこい男は嫌いだけど、アレク様のアレは挨拶みたいなものでしょう?本気で口説かれるなら面倒だけど、それに褒め言葉自体は悪い気しないもの」


 さらりと流す様は経験(ゆえ)か。


「男性からの賛辞なんて聞き飽きているだろう?」


「あら?賛辞はいつでも歓迎だわ。女は褒められて美しくなるのよ?なんならカイザー様も褒めてくれて宜しくってよ?」


 豊かな髪を耳に掻き上げながら嫣然(えんぜん)と見つめられて肩を竦めた。


勿論(もちろん)、君のことはいつも美しいと思っているよ」


 それは本心だ。

 ふふっっと笑って「有難う」と告げた彼女は満足げに笑った。


「それに……」


 美しいネイルを施した指先が、夫の頬を艶めかしく撫でる。


「賛辞は幾らでも大歓迎だけど、ティハルト以外に(なび)いてあげるつもりなんてないもの」


 紫紺の瞳でダイアモンドの瞳を覗きこんだアイリーンはティハルトの耳元で囁くようにそう告げた。


「それでも面白くないものは面白くない」


「あら、嫉妬?」


 平坦な声音に、喜色を宿した声音が返される。


「素敵ね。愛されてる証拠だわ」


 そう言ってアイリーンは艶やかな華のように赤い唇を綻ばせた。


 だーかーらーさー。

 なんでキミたち、人前で堂々とイチャつくの?

 

 少年少女が真っ赤になって目ぇ逸らしてんじゃん。

 自重して、お願いだから。


 本当に少年少女の育成に悪いお姉様である。





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