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岩落とし不遇職

世界がヒーローを求めていたので投稿空いちゃいました。

 「なんでっ…!どうしてっ…!こんな増えてるのお…ってぇい!」


 鉄鉱虫との交戦を始めた私であったが、こちらの攻撃は背中の石にしか当たらないので思うようにダメージを与えられていない。

 そして向こうの攻撃も魔力推進で距離を保っている為届かないという状況だった。


 これだけ見れば私が粘り強く攻撃してさえいれば確実に勝てるはず…だったのだけど、ひたすら後ろに向かって下がっていた為に新たな鉄鉱虫がぞろぞろと現れたのだ。

 その結果が多分50体くらいである。足の生えた石がゴロゴロとローラーを掛けるように道一杯に転がって私に迫ってきている感じだ。なんだこの地獄絵図。


 このまま後ろに下がりつつ攻撃していってもまた鉄鉱虫は増えるだけ。

 そして後ろに下がるという事は山を登っているという事になる。つまり鉄鉱虫以外の敵と遭遇する可能性もあるし、誰かプレイヤーがいる可能性もある。


 前者なら私がやられるだけで済むのであるが、後者だと完璧にMPKである。大問題過ぎる…不慮の事故なんですは通用しないレベルだ。これだけは何が何でも避けなくてはいけない。


 だけど私には一気に巻き返せるような火力も無いのである。なるほどロマン求めるよりも堅実に火力スキルを取っていればということかな。どちらにせよ習得したばかりの火力スキルなんて単体攻撃しか無いからそんな変わらんよ…多分ね。



 迂闊だったと大人しく死に戻るという選択肢も無くは無いが…この大量の鉄鉱虫に何もしないのも勿体無いと思ってしまうのだ。

 確かに私の攻撃ではダメージは少ないが、通るのだ。全く攻撃が通らないから倒せないのではない、ただ数が多いだけだ。


 最初よりも事故る可能性は高くなっているけど、上手いことやれば全て処理する事も出来るのではないかとね。

 なにせこの数だ…倒せれば大量の経験値とドロップアイテムが狙えるはず。一気に2か3はレベルが上がるかもしれないし、各種スキルレベルを上げるには格好の餌ではないか。

 本来の目的である鉱石も沢山集まるしいいこと尽くめだよ。ふっふっふ思わずニヤけてしまいそうだ。


 んー皮算用とは正にこの事。だけど夢を見るのはタダである。後悔はやった後でいいよ。



 ではどうやってこれを切り抜けようかね。地道にマジックショットを撃ち続けて倒すのではやはり凄い時間が掛かってしまう。増援が来たら尚の事である。

 地形を利用して何か出来ないのかとも考えるが、辺りには特に何も見当たらない。あともし何かあったとしても非力な私では使える気がしない。悲しいかな。


 うーむ、ならば山道の横は絶壁とまでいわないが崖なので、いっそ飛び降りて落下ダメージとか狙えないかな。

 そもそもそこまでして追ってこない?存分にあり得る。もし追ってきても防御にいわせて崖を転がってきそうな気もする。もしくは壁を這ってくるとか。


 あとは…こういうタイプによくあるお腹は紙装甲ですとかいうのを期待してみるとかかな。どうやってひっくり返すかは知らない。

 前戦ったあの兎は突進を避けたら隙が生まれるというタイプであったが、今回の鉄鉱虫はジャンプ体当たりを避けたとしてもそのまま転がって元の姿勢に戻ってしまうのだ。

 攻撃後のリカバリーを忘れないとかデキる奴らよ…おのれお陰でどうすればいいかさっぱりだぞ。



 そして当然の事ながらこうやってあーだこーだと私が考えている内も鉄鉱虫達は私に迫っている。得策が出てこないからといって立ち止まっているのは悪手なのもまた事実。


 「あーもう…地道こそが最善手なのかな…。それ『マジックショット』。」

 とりあえず私は攻撃を再開しつつ、どうするか考える。ここまで何回か言ったけど、鉄鉱虫自体はそんなに脅威では無い。

 体は小さく、移動速度も遅い。攻撃はジャンプしての体当たりだけ、ただ防御力と数が私にとって相性が最悪という感じだ。


 マジックショットでもダメージは入るが、全て同じ標的に当て続けたとしても倒すのに10〜15発も必要という体たらく。なんて貧弱火力なんでしょう。

 ついでに時間換算ではMP回復時間含めて3分くらいかな。相手が棒立ちで私が攻撃にのみ専念できるのならそんなにかからないんだけどね。

 移動と回避を兼ねた魔力推進と周囲からの増援警戒をしているとそれくらいかかってしまうのだ。


 結局の所、私が恐れているのは誰かと遭遇してMPKをしてしまうことである。ただ時間がかかるだけならソロの私にはそんな痛手ではない。

 あとはそこまで後退しながらやっていると絶対に鉄鉱虫の数が増える。ここまでの事を考えれば必ず奴らは潜んでいるはずだ。減らそうとしているのに更に増えられちゃたまったもんじゃない。



 しかしだ。


 私はそれに対する答えだけは思いついてしまったのだよ。ぴーんと来ちゃったんだよ。

 後ろに下がり続けたら不味い、ならば下がらなければいいだけなのだ。めちゃくちゃ簡単な話だね。

 そしてどうするのかってそれもまた単純だ。私の素晴らしき味方である魔力推進を使って前に飛ぶ、これだけ。


 勿論ただ前に飛んでしまっては鉄鉱虫に引っかかる。そうすればバランスを崩して盛大に私は転がってしまうだろう。それこそ以前魔力切れで転がった時よりも酷い事になる。


 なので少し角度をつけて飛ぶ。できるのかと不安にならなくもないけれど、なにせ屋根の上に飛び乗る事が出来るくらいの勢いは出せるのだから少し斜めに飛ぶくらいできるはず。

 それに元の持ち主である兎を思い出せば、岩の上にいた私に対して斜めに飛んでいたではないか。これはもうできない訳が無い。


 イメージとしてはレースゲームでたまにあるジャンプ台みたいな感じで緩やかに飛ぶ感じ…勢い余って倒れないように意識して…よし、いこう。



 「そーっれ! …よし、うまくいった…ってととととちょいちょいちょい待って危ないわっ!へぶしっ!?」


 斜めに飛ぶ事自体は私のちゃんと目論見通りに行う事ができた……のだが、また着地時の事を考えていなかったのだ。

 緩やかな坂の山道、そして地面は砂利が多い。そこにそこそこ勢いつけて降りるとどうなるか?


 はい、坂道と砂利で滑って偉いことになります。そして私はそれに驚いて結局倒れましたとさ。痛い……。


 だが今は泣いてる場合ではないのだ。涙は出てるけどすぐさま私は後ろに振り返る。

 そこには急に目の前から居なくなった私に困惑?している鉄鉱虫達がいた。転がるのをやめてキョロキョロしている。



 …あれ?もしかしてこやつら……後ろがら空きなのでは?というか普通に後ろを見れば私を見つけられるのにどうしてだろ。

 何だかよくわからないけど、今が最大の好機…のはず。さてどうしようか。


 忍び足で近寄って杖でひっくり返すとか?お腹が紙装甲か確かめられるいい機会でもある。でもそれだと1体しか倒せないんだよね。

 何回も今の手が通用するかはわからないから効果的な何かを見つけたい所…。効率よく倒せる何かを…。うむむむ。



 私が考えつつ眺めていると、なんと鉄鉱虫はその場で再び擬態の姿勢に移ってしまった。どゆことー。

 なんで。君達さっきまで私を延々と追いかけて来てたよね。なのになんで後ろに移動されたくらいで諦めちゃうのさ。

 いや確かに誤算ではあったけど嬉しいよ。だけども何か腑に落ちない。もうちょっと頑張るとかないのか君達。


 まあいいさ、ならばその行動をとった事を後悔させてやる。ちょうどいい考えが思いついちゃったんだよね。へへへ、覚悟しなされ。


 いやー落ち着いて考えてみるとちゃんと答えがあった訳だ。絶対って自信まではないけど多分大丈夫なはず。

 もし成功すれば討伐時間の大幅な短縮が狙えるし、失敗したとしても私に被害は無いはずだ。


 という訳で早速行動に移すとしよう。まずはゆっくり慎重に鉄鉱虫に近づく…擬態しているといっても、砂利道に30センチの石が50個くらい転がってれば簡単に区別はつく。

 まあ鉄鉱虫だと理解する前の私ならそういう石なんだろうなで気にしなかっただろうけどね。


 そして私が真後ろに来たというのにやはり鉄鉱虫は何の反応も示さない。あくまで擬態の姿勢を貫いているだけなのか、はたまた本当に背後は気が付かないのかは謎だけど、動かないのならそれでいい。



 (では、いざ…お覚悟…そぉい!!)


 声に出すと一気に動く可能性もあるので声には出さない。だけど目一杯にやる気を込めて…私は石(鉄鉱虫)を思いっきり杖でフルスイングでぶっ飛ばした。


 いくら私が非力だと言っても、多少システムで補正はされる訳でして、結果鉄鉱虫は空を飛び…そのまま崖下へと落下していった。

 そしてその数秒後、私はメニューを開いてほくそ笑む。


 (やったよ!倒せてるよ!経験値ちゃんと入ってる!)


 そう、私が考え出した答えは落下ダメージであった。それもちょっと前に考えていた事とは少し違う。

 あれは私が自ら崖を飛び降りて、それを追ってきたとしたらを仮定していた場合だ。だが今やったのは、外からの力を加えられ抵抗できない姿勢で落とされるものだ。


 崖を転がることが出来れば…這うことが出来れば奴らはダメージをくらわないだろう。しかし何も無い場所まで放り出されれば、鉄鉱虫はそのまま落下するしか手段はない。

 羽があるかもという可能性もあったが、もし羽があるなら最初から使っていたはずだ。わざわざ全員で転がってくる必要は無い。



 そしてこれが討伐判定になるかであるが、これは兎が教えてくれていた。そう、またしてもあの斜め飛び兎である。

 思い返せばあの兎のトドメは私の攻撃では無かった。私はある程度の攻撃はしていたが、最後は向こうの突進で勢い余ってそのまま落下…そして自滅していた。


 なので私は、自分が何らかの攻撃を行った敵であればトドメの方法問わず経験値が入ると予想したのだ。

 だから私は鉄鉱虫を持ってただ投げるのではなく、杖での殴りで崖に落とした。杖というか棒での殴りはスキルにもある正式な攻撃手段になってるしね。いやはや色々と調べといて良かったわほんと。


 あとはこれを鉄鉱虫の数行った後に、魔力推進を使って崖下に降りてドロップアイテムを回収するだけ。簡単だね。



 とは言え流石にすぐ近くで音がしたからか、数体の鉄鉱虫が擬態を解除してしまった。だがまだ索敵状態という感じなのか襲い掛かってくる気配は無い。


 …ならやる事は一つである。


 (やられる前にやる!そぉれ2体目ごあんなーい!)


 私は一番近くにいた鉄鉱虫を同じ様にフルスイング…擬態解除してるしいけるか少し不安だったけど、問題無く飛んでいった。踏ん張りが足りませぬな。

 そして入る経験値…とてもおいしいです。続けざまにもう一体を落とす。うむ爽快。



 そろそろ気が付かれるはず…それまでに落とせるだけ落とす。私はもう鬱憤を晴らすが如くゴルフの様にパッカーンと鉄鉱虫を崖下へと落とした。


 10体くらい落とした辺りで気が付かれてしまったが、背後が弱点だとわかってしまえば対処も楽ちんである。

 魔力推進で後ろに回り込んで、杖で殴る、そして落とす。ひたすら落とす。


 MP消費も魔力推進の短距離移動にしか使わないのでまだまだ余裕であった。それにほぼ一撃で倒せるとわかれば行動にだって余裕が生まれるため、周囲の鉄鉱虫の動きを見ながら対処出来た。

 お陰様で未だ事故無しでございます。素晴らしいことですな。


 にしても本当に我ながら上手くいって嬉しい限りだ。何時間かかるのやらと思っていた討伐が、開始数分で既に半分は減っている。

 このままやればすぐに終われる事だろう。当初の不安要素であったMPKの心配も無く、火力の低さで嘆かなくて済む。



 「あはは!これならまだ全然狩れるよ。レベルもどんどん上げられちゃうよ。さあどんどんこーい!」


 それからしばらく、夢中になって私は鉄鉱虫を落としまくっていた……。


 なんだか今ならゴルフ好きのおじさんの気持ちも理解できるような気がするよ。……気がするだけ。

某心が折れそうなゲームでも落下ダメージは最大の敵。許せぬ。


まともな戦闘をして欲しいと思われるかもですが、カンナさんにそんな考えは無いです。どうにか楽できないか考えます。

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