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調べる不遇職

説明しかしてない気がしてきたこの作品

 絡まれて困り果てたのが早二日前。私はその間ひたすらにごろごろしていた。レベル上げとか何やらやりたいのが本音ではあったが、まともに出歩けない状況故仕方なかった。


 最初は片っ端からブラックリストにぶち込んで解決しようとも考えたんだけどさ。よくよく考えると、これ結構穴があると言うことに気がついたのだ。それも多分他のゲームでなら全く気にしないようなそんな事だ。えふこねじゃ無ければ私は容赦なくぶち込んでたであろうね。


 んで何が問題かって?とりあえずブラックリストの機能をもう一度思い返そう。

 ブラックリストは登録した対象の『声が聞こえなくなる』のと『システムの壁で触れる事ができなくなる』ものだ。まあハラスメント対策が主な用途らしいから妥当なものではある。個人間でのトラブルなら問題無いであろう。


 さて、それで今回は私の魔力推進というスキルによる行動が問題を起こした訳だ。個人間でセクハラされたーとか暴言言われたーという問題ではない。

 そしてブラックリストの穴っていうのは、『登録した対象の姿は見える』というものだ。声は聞こえない、直接触れる事は出来なくてもただ見るだけなら可能なのだ。

 ぶっちゃけじろじろ見られるのも場合によっちゃセクハラとかになりそうな気がしなくもない。線引きは難しいのかな。


 話しを戻そう。それで私が下手にブラックリストに登録しまくると、私から見たら平和になるのだが実際は違うという状況になる。

 どういうことかって、私が登録した人を視認しない限りは、どんなに尾行されていようが私の知り合いに絡んでいようが気がつく事が出来ないってこと。つまり私に対してだけ隠密性が上昇しちゃうんだよね。


 それでまた何かしら面倒な事になると私も困るのだ。私個人に何かしてくるくらいならまだ我慢出来るが、周りに迷惑が掛かるのは流石に我慢ならない。

 今でさえ他のヒーラープレイヤーとかに迷惑掛けたってのに、更に身近な人が迷惑被るのはごめんだよ。

 心配しすぎだろと思われるかもしれないが、現実よりも物騒な事がやりやすいこの世界だ。不安な要素は減らせるなら減らしておくべきだろう。


 ま、結局うだうだ言ってるけど全ては私がスキル習得のやり方をバラせば解決するんだけどね。それをやらない私が悪いが、やはり自分で少しは頑張れという事である。こんな有用な情報そんな簡単に喋ると思わないで欲しいのです。




 ……それに、この二日で外の様子はだいぶ改善はされてきているらしい。

 どんな事が起きてるかというと…「新情報が見つかったからといって特定の個人をあぶり出す様な事は悪いだろう」とか、「他人が苦労して手に入れた功績に乞食が如く群がるのは恥ずべきだ」とか色々な声が挙がったみたい。

 あとこれからも一々こんな騒ぎになっていては、当事者になりたくないと冒険的な行為をするプレイヤーが減ってしまうってのもあった。


 自由度が高いゲームであるのに、それをプレイヤーが潰しにいくのは違うだろうという事だ。主に散々な目にあったプレイヤー達が頑張ったみたい。

 そんな人達が知り合いにいる人も多く賛同して、すぐに浸透していったとか。


 情報公開するもしないも見つけた本人の自由、文句あるなら自分で見つけて公開しろ。これで落ち着いたらしい。


 更に妙に活動力のあるプレイヤーがNPCにまで掛け合ったらしく、あまりに迷惑なプレイヤーは衛兵に連行されるようになったとか。しかもちゃんと罰則も掛かる。

 たかが序盤で入手できるスキル一つのために犯罪履歴持ちになるのも馬鹿らしい訳で、ヒーラーも普通に出歩ける程になったみたい。


 何か衛兵が無駄に優秀でここでならバレんだろとかいう場所でも、どこからともなく湧いてくるらしくてね、それでむしろ今はこの衛兵の謎索敵能力の方が話題性あるとかなんとか。

 まあNPCから教えてもらうスキルもあるし、もしかしたら衛兵が鍵になるかもしれないってなら話題にもなりますわな。

 でもやり過ぎると捕まるのでみんな程々にね。


 ついでにこうしたNPCとの繋がりが持てる事が判明したので、ちゃっかりと商人プレイヤーはNPCと結束して儲けを出そうとか企んでいるようです。金になりそうな事なら即座に行動…実に商人らしいですね。腹黒そう…おっと失礼。



 ま、つまりですよ。これで私も外に出てレベル上げやらなんやらを安心して出来るようになる訳ですよ。やったね。

 二日間ぐうたらしてたから序盤ダッシュ勢からは遅れたけど、別に急いで攻略する必要も無いためこれはそんなに問題ではない。

 むしろ色々調べられたから前よりも安定したプレイが出来るのではないかと思っている。無鉄砲カンナさんな時代は終わったのだ、ふっはっは。



 という訳で、早速だけどちょっと外で買い物をしよう。今回の問題で私に必要な物がわかったから、それをちょちょいとね。それで道すがら調べた事を纏めておくよ。


 私はごろごろ用のインナー姿から外出用の装備に着替えて、実はずっとアニマルセラピー的な感じで撫で回していた兎を連れ2日ぶりに部屋から出たのであった。




 「んん〜っ!日光が眩しいねぇ!」

 健康的な意味がこの世界で存在するのかは知らないが、気分的には良いので気にしてはいけない。

 あと兎は受付にちゃんと預けた。預けられた瞬間からモフられていたのにはご愁傷様であるが、しばらく我慢してね。


 私の目的地は宿から少し離れてはいるが、ここは普通に歩いて行くつもりである。状況が落ち着いたというのは周りを見た感じ本当みたいだし、屋根移動する程遠い訳でも無いのでね。のんびり歩くのも悪くない。

 うむうむ、平和になってなりよりです。やっぱゲームはまったりほのぼの楽しんでこそだよ。…たまに見られている気がするが気のせいだと思っておこう。




 さて、目的地まで多分…何も無いはずなので私が暇潰しに調べた現在の様子を話そうと思う。


 現在ゲーム内での最高レベルは16だとかで、あと一週間も経たない内に派生職になる人が出てくるだろうという事だ。派生職にはレベル20でなれるよ。

 今日はゲーム開始から6日目なので一週間とちょっとで派生職って訳だね。早すぎない?どんだけ狩り続けてるのさ。


 …まあ彼らはテスト版経験者って話だから効率の良いやり方がわかっていたのだろう。スタートで突き放して攻略の最前線に立ちたいのはオンラインゲームではよくある話しである。

 そんな攻略しまくってくれる彼らがいるからこそ、後続の私達に情報や資源が行き渡ったりするので悪いものでもないしね。


 なお私はあれからレベル上げをしてないので相変わらずレベル4のままである。ウィルチェさんはせっせと生産してるからレベル6になってたよ。私も頑張らねばね〜。



 次、オスロン周辺の敵分布とかもテスト版からの変更含めて判明したみたい。

 まずどの方角の門から出ても初めはスライムのみの草原がある。そこから進むと各方角で違ったフィールドが広がっている感じになる。


 東は兎狩りで行ったけどひたすら広大な草原地帯になっており、ロケットラビットを主体として動物系の魔物が出現する。

 狩場的には次々に飛んでくるロケットラビットが害悪過ぎてレベル上げには最悪だとか。タンクでぎりぎり二発耐えれるかという攻撃力、軽装や魔法系ならほぼ即死となればそりゃそうなる。

 やっぱりあの攻撃性能に全振りした兎はどのプレイヤーからも脅威と認定されたようだ。……その内一匹は完全に野生を失って愛玩動物になっておりますがな。



 んで西は件の虫天国…森林だ。ジャイアントアントが蔓延り、たまにポイゾネススパイダーやでっかい蟷螂型の魔物であるマンティスが出現する。

 いやぁやっとシンプルで定番な名前の奴が出てきたね。しかもわかりやすい。どこぞの兎も見習ってほしいところである。

 そして現状はここがおすすめの狩場という話で、無尽蔵に湧いてくるジャイアントアントをひたすら狩りまくるらしい。

 蟻単体の性能は低いのでやられる可能性は低く、奥に進めば進むほど出現数が上昇するのでレベル13くらいまでなら非常にサクサク上がるとかなんとか。


 あとだいぶ奥らしいけど怪しげな祠…というかいかにもダンジョンの入り口ですと言わんばかりの建物が見つかったみたい。ただ開け方が不明なので情報募集中だってさ。クエストかアイテムが必要なのが今の有力説。



 こっからは私が行ってない北と南である。


 北は少々の荒野とひたすらに山岳となっている。魔物は人間サイズくらいのストーンゴーレム、岩みたいな外皮を持つロックリザードなどの岩石系が殆どで、生産素材になる鉱石や魔石がドロップするので金策はこちらだって。

 ただ斬撃は通りが悪いから打撃武器を忘れずにと注意書きもされていた。まあ当然の事である。



 最後の南側だが、こちらも森林となっている。西と同じに思えるが、あっちは薄暗くてじめじめとした環境で、南の森は日光が差し込みやすいようで明るくて過ごしやすいらしい。

 そのせいか亜人系魔物であるゴブリンやオークが主な敵なので、他の方面と違って難易度が高めになっているとの事。

 ゴブリンは数と素早さで、オークは素早さは無いが力押しで攻めてくるため大人数での狩りが推奨されている。場合によっては2パーティで行ってもいいだってさ。

 勿論その分経験値が西の森よりも高いので、西である程度まで上げて南へ移動するのが前線プレイヤーの流れとなっている。



 以上、私が調べた現状の狩場情報でした。ぱちぱち。

 いや他にも調べてたんだよ。各職のスキル構成とか条件付きスキルの習得方法とかその他色々とね。

 だけどそろそろ目的地に着くのでここまで!あとはそのうちね。



 それからちょっと歩くと、私は目的地である防具屋に到着した。

 防具屋なら宿の近くにもあるにはあるんだけど…ちょっと高かったりでね…。

 それでここは安定のギルド系列なので店も大きく品揃えがいいんだって、ウィルチェさんが言ってた。ついでに私が貰ったこの装備を買ったのがここだとか。


 どうして装備貰ったのに防具屋に来たのかと言うと、今着ているローブに頭をすっぽりと隠せるフード的なのを付けてほしいと思ったからである。

 姿がわかる状態で目立つ事をしたので騒ぎになったのだ。

 なので量産系ローブとフードで隠してしまえば誰だあいつはとはなるが、何の職業で外見はこうだったとなる心配が減るはずだ。

 そして私の平和なゲーム生活のためにもやらねばならぬことである。それにお代も安いし追加でステータス補正がプラスされるのでいい事尽くしだ。


 「よーしっ!ちゃちゃっと決めて二日ぶりのフィールドに行くぞー!」

 そうやってウキウキしながら私は店内へと入っていった。

後書き長め


 ブラックリストの事は私が気になっていた事でもあります。現実のゲームではプレイヤー側とNPC側で決まった行動しか取れないためブラックリスト入れてはい解決になります。そうでないゲームもあるのかもしれませんが、私の経験では無いためこう判断しました。


 ですが大抵のVRMMO作品だと基本的にプレイヤーは自由に行動でき、NPCも現実の人間と同じように生活するという高度なAIを持っています。

 そんな世界でただブラックリストに入れるだけで解決するのか?というのが私個人の考えです。作中記載しましたが、見えるのならむしろその人に対して触れる以外はやり放題なのではと。

 じゃあそんな機能要らないじゃんってなるかもしれませんが、なかったらなかったで暴言などに対する最低限の自衛要素も無いのでとても辛い思いをする人が出てきます。


 無いと困るけど、有っても絶対解決にはならない。それがVRMMOでのブラックリストなのではと私は考えています。


 細かくなりますともっと長くなってしまうのでこの辺で。次回は久々のフィールドへ向かう…予定です。


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