本編開始前に、断罪された悪役令嬢です
私の一日は、夕方に終わる。
別に朝が早いんじゃない。夜に地獄のバイトがあるからだ。
「おい、ロザリー!こっち上がったぞ」
「はい!」
「ロザリーちゃん、ちょっとお塩取ってきてー」
「はい!!」
「ロザリーちゃあん、ここに埃残ってるよー?」
「……はい」
最後のはさすがにちょっと嫌だったわ。
つーっと窓の桟を指で撫でるな!
ふってするなふって!!
この忙しい時間帯に言うこと!?いや悪いの私よ?私だけどね?
乙女ゲームの主人公らしい、サラサラのピンクベージュの髪の毛。きれいな緑色の大きな瞳。恐ろしいまでに整った顔立ち。
リーナ。私のライバルたるべき存在だ。
やっぱり、この仕草は。
日本の昼ドラに出てくる姑のようないびりは。
私の中で、疑惑は確信に変わりつつある。
ねえ、まだ、あなた10才よね。おかしいよね?
私は、ひとつに束ねても頑固に縦ロールを貫く己の金髪をぶんと揺らし、あちらこちらと走り回る。
コペランディ王国、首都、ハーツィラム。
この街は、いつも冒険者や商人で溢れている。
大通りにはいつも沢山の人が行き交い、ダンジョンを攻略した後の祝勝会や、大口の取引が決まった祝いの席など、外食のきっかけには事欠かない。
でも、私の考案した居酒屋は。
この大通りから外れた目立たない場所にある小さな酒場に、ここに住むヒロインに、完敗した。
私が悪い。誤解していたんだ。
昔、リーナのことを信頼する侍女に調べてもらったことがあった。そして、リーナが実家の酒場で給仕をしていると知った。
酒場の給仕の女性は、客への性的なサービス要員。酒場は危険だ。と、侍女から教えられた。
彼女はまだ幼女。許せないと思った。
そんな、ひどい環境で生きているなんて。
ヒロインの素直な心が、登場人物のトラウマを次々と癒していくのを、私は涙を流しながら見ていたのだから。
ここは、私が前世でプレイしていた乙女ゲーム、「貴族魔法学園と隠された王国」の世界。
日本で私が我を忘れて、どハマりしたゲームだ。
前世で私は、高校から引きこもりになった。
殆ど部屋から出ずにやり込んでいたのがこのゲームだ。登場人物が何らかの心の傷を抱えているところが、私の心にど直球で響いた。
このままじゃいけないと、栄養失調の体で意を決してコンビニに行った。そして倒れ、あっけなく人生が終わった。その時にちょっとした出会いがあり、気がついたらこの世界で赤ちゃんになっていた。
私はシナリオ通りに平民の学校に隠れている時代にいじめに遭い、設定通り心に傷を負う予定だったんだ。
リーナはゲームのヒロインで、私は邪魔者の悪役令嬢。
私はリーナの本命ルートの人物と必ず婚約し、そして最後に婚約破棄に遭ってまぁひどいことになる。
でもそんなの関係ない。シナリオはまだ始まってもいない。
婚約破棄は回避したい。自分の運命も大事だ。
でも、今、幼女がひどい目に遭っている。
どうにかしなければと、私の日本人的感覚がそう言った。いや私も幼女なんだけど。
だから、居酒屋を考案した。同時に、お金持ち向けのバーも作った。でも、居酒屋の利益がどうしても出ない。
居酒屋こそ繁盛させて、早くあの店を潰して、あの子を私の店に。
でも、それは誤解だった。このお店は健全で、本当に個人経営の居酒屋そのものだったんだ。
焦っていた、というのは言い訳だ。
クラスで、私は彼女の窮状、だと思っていたものを訴えた。その話題は、入学早々孤立していた私をクラスに馴染ませてくれた。
噂は広がり、リーナの立場は悪くなって行った。
欲がなかったと言えば嘘になる。うん、あった。確実に。
自分がいじめられるのは嫌だったから。
私は調子に乗った。
これで……いいんじゃない?
このまま噂が広がれば、彼女のひどい環境も知れ渡る。そこに現れる救世主の私。きっと彼女は喜んで居酒屋に移籍するだろう。
そう、私は、本編開始前に、ヒロインを味方につけることに成功する!
ついでにクラスの頂点に立ち、君臨することでここで過ごす時のいじめも回避しよう!
……全て、間違いでした。
私が流した噂は、ただのひどい中傷だったんだ。
あのこよるのおしごとでつかれているよね。
つくえがなかったらかえるんじゃない?
あ、それ、いいね。そうだよね、ロザリー。
ねえみんな、てつだって。
私は同意した。彼女が学校からすぐに帰って来たら、両親はきっと事情を聞きに来る。
その時、彼女の夜の仕事のことが、既に噂になっていると気付く。
決定打になると、思った。
リーナは、その状況を、力任せで突破した。
教壇に座り、啖呵を切った。
実行犯を炙り出し、わざと殴られた。
先生をしている教会の司祭様にそれを見せつけ、そして、許した。
司祭様は、まっすぐに私を見つめてきた。
君が、やったんだよね?
そう、その目が、言っていた。
いじめを、した。私が。
吐き気がした。
朝一番、机に置かれた一輪挿しの菊の花。
机の中に入っている教科書とノートには、しね、うざい、きえろ、きもい。全てのページにそう書かれていた。
予備で置いていたジャージは切り裂かれ、椅子には瞬間接着剤が塗られていた。
机は、私の一番嫌な記憶そのものだ。
私は、何をしていたんだ。
ふらふらと、家に帰る途中。
荒ぶるリーナを宥めてくれた、ニムルスという男の子が、私を追いかけてきた。
お前、やばいよ。今のうちに、お前の親も連れて、リーナんちに謝りに行こう。
お前も、自分の目で店を見たら、もうちょっと素直になれんじゃねえ?
そうして、見事に私の父親役をしているロダンさんも説得し、自分の父も素早く呼んで、すぐにリーナの家に行った。
対応が素早すぎる。いや今それはいいんだ。
とにかく、私はお店に行って実感した。
リーナのお父さんとお母さんの雰囲気。噂のことを聞いて激怒した表情。
ああ、本当に誤解だったんだ。
私は、実感した。私の、罪を。
クラスで、みんなに正直に言った。
なんだ。そうだったんだ。よかったね、リーナがたいへんなおしごとをしていなくて。
ねえロザリー、うそはよくないよ。
そうだよ、わたしたち、あなたがあんなこといったから、リーナをごかいしていたんだよ。
ロザリーこそ、いそがしいんじゃない。おうちのおしごとのおべんきょうは、だいじょうぶ?おやすみしなくていいの?
私は、見事に孤立した。わかっていた、ことだった。これから、私がいじめられる。
シナリオ通りに戻っただけだ。私が、悪い。今回のクラスのみんなの、私に対する扱いは、正しい。
身から出た錆。
私は、本編開始前に、既にヒロインから断罪されてしまった。
で、どうして今、ここで働いているかというと。
「おう、ロザリーちゃん!元気か?うん、元気そうだな!!」
がしがしがしがし。
頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。
青の髪に、紫のタレ目。ニムルスのお父さんでここの常連のカラムが、目尻のシワをたくさん作って、顔をくしゃっとさせてわたしを見つめる。
「あらあら、カラム。ロザリーちゃんの髪が乱れちゃうじゃない。この子、よくやってくれてるわよ?リーナとも仲がよくて。本当に、提案してよかったわ」
仲良くないわ!!!
カウンターの中で、リーナがまた、人差し指を立ててふっと息を吹き付ける。
ああ、ごめんなさいね掃除もちゃんとできなくて!!
悔しくて口に力がこもる。いけない。私は怒れない。私が悪いんだから。
そうすると、少しスッキリするのか、リーナはにんまりと笑って作業に戻る。なんでだ。そんなに面白いか私の顔は。
くう、悔しい。素直にごめんって思えない。
リーナには本当に悪いことをしたのに、ごめんって本当に思っているのに、どうしてこんなにイライラしているの、私。
私がここで働くことになったきっかけは、いじめのお詫びの一環で行った居酒屋の無料試食会だった。
すごい人数になったので、居酒屋は一日無料貸切になった。
その時、カラムとひそひそ何かを話していたリーナのお母さん、エリサさんが、私に話しかけた。一度接客をうちで学ばないかということだった。リーナのお父さんのディアスさんも同意した。
リーナは、最初眉間にシワを寄せたけど、ニムルスに何か言われて、笑顔になって頷いた。
そして、私に向かって、にんまりと笑って来た。ぞわっと背筋が凍った。
え、ちょっと、あなたヒロインよね。心がきれいなのよね?あれ?なんかおかしいよ?
リーナは、そっと私に近づくと、握手を求めて来た。私に選択肢はなかった。そっとその小さな手を握ると、ぐしゃっと潰されるんじゃないかくらいの力で握り返された。
リーナは、すごく、きれいに笑った。
右手が折れるんじゃないかと思った。
あ、これ、ダメなやつだ。
私の夜は、とても忙しくなった。リーナは本当に、これを毎日全部やってきたのか。
注文を取ったりお会計したりはリーナがやってくれている。私はそれ以外の、開店前のお掃除や、料理やお酒を運んだり片付けをしたり、洗い物をしたり食料庫に何か取りに行ったりなど、雑用係だ。
この店で扱う道具の一つ一つが、すごく重い。最初はお皿ひとつ持ち上げるのにも苦労した。何これ。お皿の重さとは思えなかった。
リーナはにやにやしながらそれを見ている。
あれぇ、そんなこともできないんだ。いざかやって、お皿は使わないんだっけ?
……ちょいちょい嫌味がひどいんだよヒロイン!!
ぐっと口に力がこもる。なんか10才にして、口の周りにシワでもできそうだ。
いや、私が悪い。がまん、がまん。
私は公爵令嬢。王の血族である侯爵に次ぐ高位の貴族家の人間だ。
父は今現在、政争の真っ只中。少しの失敗も許されない立場にあるらしい。
子供の私の些細な粗相も許されない。
本当にどうしたのお父様。
外国に遊学しているということにして、私は取引先の商人の家に預けられた。
私は一人娘だ。病気がちだなどと言って引きこもれば、公爵家の存続が危ぶまれる。
もっと子を持った方がなどと言われ、敵対派閥の侯爵あたりから第二夫人でも送り込まれたら、非常にまずいそうだ。
だから時期が来るまで、平民の学校に送り込まれた。なるほど、そういう設定だったのね。ゲームではそこまで語られなかった。
だから、ここでする全ての作業は、この体になってから初めてすることだ。
居酒屋は考えただけ。メニューも、日本のものを参考にしたレシピを料理人に教えただけ。いらっしゃいませこんばんは、注文入りました、はい喜んでー!と、とにかく元気よく挨拶して店員から雰囲気を作るよう、責任者に指導をお願いしたくらいしか手出ししていない。
作業なんかしてないよ。
うんごめん。一応公爵令嬢なんだよ私。リーナは知らないと思うけど。
それにしてもここの備品の重さは異常だと思う。これって平民じゃ普通なの?
箒やバケツなんかの掃除道具、布巾までなんか重いっておかしくない?私が非力なの?
大体ご飯を食べに来るお客さんが落ち着いて、お酒中心に注文が入るようになるくらいになるとお店も忙しくなくなってくる。
その頃ちょうど、預かり先の家から馬車が到着して、私のバイトはやっと終わる。
お父さん役をやってくれているロダンさんは、少し困った顔をしながら毎日馬車に乗って迎えに来る。そして、ディアスさんやエレナさんに頭を下げて私を引き取っていく。
その頃にはもうへろへろで、帰るときには私はぺこりと頭を下げるのが精一杯。家に帰るとばったりとそのまま眠ってしまう。
学校に行っても、体がギシギシと悲鳴を上げていてうまく動けない。授業中の眠気もひどい。
どんどん痩せていく私の鬼気迫る雰囲気が伝わるのか、クラスの子は私に話しかけて来なくなった。
なぜか、いじめっぽい動きも収まり、悪口も言われなくなった。ただ、放っておかれる。
私はいつも一人ぼっちだ。でも、それを気にする余裕はなかった。休み時間は寝ていたい。授業はこなせればそれでいい。集団を作らなければいけない課題は、司祭様とこなした。誰も何も言わなかった。
視界の端に、気になる人物が映る。
私とロダンさんを説得して、リーナとリーナの両親に謝罪の席を設けてくれた男の子。ニムルスだ。いつもリーナと話している。
私のことも、ニムルスは救ってくれた。あの時謝れなかったら、ずっと間違い続けていたんだから。
感謝を伝えたかった。もう少し話せるようになるかなって期待もしていた。
かっこよかった。
どうやったらあんな風に、大人を説得したりケンカを仲裁したり、リーナの心を救ったりできるの。
ニムルスのことが知りたかった。少し目が合うだけでもきっと幸せになれた。でも、目すら殆ど合わなかった。
あの時リーナに婚約宣言をしたニムルスは、リーナにちょっかいをかけるのと、カイルという男の子がリーナに近づくのを牽制するので忙しいらしい。
カイルはリーナの机を隠した実行犯だ。リーナをグーで思いっきり殴りもした。
そのカイルを、リーナは腕相撲で瞬殺した。
今もわんわん君と小馬鹿にし続けて遊んでいる。そしてまた腕相撲で瞬殺している。負けた方はわんわんって言うのよって言って遊んでいる。
ニムルス、カイルは気にしなくていいと思うよ。あれ遊んでるだけだから。
まあ、私にはもう、遠い世界だ。あの輪の中に入る資格すら、私にはない。それだけのことをしたんだから。
不思議と私の机には、今も何も起きていない。
もう、それだけでいい。ありがたいことだ。
本当なら、もっとひどいいじめに遭うはずなんだから。
私は、置物でいいんだ。これで、いいんだ。
秋が去り、冬が終わって春が来る頃。
いつも通り、私はクラスで置物として過ごしていたけれど、ちょっとした楽しみはできた。
図書室で本を読むことだ。
本は貴重だから、日本みたいに貸し出しはしてくれない。だから本を読むために図書室にいるのは、普通のこと。教室にいなくてもいいんだ。
私はその日、国を立て直した英雄譚を読むのが楽しみで、朝の早い時間から教会に来ていた。
この頃には、バイトだけでへばることは少なくなって来ていた。少しずつ、会計や注文取りもリーナが教えてくれるようになった。
相変わらず、皮肉たっぷりだけどな!!
どっちが悪役かわから……いやいや違う。私が悪い。そう。しょうがない。冷静になれ。
口にぐっと力を込めて我慢する。
あははっ、うめぼし!と、リーナは最近直接笑ってくるようになった。
なるほど、顎にできるシワを、うめぼしに似てるって思って笑ってたのね。
くぬ、今に見てろ。この私が立派な障害となって立ちふさがり、貴様を幸せへと導いてやるんだから!!
……あなた腹黒いから躊躇ってるけどな!
私で壁になれるかわかんないわほんとに!
ううう、私が大好きだった純粋なヒロインが、黒いよぅ。腹黒いよぅ。10才なのに嫁いびりみたいなことしてくるよぅ。
泣いていいですか。ダメですかそうですか。
もういいかもね、そうだな、そろそろやるか、という声が、カウンターから聞こえてきた。リーナも呼んでひそひそ話している。
なんだろう。新メニューかな?味見したい。
そんなことを思い出しながら、ぺらぺらと英雄譚を読み続けた。
おお、そうなのか。この国の英雄は、国王にならないかと言われ断ったのか。そしてそれから国王は、玉座の間に座らなくなったそうだ。
民を守る真の王は、市井の人々だと。それが彼の言葉だからと。今も国王はその言葉を守り、英雄が心を決めることを待ちわびているらしい。
それで、隠された王国なのね。隠しルートまで行けなかったからな、私。
かっこいいなぁ。うん、ファンタジー。
普通の世界なら、王の座を譲るなんてことにならないよ。権力争いで消されるよ英雄。
ああ、素敵だなあ。
ふと、足音が聞こえた。そうっと忍んで歩く、小さな足音。
ひょっこり、本棚から顔を出したのは、あの時机を取りに教室の外へ行こうとしてくれた女の子、アリスだ。
いつも遠巻きに、噂話も聞いているようで聞いていない、われ関せずの姿勢でいた子。
そっと近づいて、話しかけてきた。
「あのね……ロザリー。リーナのおうちでバイトしてるって、ほんと?」
びくっ。体が硬直して、本を取り落としてしまった。
ばれたくはなかった。これまで散々悪口を言ってきた酒場の給仕を、本人がしているなんて。
ああ、ついに始まるのか。私に、私がしたことが、そのまま返ってくるのか。
これを、リーナ家は待っていたのかもしれない。バイトを続けていればいずれは話題になる。だから、そう勧めたのか。
これまでばれてなかったんだから、カラムやニムルスが今更喋ったんじゃないだろう。ここの子の誰かのお父さんがお店に来てたのかな。
情報源がなかったら思いつくことじゃない。
私は静かに頷いた。
「ちゃんと謝りに行って、一週間くらいかな。居酒屋にリーナやお店の人達を招待した時に、お話を頂いたの。接客を学ばないかって」
アリスは、口に手を当てて小声になった。
「じゃあ、本当なのね。……あのね、実は、リーナが、クラスのみんなにわりびきけん、というのを配り出したのよ。
おうちのみんなでリーナのお店に来たら、ご飯は一品無料、お酒も半額でサービスするって」
……ヒロイン!!!
はぁ、無料試食会で許してあげる、なんて、大嘘じゃない。クラスのみんなに、私が給仕をしているところを見られるなんて。
みんなに、ちゃんと本当のことを伝えて謝った。その後だって、毎日ちゃんと働いて罪を償ってきたつもりだった。
まだ、許されないのか。
そうだよね。許されないよね。
それだけ、傷つけたんだよね。
日本で死を迎える時、道端で倒れて救急車が来る前。私を取り巻く人混みの中を潜り抜けて、話しかけてきた人がいた。
コンビニの袋をぶら下げていた。伸ばしっぱなしの癖毛を一本にまとめた、やせ細っているのにお腹だけ出てる、明らかに引きこもりの、そんなおばちゃん。多分30才くらい。
まあでも、どこにでもいる感じの人だった。
「人生、やり直したい?」と、聞かれた。
薄れていく意識の中で頷いた。
「今度こそ、諦めない?」
やり直せるなら。また、頷いた。
「じゃあ、もし助からなかったら、そうしてあげるから、安心して。諦めないで、頑張ってね」
あれは、こういうことだったのか。
誰だったんだろう。
まあ、もう日本にいないし会えないし。
ここに来ちゃったんだから、もう、しょうがない。
諦めないって、約束した。
諦めたら、日本に返されてしまうかもしれない。それは、嫌だ。
ぐっと、拳を握った。口にも力が入った。
「……そっか。うん、みんな来てくれたらいいよ。ごはん、おいしいから」
アリスを見返した。
茶色の髪に、薄い茶色の瞳。それは大きく見開かれていた。ああ、初めてまともに顔を見た。あんまり話してない子だったからな。
目立たないけど、親しみやすい顔をしている。
その小さな口が、見開かれた目が、ふっ、と、綻んだ。
「本当に、反省してたんだね。私、あの後ロザリーがずっと誰とも話さないから、意地になってるとばっかり思ってた。
それなら、みんな行っても大丈夫だよね?さりげなく止めようかと思ったけど、やめておくよ。いいのね?」
……止めようとしてくれてたのか。
どうして。あなたはずっと遠くから見てるだけで、私と仲良くもなかったよね。
なんで。この世界には、ニムルスといいこの子といい、なんでこんな変な人がいるの。
あったかいよ。
「……私、親を説得できたら、早めに行くから!頑張ってね、ロザリー!」
なんだか慌てたアリスが、私にハンカチを押し付けて早足で図書館を出て行った。
頰を伝うお水に気づいたのは、持っていたハンカチにしみが沢山できてからだった。
教室に戻って、いつも通りに置物として、席に着いた。
かたっと、前の席に座った人がいた。
わんわんく…カイルだ。
「なあ、お前、あれからずっとリーナんとこで働いてたんだって?」
お前って。前はロザリー、ロザリーって、親しげに話しかけてきたわん…カイルの言葉の違いに、やっぱりちょっと心が痛くなった。
こくん。頷くのが精一杯。また、目から水が出そうになった。
「なんだよ、言えよ。俺だって行かなきゃいけないんじゃんよ、あいつのこと殴ったの俺なんだから」
ぺしっと、頭を叩かれた。
むぅ。違うのに。なんか抜け駆けしたみたいじゃない。
だって私が主犯で、あなたはその流れでみんなに煽られただけなんだもの。ばかだから。
主犯は私なのに。なんで、なんで叩かれるのよ。あなたが私とおんなじなわけがないでしょう。
「あ、あれ?違うぞ?あの、そうだな、ああ、うん、俺が思いつかなかったからな!うん、そう!お前はわるくないぞ!な、だから落ち着けよ」
え、何よ。
落ち着いてるわよ。
あんたなんかに慰められる理由も、……資格も、私にはないのよ。
「あーーーわんわん君、女の子を泣かせたぁー!
いぃっけないんだぁーいけないんだぁーーー」
リーナの途中から節のついた声が聞こえる。
どっと、クラスに笑いが起きる。
え、泣いてる?誰が?
「あ、いや、これはだな、その」
「カイル!謝りなよ。また考えなしにひどいこと言ったんでしょう」
あ、アリスだ。
いや、違うよ。ひどいことなんて。私が悲しいのはそこじゃなくて。
「あ、うん、ごめん、俺もちゃんと謝ってなんか手伝うよ。うちのご飯の手伝いもあるから、あんまり行けないけど。なんか、ごめん。そんな泣くなよ」
だから、別に泣いてなんか。
「だっで、わだじが、がんぢがいじで、ひっく、べんなごどいっだから、ひっく、だがら、わだじが、わるぐで」
あれ。なんだ。うまくしゃべれない。
「ああもう、こりゃダメだな。カイル、責任持ってロザリーを医務室に連れて行けよ」
……ニムルスだ。
わたしの、なまえ。久しぶりに呼ばれた。わたしに話しかけたんじゃないけど。
「あ、うん、ほら、いくぞ。えーと、あの、その、なんだ、おぶさるか?」
「私も行くわ。ロザリー、もう、そんなに我慢してたのね。リーナ、いいよね?」
アリスが話に割って入ってきた。
ぼやけた視界には何も映らない。リーナがどう返事をしたのかは、わからなかった。
そのまま、私はカイルに背負われて医務室に連れて行かれた。なんでかカイルの背中がぐしょぐしょに濡れた。
その日はそのまま帰った。医務室に来たリーナに、今日だけはおしごと休んでいいよ、と、言われた。
そうしてまた、バイトに明け暮れる日々が始まった。
半年近く働いてると、さすがにここの備品の重さにも慣れてきた。お皿を下げる時に一枚ずつしか運べなかったのが、今は三枚くらまで重ねられるようになった。
クラスの子たちは、親を連れてちょっとずつやってきた。最初は緊張してガチガチだったけど、慣れるとなんともなくなってきた。
ただ、すごく気恥ずかしかった。
なんだかみんなにやにやしている。なんで。
そんなにおかしい?あ、おかしいのかそうなのか。
これも、私への罰だ。黙って受け入れよう。
よりによって、大好きだったヒロインに。
ヒロインの、机に。
私はひどいことを、したんだから。
カイルはたまに開店前の掃除を手伝うようになった。うんそれはどうでもいい。
わんわ……カイルだし。うん、カイルだから。
ある日、カラムがなかなか帰らない日があった。
忙しい時間にも、カウンターに陣取って動かない。ディアスさんとエリサさんも、なんだか雰囲気が変だ。
リーナはいつも通りだった。ただ、私に一切接客をさせないでカウンター内の用事をひっきりなしに言いつける。
しまいには、忙しいのに厨房の床磨きを命じられた。いやそれ今やること?会計待ってる人も並んでるし運ぶ料理も溜まってるよ?
かたんと、何かをエリサさんがお店の外に置いた。
忙しい時間帯なのに、お客さんの入り方が止まった。
しばらくするとお客さんはみんな帰って、ちょうど私の帰宅時間になった。
カラムだけはまだ店にいる。
ニムルスが、店に来た。
「親父が帰らないから、言われてたことやってきたけど、よかったのか?」
「ああ、正解だ。よくやった」
がしがしとカラムはニムルスの頭を撫で回す。ニムルスは、逃げようともがく。リーナにかっこ悪いところ見せたくないんだろうな。
久しぶりに間近で見るニムルス。ちょっと嬉しかった。
たまに彼の姿を少し見られる。うん、これだけで、いい。私には過ぎた贅沢だ。
その時、彼らが何を話しているのかなんて疑問は、嬉しさで私の頭から抜けてしまっていた。
カラムとディアスさん、エリサさんが話し合っている。
リーナは、暇になったのか店のフライパンをぶうんと素振りし始めた。すごい早かった。あれも絶対重いのに。
ヒロインチートか。そうなのか。
使うところ違くないか。
からんからん。お父さん役のロダンさんが店に入ってきた。お迎えだ。
「ロザリーをお迎えに参りました。……本日は閉店が早いようですが、なにかありましたかな?」
「ちょっと内輪のイベントがあるの。カラム達も一緒にね」
イベント?リーナ、そんなこと言ってた?
「ああ、それでカラムさんとニムルスくんが。そうでしたか、それは失礼、迎えが遅くなってしまいましたな。さあロザリー、お邪魔になってはいけない、帰るぞ」
たたっとロダンさんのところに走っていく。
きい、と、カウンターからエリサさんが出てきた。
「今日は私とディアスもご一緒してよろしいかしら?ロザリーちゃんに、少し話したいことがあるの」
びくっ。え、なに。叱られるの?
「はい、もちろんです。お帰りの際もお送り致します」
くすくす。エリサさんは笑う。
「いいえ、私たちは平民です。自分の足で帰りますわ。こうして自分で自分の身は守れますから」
エリサさんは、手に持った二本の剣をがちゃっと見せ、腰につけた。ディアスさんも、一本の長剣を背中に差している。
「そうですか。お二人は、元冒険者でしたな。たまには夜の散歩もよろしいかもしれません。かしこまりました」
ロダンさんは、なんだか少し硬い表情になった。エリサさんが頷く。カラム、ディアスさん、リーナにもエリサさんは目配せし、素早く外に出て、なぜか馬車の外を一周した。
「ロザリー、これまでの給料だ」
ディアスさんにすっと差し出されたのは、一本の魔法の杖だった。子供用の長さだ。
見ると、細工がある。杖の先を回すと、それは細い剣になった。
「適度に刃は潰してあるが、まあ護身用にはなるだろう。今度からは、いつもそれを持って歩きなさい」
え、私まだ、そんなに魔法使えないのに。
この平和な王都で、持ち歩く意味。
かちゃんと剣の部分をしまって、ディアスさんを見上げる。ディアスさんは、重々しく頷く。意味はわからないけど、私も頷いた。
「これからは、私が奇襲をかけるかもしれないから、本当に持っておいた方がいいよー?」
くすくすくす、リーナが笑いながらフライパンを振り回す。
いやちょっとフライパンには対抗できないわ。うん、でも、ないよりはいいか。
ふっ、と、私は初めてリーナに笑いかけた。
「フライパンで奇襲かけないでよ。武器じゃないんだから」
あははっと笑うリーナは、そのまま上機嫌でフライパンをもっとぶんぶん振り回した。エリサさんが苦笑してた。
そうして、店を出てしばらく。
細い路地から、大通りに出ようとした時だった。
がたんと、急に馬車が止まる。え、なに。何か道に障害物?
「ロザリーちゃん、私から離れないで」
エリサさんが、そっと馬車の後ろの窓を覗く。ディアスさんは、前の方を覗いていた。
「……予想より数が多いな。馬車は捨てた方がいい」
「そうね。前方を切り抜けましょうか」
「ああ、後ろは頼む」
え?え?なに?
「あの……お二方、いかがなさいましたかな?」
「ロダン殿、御者の方に戦闘経験は」
「元冒険者ですから、それなりには。しかし今は武器も持っておりません。……まさか」
ロダンさんが青くなる。
「ええ。数は前方八、後方五。馬車に立て籠もれる人数ではありません。道は開きますのでご安心を。一気に出ます」
そう言うが早いか、ディアスさんはバンと激しい音で馬車の戸を開け、外に躍り出た。がきぃん、ざしゅっ、と、なにかの、おとが、ひびく。
「さあ早く!ロダン、ロザリー、出るわよ!」
エリサさんが、普段とは雰囲気の随分違う張りのある声を上げた。私たちは、エリサさんに馬車から引きずり降ろされるように降りた。足がすくんで動けなかったからだ。
見ると。
ディアスさんが、前方の敵を殆ど屠っていた。黒いフードを被り、布で口を隠した男たちが、たくさん転がっていた。
死んではいない、と思うけど、生臭い血の匂いが辺りに充満している。吐きそうになった。
「その娘をよこせぇ!」
後ろから声がする。
ぞっとした。狙いは、私か。
「ディアス!二人を任せたわ」
「ああ、大丈夫だ!こっちによこせ!」
しゃらん、と、二つの剣を抜くきれいな音。
ピンクベージュの長い髪を靡かせて、ワンピース姿のエリサさんは、黒い男たちに突撃した。
「行きなさい!ここは任せて!」
ひゅんひゅん、軽い、とても軽い風を切る音に少し遅れて、どさ、どさと男たちが倒れていく。
どうしよう。どうしよう。足が。足が、動かない。
かたかたかたかた。どこからかおとがする。どこだろう。わからない。
「ロザリー!!しっかりしなさい!ディアスさんのところへ!」
ロダンさんが私を抱きかかえようとする。でも、わたしの体は固まっていて、日頃運動をしないロダンさんはなかなか持ち上げられない。
「私がやります」
御者の人が。私に手を伸ばした。
その時気付いた。御者の人も、フードを被っている。顔を、隠している。
どうして?
どうしてあなたが、その格好をしているの?
ロダンさんが、はっと気づいて御者の人を押しのけようとする。
ロダンさんは、どんと突き飛ばされ、道に転がった。
私と御者の人の距離は、もう一メートルもなかった。
「ロザリー!杖よ!思いっきりやりなさい!」
エリサさんの声が響く。はっとした。
腰にあった杖を取り出す。剣を抜く暇はない。
どんどん近づく、それに向かって、上段から、思いっきり。
「……やっぱりちょっと手加減しなさい!」
え、むり。
ぶぅんと振り下ろされた杖は、御者の人の肩にめり込んだ。そのまま、地面にずぅんと沈み込む。
そのまま、そのひとは動かなくなった。ぴくぴくと痙攣している。
石畳が、割れた。人を叩きつけた衝撃で。
私の、杖の力だけで。
……なにこれ。
前方から、沢山の馬の足音が聞こえた。
「全員動くな!……あれ、終わってましたか。さすがディアス殿」
がしゃん、と音を立てて、馬上の人が地面に降り立つ。白い鎧。白の警備隊だ。なんでこんなところに。
「ああ、半数はエリサと、ひとりは狙いの人物が直接な。おそらくあれが首謀者だ。徹底して裏を取ってくれ。色々きな臭い」
はっ、と、白の警備隊の人がディアスさんに礼を取る。
え、どうして。白の警備隊っていえば、騎士爵に限りなく近い人たちのはずだ。
後から来た警備隊の人たちに、黒いフードの人たちは続々と縄をかけられていった。
ディアスさんとエリサさんは、警備隊の人から手渡された白い布で、剣の血糊を拭っている。
……ディアスさん、もしかしてえらいひと?いやいや、元冒険者なだけのはず。じゃあ、有名人?
「俺と、ロダン殿で状況の説明をする。
ロダン殿、うちで一晩、ロザリーをお預かりしてもよろしいですかな?うちがおそらく一番安全なので」
「……城も、ロザリーにとって安全ではないですからな。拙宅にも、どうやら間者がいるらしい。お願いできますか?」
え。お城も、ロダンさんのおうちもダメなの?
じゃあほんとうのおうちは、もっと、ダメなの?
私、帰れないんだ。
かたかたかた。また、なにかのおとがきこえてきた。
めのまえが、まっくらになりかけた、そのとき。
ふわり。いい匂いが、私を包んだ。
ぎゅっと抱きしめられる。
ピンクベージュの髪の毛が、私の視界を覆った。
「大丈夫。あなたのお父さんはとても頑張っているのよ?こうして証拠が捕まったのだから、もう安心よ。ね。じきに帰れるわ」
ぎゅうぅぅっと、更に力を込めて、抱きしめられる。
ふぇ、と、情けない声を上げかけて。
気づいた。
息が、苦しい。
「本当に、よく頑張ったわね……半年、耐えたのはあなたよ。ええ、許すわ。
あなたは、ずっと、口にうめぼしを作りながら……くっ、うめぼ……ふふっ、ふふふっ、あ、ごめんなさいね。
まあ何にせよあなたの根性の成果よ。誘って本当によかったわ」
すっと離されて、ぷはっと息をする。
わざとか!わざとなのか!
そしてエリサさんまでうめぼしって!!
ぐぬぬぬ、と、顔に力がこもる。
エリサさんは、耐えきれずに爆笑しだした。
ひぃひぃ言いながら、くしゃくしゃと頭を撫でられた。ここの人たちは、髪を乱すのが、本当に好きだ。全くもう。
私も笑った。なんだか視界がぼやけて、頬がいっぱい冷たいけど、きっと気のせいだろう。
帰りは、エリサさんに抱き上げられて運ばれた。
私はなんだか、もう、足に力が入らなかったんだ。
「ねえ、ロザリー。せっかくこうして二人きりなのだから、この際話しておきたいことがあるの」
すぐそばにあるエリサさんのきれいな瞳に、こくっと頷いて返す。
何だろう。
白の警備隊の人たち。エリサさん達の強さ。どうして襲撃がわかったのか。話の内容に覚えかありすぎて想像がつかない。
「あのね……。大手チェーンの居酒屋をただ真似ても、成功しないわよ?ここの人たちの生活をよく見て、理解しないと。
もう、わかるわよね?」
え。
今なんて。
「あの居酒屋で、あなたの正体に辿り着く人はたくさんいるでしょう。二つの意味でね」
言葉が、出てこない。
今、エリサさんは、大手チェーンって言った。
それは、この異世界にはない言葉で。
「あの接客はなんとかするように、ロダンさんに進言しておいたから、もう直っているだろうけど……。
あなたは隠れていなければいけない身の上だった。更にそれ以上の自分の秘密さえ、わかる人なら誰でもわかるような形で披露していたの。
それがどれだけ危険なことか、わかるかしら」
くすっと笑って、ゆさゆさと私の体をエリサさんは揺する。
そうか。そうなのか。
リーナは、毎日髪と体の手入れをしていた。それは、平民にはない習慣だ。しかも洗い液を使っているという。
更にバイトを始めて、その仕草の端々に、日本を感じていた。しかも、主人公。
だからてっきり、リーナも転生者だと、思っていた。
転生者は、母親だったのか。
「転生しているものは、あなたの想像以上に、身近にいたりするものなの。更にあなたには立場がある。周りに十分気をつけなさい。
シナリオを知っているのは、あなただけではないわ」
この世界のことについても。私やリーナのことについても。知ってたんだ。最初から。
「これ以上、こちらの情報を開示するつもりはないけれど、あなたの事情を、あなたが思っている以上に私達は把握しているわ。
だから本当に大丈夫。それとね……」
月明かりの中で、ふわりと微笑むエリサさんは、リーナにそっくりのにんまりと悪い笑みを浮かべた。
「リーナには、自由に生きてもらうの。あの子の意思で。
私がついている以上、あの子もあなたも、シナリオ通りになんかしないわ。あなたの知識がそのまま、役に立つと思わないことね」
ふふっと笑うエリサさんは、ぞっとする程きれいだった。
ぎりっと私を握りしめた手に無駄に力がこもるところが、やっぱり親子だな、と。
あまりのことにパンクした頭で、私はぼんやりと考えた。
お店に着いて、下に降ろされて立ち上がり。
まだ事態を受け止めきれずにふらふらする体を支えられながら、店内に入ると。
ニムルスと、鍋とお玉で戦うリーナの姿があった。
「うおおおお!!」
リーナは、女子にあるまじき雄叫びを上げ、お玉を振り上げてニムルスに突進する。
ニムルスはにやりと嗤い、さっとフライパンを掲げた。
がぁん!!
ごっ。
その一撃での風圧が、私の体をよろめかせる。
え、なに、今の。
「あ、そうそう、言い忘れてたわ」
エリサさん?私もうキャパオーバーよ?
「うちの備品ってね、本人が持てるぎりぎりの重さになるように、魔法がかかっているのよ。筋力に加えて、身体強化の魔法も自然と使えるようになるわ。
そこで何年も働く意味、今のあなたならわかるわよね。
あの子に勝てると、思わない方が身のためよ?」
あ、そうか。そうなのか。だからあんなに重かったのね。私の打撃で地面がめり込んだのも、そのせいかしら?
うふふ。うふふふふ。
私の視界は暗転した。
もはや、処理能力の限界だった。
最後に見たのは、リーナの、にんまりと嗤う笑顔だった。
『本編開始前に、悪役令嬢を断罪したようです』の、その後譚ロザリー視点でした。
そちらはリーナ視点のお話なのでよかったらぜひ。