冒険の準備をする不遇職
またもや説明してるぅ
「はぁ…はぁ…あんなに近く見えたのに…すんごい疲れた…。」
人混みを無事?に抜けて、私は目的である冒険者ギルドに到着した。できればもう経験したくないね。えらい目にあったわ。
さて、なんとか入れた冒険者ギルドの中はやはりというか外に比べると静かだった。それでも充分賑やかではあるけどね。
正面に人が一番多いのを見ると、恐らくあそこで登録作業とかがされているのだろう。あれに並ばないといけないのか…。
っと、どうやら案内図があるようだ。これを見た方が早いよね。
て訳でそそくさと案内図の前に移動する私。どれどれえ…。
案内図によると、入り口から正面にあるのがギルドへの登録受付やクエスト受注をするカウンターで、そこから左に進むと素材買取所と鑑定所と続いている。
正面から右に進むとアイテム販売などの店舗と、休憩所という名の交流スペースや様々な情報が載っている掲示板がある。
それとプレイヤー分散のためにこのギルド内の空間は複数あるらしい。中にいるNPCは全て同じみたいで知識や記憶も全ての空間で共用している…謎技術。
もし特定のユーザーと待ち合わせする場合はこの案内図から別のギルド空間に移動できるんだって。私に縁があるかは知らない。
というか分散してこの行列なのかとげんなりした私である。とはいえ登録しないとクエスト受注やギルドの施設を利用できないので、適当に並ぶ事にした。
暇潰しに残りのメニュー項目でも眺めてよっと。よく見ると他の人も考えは同じみたいだしね。
近くの適当な列に並ぶと、私はメニューを開いた。なお他人のメニューは公開設定にしないと見る事ができないので安心だ。
まだよく見てない項目は『クエスト』『コミュニティ』『システム』だったね。まあ『クエスト』はいいでしょ。文字通りだってわかるし。となるとまずは『コミュニティ』かな。
『コミュニティ』を選択すると、[フレンド][ユニオン][メッセージ][掲示板][ブラックリスト]の項目が現れた。
えっと、[フレンド]はそのまんまだね。仲良しのユーザーとかを登録できる機能だね。上限人数はないみたい。友達100人できるかなが本当にできるね。そんなコミュニケーション能力ないです。
[ユニオン]はプレイヤーが作るギルドだね。上限人数は100人でユニオン向けのイベントも開催予定なんだって。多分GvG的なやつだね。
[メッセージ]は個人間でのやり取りとか運営からのお知らせが届いたりする機能だ。今は運営からの注意書き的なお知らせが1件あるだけだった。
[掲示板]はログアウト不可のえふこねで不特定多数のユーザーと情報交換するための機能だね。検索やお気に入りもあるから有用な物は抑えときたい所。ただ匿名希望とかは出来なくて、全てアバターネームで投稿されるから荒らしはすぐバレるのでやめよう。
[ブラックリスト]は変なのに絡まれた時に使うやつだ。暴言を言われた、ハラスメントぎりぎりの事をされたなど、トラブルが起きた時はまず自衛をしようという事だね。
登録するとそのプレイヤーの発言は一切聞こえなくなり、こちらとの間にシステム的な壁が作られるので触れる事も出来なくなるらしい。
出来る事ならなるべく使う状況に会いたくはないね。
『コミュニティ』はこんなものかなぁ。
さてさて列はどうなったかなっと…うわぁまだ半分くらいあるよ。意外と早く進んではいるんだけど、如何せん数が多いもんね…。
仕方ないね、『システム』も見ちゃおうか。
『システム』も選択すると複数の項目に分かれた。使いそうなのは…[設定][スクリーンショット][動画][よくある質問][お問い合わせ][通報]かな。
あとは何個かあるけど多分使わないと思うので割愛。
んじゃ[設定]から。まあこれは各種設定があるだけだね。メニューの開き方とかの操作設定からメニューサイズの変更とかもある。これは便利そうだから今変えちゃお。
試しにメニューサイズをタブレット端末くらいの大きさにしてみると、私的には使いやすくなった。今まではちょっと大きすぎた気がするからこれは助かった。
他の設定項目は…今はいいかなぁ。その内必要なら変えよっと。
[スクリーンショット][動画]はゲーム内で撮影したものを保存しておくフォルダみたいなものだね。撮影方法はメニューのトップにあるカメラマークをタッチで出来るみたい。盗撮防止にプレイヤーのみに聞こえるシャッター音も付いてるよ。警戒心の強い動物や敵の撮影でも安心だあ!
なお保存容量は個人個人にあるのでお気に入りはアイテムとして保存しておきましょうだって。安値でNPC売りされてるらしいよ。
[よくある質問]はプレイヤーからお問い合わせが多かったものや基本的な操作方法とかが記載されている。内容は毎週追加されるらしい。運営も頑張るね。
[お問い合わせ]はお問い合わせである。それ以下でもそれ以上でもない。とはいええふこねでは重要な機能である。体に異常があった際などのメディカルチェック申請が特におおきい。
不具合なのではという質問とかもこちらからだよ。
[通報]はハラスメント判定やブラックリストを無視しての粘着行為や、現実でも犯罪となる行為を発見した際に使用する機能だ。
基本えふこねでは現実と同じ法が適用されている。個人情報の拡散とかがわかりやすいかな。まあそもそもそんなの出すなと言いたいけどね。
窃盗や殺人は所謂PKとして存在しているので基本的に通報対象外にはならない。
ただ別に機能としてあるからってデメリットがない訳じゃなくて、目撃者がいると指名手配されて憲兵に追われるようになり、賞金も掛かるのでプレイヤーからも狙われるようになる。
また目撃者がいなくても各種施設が利用不可になったりリスポーン地点が牢屋の中になったりと割りと重たい。
逆にPKのメリットはどこでも対人戦ができるのと、倒したプレイヤーのお金やアイテムが入手できる事ってとこだ。一応経験値も入る。
正直私は絡みたくないので勘弁して欲しいね。
少し脱線した気がするけどこんなものかな。列もあと少しで私の順番だしね。いやー長かったわぁ。
そわそわしつつ待っていると、やっと私の順番になった。受付の職員さんは赤みがかった茶髪のお姉さんだ。受付嬢だし定番なんだけど美人さんだ。自然な笑顔が素敵です。すき。
「ようこそ冒険者ギルドへ。登録でよろしいでしょうか。」
「はい、登録をお願いします。」
いやーゲーム内なのにまるで現実の役所に来たみたいだよ。周りが賑やかなのが大きな違いかな。
そんな感想を抱いていると、一枚のカードを差し出された。ん?特に何か書いたりしないのかな。
「こちらはギルドカードです。触れていただくとあなたの情報が保存されます。」
ふむふむ、だから人の進みがそこそこ早かったのか。触るだけでいいのは便利だねってことで私は差し出されたギルドカードを手に取る。
すると無地のカードに私の名前や職業などの情報が表示された。わぁおハイテクぅ。
「はい、ありがとうございます。これで各ギルド施設が利用可能となりました。そちらのカードは破棄不可能となっており、盗難をされる事もありませんのでご安心下さい。ただしカードにはあなたの情報が記載されていますので、なるべく人の目に付かないようにお願いします。」
ふーん、カードはメニューと違って非公開には出来ないのか。落とす事もないらしいしインベントリに入れとこっと。
「続いて各施設について軽くですが説明をさせていただきます。」
と、受付嬢のお姉さんは何やら図が沢山載っている紙を見せてくれた。
まず、ギルド内施設の素材買取と鑑定については持ち込み個数制限は無く、24時間で営業しているとのこと。
クエスト受注やアイテム販売は営業時間があるので注意だって。そんな時間に来る方が悪いとは思う。
そして外にある施設だ。まず一番大事なのがウェイポイントである。
これは街に設置してあり、規定の金額を支払う事で転送が出来るというもの。リアルな徒歩移動だけだと街を彷徨くのにも一苦労するのでこれはとてもありがたい。
また他の街のウェイポイントに触れれば街同士で転送可能になるとのこと。便利だ。
あとはギルドが経営している宿屋もあるみたい。登録さえしていれば安値で泊まれるので殆どのプレイヤーは利用することになるはずだ。私もそのつもりだよ。
「施設に関してましては以上になります。ご質問が無ければクエスト受注についてに移ります。」
「大丈夫です。お願いします。」
では、とお姉さんは別の紙を見せてくれた。
「受注可能なクエストは右手にあります掲示板で確認できます。受注したいクエストがありましたら、こちらのカウンターにお持ちください。同時に受注可能なクエスト数は5個となっておりますのでご注意ください。」
掲示板の張り紙を剥がすのかなと思ったので聞いてみると、アイテム判定らしく2回タッチすれば掲示板には残ったままインベントリに入るみたい。
クエスト進行度はメニューの『クエスト』から確認できるので活用してねとのこと。
「最後に大事な事ですが、犯罪行為を行うとギルドの登録は解除されます。再登録には手数料と特別な講義が必要ですので、くれぐれもそのような事がないようお願いします。」
大丈夫です。そんな物騒な事は元からするつもり無いです。
「以上で登録と施設説明を終わりとします。それでは早速ですが、何かクエストを受注していきますか?」
お姉さんがそう言うと、私の目の前にあのガイドボードが出現した。毎度の事ながら急すぎるよこれ。
えーっと、[魔物を10体討伐:指定なし]。んん?こういうのは大抵初心者向けの魔物が指定されててそれを倒すもんだよね。なのに指定なしとは珍しい…楽だと思うからいっか。
「それじゃあこのクエストを受注したいです。」
「畏まりました。ではカードをこちらに。はい、ありがとうございます。」
私からギルドカードを受け取ると、お姉さんはカードをカウンター内の黒い板に置いた。するとカードが一瞬淡く光り、受注確認しましたとお姉さんがカードを返してくれた。所々に謎技術だ。ゲームだから当然とか夢のない事はダメだよ。
「報告はまたこちらのカウンターまでお願いします。それでは、ご健闘をお祈りします。お気をつけて。」
どうやらこれで手続きは全て終わりみたいだね。私はいってきますとカウンターから離れると早速フィールドに行こうと外に向かった。
アイテムとか買ってもいいんだけど、所持金あまりないし、初期配布でポーションがあるからいいかなって。
それよりも早くフィールドに出て実戦がしたいのだよ。いざ行かん初めての狩り。
そんな意気揚々と外に出た私は辛い現実と再び遭遇するのであった。
「人多すぎるよぉぉぉ…」
次回、主人公初めての戦闘(予定)