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9 ぬくもり

「グスン……うう、おい、石田! なんだよ、これ。俺が女ってどういうことだよ!」



 涙が勝手に溢れて止まらない。グス、全部石田のせいだ、どうしてくれんだよお……。文句を言おうと立ち上がる。が、途端に目の前が真っ暗になった。



「あ……」


「ケイちゃん!?」



 う、ヤバ、妙な浮遊感。立ち眩み? 後ろに倒れそう。

 このままじゃ後頭部打っちまう……。と思った直後、背中に温かな腕がまわされ抱きかかえられる。



「だだだ、大丈夫? ケイちゃん!」


「あ、ああ、わりい……支えてくれたのか」


「ど、どうしよう! ケイちゃんが死んじゃう!」


「死なねえから落ち着け、ただの立ち眩みだ。眩暈がしただけだから……グスン」


「待ってて、僕がなんとかするからね」


「話を聞け、なんともねえからさ」


「うーんうーん、あ、そうだ」


「お、おい……グス」



 俺の話をガン無視した石田は、なにを思ったのか俺の前髪をかきわけると、そのまま自分のおでこを押し当ててくる。ちょ、顔が近い! 近いどころか密着してる! おまけに体まで抱かれてピッタリと超密着してるし、ヤバイヤバイ! 石田の顔がこんなに近くにあるなんて……ドキドキする。


 いやいや、ドキドキってなんだよ? なに慌ててんだ。さっき石田は『自分は女になってない』的なことを言っていた。つまりコイツは男のまま。キモいのならわかるが、男相手にドキドキしてどうすんだよお!


 うん、だってさ……コイツ可愛いし。……なんか妙な感じになっちゃうのもしょうがないかなあって。……ええっと、誰に対して言い訳してんだよ、俺。


 彼女? それとも……自分自身?



「ちょ、おま」


「じっとしてて、今ケイちゃんにパワーを送ってるから」


「パワーって……?」


「生命エネルギーみたいなものだよ。すぐに活力が漲ってくるはずだからね」


「なんでお前がそんなエネルギーとかってのを俺に送れんの?」


「神様から貰った力のおかげ。チート能力のひとつだね」


「チート……」



 なんだこれ。密着した額が温かくて気持ち良い。

 しかもなんだか体中に凄まじく活力が漲るようだ。エナジードリンクをガブ飲みしたって絶対こうはならないと思う。凄えな、こういうことも出来るのが石田のチート能力なのかな? あまりにも驚いて、さっきまで流れっぱなしだった涙も止まってしまう。


 けど、活力がどうとかよりも、とにかく額が心地よい。男と額を密着させている恐怖のこの状況、それがあり得ないことに石田から伝わる感触が、とにかく気持ち良い。

 今度は意味不明な満足感と言葉に出来ないような幸福感で、さっきとは違う涙が溢れそうになる。……なにこれ、俺どうなっちゃってんの?



「どう? ケイちゃん」


「どうって言われても……」



 とても良いです、とは言いづらい。いや、そんなの言えるか!



「回復してきた?」


「……ああ」


「気持ち良い?」


「………………まあ」


「そう、良かった。なら、ずっとこのままでいる?」


「いや、もういい。サンキュー、石田。もう大丈夫だ」


「ふう……」



 おでこを離した石田は、かなり息を荒くしている。おまけに滝のような汗までかきはじめた。

 うわ、なにその尋常じゃない量の汗。え、ヤバくない? コイツ。



「お前、具合悪いんじゃねえのか? 無理しないでホントのこと言えよ」


「うーん? おかしいな。ここは「このままでいる?」って聞いたら赤面しながら「そ、そうだな……もうちょっとだけ」って言って照れた二人が、しばらく引っ付いてるのが、ごく一般的な展開なんだけど?」


「お前の言う一般論が、どこの世間で通用するのか俺には全く理解できねえんですけど!?」




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