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黄昏ラピス  作者: 村月 亜唯
11/36

※※

紫は朝起き暖房を入れると、そのままバスルームへと向かい、シャワーを浴び終わると、そのまま服を選んだ。

紫が選んだ服は黒のスキニーに白のニット、それを選び着ると、椅子に腰掛けパソコンデスクの上に鏡を置きメイクを始める。

メイクといっても、薄くファンデーションを塗り、目尻にアイラインを一線引くと、その上にブラウンのアイシャドウを二重のまぶたにグラデーションを描くように引くだけだ。

パーマを緩くかけた髪は軽くドライヤーをあて、ムースでくしゃくしゃと掴みセットをした。


一通り身支度が終わるとアクセサリーを付けた。

タンザナイトの星型のピアス、右手薬指にシルバーの指輪。指輪はアルファベットでⅠ〜Xllまでの数字が、時計のようにリングの表面に刻まれている。

よく右手薬指は〝恋人から貰った物〝というが、現実そうではないし、彼氏に貰った指輪を大半の女性は左薬に付けてる。


指輪1つ付けていただけで、仕事に行った時に「彼氏から?」と聞かれて以来、仕事中は指輪を外すようにした。

ただ、毎日見に付けている物で、仕事が終わって着替えるとすぐに指輪を付け帰路へつく。


昨日は右手に指輪を付けていたが、優希には何も聞かれなかった。

聞かれても、そうじゃないと言うだけだが、聞かれなかったのは幸いだ。そういう事をあまり気にしない人か、知らない人のどちらかだろうが、いちいち説明する手間は省けた。


優希から昼過ぎにLINEがきた。

「優希:ゆかりちゃん、おはよう。14時に着くように行くから」

『紫:おはよう。わかった。気を付けて』

返信をし、そのままスマートフォンをパソコンデスクに置くと、紫は部屋角に置いてるガラスのテーブル前に立った。

テーブルの上には、2つの写真立てとブリザードフラワー、ガラス細工の小物が数点置かれている。

紫は写真立ての1つに手を伸ばし掴むと目の前まで持ち上げた。

「時間は本当に経っているんだ…」

写真に向かって問いかけるわけでもなく、言葉を呟く。

横に置いてるブリザードフラワーともう1つの写真は、物を言わずガラステーブルの上にある。

紫は掴んでいた写真立てをテーブルに戻すと、ブリザードフラワーのピンクの薔薇の花びらを親指と人差し指で摘み、指先で撫でた。

「本当に、枯れないのね」

サラサラとした指ざわりの花びらは、生花のような活き活きしさはない。

掴んだ触り心地もまたそれを感じさせる。


そして昔、言われた言葉を思い出す。


「それは死骸を飾るのと同じだ」

ドライフラワーを作ろうと、枯れた花束を逆さにぶら下げようとしていた時に言われた言葉だ。

そう言われた時に、確かに枯れた花は死んでいる、それは人で言うなら死骸といっていいだろう。自分がしてはいけない事をしてる気がして、すぐにぶら下げた枯れた花束を捨てた。


このブリザードフラワーは咲いたまま保存をされ、枯れないように保たれる。


ーーこれは死骸ではなかったら、なんと呼べばいいのだろう…ポプリや、咲き誇り散った後に人を香りで楽しませている物達は、何と言えばいいんだろう…ーー


死してもなお人を楽しませる。それは人のエゴではないのか?

人と違い感情が見えない物だから、何をしてもいいのだろうか?

そんな疑問が頭を巡る。


写真立てを見つめたまま、紫はただ立ち尽くした。

そこに写っている姿に懐かしさや悲しみを感じはしない。感じるのは、時は無情に流れていると言う事だけだ。


ーー生あるモノはいつか命は尽きる


それが普通なのにと思わずにはいられなかった。

永遠に生き続ける事など、普通はない、生き地獄と同じだ…と。

ーーこうして死ぬ事なく、ある物は普通なのか…

その答えを紫は持っていない。

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