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ラストエピソード ――女顔のクラスメイトと異世界転移したら女になっていたよ。うん、俺が。―― act1

前回の後書きで、次で最終回とドヤった事を書きました。

今回で確かに最終回なのですが、書いていたら文字数が多すぎて収まりが悪いので分割することにしました。

嘘予告のようになってしまいましたが、あと数日、投稿が続く予定です。


「結局なにが言いたかったの?」



 石田は散々言葉責めをしたあとに、何事もなかったように聞いてくる。今さらだけどコイツは可愛い容姿に似合わず、かなりドSだと思う。

 ぞのうちまた泣くぞ、俺。女になってから、なぜか涙腺が凄え脆くなってんだからさあ。ちょっとだけ優しくしてくれても良いんだぞ?



「早い話がお互い隠し事はやめようってことだ」


「隠し事……」


「この先どんなピンチがあるかわかんないじゃん。したらやっぱ相手に対する信頼とかさ? お互いがどういう考えを持ってるヤツかって知ってれば、ヤバい状況でもなんとかなりそうだと思わない?」


「例えばどんな状況?」


「ほら、お前が貸してくれた本にもあったじゃん。敵が主人公とヒロインを仲違いさせようとして、それぞれをおびき出して騙そうとする場面とかさ」


「あー、仲間割れシュチュ。ベタな展開だけど自分に起きたらサイアクだねえ」


「そう。そういう時が俺らにもないとも限らないじゃん。けど互いの信頼があれば……相手がどんなヤツかって知ってれば、そんな状況にも流されないんじゃないかな?」



 石田は俺を見て困惑の表情を浮かべている。



「ケイちゃんって、やっぱ結構熱い人だよね。今凄い暑苦しいコト言ってる自覚ある?」


「うっさいなあ、そんなんわかってるよ。俺だってちょっと思春期なコト言ってるって自覚はあるんだから」


「ふふふ」



 石田は戸惑いの顔から笑顔になる。

 うん、やっぱ石田は冷たい顔や悲しみの表情よりも笑顔がいちばん似合っている。



「わかった。ケイちゃんに隠し事はしないよ。どんなコトでも絶対に言うからね」


「ああ、俺もお前に隠し事はしないよ。いちばんの友達に隠し事はできないもんな」


「ケイちゃん……」



 手綱を握る手はそのままに、石田が俺の肩にそっと頭を預けてくる。

 相変わらず良い匂いしてるな、コイツ。安心するというか落ち着くというか、ずっといつまでも嗅いでいたい気にさせる匂いがする。

 男の俺をそんな気にさせるなんて、男のクセにとんでもないヤツだ。


 とんでもないヤツだけど別な意味でもとんでもない。

 S気質なのに、その実誰よりも繊細。それがきっと石田達也というヤツなんだろう。俺が苦手な面倒臭いタイプなんだけれど、石田はなぜか放っておけない。


 けれど、それは決してコイツの過去に同情したからじゃない。石田も俺に同情なんかされたくはないだろう。目を離すとなにをしでかすかわからない弟、俺は石田をそんなふうに思っているのかもしれない。

 面倒なのに放っておけない気にさせる。これをとんでもないヤツと言わないで、なんと言えばいいんだ。本当にとんでもなく困ったヤツだ。



「あとは、お互いに物語みたいなフラグを立てないように気をつけない?」


「フラグ?」


「ああ。例えばさ、『俺、この戦いが終わったらお前に大事な話があるんだ』みたいな、ああいうアレ」


「あるねえ」


「こんな世界で生きてかなきゃなんないんだから、あらゆる不安要素は排除したい。ジンクスみたいなものでもさ」


「うん、わかった。僕もベタな言動はしないよ。でもね、フラグ立てに関してはケイちゃんのほうに不安要素がある気がしてならないの」



 石田は真顔で俺に心外なコトを言ってきた。



「なんで? 言っちゃなんだけど俺って結構対人関係も磨いてきたし、妙な言動をしない自信はかなりあるぞ」


「なんていうか、そういう発言をするコト自体がもうフラグ立てちゃってるよねえ」


「なんだそれ。ふん、まあ見てろ。異世界人がどんな価値観を持ってるか知らないけど、お前より上手く立ち回ってビックリさせてやるからな」


「あー、もうこの人は……ホント、典型的なお約束をするよねえ」



 タメ息をついてガックリとする石田。失礼なヤツだな、俺を見くびりすぎだっての。



「まあ、フラグ云々は重要じゃない。隠し事の話に戻るけどさ。お前のその汗なんなの?」


「え……」


「それ絶対ヤバいよな。能力使ったあとの汗が異常だよ」


「えっと……」



 石田は今度は本当に困った顔で俺を見る。なにかを言うのを躊躇っていることがわかりすぎ。もお。



「隠し事すんなよな」


「……」


「お前のコトは俺のコトでもあるんだ。もうここまできたら一蓮托生だろ、俺ら」


「うん……」


「二人は一心同体みたいなもんなんだから。ね? 話してくれ」


「ケイちゃん」



 困った顔の石田の頬を撫でてみる。涙で濡れた顔もハンカチで拭いたので、今ではすっかり綺麗になった。目だけは腫れたままの、その愛らしい顔をいつまでも触れていたい。そんな欲求が生まれてしまう。


 石田は俺の手を払うでもなく、気持ちよさそうにされるがままになっている。今の俺たちって、他人から見れば女の子同士のスキンシップにしか見えないのだろうか。俺には女の子同士とは思えないけれど。


 女のようにしか見えなかった石田が、今は不思議と女の子そのものには思えない。女の子に見えるけれど、その芯はしっかりとした男の子。そんなふうに思えてしまう。



「じつはね、チートを使うにはエネルギーがいるの」


「エネルギー……。まあ言われてみれば、なにかするのは元になる燃料やら動力が必要か。ってことはチートは、無制限に使える力じゃなかったってこと?」


「うん、だから使い続ければいつかは枯渇しちゃうの。今は消費をセーブするための力加減がわからなくて。それで酷く疲れて汗も凄いことになっちゃってるの」


「そういうことだったのか。ならどうやってエネルギーを補充するんだ?」



 俺の疑問に石田は言いよどむ。

 ほら、早く言え。ヤツの柔らかな唇をプニプニと押して促す。



「ちょ、ちょっと、もお、なにしてんの……まだマニュアルを全部は見てないんだけどね。量が多すぎてどこから読めばいいんだかって多さだから。多機能の弊害だね」


「じゃあ早く読んでくれ。お前がバッテリー切れになったら二人とも大ピンチじゃん」


「ちょっとだけ神様には説明はされたの。「お前の力は圭が鍵になるからな」ってね」


「どういうこと?」



 俺も夢の中でヤンキーに言われた。

 俺がいなければ魔王は倒せない。俺が鍵になるから石田を守ってやってくれと。あれはヤンキー女神が俺の夢に現れた正夢だったんだろうか。



「ケイちゃんがこの世界の魔力を取り込める体質だってことは言ったよね?」


「うん、さっき聞いた」



 その副作用かなんかで女の体になっちゃったよ。

 この体質は女顔の石田に備わっているべきだと心から思う。



「僕は魔力が取り込めない。そもそも魔力は僕にとっては害があるからね。けれどケイちゃんは魔力を取り込んで力に変えることができる。でもケイちゃん自身は、そのエネルギーはなんの使い道もないんだって。しかも溜め続けると、いつかは爆発しちゃうらしくて」


「なんだそれ、怖すぎだわ! 早く言えよな、そんな重要なコトはさ!」



 異世界で爆死の末路。冗談キツすぎるっての。

 冗談は見た目お人形さんのような可憐な姿、中身は昭和のヤンキーのあの女神だけにしてくれ。



「そのエネルギーを僕に渡してくれればいいみたい。そうすれば僕は力の源を確保出来て、ケイちゃんは破裂しないで済むそうだよ」


「破裂とか怖いコト言うな。ったく、鍵なんてご大層なコト言ってて、結局俺のポジションってモバイルバッテリーみたいなもんじゃん」



 選ばれし者にしても俺が鍵とかって話も、どれもオチが微妙すぎる。未来の俺の扱いは、せめて良い方向に向かってほしい。



「じゃあ、僕が常に抱きかかえてたほうがいいかな? モバイルケイちゃんとしてお姫様抱っこをするしかないかも」


「マジでやめて!」



 女顔だけど男の石田にお姫様抱っこされる、体だけ女で中身は男の俺。なんだその凄い絵面。



きりよく30話で終わる予定が無理でした。

10/26 誤字訂正。

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