足を向けては寝られない
祝☆満員御礼!!
何が?
もちろん、俺が出店したお店である。
展開が早い?
俺は仕事ができる男だ!!(キリッ)
なんかアレだ……心の中のテンションが日々高くなってる気がする……。
可笑しいな……前世では俺そこまでじゃなかった気がすんだけど。やっぱ普段人前で自分を抑えてる反動ですかね?
もし俺と同じ能力持ってるやつがいたら、俺の外面と内面の差にドン引くんだろうな……きっと。
あ、なんかそんなこと考えてたらちょっと冷静になった。
頭が冷えたところでお店紹介。
店名は『リリアーナ』。
由来は我が家の転生者メイド、リリアさんをもじりました!!
本当はお洒落で小難しい名前とかも色々考えたんだよ?でもさー、俺自身がそういうの苦手で。
前世でもよくハイセンスな洋服屋とかこ洒落た洋菓子屋の店名が、覚えられん以前に「読めん……」ってなって店名知らないまま通い続けた店とかあるしね。
なのでシンプルに!
もし由来聞かれてもマカロンが彼女のアイデアなのでって言えるし、転生者バレ対策にもなる。
俺は保身に走る男です。
「大盛況ですね。早くも常連がつきそうです」
目の前でにこやかに笑うのはこげ茶の髪と瞳の人当たりのよさそうな青年。
「流石はカイザー様です。先を見る眼に長けてらっしゃる」
隣に座るリフが満足そうな笑みを浮かべれば、青年も力強く頷いた。
「経営の方は任せて下さい。必ずやご期待に応えてみせます」
………頼もしい。
頼もしいんだけど……罪悪感でちょっと胃がキリキリする。
場所は王都の中央街にある『リリアーナ』。
ただし、店舗内ではなく従業員の休憩スペースも兼ねた小部屋だ。オーナーとして店の状況をこっそり覗き見に来ました。
「実家の仕事もあるのに無理をさせたんじゃないかい?」
心苦しさに思わず眉根が下がる。
「とんでもない。このような事業に関わる経験を頂けて喜ばしい限りです」
目の前の青年は王都でも名の通った大商店の次男坊で名前はアラン。
「それに義兄さんのお役に立てるならとルーシェも張り切ってますし」
そして_____彼はリフの妹さんの旦那様、つまりはリフの義弟である。
店を出店するにあたり、店長が必要となる。
俺は公爵家長男として自ら店に立つわけには当然いかなければ、俺の店だということも特に公言するつもりもないしね。あえてそれを公言した方が売り上げは増えるだろうけど、そうすると人間関係の面倒も同時に増える。
店長・店員を探すもののこれといった当てはなく、そこで手を上げて下さったのが、俺の優秀な従者ことリフだった。
手を上げてくれた時点でちょっと渋りはしたんだよ?
リフの妹さんの嫁ぎ先は知ってたし、きっとそこの従業員をあたってくれるんだろうなーって予想はついてたから、迷惑をかけるのは気が引けた。
だけど同時にリフの人選なら確かという確信もあって……。
俺が甘い誘惑に負けた結果、従業員どころか大商店の次男坊が店長へと決定してしまったっ!
妹さんは店員さんとして今も表で接客して下さってます。他の店員さんも商店の伝手です。
ああ……本当は迷惑掛けたくないとかいいつつ、めちゃくちゃお世話になってます。
いや、ほらさ?俺、本来なら公爵家の跡取りじゃん?
なのに俺の我儘で爵位を弟に譲る件で、ただでさえリフに貧乏くじ引かせた後ろめたさがあるわけですよ。
リフは下級貴族ながらめっちゃ優秀で、しかもあの異能だからもっと出世の道があるし……。
跡継ぎのお兄さんも他の家族もすげぇいい人達だから俺に文句いうどころか良くしてくれるんだけどさ。この上、商会にお嫁入りした妹さんとその旦那様たちにまで仕事押し付けるとか……。
でも、実際超頼もしいです。
だって絶対優秀だし。
「マカロンもショコラもとても可愛らしく美しいので自分用にも贈答用にも人気が出ること間違いなしです。しかもあの包装。美しいだけでなく包装を解いた後もチャームとして使えたり、栞にもなるメッセージカードの発想は素晴らしいです」
根っからの商売人なのか、アランは商品の話になった途端、穏やかな語り口に急に熱が入った。
「もっと華やかなアクセサリー的なものも考えたのだけどね。妹や友人の話を聞いて小振りの装飾品にすることに決めたんだ」
「ベアトリクス様のですか?」
「ああ、妹は学園に通っているだろう?普段や社交の場では華やかなアクセサリーを身に着けられるけど、学園ではそうはいかない。身に着ける装飾品でなくとも、鞄やペンケースにつけれるチャームも喜ぶかなと思って」
「成程。素晴らしい眼の付け所ですね。盲点でした……」
顎に手を当て、そのまま実家の商売にも活かすことが出来ないかと即座に検討をはじめる姿はやはり生粋の商家の生まれだ。商機は逃さない。
「学園で身に着ける者が出れば、一気に話題が広がるでしょう。販売数を検討した方がいいかも知れませんね。君、ちょっと仕入れ表を持ってきてくれ」
切り替えの早さもさすが。
すぐに『リリアーナ』の話に戻ったアランが通りがかったお姉さん(店員)に声を掛ければ、それに即座に応えてくれたお姉さんが持ってきてくれた一覧を覗きこみつつリフといっしょにああだ、こうだと話し合う。
ごめん。俺、オーナーなのに一番話についていけてない。
あ、違った。
一番はアドバイザーという名誉職的なポジションのリリアだった。俺二番目。
「有難う御座いました。またのお越しをお待ちしております」
綺麗な笑顔を披露しつつ最後の客を見送るルーシェさん。他、数名のお姉さん。
完全にお客さんが見えなくなったところで、ガッツポーズとハイタッチが交わされる。
「皆さん、お疲れ様です」
小部屋から出て声を掛ければ途端に上がる嬌声。ただし心の中で、だ。
おお、凄い!!
心の声は『きゃー!!』って嬌声を上げてるのに、こちらに丁寧に「お疲れ様でした」と返してくれるお姉さんたちの表情は完璧なるアルカイックスマイル。
心の内など少しも見せないアルカイックスマイルに接客スキルの高さを見た。
「今日は初日ですが、明日からも宜しくお願いしますね。それとこれを」
俺の言葉と共にお姉さんたちに配られる小さな小箱。
「これは、もしかして」
「はい。マカロンとショコラのセットです。お店の味を知って頂くためにも是非どうぞ。それと……」
急なプレゼントに驚くお姉さんたちにくすりと笑う。
「『リリアーナ』の宣伝にも是非ご協力ください」
小箱にリボンと共に括りつけられているのは小振りなチャーム。
月や星、花など形は色々あるが繊細な細工に小粒ながら本物の宝石があしらわれていて、可愛すぎず可愛い仕様は大人の女性でも使いやすい仕上がりになっている。
商品を宣伝してもらうなら、まずは使ってもらうのが一番だよな!
「「「「「有難う御座います」」」」」
満面の笑みを浮かべたお姉さんたちの声がハモった。
「リリアーナ」のメイン商品は前にも述べたようにマカロンとショコラ。
可愛らしいカラフルなマカロンはこの世界にまだなかったことも相まって、反響もめちゃくちゃ高い。ショコラも繊細な細工が美しく、シックなショコラと愛らしいマカロンのセットは女性のハートを無事掴みまくった。
さらには包装に先程話に出たようなチャームや栞をつけた。
制服姿では髪型ぐらいしか着飾ることができない学園では、小物が注目を浴びると聞き、当初の予定通りチャームを主力にした。
髪飾りとかでもいいんだけど、令嬢だと髪飾りは値の張るものを身につけるだろうし、あまり値段を高くしすぎると貴族以外が手を出せなくなるしな。
あともう一つ、小振りなピンブローチも主力にしようと思ってる。
ピンブローチなら制服のタイやリボンの端にさり気なく付けられるし。(アクセサリー自体は校則で禁止はされていない。あんま派手だと注意されるが)
種類は多すぎず少なすぎず。
あまり数が多いと人の心理的に選べなくなる傾向があるからな。
限定した種類で時期毎に内容を変えることで購入意識をそそることも出来る。期間限定とかの言葉に弱いのはどこの世界も一緒らしい。
それに一度集め始めれば他も集めたくなるのが人の心理だ。最初から種類が多いとそうはいかないが、あと三つで全部制覇とか実現可能な種類の方が手が出やすいものだ。
お店の一角では包装に使ってる小振りなチャームとは違い、もう少し華やかで大ぶりのアクセサリーのショーケースも配置、なおこちらはお値段も少し高め。
お菓子の方は貴族でなく裕福な層でも手が出せる感じで、ショーケースのアクセサリーは貴族狙いでがっつりお金を落として貰おう。……と、いっても貴族にとってははした金だろうけど。
初日はまさかの閉店時間を待たずに完売し、幸先も良好です。




