いたちごっこ
もう少しだけ。
もう少しだけ。
僕は、昔からひとつの事に集中すると、周りをシャットダウンしてしまう。
ゲーム。
小説。
漫画。
大人になった今でも、基本的には変わらない。
仕事でPCに向かっている時には、周りのデスクの声が聞こえなくなる時がある。
その事について、先輩に何度か注意されもした。
もう少しだけ。
もう少しだけ。
こう言っているうちに、いなくなる。
ときどき、しびれを切らして感情的になる人もいる。
最初は我慢強く待っているのだけれど。
どんどん周りから人がいなくなっていく。
僕には、ともだちがいない。
それはひょっとして、とても寂しいことなのかもしれないけど。
誰もいない時間というのも、少しだけ落ち着く気がする。
アイツが、追いかけてくる。
だから、僕は精一杯遠くへ逃げていく。
でも、逃げ切れないこともわかっている。
そろそろだと、呼びに来る。
僕は、いつものように曖昧な感じで、気付かない振りをする。
それはいつもいたちごっこで、結局、僕が負けてしまうんだ。
ああ、もうそんな時間か。
コツコツと、扉を叩く音がする。
どうやら、今日も明日がノックしているみたいだ。