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山と岩と虫と不遇職

作者は虫嫌いです

 山と言ったら割りと木が生えてる印象が私の中にあったんだけど、今せっせと登っているこの山は木なんてぽつぽつと生えているくらいだ。

 ごつごつとした岩が剥き出しで、地面も土や砂利ばかりの茶色か灰色、その分見晴らしは良いのでゲームプレイ的にはよろしいのだが、登っている気分的には少々まいる。

 別にピクニックやハイキング感覚で登りたいって程でも無いのだけれど、何もない風景よりはいいかなって感じ。


 まあ文句言ったってどうにかなる問題でも無いしね、諦めて登っていきましょい。

 …とは言ってもだ、山登りを始めてから既に30分くらいは経った気がするのだよ。緩やかな上りだからそんなに高いって気はしないけど、如何せん何も無さすぎる。


 そりゃもうとても平和、超平和。魔物どころか野生動物にさえ出会っていない。あっちを見てもこっちを見てもただ石、岩、ロック…一面の灰色である。さっきも言ったなこれ。


 しかしそんな事を言いたい程に何も無いので、困っているのは確かだ。

 平和でいいじゃんって思われるかもしれませぬが、私は魔物を倒してドロップアイテムの鉱石を収集するのが目的なのだ。その前提として肝心の魔物が現れないと何も収穫が無い事になってしまう。


 鑑定持ちか鍛冶職人であれば周りの岩肌や転がってる石などから採掘、採取が可能なのだが…生憎私はそのどちらでも無いし、スキル持ちとパーティも組んでいないのでこの手段がとれないのだ。


 だけどスキルを所持していなくても、戦闘によるドロップアイテムでなら問題無く鉱石を取得出来るらしいので、私はこうして山をひたすらに登っている訳でございますよ。


 あぁ、それとドロップ取得の鉱石でもスキルが無ければどれも同じアイテムに見えるとかなんとか。一応別の種類ならインベントリ内で勝手に分けられるから、ある程度の予想はつくみたいだよ。安心だね。



 「うーむ…もしかしたらここら辺には湧かないのかな?」

 ここまで何も出てこないとこんな考えも浮かぶものだ。

 確か調べた限りこの山に出現する魔物はアクティブエネミー、つまりプレイヤーを見つけたら向こうから攻撃を仕掛けてくるタイプのはずだ。


 なのにまだ何も起きてないという事は、私を見つける魔物がいないのではと。誰かが通った後にしては綺麗だし、私は堂々と道の真ん中を歩いているため見つける事が出来なかったというのも無いだろう。


 「湧きが極端に低いって訳でも無い筈だしなぁ…やっぱ場所が悪いだけなのかなー。」

 もしかしたら魔物が少なくて採掘採取がやり放題のおいしい場所的なあれだったのかもしれないね。

 生産職からしたら素晴らしい場所なんだろうけど、今の私には何の恩恵も無い。悲しみ。


 ま、それならそれでさっさと移動してしまおう。折角魔物狩りに来たのに成果何も無しで山登り楽しかったですは辛いのだよ。



 ……もういっそのこと魔力推進で一気に上に登ろうかと私が思案し始めた頃である。不意に私の視界の端の方で何かが動いた気がした。

 遂に本日初魔物かとガバッとそちらを見た私は、「んん?」と首を傾げてしまった。


 「あれ…何もいない…?」

 確かに何か動いたと思ったのだけれども、私の目の前には相変わらず何も無い山道が見えるのみだった。魔物の影も形も無い。

 ストーンゴーレムであれば人間サイズはあるはずなので何も無いこの道では隠れる事は不可能のはず。ロックリザードはそもそも岩みたいな皮膚を持つだけのトカゲなので流石にわかるはず。


 それにさっき言ったけど、両者共にアクティブエネミーなので私に襲い掛かってこないのはおかしい事である。

 親愛の証が何か効果を発揮しているのかもと少し考えたけど、あの兎だって最初は意気揚々と突っ込んできたし、何かしらのキッカケがないとスキルの効果は無いんだと思って首を横に振る。


 そうなると残された可能性は二つ。


 一つはただの見間違えだったという事。例えば石が転がっただけだったとかね。他の事を考えていたし充分にあり得る話だ。なんてったって私だしな。


 そしてもう一つが調べた時には見つからなかった魔物が隠れている可能性だ。私が調べていたのはテスト版の情報と今かなり盛んな掲示板だけである。

 掲示板故に全てを書き込んでいない可能性だってあるし、テスト版にはいなかった追加の魔物が実装されていてもおかしくはない話だ。


 正直私としても見間違えでしたよりは後者の方が嬉しいのでそうであって欲しいところだ。

 なので私もおかしな所は無いかとじっくり地面や壁となっている岩肌を見てみる事にする。



 「むー…見るだけじゃやっぱりわからないかなぁ。突っついてみようかな。」

 はい、どれもただの石っころにしか見えませんでした。当然でしたね。

 てことで、手段を変えてそこそこ大きめの石を杖で突いてみる事にした。流石に直接手で触っていく勇気は無かったんだ…許して。


 ではでは近くの石からつんつん…何も無し、次…つんつん………。


 「…これ傍から見たら滅茶苦茶地味だし変な人じゃない!?」

 つんつんし始めてから気がついてしまった。思わず周りを別の意味で警戒。魔物よりも人の方が怖いわ。

 「よかった、誰も居ないみたい…あぁ〜迂闊でしたわぁ。」


 もう無駄に話題になるのは嫌なのです。私はのんびりまったり平和なゲーム生活を送りたいのだ。

 それを謎の石ころつんつんガール現るとかで掲示板に出たくはないです、はい。

 常に周りを警戒…とまでは言わないけど、何か行動する時くらいは気をつけよう。実行できるかは知らんけど善処致します。絶対無理だろとか言わないの。



 さてと、また怪しいものがいないかつんつんガールに戻りましょうかね。


 そう思い私が再び視線を地面に向けた時である。

 「あれ…?何か違う気がする。んん?」

 私は一歩も動いていなかったはずなのだが、さっきまでと何かが違っている気がするのだ。そんな細かく覚えている訳無いだろと言われれば確かにそうなのだけど、それでも違和感がある。


 一度そう思うと気になってしまうお年頃、私は多分この辺りと違和感を感じる場所の石っころを突っついてみる。そーれ何かおるかなー?



 と、私がその辺りの石の中では大きめな石を突いた瞬間である。その石は唐突にガタガタと震えだしたと思いきや、私が元いた場所に向かって思いっきり飛びはねた。

 私が元いた場所っていうのは、石が震えだした時点で既に私はビビってめちゃくちゃ後ずさりしていたからである。

 いやそりゃビビるでしょ。どう見てもただの石だったしそんなのがガタガタ震えてるのにおもしろーいと無警戒な人はいない…はずだ。

 最低でもこの世界でそんな精神してたら余裕の死に戻り常連になってると思う、多分だけだね。


 それでやっぱり何か潜んでいた訳でございますが、一体何が居たというのか。そういう石なんですってのはやめてよね。


 とりあえずその飛びはねた石を私は注視する。魔物であればこれで名前とHPが表示されるはずだからだ。

 最初からそうやって探せばいいじゃないかと思われるかも知れないけど、これって対象をちゃんと認識してないと表示されないみたいなのよ。


 明らかにオブジェクトではないとプレイヤーが認識すると、システム側で何か色々と判断されてやっとエネミー表示になるとかなんとか。

 まあ私にはよくわからない仕組みに違いはない。そんな知識は何も無いからね。



 私が表示されろーと思いながら件の石を見ていると、案の定名前とHPバーが表示された。

 よかった…変な石アイテムとかじゃ無かった。いや魔物な訳だからよかったはおかしいのかな?今の私的には嬉しいけどさ。


 んでこいつの名前は【鉄鉱虫】というらしい。どうでもいいけど漢字だけの魔物もいるんだね。横文字だけかと思ってた。


 私に攻撃してきたのでもう擬態は意味ないと思ったのか、鉄鉱虫はのそのそと動き始めたのでその姿を漸く見ることができた。


 大きさは30センチ程度、蜘蛛のように足が8本生えている。

 …まあ正直これしかわからないんだけどね。だって背中の石で他の部位が見えないんだよ。ほんと石から足が生えてるように見えるんだよ。

 あの石って背負ってるだけなのかな?それともあれも体の一部なんだろうか。気になる。


 しかし姿と名前からして倒せば間違いなく鉱石を落とす魔物であろう。動きも遅いみたいだし引き撃ち意識で落ち着いて対処すれば問題無さそうである。


 なので私が早速と言わんばかりにマジックショットの詠唱を始めると、不意に背後からガタガタとさっき聞いたような音が聞こえた。

 「うしろっ!?」

 不意打ちとは卑怯なり。だけど避けなければ多少マシになったとはいえ低耐久の私には痛手となってしまう。


 既にマジックショットの詠唱も開始していたため出来るかどうかは半ば賭けだったが、私は強引に「魔力推進!」と叫んだ。

 直後私はだいぶ慣れた感覚と共に前方へと吹っ飛ぶ。それはもう速度とか距離とか何も考えないでね。


 「へぶっ!」

 おかげで石ころ転がる山道に思いっきり着地してしまったけど、鉄鉱虫の直撃を食らうよりはマシだろうと思う。

 いやーにしても意外と発動してくれるもんなんだね。マジックショットは詠唱途中であったので掻き消えたけど、ああやって緊急回避も出来るのがわかったのは大きな収穫だ。

 ますます私の中で信頼度が上がってくよ魔力推進、素敵。



 よし、戦闘再開といこうではないか。不意打ちを受けたけど、確かにこんな石ころだらけの場所なら何体か潜んでいてもおかしくはない話だよね。

 私が移動したので正面で対面する事になった2体の鉄鉱虫は、転がるようにしてこちらに迫ってきていた。なんだ君達その移動方法は。



 というか…なんか奥の方で何か動いてない?あれ、しかもこっちに来てない?うそん。

 「まさか…あの動いてるの全部鉄鉱虫なの…?」

 こちらに転がってきている鉄鉱虫であろう数は、ざっと見ただけで多分10体は超えている。

 「ちょっとちょっと勘弁してよぉ!こっちは範囲攻撃無いの!あーっもうやってやる!」




 私が平和だと思っていた山道は、いざ再びの虫虫パラダイスへと姿を変えていた…。なんか前も同じような考えしたいた気がするぞ私、こういう所全く成長してないな。


虫が多い?気のせいです。

なんか使いやすい気がするんです、虫って。一撃で倒せるようなやつから頑丈な甲殻で強いやつ、傍また数の暴力まで…。


色んなゲームで序盤から終盤まで出てきてる印象の私です。



投稿遅れたのはお空の初日が泥沼になっていたからです。すいません。

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