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20 鏡の中の……

 俺の内心の動揺をよそに、石田は窓辺に向かうとガラスを撫でる。



「ほら、ケイちゃん、こっち来て? はやくはやく」


「ちょ、ちょっと」



 戻ってきた石田に手首を引っ張られながら立たされて、ソファーから窓の前へと連れてこられる。


 え? なに?

 マジでビームで焼かれちゃの? 俺の末路は炭化した物体?


 そんなのイヤああああああああああ!



「ほら、いま窓を鏡に変えたんだ!」


「そ、そう」


「ね? 見て見て。これが今のケイちゃんだよ」


「え……」



 ――そこには白いドレスを着た少女が映っていた。



 勝気な眼差し。紅がほんのりと乗る白い頬。色素の薄い淡い栗色をした、外ハネ気味のストレートボブ。タイトドレスのラインに浮かぶ、大きすぎず小さすぎずといった胸。


 見たこともない、いや、その顔には面影がある。この俺、青山圭の面影が。


 もし、俺が女に生まれて成長したら、こんな女になるのではないだろうか。

 そういう顔をした女が、鏡の中でバツが悪そうなしかめっ面をして、俺のことを見つめていた。



「ね? ビックリするくらい可愛くない?」


「…………」


「前から思ってたんだ。もしね、ケイちゃんが女の子だったら、見た目は一昔前に流行ったツンデレキャラみたいかなって」


「…………」


「で、閃いたの。どうせ異世界に一緒に行くなら、ケイちゃんに可愛くなってもらって一緒に冒険しようかな! って」


「……ツンデレ……冒険」


「いまの説明でわかってくれた? ん? どうしたの? あ、もしかして、自分のあまりの可愛さに声も出ないとか?」


「……女……この俺が女」


「うんうん! 喜んでくれて嬉しいよ。僕もとても嬉しいんだ」


「これが俺……」


「ふふふ、そんなに自分を見つめなくてもいいのに。これからずっと付き合ってく顔なんだから! あ、ケイちゃんの部屋以外にも、たくさん鏡は用意しておくからね。お風呂はもちろん、このリビングにも、玄関にも。あとは、キッチンにも用意しようか?」


「…………」


「ケイちゃん?」


「オマエ、ナニイッテンダ?」


「え?」


「こんなん見せられても納得するわけねえだろ! なんだよ、見た目ツンデレって? 意味わかんねえわ! てか、結局なんで俺が女になって異世界に来たんだかの答えに全然なってねえぞ!」



 石田の言い分の一グラムも、俺には全く理解出来ねえ!

 こいつの思考回路は、人類にはまだ早すぎるんじゃないかな!?



「あれ? おかしいな。ここは基本として、「こ、これがオレ……?」って、戸惑いながらも他人からバレないくらいに、ちょっとだけドキッとしちゃうのが王道なんだけど?」


「知らねえよ! なんの王道だよ! こんなん見せられたら尚更怖いわ! とっとと俺を男に戻せ!」


「ケイちゃん、落ち着いて! 叫びすぎて鼻水まで出ちゃってるよ!」


「落ち着いていられるわけあるか! お前が出させてんだろ! この鼻水も!」



 こんな! こんな顔なんて! こんな体になったなんて!


 この俺が女になったなんて!


 こんなの認められるかよ!

 こんな……こんなの俺じゃない……。


 この女が俺……だと。

 俺がマジで女になった……なんて。


 …………俺が……女、なのか。

 ……これが俺なのか、この女が。


 クソ……あらためて、鏡の中の自分を見てみる。


 …………マジだよ、やっぱ女だよ。


 …………うあ。


 ……えっと。


 ……これは。


 ……結構、イケてる……のか?


 ……え、ええっと、なんだ、この心境は……。


 …………うん、まあ、ね。


 へえ、そう、ふうん…………。



「ケイちゃん? なに鏡の前でクルクル廻りだしてんの? そのヘンなポーズはなに?」


「ち、違う! 俺は自分の姿に感想なんか、ちっとも持ってないんだからな! これは……そう、たまたまだよ! たまたま廻っちゃっただけだから!」


「なになに、ケイちゃん。なんの話をしてんの? 可愛さ探求の話?」


「俺の話聞いてたか!? 違うんだからな!」



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