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黄昏ラピス  作者: 村月 亜唯
19/36

※※

22時過ぎ。紫は自宅マンションのパソコンデスクの椅子に腰をおろしていた。

仕事は平日で来店も少なかった事もあり、珍しく20時半に終わらせる事が出来たが、早番のはずの長野が紫が終わるのを休憩室でずっと待っていて、仕事が終わってから紫と奥田、長野の3人で今度のスノーボードの話をしていたのだ。


「紫さん、俺、嬉しすぎてウェア買ったんですよ。ほら、これこれ」そう言うと長野はスマートフォンで撮った写メを紫と奥田が見えるようにスマートフォンをテーブルの上に置いた。

「やっぱ買ったんだ。へぇー長野君にしてはいい感じじゃない」

奥田は自分もスノーボードをしてるからか、こうゆうタイプが今流行ってるよね、等と長野との会話は弾む。

「すごく綺麗な色、格好いいね」

紫はウェア自体がどんな物がいいかさえわからないから、見たままの事しか良いとは言えず、ただ、長野の選んだウェアは青や赤、白等のカラーが混ざりあったバランスが全体的に綺麗な色の配置の物だった。その配色は目を惹いた。

「綺麗でしょ」

紫の〝綺麗な〝と言うのは、長野からしたら嬉しい。

長野もウェアを選ぶ時に、真っ先に思ったのは綺麗な色づかいだった。

それが、紫が同じように感じてくれた事が嬉しかったのだ。

「本当、長野君にしては、いい感じのを選んだね」

奥田は長野が嬉しそうにしてる様子を見ながら、やっぱり紫さんの反応をみたかったんだ、と思っていた。

そう思うと、そうゆう子供みたいなところが長野の良さと思う反面、どことなく淋しい気持ちになる。

好きな人に振り向いてもらいたい…

それは素直な感情だ。ただ、応援したいと言うのも素直な感情だった。

長野のウェアの話から始まり、どこのスキー場ですか?、集合は?となり

「金曜日、21時位出発目安に。集合はまだわからないんだけど、こっちまで来てくれると思うし。だから、早番で定時で終わってから1回家に帰って来てもいいし、荷物持ってきてもいいし」

そこはお任せするけど、紫は1度家に帰ってから戻ってくると付け加えた。

それなら、自分達もと長野と奥田も1度帰り、戻ってくると言った。

早番で朝から重たい荷物を持ってくるのは手間と体力がいる。

当然、時間に余裕があるのなら、誰でもそう言うだろう。

紫に関しては、荷物は無いに等しい。

ウェアやそういった物自体を持っても無ければ、持っていくものもない。

そうこう話していて、帰ってきたのが22時過ぎだったのだ。

スノーボードの声をかけたのは紫で、この2人には来てもらう必要がある。


―そう、この2人にはどうしても来てもらわないと…―


紫はLINEの優希とのトークを開いていた。

どう返信をしたらいいものか…


「君はもう決めたのか?」

紫に問いかける声がする。

「そうね」

「なら、何を悩む事がある?」

「悩んではいない」

「罪悪感か?選択しかない。変えられない物を変える為に、お前は選択したんだろう?」

罪悪感…そんなものはない。何度も繰り返し、無駄な事も出来ない事も知った。その中で出来る事がある事も知った。

今更、罪悪感なんて…

決めた時点でそんなものは捨てた。

「そうね…」


優希とのトーク画面を閉じた。


紫は部屋角のテーブル上にあるブリザードフラワーのピンクの薔薇を1つ千切り取ると、千切った薔薇を手にまた椅子に腰をおろした。


薔薇の花びらを1つ掴みひっぱり千切る。

花びらをひっぱると、花びらは細かい破片を落としながら、デスク上を破片の欠片が模様のように色付かせる。

千切った1つの花びらを目の前に見つめ

「自ら散ることはなくとも、こうして散らす事は出来る。枯れはしなくても…こうして壊す事は出来る」

そう呟くと花びらを掴んだ指から花びらを離し、花びらをデスクへとヒラヒラ落としていく。

1つ花びらを掴んでは千切り、花びらを落とし、それを花びらがなくなるまで繰り返す。

最後に残ったのは緑色の茎。


残った茎をクルクルと指先で遊ばせる。

ーーこの茎でさえ、生きてはいないーー


茎があって花は花びらをつかせる。

人で言うなら、そう、本当に根っこ、本質、中身が茎だ。


紫は落とした花びらをデスクの上に綺麗に横1例に並べた。

花びらは全部で7枚。花びらの最後に花をつけない茎を並べ置いた。


紫は並べた7枚の花びらを、一番左の1つを上へ位置をずらす。

並び残るは6枚の花びら。

また左1枚を上へ位置をずらすと、一番右側の花びら1枚を今度は下へ位置をずらし置く。真ん中列に残った4枚の花びらを紫は見つめ、腕を組む。


腕を組んだまま、紫は天井を見つめた。


4つ…ここからどうするか…だ。

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