ホール勝ち?
第一章:宇宙のエネルギー
この物語は戦いの記録である。
鉄の剣をもった者が戦いあう物語である。
はじめにこの物語の宇宙について話そう。
宇宙の真ん中では何が起きているかわからない。
時折、エネルギーが四方に向かって発せられる。
エネルギーにはいくつかの種類がある。
そのひとつは。
まっすぐ、ただまっすぐ遠くへと向かうもの。
どんどん加速していくものもあれば、ゆっくり向かうものもある。
後退するものはいない。
この物語ではストレイトと呼ぼう。
また、そのひとつは。
円を描きながら段々と中央から離れていくもの。
とても大きな楕円を描くものもあれば、小さい円をえがくものもある。
円を描きながら中央から遠くへとむかっていく。
この物語ではサークルと呼ぼう。
また、そのひとつは。
周りの者を吸い込みながら彷徨うものであった。
とても大きな吸引力のものもあれば、力が弱く影響の少ないものもある。
彷徨いながら少しずつ遠くへと流されるように動くのであった。
この物語ではホールと呼ぼう。
中央から発せられるエネルギーは不規則なものであった。
そのため彷徨っているホールに後から発せられたストレイトやサークルが衝突することが稀に起きた。
大きな円を描くサークルが、ホールやストレイトにぶつかる、只々まっすぐ進むストレイトが、サークルやホールにぶつかったとも言える。
もちろんのこと。同種の衝突も発生していた。
確率はわからないが、衝突した三種のエネルギーの力のバランスが取れて、あたかも一つの塊として宇宙に存在する場合もあった。
衝突エネルギー体の一つがこの物語の世界である。
まっすぐ進めず、円を描けず、ストレイトとサークルは不満であった。
ホールはそれほど不満ではなかった。
むしろ自分の力を誇示することが出来たのだ。
第二章:戦いのはじまり
進む。回る。引く。
本能とも言うべき行動を抑制されたことにより欲望が生まれた。
まっすぐ進みたい。
大きな円を描きたい。
もっと吸収したい。
衝突によりエネルギーが拡散され、元の力はなかった。
散らばってしまったストレイトのエネルギーは、まっすぐ進むことが本能のため自力では再集結することが出来ない。
皮肉なことに飛散したホール達によって、飛び散らずにこの場近くに居られるのだ。
力は弱く分散してでも本能のままに進む方が幸せなのか、それともまた一つに集まって力強く進む方が良いのか…。
サークルは円を描く性質のため、一つのエネルギー体に戻る可能性はあった。
しかしホールのため思うように回ることができず、ストレイト達とぶつかってさらに分裂することもあった。
ホールはひとまずこの場での勝利者である。
いくつか同胞たちが飛散してしまったが、ストレイトとサークルが衝突による分裂を繰り返せばいつかは自分が吸収できるときが来ると考えていた。
幾億万年もの時間が経過して、ストレイトとホールは数百万もの小エネルギー体へ分裂していた。
ホールは最初の衝突でいくつかの個体に分かれてしまっていたがいよいよ勝利の時が近いと感じていた。
・・・。
・・・。
数百万に分裂したものたちを吸収できないはずがない。
なぜすべて吸収できないのかホールは分からなかった。
散らばったホール同士の吸引力が、ストレイトやサークル達に、力が均衡した場を与えていたのだ。
ホールは何もできずその世界での場として存在した。
ストレイトとサークルは元のエネルギー体としての力を維持できず、分裂体としてその場に存在した。
いつしか人型のエネルギー体へと変貌した。
人型達は本能的に敵対していた。
この人型達を、ストレイト族とサークル族と呼ぼう。
そして、その眼では見ることができないがホールを感じ、恐れを抱いていた。
次回から、ストレイト族とサークル族の戦いを書いていこう。