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ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~   作者:
本編

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転生メイドVS転生ヒロイン、一人実況に忙しい俺を添えて

(前半のみリリー視点)



 あれから、ベアトリクスちゃんのお家に遊びに行く約束を取り付けた。

 そして待ちに待った約束の日。


「お、大きいですね…」

 

 豪邸を見上げるナディアちゃんの呆然とした声に全力で同意した。

 品がありつつも、悠然とした佇まいを醸し出すザ・豪邸!!


 天下の公爵家を前に貴族入りして一年足らずの元庶民な私たちが完全に怯んでいると、ベアトリクスちゃんがにこやかに出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、お二人とも。わぁ!ナディア様のドレスのお色、とても綺麗なミントブルーですのね。リリー様もふわふわとしたレースがとても可愛らしいですわ。制服姿以外は初めて拝見致しましたけど、とてもお似合いです」


 天使、 降 ・ 臨 !!


「有難う御座います。でもベアトリクス様の方がずっと素敵ですっ!まるで絵本の中のお姫様みたいっ!!」


 うっとりとベアトリクスちゃんを見るナディアちゃんの発言に、またも全力で同意しつつコクコクと首を振った。


 華やかな金髪にお人形みたいに綺麗な顔。

 光沢も美しいラベンダー色のドレスを身に纏った姿は正しくお姫様だった。それか天使。


「ふふっ、嬉しいです。このドレス、お兄様が見立てて下さったんです」


 嬉しさが隠しきれないというように頬を染めてはにかむ姿に、ぐふっ!と思わず胸を押さえると二人から「具合が悪いのですか?」と心配された。


 いえ、美少女の過剰供給なだけです……。



 天気が良いから、と案内されたのは庭園だった。


 咲き誇る花々を愛でる美少女二人、そしてそんな二人(私も入れて三人?)を愛でながらなにやら悶えてるメイド発見。

 あれが(くだん)のメイドだろう。


「悪役令嬢とヒロインのコラボっ!!と、尊いっ!……けどまさかのヒロインが二人……?!いや、でも萌えの二乗だし。でもでもでもっ、ウチのベアトリクス様が一番可愛いっっ!!」


 なにやらぶつぶつ呟いてるメイド。

 うん、確実にあの人だ。


 そして花に夢中になってるナディアちゃんはともかく、なんで他の使用人さんたちスルーなの?!あの異様な様子見えてるよね?!

 ちょっと恐怖を感じつつ見つめていると、不意に瞳があった。


 容姿はミルクティーベージュのセミロングの髪に、黙っていれば一見清楚な美少女風のメイド。さっきまでデレデレに崩れていた表情を引き締めた彼女は、パッチリとした茶色い瞳を尖らせて鋭く私を睨みつけた。


 ……そして他のメイドに強制連行されていった。



「もうすぐカイザーお兄様も一息つかれる頃だと思うし、折角(せっかく)だからお茶にお呼びしても良いかしら?」


 庭園や珍しい異国の植物も揃った温室を案内してもらい、中庭の一角に用意されたお茶の席でベアトリクスちゃんの提案に前のめりで食いついた。


「ぜひっ!!」


 ちなみにガーネスト様は外出中らしい……。残念。




「我が邸へようこそ、お嬢様方」


 可愛い妹のお茶の誘いを断るわけもなく、仕事を一段落してお茶の席へ。

 貴族の屋敷への訪問は慣れていないのか緊張しきってる二人の手を恭しく掬い上げ、手の甲へ唇を寄せ気障(キザ)ったらしく挨拶をしたのはちょっとした出来心だ。

 唇は寸止めだし、淑女への挨拶としては別段可笑しなことはない。


 相変わらず俺を攻略対象者と思ってるリリー嬢へ、本当にちょっとした悪戯(イタズラ)心が働いただけだ……。


 だからリリアそんな鬼の形相で見ないでっ!?

 ごめんって!!


 席について談笑をはじめてからもリリアの粘着質な視線は離れず、さすがにナディア嬢が訝しがりはじめた。じぃぃとこっちを睨むメイドとか……異様すぎるもんね。


 実際、俺も不思議に思ってた。

 もっとも俺の場合はリリアの視線の意味でなく、なんでリリアが強制退場させられてないのかをだけど。(実は既に一回されてます)


「あ、あの?」


 ちらちらとリリアを気にするナディア嬢に「ああ」とベアトリクスがリリアを手招く。


「こちらはメイドのリリアですわ。先日お話ししたメイドです。リリー様が興味がおありだったようなので今日は同席させましたの」


「リリアと申します」


 リリアが(たお)やかに腰を折る。


 うん、でも前後の表情が全然取り繕えてないからね?

 ほぼ睨む勢いで俺やリリー嬢見てたから。今もちょっと険しいし……。


「興味があるっていうのは?」


「なんでもリリー様は“普段あまり聞かない言葉を使ったり、人と違う反応をしたりする方”を探してらっしゃるそうですわ」


「えっっ?!!ベアトリクス様っ?!!なんでそこで私を紹介するんですかっ??そんな言動してませんけどっ?!!」


 ぎょっとした顔でベアトリクスの肩を掴むリリア。

 いやいや、してるからね?


 そしてリリー嬢……恐らく転生者がベアトリクスの周囲に居ると疑ったんだろうけど……もうちょっと他に聞き方なかった?


 リリー嬢の目的を悟った俺は、念のため心の声を聴く感度を上げた。

 うら若い乙女の心情を覗くのはやや気が咎めるが、背に腹は代えられない。


 ……そしてその行動をすぐに後悔することになる。



「でもどうしてリリー様はそんな方を探してるんですか?」


 もっともなナディア嬢の質問に、リリー嬢は明らかに焦った様子で狼狽(うろた)える。


 言い訳、考えてなかったんだね?


「え、えっと……それはっ……」


『どうしようっ?なんて答えればいいのっ?……ええぃ、もう当たって砕けろだわ!そうよ、このメイド以外にもカイザー様やベアトリクスちゃんがゲームを知ってるか知るいい機会だもの。反応を見てみましょう』


「あのっ、“転生者”って知ってますか?」


 両の拳を握りしめ、決死の表情で問いかけるリリー嬢。


「「「てんせいしゃ?」」」


 首を傾げる俺、ベアトリクス、ナディア嬢。


「し、……知らないですよ?」


 動揺を露わにしながら、明後日の方を見てピューと口笛を吹く真似をするリリア。


 挙動不審に汗を滴らせ、さらにはピューって口で言ってるよ。

 すげぇ、こんな典型的な誤魔化(ごまか)し方マンガ以外で初めて見た!と、いっそ謎の感動を覚えた。だって現実にやる奴いると思わんかった!


『まさかのヒロインが転生者っ?!ま、まずくないっ?!ゲームの粗筋を知ってるプレーヤーなら攻略も断然有利だもの。それにストーリー通りに話を進める為に、悪役令嬢を嵌める転生ヒロインってテンプレよねっ??』


「私、貴女と二人だけで話したいことがあって」


 席を立ってリリアへと近づくリリー嬢に、当のリリアは一歩後ずさる。


「な、なんですか?」


 警戒を露わにするリリアに一歩近づき、背伸びをしたリリー嬢が耳元で彼女にだけ聞こえるようになにかを囁いた。


 その途端…………弾かれるように身を剥がしたリリアに思いっきり(にら)まれた。


ヒロイン(この子)思いっきりカイザー様狙いじゃないですかっ!!!あれだけ学生は誘惑しちゃ駄目ですよって言ったのにっっ!!!』


 してませんけどっ?!

 めちゃくちゃ冤罪かけられた……!


 聞こえなかったが恐らく「ゲーム(この世界)のこととカイザー様のことを聞きたい」とでも言われたのだろう。


 そもそも何故か二人に隠れキャラ扱いされてるけど、俺は多分ただのモブです!!



「ちょっ?」


 すごい形相のリリアはいきなり俺の腕をホールドする形で抱き着いてきた。驚きの声をあげる俺を無視し、その体勢のままリリー嬢を見据えて鋭い視線で言い切る。


「カイザー様は渡しませんっ!!」


 ……なんでそうなった?


「……っ」


 睨まれたリリー嬢が息を呑む。


『このメイド、カイザー様が好きなのね?』


 ……もう一度言わせて、なんでそうなった?



「貴女を敵に回してでも、私は絶対諦めないっ!」


『いくら可愛いヒロインだからってカイザー様は渡さないんだから。第一、カイザー様ルートなんてベアトリクス様の悪役令嬢フラグがやばやばじゃない!どれだけ可愛くてもこの子は敵、ベアトリクス様を脅かすエネミーよ!』


 だからカイザールートとかねーし。

 そして多分この子はキミと同じくベアトリクス大好きだよ。


「待ってください、私たち分かり合えると思うんです」


『転生者同士協力したいのにっ……。でも確かにカイザー様に近づかないって選択肢はないのよね。これが他の攻略者なら諦めるのは簡単だけど、裏隠しルートはストーリーが全くわからないから、攻略を進めないことがバッドエンドに繋がる可能性だってあるし……』


 いやだから、カイザールートがある前提で話を進めるのをまず止めてくれませんか?


「ならカイザー様のことは諦めて下さい。それを約束してくれたら話を聞きます。それが出来ないなら、たとえ世界を敵に回したって私は貴女と闘いますっ!!!」


『ヒロインがこの世界の主人公だとしても、私の世界の中心はベアトリクス様だわ。この子があくまでもカイザー様ルートを狙うのなら、私はベアトリクス様を守れるたった一人の転生者としてこの乙女ゲームの世界に抗って見せる!!』


 心意気は立派だと思う。

 だーけーど、話の中心に俺を据えるのマジ止めて!


 あと、転生者って実は結構いっぱい居るよ?

 現在この屋敷の敷地内だけで俺、リリア、リリー嬢、ソラの四人も居るし。

 しかも王妃様も転生者だし……。


「それはっ……出来ません!」


『そこまでカイザー様の事を愛してるなんて……っ。でも私だって諦める訳にはいかないのよ。なんていったってこの世界の運命が掛かってるかも知れないんだから!』


 いやいやいや、リリアがLOVEなのはベアトリクスだから。

 俺に対して恋愛感情はないし、むしろこの状況……雇用主として舐められまくってるよね?確実に。

 そして俺との恋愛に運命なんて大層なモノは掛かっていない。



「わぁ……」


「す、すごい展開ですっ」


 そしてベアトリクスとナディア嬢さ?お菓子片手にきゃきゃしながらこっち見ないで。

 違うから、コレ俺を廻った三角関係でもなんでもないから。


 誰か助けて……!


 そんな切実な心の叫びが通じたのか、俺は休憩時間の終了に迎えに来たリフに救出された。


 心の友よっ!!

 ありがとう、本当にありがとうっ!!



 そしてリリアはメイド長に回収され反省部屋に。お約束ですね。




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