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ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~   作者:
本編

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美少女の手作り=プライスレス!!



「今日はよろしくお願いします」


 厨房にて、頭を下げる美少女二人。

 その背後には料理が出来ないメイドと、すっかりお菓子担当の認識の下にベアトリクスに引っ張り出された弟の従者が居る。


 バレンタインのお菓子教室、ルクセンブルク公爵邸にて開催である。

 講師は俺、カイザー・フォン・ルクセンブルクにてお送りします。


 カトリーナ嬢の訪問がばれないように、ガーネストは公爵見習いの勉強と銘打ってリフが連れ出しております。そして代わりにとリアンが俺の従者についた設定。


 別に今日は生クリーム泡立てないし、リアンの異能は必須ではないんだが……。


 ベアトリクスはお菓子作り=リアンの異能が必要!と思い込んでる様子で、つまりは完全なる巻き込まれである。


 すまん、リアン……美少女に囲まれて役得と思って諦めてくれ。


 背中を向け合って、お互いのエプロンの紐を結び合う美少女たち。

 お菓子作りのため今日はシンプルなワンピース姿で、長い髪も三つ編みに編み込んでさらにはエプロン!!初体験にきゃっきゃと(はしゃ)ぐ少女たちは超絶可愛い!!


「今日はレアチーズケーキとクッキーを作ろうと思う」


「「はい」」


 手を洗い、本日作るメニューを発表すれば緊張の混じった声で二人が応える。


 一応事前に希望を聞いたところ、メニューは別にチョコでなくてもOKということだったのでこれにしてみた。

 なにせベアトリクスもカトリーナ嬢も生粋(きっすい)の公爵令嬢。料理なんてしたこともなければ、その実力も未知数だからだ。怪我のリスクのある火や包丁はなるべく避けたい。


 前世の次女やリリアレベルでないことを祈るっ……!!


「まずは、このビスケットを砕いてくれるかな?手を叩かないよう気をつけて」


 袋にビスケットをつめ、めん棒で軽く叩いて見せる。


「砕いちゃうんですか?」


「うん、チーズケーキの下に敷き詰めるからね。細かすぎず粗すぎずぐらいがいいかな」


 二人が交代でビスケットを砕く間、俺はバターを溶かし、砕き終わったビスケットと混ぜ合わせる。


「型はどれがいいかな?」


 ホールのもの、一人用の丸型やハート型、用意した幾つかの型を見せれば二人とも小振りなハート型を選んだ。

 そこにクッキングシート的な物を敷き、先程のビスケット生地を薄く敷き詰める。

 ここでリアンの異能登場。冷却で冷やし固めて貰います。


 お次にボウルにクリームチーズを入れ、クリーム状に練ったら、砂糖やヨーグルト、レモン果汁を順番に入れつつ、そのつど混ぜ続ける。


「手が重たくなってきましたわっ……」


「ベアトリクス様、交代致しますわ。お菓子作りってこんなに大変ですのね」


 ぷらぷらと疲れた手を振る二人にボウルを押さえているリアンが交代を申し出るも、自分達で頑張りたいのか懸命に混ぜ続ける美少女たち。

 下がってきた袖を上げあいっこしてる姿が大変微笑ましい。


 そんな少年少女を眺めつつ、火気担当の俺は手早くゼラチンを溶かします。

 

 そしてリリアさんはそんな皆を温かく見守っています。

 さっきから『美少女、萌えっ!!』の心の叫びが煩いです。


 だけど同感なのが悔しいっ……!


 溶かしたゼラチンを加え混ぜ、さらに生クリームも加えてゴムベラでざっくり混ぜたら生地完成!


 やや危なっかしい手つきで慎重に型に流し込むベアトリクス、対するカトリーナ嬢は危なげない手つきだった。

 型をトントンとして均し、これで冷やせば完成。


 二人が姉さんやリリアみたいな壊滅的な料理下手じゃなくて本当に良かったっ……!!



 レアチーズケーキを冷やしている間にクッキーの作成へ。

 ……と、いっても。


「この生地を好きな形に型抜きしたり、具材を混ぜ込んで成型しようか」


 生地は既にシェフが用意済みだし、整形した後の焼きの作業もシェフですが。


「沢山ありますのね」


「カトリーナ様見て、この型可愛らしいですわっ!」


 並んだ沢山の抜き型や、アーモンド・チョコチップ・刻んだドライフルーツ・アラザンなどのトッピングにテンション爆上がりの美少女二人。


「リアンも折角(せっかく)だから作ってごらん」


 冷やす作業はもうないし、見ているだけも暇だろうと声を掛ければ、生地を手にしたリアンもちょっと楽しそうだ。

 わかる、工作みたいで楽しいよね。


 もう一人、リリアにも視線を向ければ無言で首を横に振られた。

 正直、触れたお菓子を炭と激辛に変化させる謎の力を有する彼女に触れさせたくはないが、一人だけ関わらせないのも可哀想かと思ったのだが……自主的に辞退された。


 自分を知ってるって素晴らしい!!


「わたしは美少女の萌え姿を見られるだけで満足です」


 きりっと告げる美少女メイド。


 うん、珍しく褒めたのに(心の中で)全てを台無しにするのが安定のキミだよね!!


 三人が楽しく工作している間に、イチゴと砂糖を煮詰める。

 なにをしているかというと、ジャムの作成です。レアチーズケーキだけだと華やかさに欠けるかと思って、小振りな瓶に詰めたジャムでも添えようかと思って。


 ジャムはめっちゃ熱くなるからね。跳ねでもしたら火傷必至だ。

 (ゆえ)に俺がちゃちゃっと作成。


「お兄様っ、見てください!可愛いでしょう?」


 ハート型にドライフルーツを華やかに盛り付けたクッキーを、得意気に見せてくるベアトリクス。


「可愛らしいね。フルーツも沢山で美味しそうだ。生地にジャムやココアを混ぜて色を変えても可愛いと思うよ」


「どのくらい混ぜ込めば宜しいのですか?」


折角(せっかく)だからお兄様も一緒に作りましょう」


 可愛い妹に誘われたのなら乗らねばなるまい。


 ということで……俺もクッキー作り参戦!!


 ベアトリクスとカトリーナ嬢は焼きあがった後にもアイシング等を用意してあるが、俺とリアンは一足先に仕事へと戻る。

 なのでアイシングは女子だけ(付き添いがリリアだけでは不安なので他のメイドにも声掛け済)。


 リアンはシンプルにチョコチップいっぱいのカントリークッキーを作っている。

 あのザクザク感、美味しいよねー。


 少し悩み、俺はアイスボックスクッキーを作ることにした。

 まずは定番の市松模様の。生地にココアを練り込み茶色の生地を作成し、無地の生地とココア生地を細長い四角に整形したら、それを4つ重ねて整形する。


 もうひとつは少し変形で。

 生地にイチゴジャムを少量混ぜ込み、ピンクの生地を作成する。角の丸い三角をちょっと変形したような形を一つに小さめの楕円形を四つ。先程のココア生地でも同様のものを作成する。

 無地の生地にピンクとココア生地をそれぞれ配置し、麺棒で伸ばしたピンクとココア生地でそれらを包んでころころと転がせば……ピンクと茶色の筒形が完成ー。


 いつの間にかベアトリクスたちが、自分の手を止めて俺の手元を覗きこんでいた。


「それはなにをやってらしゃいますの?」


 興味津々で問いかけてくる妹たちに、刃物を使うから少しだけ離れてと告げる。


 まずは市松模様。

 包丁を入れれば、金太郎飴の要領で茶色と白の市松模様が等間隔で出来上がる。

 続いて筒形に包丁を入れれば、出てきた模様は…………。


「可愛いっ!茶色とピンクの肉球ですわ!」


「同じ模様がいくつも同時に」


「すごいです!」


「……カイザー様、女子力高っ!!」


 ピンクと茶色の肉球です!

 バレンタインの定番としてはここはハートなのかも知れんが、ハートは俺の中のなにかが許さなかった。


 そしてリリア(うるさ)い。

 家事に関しては確実にキミより女子力高いですよーだっ!!



 量が量なので(熱中する俺達にシェフが途中生地を追加してくれた)焼きの作業は数回に亘って行われています。

 そして第一段で入れたクッキーが焼き上がり、甘い香りが辺りに広がる。


「はい、ベアトリクス」


 焼きたてを味わうのは手作りならではの醍醐味(だいごみ)、と一枚手に取ってベアトリクスの口元へ。ぱくりと開いた小さな口がサクリと軽快な音を漏らす。


「美味しい。サクサクですわ」


 口元を手で押さえて瞳をキラキラさせる妹に微笑んで、なにも考えずにもう一枚手に取って今度はカトリーナ嬢へ。


「カトリーナ嬢もどうぞ。少し熱いかも知れないので気を付けて下さいね」


 ……が、ベアトリクスとは違い開かれない唇。


「……カイザーお兄様」


 ジト目な妹と真っ赤になったカトリーナ嬢の姿がそこにはあった。


「ご、ごめんっ!?鉄板は熱いから危ないと思ってついっ……」


 完全なる無意識でした。

 疚しい気持ちは一切なしに、弟妹にやる感覚で他所(よそ)様のお嬢様に“あーん”をしてしまったっ……。


「い、いえ。頂きます」


 失態に狼狽(うろた)える俺を気遣ってか、真っ赤な顔でパクリと口を開いたカトリーナ嬢は咀嚼(そしゃく)したあと、驚きに目を丸くして「美味しい」と呟いた。


「焼きたてを味わえるのは手作りの特権です」


 粗熱が取れたのも好きだけど、焼きたても好き。つまみ食いっておいしいよねー。


 皿の上にクッキーを並べながら、折角(せっかく)だしとリアンたちにも勧めるも、「いえ、僕は……。ガーネスト様たちに怒られますし」とぷるぷると首を振るので、どうせカトリーナ嬢にもやらかしたことだしと、ふむと一つ頷き手にしたクッキーを彼の口へ突っ込んだ。


「大丈夫、言わなきゃバレないよ?口止め料」


 にっと笑って人差し指を唇に立てる。


 クッキーを詰め込まれたリアンはもごもごしながらも、美少女二人にも今日のことを内密にとお願いされていた。


 それはそれとして……。

 どうして俺はリリアにガン見されているのでしょう?


 無言で向き合うこと(しば)し。


「私にはっ?!私には下さらないんですか?!」


「どうぞ?」


「嫌ですよ。私にもあーんして下さいよっ!!美形にあーんして貰える機会なんて滅多にないのにっ!!」


 いや、だって……リアンは遠慮してたから突っ込んだけど、キミはなにも気にせず手を出せるじゃんと思って皿を差し出すも、まさかのあーんを要求された。


 根負けして差し出したクッキーをパクリと(くわ)えて、倖せそうに頬を緩めるリリアさんは見かけだけなら清楚な美少女。

 (ただ)し中身が残念。


 アイシングやラッピングの手筈はメイドに任せ、俺はリアンを伴って仕事へと戻った。



 夕方、カトリーナ嬢が帰る間際に二人が執務室を訪れてくれた。


「少し早いですけど、これを受け取って下さいな。大好きですわ!お兄様!」


「今日は本当に有難う御座いました。すごく楽しかったです」


 満面の笑みでハートにデコ盛りをしたクッキーを手渡してくれるベアトリクスと、丁寧に礼をして可愛らしい装飾がされたクッキーを差し出してくれるカトリーナ嬢。


「私も大好きだよ、有難う。カトリーナ嬢も有難うございます」


 可愛い妹の手作りっ……!!


 感動に打ち震えながらも、今日も俺の微笑みという名のポーカーフェイスは絶好調だ。


 余談だが、勿体(もったい)なさ過ぎて食べられないっ!!と葛藤していたら……、


折角(せっかく)の手作りなんだから駄目にする前に召し上がって下さいね。ベアトリクス様も、皆様にお配りになる前に感想を欲しがられると思いますよ」と綺麗な笑顔を浮かべたリフに問答無用で紅茶を用意された。


 完全に見抜かれてますね……。

 はーい、いただきます。うまうま。



 その後、二人とも無事ダイアとガーネストに渡せたらしい。


 乙女ゲーム開始まであと二か月弱。

 ヒロイン登場前に(すで)に恋が始まってるけど大丈夫なのだろうか??



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― 新着の感想 ―
[一言] こーれはヒロインが付け入る隙なんかありませんね
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