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黄昏ラピス  作者: 村月 亜唯
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※※

優希は新しいスマートフォンを片手に、1階にあるスターバックスへと向かった。

紫の仕事が終わるのをここで待つ事にしたのだ。


スターバックスに入るとホットのキャラメルマキアートを注文し、それを手にするとガラスウィンド側に設置されている長いハイカウンターの1席に座った。

早速、新しいスマートフォンの操作を始める。

データの復元もすでに終わっていれば、LINEも全部引き継がれている。

―――携帯ショップの人って、なんでも出来るんだな。それこそ友達に1人いたら、凄く便利かも。でも、彼女とかになったら、全部バレそうで怖いけど…

バレる事も何もないから全然平気なんだけどと、そう思いながら彼女とか、何考えてんだと自問自答しながらも、どこか照れながら心弾む自分がいた。

優希は早速、孝一にLINEをした。

「優希:孝一。昨日落とした時に教えてくれたらよかったのに。おかげで今やっと機種変更して、スマホ使えるようになったって」

送ったLINEはすぐに既読になり

『孝一:優希、お前が落としたのが悪い。使えなかったのか?いつもすぐに落として、スマートフォン傷だらけになるんだから。何にしたの?』

孝一は自分のベットの上で、漫画雑誌をペラペラめくりながら、スナック菓子をつまんでいた。これでも、優希からの連絡がないのを少しは心配はしていたのだ。とはいえ、優希の彼女がいなきゃ1人で家に居るだの、暇だろというのを否定も出来なければ言い訳も出来ないのは、こういったところからだ。

「優希:前使ってたのと同じやつの新しいやつ。さすがにもう落とさない」

『孝一:今度はちゃんとケース付けろよ』

「優希:わかってる。またネットで探す。それよりさ、俺今日ショップ行ってよかったよ」

『孝一:ん?良いことかなんかあった?』お菓子を摘む手が止まる。

「優希:機種変更してくれた人が可愛かった」

―――へぇ、優希が珍しいことを言う

優希から女の話をしてきた事は、知ってる範囲なく珍しい。

『孝一:可愛い人だったんだ。行ってよっかじゃん。俺も付いて行けばよかった』

高校の時に、それなりにモテてもいれば告白もされていた。ただ、その後に「返事はどうした?」と聞くと、答えはいつも「断った」だった。

何故か聞いても「女なんて付き合ってもめんどくさい」と優希はいつも言っていた。それが、こう来たかと思うと、孝一は1人にやけた。

「優希:来なくてよっかたし。実はこの後で会うんだ」

『孝一:会うって、そんな事していいの?』ペラペラとめくっていた雑誌はとっくに閉じられている。

―――あぁいう職業ってダメじゃなかったっけ?

とふと思う。

「優希:連絡先とか教えたらダメみたい。でも、偶然会うとかならいいみたい」

―――偶然て曖昧だな

『孝一:優希さ、待ち伏せしてるとかじゃないよな?それだったら犯罪だけど』

「優希:違うよ!仕事終わったらスタバに行くって、言ってたんだ。その子が」

『孝一:行くってそう言っても、待ち合わせじゃないだろ?』

「優希:待ち合わせじゃないけど、違うって」優希は確かに待ち合わせはしていない。待ち伏せと言われると不安になる所も無い事もない。

孝一はいつもにも増して、珍しい事をいう優希にからかいがいを感じた。

――確かに店というか仕事場じゃなきゃ問題はないよな…そりゃ偶然すれ違う事くらいあるだろうし

『孝一:冗談だよ。で、どんな風に可愛い人なの?』

「優希:色白くって小さいんだ。今までにいないような雰囲気の人」我ながらまとまりのない表現だ。

『孝一:それ、今から俺も行っていい?』

「優希:なんで?」

『孝一:見たいから』孝一は本当に見に行こうかなと思っていた。

「優希:それは止めて、来ないで」

『孝一:でも見たいし』

『孝一:嘘、冗談。行かないよ』―――本当に見たいけどな

「優希:なんか馬鹿にしてる」

『孝一:馬鹿にはしてないよ。珍しいなとは思ってるけどね。お前から女の話なんて聞いたことないから』

「優希:そうか?」

―――今まで女ってあんまり興味なかったもんな…

そうなのかと思いながら優希はキャラメルマキアートを飲んだ。

『孝一:とりあえず、後で連絡してこいよ。その女の人の事も会えたかどうかも』

「優希:わかった。でも、考えたら女の子と2人で会ったり話した事ないんだけど、俺。…これって大丈夫かな?」

―――2人っきりっで話た経験…考えたらない

今更気付いた。

自分がこんなに積極的だった事に、今更ながら待ってるくせに動揺して少し焦ってくる。

『孝一:なんで?機種変更してる時に話とかしたんだろ?』

「優希:話した。普通に緊張とかしなかった」そう言えば話とか、話題作りしないととか、思わなかったなぁ。

『孝一:そうだろ。相手は接客にもなれてるし、そうゆうの上手いんだから大丈夫だよ』

こいつ今になって何言ってるんだかと、孝一は溜め息をついた。

「優希:そっか。そうだよな。普通に話してて楽しかったし、プロってあんな感じなんだろな」ガラス越しに、まだ来るはずのない紫の姿を捜してしまう。

『孝一:お前もさ、営業出た時に相手に上手く会話も持っていったりするだろ。同じだよ』

「優希:そうだな。変に心配して損した」

―――そうだよな…毎日色んな人と話してんだから、人と話す事なんて慣れてるよな

そんな人達と自分は一緒なのかと思うと、少し寂しく思う。自分だけは特別でいたいとでも思うのか、自分がわからない。

『孝一:とりあえずさ、後で連絡してこいよ。俺の望みとしては、その子と仲良くなって、スノボにはぜひ女性を連れてきてほしい』優希にそこまでする事なんて無理だろうが、ここは期待を持たせてほしいものだ。

「優希:えっ?!ハードル高い。まだ何もそんな話してないのに」こいつ、変にプレッシャーをかける。

『孝一:まぁ誘えたら誘えよ。話すネタにもなるし、きっかけは大事だぜ』

「優希:そうだな…それとなく誘ってみるわ。サンキュー」

『孝一:おう。結果楽しみにしてるよ』

そんなやり取りを孝一としてる間に、紫の仕事が終わる時間がやってきた。

やり取りを見返しながら、どうしたもんかと不安になってきたが、「偶然なら」とは言ってくれた。

―――これは偶然になるのか…あぁ俺ってこんなことできる人だった?

自分でも信じられない。


こんなに人に、しかも女に対して連絡先教えてとか、会いたいとか思った事も言った事もない。


頼んだキャラメルマキアートはすっかり冷たくなっていた。

ほんのり甘いはずのキャラメルマキアートに口をつけながら、少しそわそわしながら、またガラス越しにまだかまだかと紫の姿を捜す。


人を待つのは嫌じゃないけど、心配にはなる。


本当に来てくれるのか、何よりもこれは待ち伏せにならないのか、そっちも気になる。

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