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ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~   作者:
本編

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天使と出会い、ジョブチェンジ

 

 それからどうしたかというと…………。


 めちゃくちゃ『努力』を重ねた。


 何故かは知らん。

 だが、『無能』の判定を受けることはほぼ確実。


 モブキャラな癖に何故にそんなことが確かかというと、


 俺が異能を持たぬ不義の子疑惑のある子だからこそ、弟が公爵の爵位を継ぐことになるからですね。

 そして兄を見下した攻略対象者の弟は傲慢な俺様に、悪役令嬢の妹はわがまま姫になるわけですね。


 ぶっちゃけ、爵位に興味はない。


 いや、以前は興味以前に当然自分が将来担うものって思ってましたよ?

 だけど、前世の記憶を想い出した今となっては爵位?何それ?おいしいの?状態である。

 むしろ面倒くさい。


 まだ見ぬ弟よ、立派に公爵家を継ぐといい!


 爵位に興味はないが……だからといって異能がないことを嘆きながら生きる気もない。


 せっかくのファンタジーな世界なのだから特殊な能力を使ってみたかったという気持ちもなくはないが、元々異能など存在しない世界で生きていた人間だ。


 たとえ『無能』であろうと、カイザー自体のスペックは悪くない。むしろ優秀。

 ないものねだりをしたって意味がない、せっかくのスペックを最大限活かしてやろうじゃねーか!


 …………ところでカイザーって名前ちょっと恥ずかしいな。

 響きは恰好いいけど、“皇帝”って……。

 今は相応しい名だって褒めたたえられてるけど、きっと無能判定下った途端に掌を返したようにバカにされんだろうなぁって幼気(いたいけ)な頃は超憂鬱(ゆううつ)だった。



 なにはともあれ、『無能』を嘆かず生きてく決意をし全力で努力を重ねた。


「先生、あらゆる知識を私に授けて下さい」


 重い書物を何冊も抱え、家庭教師に教えを乞う。


「師匠、私に実戦に活かせる剣技・武術を施して下さい」


 何度土につこうとも、鍛え上げられた巨躯へ立ち向かった日々。



 特別な才能がないのならば、誰よりも努力するしかない。


 それに俺には楽しみがあった。

 自分の役回りにも、この乙女ゲームの世界にも思うところは多々あるが、それはそれ。

 前世からずっと、弟か妹が欲しかったのだ!


 別に前世の兄姉に不満があったわけではない。

 若干(じゃっかん)覆せない力関係があったとはいえ、姉達のことは嫌いではなかった。同士である兄ちゃんはいっつも小遣いもくれて優しかったし、何だかんだで一人歳の離れた末っ子に兄も姉も甘かったし守ってくれた。


 だが、それ(ゆえ)に。


 ずっと憧れていたのだ。

 甘やかし、守れる存在である弟や妹に……!


 そして乙女ゲームの世界の登場人物である弟と妹はめちゃくちゃビジュアルがいい。

 兄の不甲斐なさのせいで、ゲームでは傲慢な俺様かつ悪役なわがまま姫となってしまったまだ見ぬ弟妹。


 だが今ならば間に合う!

 異能を持たずとも立派な兄となり、いずれ生まれてくる弟妹を真っ当に育て上げてみせる!!!


 特に妹。

 弟は傲慢な俺様になろうとも幸せになれる未来が待っているが、悪役令嬢たる妹はそうはいかない。全年齢対象だったため死亡エンドはなかったものの、それでもみすみす不幸にする気は毛頭ない。


 そんな秘めたる決意を胸に、神童の名をほしいままにした。



 そして______訪れた運命の日。


 神殿で下された『無能』の判定。

 その場の誰もが青ざめ、騒然とする中、俺は一人静かな微笑みを浮かべていた。


 そうして物語の通り、本人や付き添いの家族にしか知らされない筈のその異能の判定の結果は世間に広まることとなり_______だけど“カイザー”が物語のようにやさぐれ、落ちこぼれることはなかった。


 ただ、一つだけ。判定を下されるその場に母さんが居なかったことだけは良かったのかも知れないと思う。

 公爵夫人だった母さんは去年亡くなった。母さんと父さんは凄く仲が良かったから、不義の子だなんて噂が出れば酷く悲しんだかも知れない。


 いや……案外儚げな見た目に似合わず豪快な人だったから、ブチ切れたかも知れないけど……。


 正直自分が二人の子じゃないかも知れないっていうのは今でも信じていない。

 だってそれぐらい二人は愛し合っていた。


 現に不義の子の噂に父さんはブチ切れてる。

 お蔭で噂はちょっと下火。さすがに公爵に面と向かって喧嘩を売る奴は少ないってことだ……水面下では消えることはないだろうけど。


 ちなみに俺の顔立ちは父さん似。

 瞳の色とかは違うけど、顔だち、特に目元と口元がよく似てる。


 権力大好きな親戚連中としたら俺が母さんとよその男の子で、公爵の血筋を継いでいないっていうのがベストなんだろうけど、あまりにも似てるから公爵家の血筋を否定出来ずにいる。残念でしたー。


 そうして見事な掌返しを見せた周囲にめげることもなく努力を続けた。



 そしてついに運命の出会いを果たす。


 俺が9歳の頃。


 弟が生まれた。


 誰だ……傲慢な俺様攻略対象者とか言った奴。

 天使だった。


 後妻として公爵家に嫁いだ義理の母。いわゆる、継母(ままはは)は俺を酷く嫌っていたがそんなこたぁ知ったこっちゃない。腹を痛めた自分の子の方が可愛いのは当然だし、他人の子より自分の子を跡継ぎにしたい気持ちはよくわかる。


 手酷い嫌がらせをされたならともかく、生粋のお嬢様である彼女がしてくることは嫌味をいうだけ。


 女系家族で育ったポテンシャルを舐めるなよ。

 そんな可愛い嫌味程度、笑顔でそつなくかわしますとも。


 むしろ俺にとっては義母は天使を遣わしてくれる聖母ですが、何か?


 そんな義母とお揃いの綺麗な金髪と燃えるような紅い瞳。


 名前はガーネスト。

 異能は『炎』。


 天使との運命の邂逅(かいこう)に感極まって危うく「ガーネスト!」と名前を呼びそうになった。


 危ない、危ない。

 俺はまだ天使の名前を聞いてない筈なのに。天使の魅力恐るべし!!



 そして再び運命の出会い。


 俺が10歳の頃。


 妹が生まれた。


 誰だ、悪役令嬢でわがまま姫とか言った奴。

 天使だった。


 はい、可愛いー!

 ガーネストと並べると可愛さ倍増。


 やっぱり綺麗な金髪と透明度の高いシトリンのつぶらな瞳。


 名前はベアトリクス。

 異能は『魅了』。


 またも天使との邂逅(かいこう)に「ベアトリクス!」と名を呼びそうになった。


 危なかった。

 前回の教訓を固く胸に抱いていた筈なのに、こうも容易く陥落させるとは……やるな……。


 はっ!?もしやっ既に異能を習得済みですか?

 俺は既に魅了にかかっているのかも知れない!恐るべし天使!!



 こうして俺は『無能』で空気なモブキャラから


『無能』でブラコン&シスコンなモブキャラへと華麗なジョブチェンジを果たしたのだった。



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