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メモリア

掲載日:2017/06/20

作者が初めて書いた小説を再投稿しておきます。

もしかしたら読んだことある人が出てくるかもしれませんが……。

改稿はしていないので超絶読みにくいと思いますし、よくわからないところやなんかいろいろわけわかめなところあるかと思います。

そしてラスト。

これは以前投稿していたときに感想をくださったのですが、「何も成し遂げない物語なら書くな」というようなことを言われました。

まったくその通りだと思いましたね。

というわけで、あまり期待しないでください。

ちなみに読むかどうかは削除前の累計PVアクセス数8000を参考にしてください。

 7月2日、俺はふと空を見た。冷たい何かが降ってきている。

 これは、そう・・・雨だ。雨が降っている、そのせいで倒れているのかもしれない。

 仰向けになって俺は倒れている。

 季節的に言えば今は梅雨だ。

 まだ梅雨が終わっていない、はやくおわらないだろうか。

 梅雨は一番嫌いな季節だ、でもこの世界での梅雨は初めて味わった。

 この世界の梅雨は向こうの世界より冷たいような気がする。

 向こうの記憶はあまりないから不確かなものだけどおそらく冷たいだろう。

 俺は冷たい雨が降り注ぐ中、血を流し倒れていた。

 こっちの世界にも梅雨はあるのだ。

 向こうの世界にもあった・・・ような気がする。


 この世界の空は青くない。

 この世界の空は暗い闇に包まれているようだ。

『この世界』、俺は今自分がいた世界とは異なる世界にいる。

 この世界では常に紛争や戦争が行われている。

 戦争といっても数カ国もあるわけではなくたった二つの国で争っている。全くもって馬鹿馬鹿しいと思う。

 たった二つの国しかないのになんで仲良くできないのか、俺がこの世界に来る前よりも遥か昔からずっと続いてるらしい。

 でも、国同士が常に争っているのは向こう側でも同じだ。ただ、殺し合いをする国は少なかった。戦争に終わりはあるのだろうか。

 そして、

 俺は先日その戦争で戦うよう招集命令が下った。今、戦っている。

 いや、正確には『戦っていた』になるかもしれない。

 俺はついさっき相手側にうたれてしまったのだ。

 この世界では銃弾戦が流行っているのかも。

 相手にうたれたのになんでいきているのか・・・死ぬまでの時間はこうも長く感じるのか・・・銃声が鳴り止まない。

 目の前を銃弾が通り過ぎていくのを肉眼で確かめることができるなんて思わなかった。

 こんなことは初めての体験だ、大抵の人がそうだろう。

 死にかけを体験するなんて滅多にない。

 手を空に向かって伸ばして拳を開ける。

 はやく向こう側に帰りたい・・・こんなことがいつまで続くのだろうか。

 俺は死ぬまでこの世界で過ごさなければならないのか・・・もう死にかけなのだが、そして俺は気を失った・・・。



 数日前・・・


「お~い、はるか~どこにいるんだ~?」

「こっちだよー」

「おにいちゃんじゃみつけられないよーはるかー」

「おにいちゃん!ちゃんと探してるの?」

「ちゃんと探してる・・・」一応。

 俺ははるかとついさっきまでかくれんぼをしていた。

 俺はめんどくさくて探す気はさらさらないが可愛い妹の好感度を下げないために歩き回っていた。

 するとはるかが出てきて頬をふくらませている。

 ふくらんだ頬は少し赤くなっていた。それは夕焼けのせいなのかもしれない。妹の頬が夕焼けで赤く染まっている。

 頬が赤く染まった女の子は大抵可愛くなる・・・そうじゃないやつもたまにいる。そしてもう暗くなり始めている。

 あと少しで夕焼けもみれなくなりそうだ。2ヶ月前はるかは中学生になった、だからもう中学校の友達とばかり遊んでいてあまり一緒にいる時間がない。

 だから今日は特別な日だ、カレンダーにでもかいておこう。

「はるか、そろそろ帰るぞ~」

「あ、まって!おにいちゃん!」

「なんだ?」

「えっとね、あの・・・」

 とはるかがもじもじしながら上目づかいでこっちを向いている。

 どうしたんだろう・・・。

「おしっこ・・・。」

「・・・えっ!?はるか、もうすぐ家だからそれまで我慢しような」

「でもぉ・・・」

「お前だってもう中学生なんだからそのくらいできるな?」

「うん、わかった!我慢するっ」

「じゃ、帰ろうか」

 俺は優しく微笑んだ。

 帰り道、自動販売機の横を通った。

 そこではるかが

「おにいちゃん、喉渇いたー」

 といってきた。さっきいってたことはなんだったんだ・・・。

「さっきおしっこっていってたじゃないか、もっとトイレにいきたくなるぞ?」

「大丈夫だもんっ」

「しょうがないなぁ・・・。はるか、何が飲みたい?」

「んーっとね、こーら!」

 はるかは自動販売機のコーラを指さしながらいった。

 今時のこどもが指をさしながらいうものなのか・・・?

 俺はコーラを買ってはるかの方に振り向いた。

「ほら、はるか・・・」

 そして、振り向いた直後はるかが倒れた。吐息が荒い・・・熱でもあるのか・・・?

「はるか!どうした!?」

 思ったとおりだ、はるかの体は熱い。

 無理して遊んでいたのかもしれない、もしかしたら俺と遊ぶことを楽しみにしていたのかもしれない。

 そう思うと申し訳なくなってしまう。

 そんなことよりとにかく今は家にはやく連れて行かないと・・・俺はおぶって帰った。

 俺たちの家は一軒家ではない、親は両親ともに別居中だ。

 夫婦喧嘩の真っ最中で妹に夫婦喧嘩だと知って欲しくなかったから俺は妹を連れて家を出た。

 両親は二人共子供にだけは優しいので仕送りなどはしっかりしてくれているのだ。

 おかげでバイトとかもしなくていい。一時期バイトをしていた時期があったがそれは妹と旅行にいったりするためだ、ずっと家でいるのはつまらないと思ったからお金を貯めてはるかと二人で行った。


「あれ・・・、財布どこにいったんだろ...?」


 そこでふと自動販売機に財布を置き忘れていることに気がついた。

 俺ははるかに「ちょっと出かけてくるけど待っててな」と苦しそうに寝ている妹に一言残して家を出た。

 さっきコーラを買った自販機で落としたのだろう。

 妹が倒れてバタバタしていたから仕方がない。

 そしてはるかが倒れていたあたりに財布はあった。

 無事にみつかってよかった・・・これには今月分の食費が入っている。

 心配なのでいつも持ち歩いているのだ。そして帰ろうと車道を横断しようとした瞬間右から車が突っ込んできた。

 その時俺は血を流しながら倒れた・・・。

 血がいっぱい流れている。死ぬのは怖い、体が冷たくなるのも時間の問題だろうか、時間には逆らえない・・・。

 俺はもっと妹と過ごしたい。でももうできないかと思うと涙が出てきた。涙と血を流しながら俺は闇に包まれていった。



 7月5日、俺は目が覚めた。

 気を失ってからどのくらいたっただろうか・・・。

 どれだけ時間がたったのかわからない。ずっと意識がなかったなのだから当然のことだろう。

 なぜか目からは涙が溢れている。

 長い夢をみていたような気がする。

 長い、長い・・・とても長かった・・・でも実際は起きるちょっと前に夢をみるのだろう。もといた世界で科学的に証明されている。


「お、目が覚めたかね?君」


 突然澄んだような声が部屋の片隅から聞こえた。

 反射的にそっちを向いた。

 とても可愛い女の子だ向こうの世界で中学生くらいかな、まだ幼い感じが残っている。

 でも、少し大人っぽいような・・・何を言おうとしているのかわからないがとにかく可愛かった。

 凛とした目つきで髪の毛はセミロングくらいかな。そんなどうでもいいことを思いながら女の子に問い返した。

「あ・・・えっと、君は誰・・・?」

「えっとね、私ははるかっていうの、戦場で瀕死の君をここまで運んできたんだよ。ちなみにここは空間の狭間にあるからゆっくりしていても襲われたりしないから安心してね♪」

 はるか・・・どこかできいた名前だ。

 この世界に来る前にきいたことがあるのか・・・俺は向こうでのことをあまり覚えていないようだった。

「はるか・・・さん、空間の狭間ってどういうこと・・・?ここは異空間ってことですか・・・?」


 俺は気になったことを聞いた・・・しかしはるかさんは目を丸くしてきょとんとしている様子だ、俺は何かおかしいことを言ったのだろうか。


「私はね、空間に穴をあけてその空間を安定させることができるの、っていっても安定させることができる時間は限られているんだけど。こっち来るときにそういう能力を授かったみたい。でもここを維持できるのはあと半日くらいなんだけどね、君が3日も寝込んでいたからね、そろそろ出る準備をしなくちゃいけない」

 そんな能力がこの世界にはあるのか・・・。

 あっちの世界にもあったらどれだけ便利だっただろうか、あったとしても俺にそんな能力はないか。

 それはそうと、出る準備といっても俺は身につけているものだけで全部なのだが・・・。

 あたりを見渡すとあまりものがなかった。

 部屋に扉はないし・・・この空間には一つの部屋しかなさそうだ。

「あの、俺は身につけてるものだけなんで、はるかさん準備してきていいですよ」

「私もこれだけで全部だから気にしないで♪じゃあそろそろでましょうか」


 そう言った瞬間目の前が暗くなった。

 あの時と同じだ・・・あの時っていつだったかな。まぁ今はいいか。

 そして、突然目の前が明るくなった。

 明るくなったといってもこの世界では常に闇なので暗さが少しマシになっただけなのだけれど、それでも大分明るい。

 手で闇の光を遮って空を見る、これはもう癖になってしまったかもしれない。空をみるとなぜか少し悲しくなる。

 向こうで空をもう一度みてみたい。

「じゃあ移動しましょう。とりあえず私の仲間がいる隠れ家へいきましょうか」

 隠れ家なんてあるのか・・・しかも仲間だなんて、受け入れてもらえるのだろうか。

 そんなことを考えている間についていたらしい。思っていたよりもずっと近かい、少し驚いた。


「ただいま~」


 はるかさんがそういった直後奥の方から「「おかえり~」」と何人もの声が重なって聞こえた。

 俺たちは奥の方まで進んでいった。

 すると突然目がくらんだ・・・目の前が真っ白だ。

 ここは外よりもずっと、ずっと明るいようだ。

 それもそう、ここには向こうの世界である太陽が擬似的に作られているのだから。俺はやっと目が慣れてきた頃にはるかさんが


「みんなただいま、新しい仲間を連れてきたよ」

「お~、こいつがそうか?なんかよわっちそうなやつだなぁ」


 なんかイラっときたので殴ろうと思ったが相手の体格をみてやめた。

 そいつの腕は筋肉でパンパンなのだ。仕方なく拳を収めて周りをみた。

 男も女も同じくらいの人数比率だ。

 でも、・・・人数はそこまで多くない。

 俺がいた国の所属していた部隊は200人はいたがここにはその10分の1ってとこだ。

 と、疲れてきたのですぐそばの椅子に座ろうとすると「きゃっ」と聞こえた。

「え・・・?」

 目の前にいきなり女の子がでてきたなぜこんなところに・・・と思っていたらはるかさんが説明してくれるようだ

「この子は透明化できる能力を持っているのよ、恥ずかしがり屋さんだから許してげてね?」

 と苦笑まじりに言われた、まぁそれなら仕方ないか・・・とそこで思考が切り替わった。もし俺にも透明化の能力があったら・・・と考えてしまった。

「じゃあとりあえず自己紹介するね。私はこのレジスタンスの副団長はるかです♪それでさっきのガチムチさんがここの団長、ごうきさん、透明化できる彼女がクミさん、あとはまぁめんどくさいから省略するわ」

 省略されてしまった。ちょっと知りたかったが・・・今はそれで十分ということか。

「そういえばここってレジスタンス・・・なんだよね?どんなことしてるの?」

「レジスタンスといっても戦争の被害を最小限にするためのものだから正義よ。ついでにいっとくけど私たちはみんなもうひとつの世界。空が青い世界からきたの。」

 え・・・それじゃあ・・・といったところではるかさんが次に言う言葉はわかっていたようで

「そ、あなたも向こうの人間だからここに連れてきたってわけ、こっちに来るときに年齢とか外見が変わったりしていて知り合いかどうかはわからないようになっているの、だから本当は知っている人かもしれないわよ」

 そ、そうなんだ・・・でも俺には知り合いは、知り合いがいたという記憶はもうない。向こうからこっちに来るときに失ったようだ。本当に失ったのかはわからない、もしかすると頭の奥深くで眠っているだけかもしれない。そう考えると希望が湧いてくる。いつ向こうに戻れるのか。はやく戻りたいと思ったいた。

「あんたらは向こうに戻りたとは思わないのか?空間に穴をあけれるなら帰れるんじゃないのか?」

 この人たちが思いつかなかったのかもしれないので一応いってみた・・・すると

「え・・・帰れるのか・・・?」

 ・・・っ

 もしかして試したことがないのか。

「一回試したことあるわよ。でも、無理だった。なぜかわからないけれどね・・・。」

 それでレジスタンスなんかやっていたのか。

 そりゃあここにきたら誰だって帰りたいと思って試行錯誤するよな・・・。

 俺だってここに来たばかりの時はいろいろ試したさ。

 でも、無理だった。

 というか俺には何の能力もないのだから、そういえば能力ってどうやって使っているんだろう。

 そんなつまらないことを思っていたらほかの仲間が慌てた様子で「どっちの国かはわからないが200人くらいの戦闘員がこっちにきているぞ!」俺はそんなことってあるのか!?と思い周りを見渡した・・・でもみんなこんなことは初めてだったらしく対処に戸惑っていた。


「みんな落ち着け。これから反撃にでる、非戦闘員は奥で状況整理と状況報告を。戦えるやつは俺と一緒に来い。それからクミは透明化して奴らの指揮官の確認と逃亡した時の追跡を頼む。それと、相手に気づかれないようにこの無線機で連絡をしてくれ、最大でも1時間おきだ。1時間で連絡が来なかった場合はお前が連れ去られたと考えて救出に向かう。」


 そういったのは団長だった。こんな時に頼りになるのはすごいなぁと思った、そして、なぜか俺も呼ばれた。能力なんてないのに。・・・そう思っていたのは俺だけだった。


「お前は前衛で敵を蹴散らしてくれ、使い方は簡単だ強く意識するだけでいい。わかったか?」

「そんなことで発動できるのか?」

「あぁ、お前の場合はな」


 驚いた。。。俺にも能力があったなんて・・・。

 でも、最後の言葉が気になる。誰がどんな能力を持っているか、慣れたら自然にわかるらしい。どうやら俺は戦闘用の能力だった。

 俺は武器を強く念じた。するとどこからともなく現れて俺の手にすっぽり収まった。


 なんだかわくわくしているようだ。

 こんな戦いは初めてだからか・・・俺は頼りにされている。

 そう思うとなんだか嬉しい。

 外に出るともうすっかり取り込まれていた、状況を視認したところで武器の形が勝手に変わった。

 広範囲攻撃用なのかなと思いつつも腕を思い切り横に振った。

 すると強い風が吹いたよう感じがした・・・目を瞑ってしまった、すぐにあけないと・・・やられる・・・。急いで目を開けたが目の前には敵が大量に転がっていた。

 何が起こったんだろうと思っていたらまたしても武器が形を変えた。

 今度は先っぽがとがっているようだ。力をいれると空中に氷の塊がたくさんでてきた。魔術師かよ・・・。

 それが自然に敵の方にものすごいスピードで飛んでいった。

 俺は唖然とした。こんな能力がありながら銃なんかにやられて、ものすごく落ち込んだ・・・。

 でも、落ち込んでる暇はなかった。この世界は近距離戦闘に特化しているらしく味方の防御兵をやぶったようだ。俺は急いでそちらにいこうとするがそっちに団長がダッシュで向かっていった。様子をみていると団長は自分の能力で出した斧を左から右へ大きく振った。振っただけ周りに風がおきその風に吹き飛ばされて敵が右方向へ飛んでいった。どうやらあちらの心配しなくていいようだ。俺はこっちの戦いに集中し始めた。次は大剣みたいな姿をした武器があわられた。これで戦えということなのか、体が勝手に動いた。俺は直感だけで全てを切り払った。そこで敵は一時撤退するみたいだ。俺は武器を離した。手から話すことで自動的に能力は解除されるようだ。ひとまず隠れ家の奥に全員集合した。傷をおった人達がいた。治癒みたいな能力はないのか・・・。とても痛そう。みてるだけでも痛くなるような重症をおっている人もいた。これは命懸けなんだな・・・でも俺を助けてくれた時はどうしたんだろうか。そう思っていたら突然体が重くなって倒れてしまった・・・。

 能力を使いすぎたのか。貧血になった時のような目眩に襲われた。

 俺はまた気を失ってしまったのだ・・・。




「は・・るか・・・・。」

 俺は目覚めた。体中がびっしょりだ。布団も濡れている。この世界では着替えを必要としない。誰もがたった一つしか服を持っていないのだ。体もきれいにしてくれるらしくお風呂に入るという習慣はこの世界にはない。

 うなされていたようだ。今回の夢は少し覚えている・・・確か妹とかくれんぼをしていて・・・自動販売機で・・・。

 そこまで思い出したところで頭がズキっときた。せめて妹の名前も思い出したかったなぁと思いつつも体を起こした。

 レジスタンスの仲間はほかの部屋にいるのかな、とりあえずそっちいってみるか・・・。

 コンコン、とドアを2回ノックした。中からはるかが出てきて会議に加わって欲しいとのことだ。俺は断る理由もないので参加した。みんな険しい表情だ。こんなこと今までなかったのでいつになく真剣に話しているみたいだ。

「じゃあ空間転移で予備の隠れ家まで飛ぶの?」

「空間転移はあまり使いたくはないんだけど仕方ないか・・・。」

「とりあえずミツキ、頼む」

「ん、わかった。任せて。」

 ミツキさんは空間転移の能力なのか・・・便利だなぁ。でも、なんであまり使いたくないのかな?体力を使うのか・・・?

 しかし、聞いたところ空間転移は体力はもちろん減るがおなかがとてもすくらしい・・・たったそれだけ。でも空腹に襲われるのはどんな敵に襲われることよりも辛いかもしれない。もう何もお腹を満たせないなんて俺は嫌だ。どうやら空間転移ができる人は多いらしい。力の差があるらしく能力にもランクがあり、それぞれの測定方法は異なるようだがAからDまであるらしい。そして能力の種類にもランクがありこれもまたAからDまでがあり、空間転移を持って生まれる人は比較的出現率が高いらしくDランクらしい。だからミツキさんはDのAということだ。

 ちなみにはるかさんの能力はほかに誰も使える人がいないのでAのAとなる。さて、本題に戻ろう。

 空間転移で大人数を移動させる時の担当はミツキさんだ。ミツキさんは俺よりも年上にみえる。髪の毛が長くてとても優しそうな人だ。

「しょうがないなぁ・・・。みんなをこの部屋に集めて頂戴」

 ・・・しばらくたってみんなが集まった。するとミツキさんが手を挙げて「いくよ!」といった途端に地面が光って魔法陣が出てきた。魔法陣をみるのはこれが初めてだ。

 はるかさんは魔法陣なしで能力を使っていた。魔法陣がいるのといらないのがあって空間転移は魔法陣が必要な能力の代表格らしいのだ。

 そして、魔法陣は光を強めていくとあたりが急に白くなった。


 少しずつ目が見えるようになってきた。どうやら転移が終了したようだ。

 みんなはもうせわしなく動いているようでつっ立っているのは俺だけだった。

 俺もそろそろ動けそうだ・・・周りを見渡してはるかを探していたら団長に「お前はしばらくそこで座っていて構わんぞ」と言われた。

 どうやら役に立つことはできなさそうだ。俺は言う事を聞くことにした。

 うろちょろしても迷惑をかけるだけだと判断したからだ。それにここの隠れ家は初めてくるのでここの地図は頭に入っていない。

 せめて地図さえあれば覚えたりもできるんだがな・・・。とか思っていたらみんなが集まってきた。

 片付けとか終わったみたいでみんなへとへとになっている。そして今からちょっとの愛だは休憩時間のようだ。

 せっかくの休憩時間なのではるかとしゃべることにしようとしたが女の子と楽しそうに話していて邪魔してはいけないと思いしょうがなく暇そうにしている団長のもとにいった。

「団長、ここの地図・・・とかありませんか?」

 はやくここの空間を知りたい。ので、とりあえず聞いてみた。

「あぁ、地図はないぞ。敵にでも盗まれたりしたら大変だからな」

 鼻で笑いながら行ってきたので少々腹がたった。でもこの人には襲いかかったりはできない・・・とても強そうだ。

 能力を使えばなんとかなるかもしれないが相手は今まで何度も能力を使って戦ってきたエキスパートだ。こちらの能力の方が強くてもあまり使い方をわかっていない今のままでは完全に負ける。

 直感がそう告げているような気がした。でも、地図がないのは不便だな・・・色々と知りたいこともあったのに・・・。その場その場で教えてもらえばいいか・・・と思いつつもはるかの部屋はどこだろうと探し出していた。探していたら迷子になったようで帰り道がわからない。

 実は方向音痴だったりすのだ。だからあまり一人では行動したくなかった・・・でもどうしても気になってしまって動いてしまった・・・。はやく戻らないとみんなに心配される・・・と思って走り回っていたらはるかが目の前の扉から出てきた。

「あ・・・、はるかさん」

 一応言葉に出すときはさん付けだ。年上か年下かわからないしな。

「こんなところで何をしているの?りゅうくん」

「ちょっと迷ってしまって・・・・。」

「そう、そうなんだ、じゃあ一緒にみんなのところへ戻りましょう。」

 そういって適当な会話をしながら歩いてみんなのもとへ戻った。

 みんなもう休憩は終わってるらしく仕事をしている。

 ・・・仕事というかもう夜なので晩御飯をみんなで作っているみたいだ。俺も手伝わないとなんか悪いな・・・・。

 でも料理なんてできないし・・・。なので俺は皿を並べたりすることにした。食事の用意が終わったところでみんな席に座って「「いただきます」」みんなしっかりこれはいっているようだ、どこの世界でも共通の言葉なんだな・・・。

 俺も小さい頃に親にしつこく言われていたのをよく覚えている。

 あの頃は4人一緒で楽しかったなぁ・・・とか思っていたら食べ終わっていた。なかなか美味しかった。みたことない料理だったが暖かくなるような料理だった。この世界は今冬だ。

 冬という単語はこの世界にはないが向こうの世界でいう冬で間違いないだろう。これよりも寒くなったりしたら俺は凍え死んでしまう。

 そういえばこっちでの連絡手段はどうしてるんdなろう?携帯・・・とかはないよな。テレパシーとかできるのかな。

「はるかさん、ここでの連絡手段ってなんなの?」

 俺は素直に聞いてみた

「ここではテレパシーが連絡手段になるわ。やり方は、相手の顔を思い浮かべて伝えたいことを強く意識すること・・・かな。でも1キロ以上離れているとできないの。」


 1キロ離れていてもできるのか・・・。俺は先にそっちに反応してしまった。まさか連絡手段が本当にテレパシーだとは思わなかった。

 テレパシーをしてみようと思ったがいまいち顔を強く思い浮かべることはできないようだ。

 そして、もうすっかり夜中になったらしくみんな自分の部屋に入っていった。俺の部屋はどこだろう・・・。

「はるかさん、俺の部屋はどこですか?」

「私についてきて」

 俺はついていった・・・するとあの場所、迷子になってはるかさんと出くわしたところについた。ここが俺の部屋というならはるかさんは中で一体何を・・・。

 そう思っているのも束の間だった。はるかさんと二人でその部屋に入ってみるとベッドが二つあった。つまり、そういうことだ。はるかさんと相部屋・・・内心ではとても嬉しいことだが・・・一応本当に相部屋なのかときいてみたらそうだと、いってきた。つまり今日からこの部屋ではるかさんとふたりっきりで寝ることになるのだ。

 まぁ寝るといっても同じベッドではないからそんなに変わらないだろうけど。それでも男は少し興奮してしまう。はるかさんはとても可愛いから寝顔も期待できる。でも俺が先に寝たらみれないな・・・と思いつつもベッドに潜った。案の定、疲れていた俺はすぐに眠ってしまった・・・。


「ゴーーン」

 7月7日、俺は鐘の音でたたき起こされた。この隠れ家では鐘の音で起こすのが主流らしい。

 この布団はすぐに眠るように作られていてなかなか起きれない仕様なのだ。だから鐘がなる時間を魔法で設定していつも起こしてもらっている・・・ということらしい。しかし、このでかい鐘の音は外に漏れたりしないのだろうか。俺の心配は杞憂だったようだ。しっかりと防音対策などもしており外に漏れる音は全くといってない。

 そして今日は向こうの世界では七夕だ。こっちの世界にきて初めてのイベント。

 これはみんなも同じだったらしく朝から仲良く願い事かき魔法で作った笹の葉にくくりつけた。俺の願いは「はやく帰れますように」だ。俺は早く帰りたい。誰だって知らないところに来たら思うだろう。でも俺はもうこの世界で半月くらいは過ごしてしまっている。そろそろこの世界に愛着を持ってしまうかもしれない。はやく戻らなければ・・・。


 みんなで朝ごはんを食べた。食べ終わったら昼間では自由行動なので俺はあの戦い、あの戦いとは俺が血を流して倒れた時の戦いだ。あの時は負けたのだろうか、勝ったのだろうか、すごく気になっていた。だから今日は国まで、前まで自分がいた家まで戻ることにした。


「ふぅ・・・やっとついたか。」

 やっと、といっても仲間に近くまで転移してもらったのであまり歩いていない。12時頃に迎えにきてくれるという約束だ。家の前につくと懐かしい感じがする。

 ほんの少ししか住んでいなかったのに。

 そしてドアをあけると・・・部屋の中には何もなかった。布団も、机も、冷蔵庫も、何もかもがなくなっていた。

 家を間違えたのかと思い外に飛び出て確認する・・・がここで間違いはない。よくみると扉に文字がほってある。

「入居者募集」そうかかれている。ここは俺の家で死んでいないのに・・・。

 そういえば隊長が「死体がなくてもこの国は死んだことになる」って言っていたような気がする。どうやら俺は死んだことになってるみたいだ。まぁ、今は隠れ家があるからいいか・・・と思い家の裏にある商店街に久しぶりにいってみることにした。商店街は相変わらず賑わっている。俺たちは戦って死んでいっているというのにここだけは楽園みたいだ。


「おい!坊主!うちの商品を返しやがれ!」


 突然大きな声がしたと思ったら貧乏な子供が売り物を盗んでいた。

 子供は無言で立ち去った。

 店主はその子供を追いかけては諦め・・・の繰り返しで店主がかっているところはみたことがない。

 同情でもしているのだろうか、あの店主は「しょうがないやつだ、言えばひとつくらいやるのに・・・」とつぶやいている。ここには優しい人が溢れている。

 この人たちを戦争に巻き込んだりはしたくないな・・・。戦争、早く終わればいいのに、おわったら俺はゆっくり向こうに帰る手段を探れるといのに・・・。

「!?」

 突然目の前に砲弾がおちてきた。

 俺は反射的に防御の魔法を自分にかけたが周りの人間は全員吹き飛ばされたり燃えていたり、無残なものだ。誰がこんなことを・・・と思っているとレジスタンスの仲間が街を焼き払っているのがみえた。

「どういう・・・ことなんだよ」

 もしかしてレジスタンスというのは嘘なのか?

 でもあの時あんなに歓迎してくれていたのに。

 仲間を増やしてこういうことをするためだったのか?

 なんで・・・。

 団長が、すぐそこまで・・・。

「団長・・・?」

「お前を仲間なら焼き払うのを手伝うんだ。お前の力は我々20数人の誰よりも強い。これも手っ取り早く済むだろう。さぁたて」

「え、でもここは国で・・・」

「まだ気づかんのか。二つの国の隊が我らの隠れ家にやってきただろう。それは我々無法者を捕らえにきたんだよ。お前が戦っていたのはもうひとつの国でもなければ紛争地を抑えるためでもない。二つの国は同盟を結んでいるからな。」

「じゃ、じゃあはるかさんも・・・」

「いや、あいつはまだこのことを知らない。あいつだけ隠れ家においてきている。」

「・・・っ!!なんてことを!!」

 俺は驚愕した。

 じゃあはるかさんはなんのために?

 謎だらけだ。

 本当は2国を相手に(自称)レジスタンスが戦争していたなんて・・・。

 だから隠れ家にたどり着くまで時間がかかるのか。


「秘密を知ったお前には消えてもらう、りゅう。」

「んな・・・っ」

「また来世で会おう」


 そして団長は斧を召喚させ、大きく振りかぶりそして・・・振り下ろした。

 でも、それがとてもゆっくり見えて、でも、怖くて、思わず目を瞑ってしまった。


 おそるおそる目を開けると・・・目の前に白い空間が広がった。

「ここはどこだろう・・・。」

 なんだろ・・・身体が重たい。

「・・・はるか!?」


 体にはるかがのっていた。


 それよりもここは・・・?

 体の上にはるかが乗っている・・・。

 これは一体どういうことだろう。

 あたりが眩しくてよくわからない。

 俺はさっき団長に斧で・・・

 ここは死後の世界か?

 それなら納得できる。

 妙に明るいのもそのせいだろうか・・・。



 そして、もうひとつの記憶が交錯する。



「おにいちゃん!」

 あ・・・はるか・・・。はるか。そう・・・俺はあの時ひかれて・・・。



 二つの記憶が混在する。



 異世界の記憶。


 日常の記憶。


「ん・・・」

 目が慣れて周りが見えてきたようだ。

 ここは病室みたいな感じだ。

 みたいじゃなくて病室だ。

 医者がいる。

 上にのっているはるかは泣いていた。

「はるか・・・熱はもう大丈夫なのか?」

「ばかっそんなのもうとっくになおってるよっ!」

「そっか、よかった」

 俺は起き上がった。

 随分やせているようで筋肉も弱っている。立つことが辛い・・・。

「君はずっと昏睡状態だったんだよ。ふらついて当然だ。」

「あの、どのくらい時間がたったんですか?」

「そうだね、君が事故に遭ってから半年くらいかな。」

「そんなにたってるのか・・・。はるか、ごめんな」

「いいよ、おにいちゃんが無事だったら・・・いいのっ」


 手足があまり思うように動かない。


 俺はこの時、もうあの世界にはいかなくていいのだと思っていた。

 それはあまりにも浅はかな考えだということをすぐに思いさらされる・・・。


 7月23日

 俺は久しぶりに学校へ登校することになった。

 入院中も学費は親が全部支払っていてくれたおかげで気兼ねなくいける。

 学校に行ったらまずは先生たちに挨拶か・・・。

 などと思って家を出ると学校の、中学から同じ友達が待っていた。

 友達、直樹は俺と趣味嗜好が違うけど仲良くしてる友達。

 親友といってもいいくらい仲がいいかもしれない。

 いつも一緒に学校へ行っていた友達でこれでようやく日常に戻ったような気がした。


「直樹、まさか家の前で待ってるとは思わなかったよ」

「いやー、久しぶりの学校で緊張するだろうと思ってさ」

「まぁ確かに緊張してるけどそこまでしてくれなくても大丈夫だぞ」

「とりあえず学校まで一緒でそこからは別行動だな、俺は生徒指導の先生によばれてるから...」

「その髪か?黒に染めればいいのに・・・」

「そんなことできるわけないだろ!これだけが姉貴との繋がりを表すものなんだから!」

「あ、うん、ごめん」

「いいよ、もう」


 直樹は幼い頃両親に捨てられて姉と一緒に叔母さんのところで育ててもらっていた。

 でも、直樹が中学2年の頃に姉が交通事故で亡くなり、姉との繋がりを唯一示す焦げ茶色に赤を混ぜたような色の髪の毛をとても大切にしている。

 その髪の毛のせいで輩に絡まれたり大変なところもあるけど・・・、それでもとても大切に、宝物してるらしい。

 そんなこんなで学校についた俺と直樹は一旦別れた。

 俺は昔の記憶を頼りに階段を上り、2階上がったところで左に曲がり、一つ目の教室の後ろのドアから入った。


「おぉ、竜じゃん!久しぶり!」

「あ、うん、久しぶり」

「俺のこと覚えてるか?」

「もちろん覚えてるよ。確か八咫谷箕やたがみだよな・・・?」


 俺がそう行ったとたん周りにいた奴らがみんなして笑い出した。


「え・・・っと、違うかったか・・・?」

「ちげーよ!?俺は深谷だよ!」

「ごめん、覚えとく」

「それで、僕が八咫谷箕だよっ」

「そっかー、ちょっとしか休んでないのにあんまり覚えてないなー」

「まぁしょうがないよ、まだこのクラスになって3ヶ月くらいしかたってないし。私も覚えてない人たくさんいるし!」

「いや、覚えようそこは・・・てか誰・・・?」

「私のこと忘れたの!?隣の席なのに!」

「っ・・・こいつの名前は新居夜深あらいやみだよ。ほらあの、例の暴れん坊」

「あぁ、この人が・・・」

「その暴れん坊って言い方やめて・・・。もう忘れてくださいはい。」


 ガラァー

「はーい、席につけー」

 先生が入ってきた、たぶん担任かな・・・俺は名前覚えるの苦手だからあんなこと言われてもわかんないんだよなぁ・・・。


「えー、今日は1学期最後の日です。これから終業式があるからみんな体育館シューズを持って廊下に出て各自向かうこと。」

「あー、そうそう、山本竜くんは終業式のあと職員室の来ること。」


「あ、はい。」


 それだけいうと担任は教室を出て行った。

 というか・・・今日終業式かよ!!

 知らなかった。まぁ7月のこのくらいだったら普通か、もっとはやいところもあるみたいだし。

 しかも・・・呼び出し・・・。


 体育館に移動した俺たちは長ったらしい校長の話を聞いて、生徒指導、保険、などの先生の話も終わった。

 もう時計は11時20分を指している。

 あとは教室に戻って宿題と通知表をもらうだけか・・・。


「じゃ、またな竜」

「おう・・・って、まだ教室に戻って通知表とかもらったりすることが・・」

「え?この学校、前日に全部配って終業式の日はできるだけ早く生徒を家に帰す方針があるんだよ?知らなかった?」

「いや、知らないよ・・・」

「そっかー、まぁ頑張ってかえんなさいなっ」

「うん・・・いいなぁみんな帰れて。。」

「まぁ一部は夏休みの欠点補習授業の説明会があるから残りだけどな、深谷がその一人だ」

「そうだったのか。じゃ、また今度」

「うんっ」


 俺は体育館を出て職員室に向かうことにした。

 職員室は正門の目の前にあったはず・・・と、古い記憶を元に目指していった。



 案の定正門の目の前にあった。

 俺は身だしなみを整えて2回、ドアをノックした。


 コンコン

「失礼します。1年F組の山本です。」

「おー、きたか。はい、これ君の夏休みの宿題と講習の日程ね。それから君は頑張って1学期の単位とらないとダメだから大変だよー」

「あ、はい。頑張ります」


 俺はちょっとした世間話をしたあとドアの方へ行き「失礼しました」と言って職員室を後にした。


 ふぅ・・・。

「ただいまー」


 やっと家に着いた・・・。

 向こうではテレポートばっかであんまり歩かなかったから久しぶりに歩いたきがする。

 学校まで徒歩約10分というまぁまぁな近さ。

 家には誰もいなかった。そりゃそうか。

 両親は二人共仕事で家を空けているし妹のはるかはクラブだし・・・。


「久しぶりにはるかの部活動姿でもみにいこうかなぁ・・・」


 はるかはテニス部なので外からいくらでも見える。

 テニスはそこそこうまいらしく今度の練習試合で出させてもらえるらしい。


「やぱっりめんどくさし昼寝でもするか・・・」


 そう呟いて俺は眠りについた・・・



「お母さん!私のコーラ飲んだでしょ!」

「え?まぁ、飲んだよ?あったからねぇ」

「勝手に飲まないでよもう・・・」

「ごめんね、今度飲む時は言ってから飲むから。」

「そういうんじゃなくて!!」


 んー・・・騒がしいな・・・


「あ、おにいちゃん!おきた!」

「おはよう竜」


 お母さんは優しく語りかける風に言ってくれた。

「おはよ・・・」


「もう晩御飯みんな食べてお風呂も入ったから、お母さんはもう寝るからね。御飯は机の上に置いてあるから、お風呂入って寝るんだよ。」

「うん、わかった。」


 相変わらずの放置プレイ・・・

 まぁ、いっか・・・。

 今何時だろう・・・


 時計を見るともうすぐ深夜0時だった。


「御飯・・・先に食べるか」

 今日の晩御飯はシチューとブロッコリーの何かだった。

 お母さんは料理はあまりうまい方ではない、むしろ下手なほうだ。

 はるかも部屋に行ってしまった。

 この部屋には俺ひとりか。

 あっちでは毎日みんなで食べてたんだけどなぁ・・・。


 ん!

 お母さんの料理が上手くなってる・・・!


「あ、おにいちゃん、今から御飯?そのシチューはるかが作ったんだよ!」

「あ、そうなんだ、美味しいよ」

「ありがとっ。じゃ、はるかも寝るからね!おやすみ、おにいちゃん」

「おやすみー」


 なるほど、通りで・・・

 俺とはるかがふたり暮らししていた時、はるかが小学6年生になった時くらいからはるかが作り出した。

 朝と昼、弁当は俺で晩ははるかだった。

 はるかの料理はとても美味しい。

 なにか隠し味でも入ってるのかな・・・?

 まぁいっか。


 いろいろ考えていると御飯を食べ終わっていた。

「次はお風呂・・・っと」


 はぁー・・・

 久しぶりに湯船に浸かると今までの、向こうでの戦いの疲れは一切ないけどそういう疲れもとれていく感じがした。


「明日から夏休み・・・か」


 そこで俺はあることに気づいた、

 それは・・・


「夏休みどう過ごそう・・・」


 俺はクラスメートの電話番号やメールアドレスも知らない。

 前の学校では妹につきっきりで友達なんていないに等しかった。

 友達と遊ぶには当然ながら友達が必要だ。。。

 どうやって夏休みを過ごそうか・・・・。





「おにいちゃんっはやくはやく!」

「はるか歩くのはやいよー」

「えへへ、今日はおにいちゃんの誕生日だからね!」

「俺よりはしゃいでどうするんだ」

「うぅ・・・でも楽しみなんだもん。。」

 俺たちは今、遊園地に来ている。

 俺の退院祝いだという名目だがはるかはそれをわかっているのだろうか・・・まぁいいかそんなことは。それよりも今日は両親も一緒に来ているということだ。

 どうやら俺が事故にあって二人共反省したようで半年前から妹と暮らしている。

 そんなことを考えていると、

「おにいちゃんこれのろっ!」

 はるかが指を指していたのはジェットコースターだった。ちなみに俺はジャットコースター恐怖症だ情けない。

 妹にバレればこの先言われ続けるだろう。ここは乗るし・・・。

 実は遊園地もそんなに好きというわけではない。

 絶叫系がほぼ全て苦手なので修学旅行などで行った時はいつもシューティングしかしていなかった。

 それはそれで楽しかったのだが・・・。

「はぁ・・・」

 俺はため息をつきながらジェットコースターに向かった。

「もうっ遅いよおにいちゃん!」

「ごめんごめん・・・」

 ジェットコースターの順番待ちは異常だ。

 ここは最近できたばかりで知名度が低いのか客はあまりいなかったがそれでもジェットコースターは47分待ちだった。

 この待ち時間の立札をみるともう一度ため息をつきたくなる。

 これでもマシな方だというのだから我慢しよう。

 それにしても・・・カップル多いな。

 こんなところに恋人同士で来るかよ普通。

 クソリア充め・・・。

「おにいちゃん!きいてる?」

「え?あぁ、それで?何の話だっけ」

「もう、ちゃんときいてよね!」

「うん、、、」

「えっとね、ここは、おにいちゃんが寝てる間にできたとこなんだよー、だから初めてくるのっ!」

「そうなの?」

「うん。っていうかおにいちゃんさっきから顔色悪いよ?何かあった?」

「いや、なんでもない。そんなことよりお腹空かないか?待ってる間になにか食べない?」

「そだね。じゃあ私が買ってくるからおにいちゃんはちゃんと並んでてね!」

「わかった、転ばないように気をつけてね」

「うんっ」

 妹がどこかに買いに行ったあと俺は携帯をいじりはじめた。友達とかにまだ退院したことを連絡していないのだ。

「えーっと、とりあえずあいつにメールでも・・・っと」

 そこで異変に気づいた。なぜか家族の連絡先しか登録されていない。

 俺が寝ている間に機種変でもしたのか?

 いや、でも・・・持っていたものに違いない・・・。

 そこではるかが戻ってきた。

 俺はすかさず携帯をポケットに突っ込み何事もなかったかのように振る舞った。

「おかえりはるか、どうだった?」

 ん、と言い、手を出すとホットドッグを手にのせた。

「おにいちゃんこっちね、私ここのホットドック食べてみたかったんだよねーっ」

「そか、食べれてよかったな」

「うん!」

 ん~!おいしいねおにいちゃん!

 そんなはるかを見ていると昔に戻ったような感じにとらわれてしまう。

 少し前まで、戦うことが日常だった俺にようやく平和の日々が戻ってきたのだ。

 こんな平和な世界、ほかにないだろうなぁ・・・。

 はるかが空を見ている。

 見ているというより、睨んでいる。の方がいいのかも。

 こんなはるかはみたことがない。


「どうした?はるか」


 はるか反応しない。

 少しずつ、ほんの少しずつ、向こうの空気の味が混ざってきたような気がした。


「はるか!」

「ひ、ひゃい!」


 俺ははるかの耳元でよんでみた、するとどうだろう。

 とても愛らしい返事が返ってくるではないか。


「はるかはさっきなんで空をみてたの?」

「え?空なんてみてないよ??」

「え・・・?いやっでも、さっき確かに・・・」


 はるかはなにも知らないような反応を見せる。

 何か、嫌な予感がする。

 さっきまでのはるかが嘘みたいだ。

 今ではお母さんとお父さんの間で楽しげに会話している。

 どうして、空なんか。

 あの時一瞬、少し寂しそうな表情をみせたのはなんだったんだ?

 寂しそうな顔をしたと思ったら微笑んだり、いろいろな表情を数秒の間に。

 それでも俺からみるとはるかは前よりも元気になっている。

 と思っている。


 少し前まではここまで元気ではなかった。

 入院中なんかは毎日うつむいて生活をしていたと聞いてる。

 流石にそれは話を盛っているだろうと思っているが、はるかならそのくらい落ち込んでいるのかもしれない。



 そうすると急に空が暗くなった。最初は遊園地のイベント的なものが起こったのかと思って「最近の技術はすごいなぁ、いつの間にこんな・・・」と思ったが、

 突然空に深い闇のような穴ができた、そこから何かが降ってきた。

 なんだろう、あの物体は。暗くてよく見えない。

 ・・・あれは人だ。俺はそう確信した。なぜなら・・・人の形をしているからだっ、と当然のことを言ってみたり。

「きゃぁぁぁぁあ!!」

 頭の中に響き渡る悲鳴。

 それに、この声は・・・


 その女の子が落ちてきた直後、俺以外の人間は全員気絶してしまった。

 もちろん家族も。俺は妹のはるかを抱きかかえ空から降ってくる人は、向こう側のはるかだった。

 そのはるかは自分の周りに球体のような透明な風船のようなものを作り地面すれすれでなんとか持ちこたえた。

「はるかさん、なんでここに!?」

「竜・・・くん!?っそれはあとで!あいつが・・・団長が、くるっ!」

「あいつって・・・もしかして、団長ですか?」

「え、うん、まぁそうだけどなんでわかったの?あ、もしかして団長たちの秘密を知ってるの?」

「うん、まぁ・・・、こっちに戻ってくる前に斧で殺されかけて、斧が振り下ろされた直後この世界に戻れたんだ。なぜかわからないけど。」

「そうなんだ、まぁそっちの詳しい話はあとでちゃんと話もらうわ。今は空間を歪めて団長がここまでたどり着くのをなんとか防いでいるの。だからその間に別の世界に行こうと思ってたんだけど。竜くんがいるなら勝てるかもしれない。一度武器を出してみてくれる?」

「あ、はい。」

 俺は言われるがままに能力を使おうとしたが、なにも出てこない。

「なんで・・・」

「ちゃんと武器をイメージしてる?」

「はい、、、」

「ちゃんと、どんなふうに使ったりするのかまでしっかりイメージして!あっちの世界ではそこまでイメージしなくても出せるんだけどこっちではもっと強くイメージしないと。」

「わ、わかりました」


 っん・・・・!!


 俺は、強くイメージした。

 団長が倒せるほどの武器を。

 跡形もなく吹き飛ばせる大火力を持つ武器を。


 出てきたのはハンマーの大きいバージョンみたいな感じだ。

 たぶん、振ると何かがでるんだろう。


「あの、これでいいでs・・・はるかさん?」


 はるかさんは空を見上げている。

 この世の終わりが近づくような。

 そんな表情をして。

 そして、どこか妹に似ている。


 はるか・・・とちらっと妹の方へ視線を向ける。


 そして俺は驚愕した。


 一度倒れたはずの妹が立って、光を放ちながらこっちへ向かってきているのだ。


「はるか!?」


「お・・にいちゃ・・・n」


 俺はダッシュで駆けつけた。

 とてもひどい熱を出している。

 今すぐにでも病院へ連れて行きたい。

 でも、今は他にやることがある・・・。


「竜くん、もうすぐ団長がくる。準備して。」


 と横目で合図を出してくる。

 するとはるかさんは2度見をした。

 俺の抱えている妹が気になるのか、ガン見している・・・。

 今思うと、はるかとはるかさんはものすごく似ているかもしれない。

 外見ももちろん。

 性格まで。


「みぃ・・・」


 みぃ・・・?

 はるかさんがいきなりポロっと口からこぼした言葉。


 みぃと呼ばれた妹のはるかは俺のおんぶからおり、自力で立っている。


「はるか!大丈夫か!?」


「・・・?あなたは、誰?」


「なっ・・・。はるかさん、妹が、俺のことを・・・、記憶喪失・・・?」


 こんな突然記憶喪失になるものなのか。



「はるか」

「みぃ!」


 二人が近づくに連れて二人の光が強くなっていく。


 どうなって・・・るんだ?


 そして二人が両手を合わせた途端にものすごい光が放出された。


 その光は前にも一度みたことがある。

 はるかさんの能力の・・・空間移動の・・・。


 光が弱まってきたとき、はるかさんはその場にたっていた。

 はるかはどこへいったんだろう。

 はるかさんが避難させてくれたのだろうか。

 いや、それはないか。


 光が完全に消え、はるかさんがこっちへきた。


「あの、はるかさん、妹をどこへ・・・」

「私ははるかではない。」

「えっと、見た目が完全にはるかさんなんですけど・・・」

「まぁ、はるかの方をベースにしたからな」

「どういうことです?」

「つまり私は君の知っている向こう側、この言い方は不適切だが、今はよしとしよう。君の知っているむこう側のはるかと君の妹のはるかの魂が合体した姿だ。」

「じゃあ、妹とはるかさんはもうこの世界にいないんですか・・・?」

「いや、いるよ。ちゃんと私の中に。」

「二人を元に戻してください!」

「それはできない相談だ、戦いが終わったら全てを話そう。今はその話をする時間がない。だが、必要最低限のことだけは教えてやってもいいぞ?」

「じゃあ、その『必要最低限』ってのを教えてください」

「うむ。まず一つ目は、私がはるかとみぃ、つまり君の妹との融合体ということだ。二つ目は、『はるか』が連鎖世界安定化管理局のモノだということだ。そして三つ目は、君が団長と呼ぶ存在はこの管理局のなかで指名手配であるものだ。はるかはスパイということだ。わかったか?」

「は・・・?連鎖世界・・・?なんですかそれ、きいたことありません。それと何故妹がみぃなんですか?」

「連鎖世界というものは君も体験しているだろう。死にかけた人間がたまに別の世界に移動することを連鎖現象と呼ぶのだが、別の世界とほぼ同じようにできているから連鎖世界なのだ。この世界からは26世界に移動する。君が呼ぶ向こう側の世界はこことしか繋がっていない。世界によって違いがあるのだ。それと、みぃというのは我々管理局が開発した人工的に能力をパワーアップさせるための引き金だ。いろいろな世界の生き物にランダムで植えつけられる。これでいいか?」

「ランダムって!あんたらの都合でそんな・・・!!」

「仕方ないだろう、一人だけだと力不足の時もあるのでな。」

「だからって・・・!」

「話はこの辺でいいか?そろそろ奴が来る頃だ。つい先程捻じ曲げておいた空間を突破された。」

「え・・・?もう!?」

「あぁ、こいつはS級手配者だ。気をつけろ。」

「はい・・・!」


 空からなにかがおちてくる・・・

 風を切る音が聞こえる。

 そして、目標の敵は視認できないほどの速さで落下していく。


 ずどぉーん


 普通の人なら全身ぼろぼろだ、絶対、こんな速さでおちても平気なんて・・・。


「クック、久しぶりだなぁ竜。元気にしてた・・・かぁ!?」

 団長はそう言いながら俺めがけて斧を縦に振り下ろした。

 その瞬間斧から、斬撃が飛んできた。

 俺はその時、

 再び

 強く

 イメージした。

 団長が振り下ろした斧に対抗するために俺がイメージしたモノ、それはこの世界にしかないであろうもの。

 この世界で1番凄い切れ味だろう日本刀。

 俺はこの世界の職人ですら再現は不可能と言われた日本刀を強くイメージして、何もない空気中から一振りの刀を出現させた後、団長の斧に向かって鞘から右上から左下へ振り抜いた。

 日本刀の残像が残っているかのように見えるほど思考は加速し、団長の斧が切れてゆっくりと地面におちていく様が見えた。斧を失った団長は柄部分を投げ捨て手の甲にナックルを装着した。

 刀にナックルで対抗できるものかと鼻で笑ったその刹那。団長は離れたところから俺めがけて空気を、殴った。

 殴られた空気が振動し風が巻き起こり。こちらへ到達する頃には小さな竜巻にまでなっていた。


「よけて!りゅう!」


 これを避けろというのか。


「無理だ・・・よ!」


 俺は竜巻を右から左へ横に切り裂くようにして斬撃を放った。すると竜巻はぐにゃっとなり、竜巻は消えた。それでも少しだけ強風が俺を襲った。

 竜巻を対処し終えて前をみると・・・


「団長が消えてる!?」

「馬鹿か貴様は、次の攻撃体制に入るのが常識だろう!」


 後ろから声が聞こえたと思い振り向くとすでに俺の顔面めがけてナックルで攻撃してきていた。

 俺は刀でそれを受け、強くイメージした。


「・・・っ!?」


 団長が声にならない悲鳴をあげる。


「りゅう、何をした・・・っ」

「俺はただ団長の周りにたくさんの酸素が現れるようにイメージしただけだよ」

「酸素、だと?なんだそれは」

「そんなことも知らないのか・・・よ!」


 刀を再び構え直し団長の肩を切り裂いた。団長の肩からは大量の血が溢れ出てきた。これならいける・・・!と思ったのは一瞬だった。


「ふっ・・それで倒したつもりかりゅう!俺はなぁ、血や肉体を必要としない生き物なんだぜ。いくら身体を裂こうが焼こうが何をしたって無駄だ!俺は精神体だ、ほかの生き物の身体を操り生きていく生き物なんだよぉ!!」

「なるほど、それで今まで倒せていなかったのか。」

「はるかさん?」


 はるかとはるかさんの融合体がつぶやく。

 つぶやいて俺に「君はもう下がっていなさい。あとは私がやろう。」と言ってきた。

 直後、はるかさんの周りに魔法陣が出てきた。


「どんな生物かわかればこちらのものだ、S級指名手配犯。」

「戯言をよくもそれだけ並べられるなぁ」


 短い会話・・・会話とも言えない会話。


 はるかさんは無言で左手を左方向へ滑らせた。その手を追うように知らない文字が羅列していく。そしてつぶやき一言「リギディティ」


 刹那、団長の動きが止まる。


 何が起こったんだ・・・?


「はるかさん、何を?」

「この思考魔法は精神のみを持つ生き物にのみ採用するものだ。こいつの精神と肉体は別人だからな、剥がして捕まえただけ。」


 そう言ったはるかさんどこからともなく箱を出し手にある箱のようなものの中に気持ち悪い何かを入れた。


「これが団長の本体?」

「そうだ。こういう生物は肉体を持つ生き物に寄生しないといけない。そして寄生するためには器になる生き物に許可を得なければならない。まぁ、器になった方もこんなやつを入れることになるとはね。」

「器の方はどうなるんですか?もう、戻らないんですか?」

「完全に乗っ取られていた感じだったからもう死んでるのと同じだよ」

「そうですか・・・」

「器は私達が責任を持って埋葬しよう。」

「はい…」


 そういってはるかさんはフッと姿を消した。

 はるかさんがどこかへいったあとは空間も元に戻って遊園地が動き始めた。

 両親は『はるか』という妹の存在を忘れていた。

 はるかさんも、はるかも管理局に戻っていたとしてこちらに戻ってくることはあるのだろうか。いや、それはないか・・・。もう次の仕事に移っているだろうし、もうこのことは忘れようかな・・・。




 ーーそして4日が経ちーー


「りゅうちゃーん?りゅうちゃんにお客さんが来てるおりてきてねー」


 こんな時間に客…?


「はーい」


 玄関のドアをあけるとそこにはいるはずのない人がいた。


「は、るか・・・?」

「うん、おにいちゃんっ会いたかった!」

「俺も、ずっと会いたかった…、でもなんで…?」

「それはねー、はるかがおにいちゃんのそばに戻りたいと願ったからだよっ」

「そっか、うん、よかった」


 心の底から涙がこみ上げてきた。

 妹ともう一度会えるなんて思ってもみなかった。

 妹ともう一度話すことができるとは思っていなかった。


「はるか、あがって」

 俺の部屋にあがったはるかは、部屋の中を見渡して「何も、変わってないんだね」はるかがそういって少しだけ部屋を散策して、こたつに入った。俺もはるかに合わせてこたつに入る。


「はるか」と俺が言う前に


「あのね、おにいちゃん。もう、いかなきゃダメみたいなの。もう会えないかもしれない。ううん、絶対に会えない。だから今日はお別れだけ言いにきたの」


「ごめんね」と続けたあと、はるかは立ち上がってその場から消えた。

 微かに残っているこの光はワープするときの光と同じ!ということはワープしたのか、どうして、せっかく会えたのに?はるかはそれを望んでいるのか?絶対に違う。はるかはそんなこと望んでなんかいない。だって・・・あんなにも泣きそうな顔をしたんだから。


 もう一度、はるかさんに会わないといけない。


 そう思った俺は、久し振りに力を使う。


 想像しろ、頭の中で、強く、創造するために。


 掌が鈍く光るが、何も起こらない。光の消滅とともに小さな爆発が起こる。何度も、何度も試しても変わらない。超能力が使えなくなっている。

 なんで、どうして?使えないことに苛立って机の上を振り払う。教科書、ペン、ほかにも、たくさんのものが飛び散る。


 母さんははるかのことを忘れている。俺は覚えている。その違いは?

 そうだ。あの世界にいったかいっていないか。それだけだ。

 もう一度あの世界に、行きたい。行ったら超能力が戻るかもしれない。

 そんな泡希望を抱きながら、どうすればいけるのか考えていた時。ふいに頭の中に低く重い声が鈍く響く。


「汝、超常の力を望むのならば、その意思を示してみよ」


 突然起こった現象に反射的に反応し、半ば強制的に心の中で「はるかを・・・連れ戻したい、守りたい、ずっと一緒にいたい、これまでも、これからも、時間と空間の壁を破壊したい、はるかに関することがすべて元通りになれば、それでいい、だから、絶対に取り戻す、何があろうと」そう念じる。

 すると、またあの声が響き渡る。まるで、操り人形のように、強制的に言葉を発生させられるような声。


「汝、我と血の盟約を交わし、眷属に降ることを認める。眷属になった暁には、全ての願いを叶えよう」


「わか・・った」


「では、指に噛み、血を流せ。さすれば、盟約を交わすことができよう」


 俺は、この声に逆らうことができずに、親指を噛んで血を出した。指から出てきた血は指から目の前まで、空中を浮かんでやってきた。それはまるで、踊るように集まり、渦巻いて、一つの球体になる。

 今度は球体から


「これより、我の眷属となることを認めん。汝に、我の全てを貸し与えよう」


 刹那、俺の体の中の血が沸騰するように湧き立った。少しすると、正常になり始めて正気を取り戻した頃、体の中の力の大きさに感情が高ぶる。


「これならはるかのところにいくことができる・・・!」


 そして、俺は転移した。

 転移先ははるかのところに設定していたのに、周りには誰もいない。建物もない。

 空白で塗りつぶされたような場所。

 どうしてこんなところに転移したのか不思議だった。


 そして、突然周囲で光がぽつぽつと現れる。その光の中から全身を黒のコートのようなもので包み込んだ人が光の数だけ出てくる。


『闇の力に手を染め、あまつさえ聖なる管理局へ足を踏み入れようとした事は前代未聞の大罪である。よって、今ここで《宇宙外惑星転移》を実行する。』


 なっ…なんだよそれ!闇の力?この力のことかっ!?宇宙外惑星転移ってなんだよ!?


 心の中で叫んでいるうちに呪文は唱えられた。



『トランジション』


 最後の呪文が告げられる。

 俺は黒い玉のような形になり、その場から消えた。


 真っ暗な闇の中、俺はどうにかしてこの状況を変えようとしていた。

 今しがた、黒い玉からは抜け出すことができたが、それに力を使い過ぎてもうヘトヘトである。

 それに、ここがどこかはわからない。


「宇宙外惑星転移って言ってたからここは宇宙の外の惑星ってことか…?それにしても暗すぎるだろ、何にも見えねぇ…。盟約を誓い合ったはずの奴に話しかけても返事はないし、どうしたもんかなぁ…」


 ここで死ぬなんて絶対に嫌だ。

 ため息をつく。すると、周りから悪意の塊のような気配を感じた。俺は周りを正確に把握すべく、集中力を高め、気配を深く感じ取る。

 周りにいるのは誰もかれも俺の今の力よりは弱いものの物凄い力の持ち主だ。それに、全員の心の中に闇が見える。


 周りには1.2.3.…6人か。

 人数を確認した俺は、ここがどこか聞いてみる。


「すみません、ここってどこですか?元の場所に帰りたいんですけど…」


 直球過ぎたかな、と思いつつ返事を待つ。

 少ししてから


「あんたも、宇宙外惑星転移呪文を唱えられたんだろう?その名の通りさ。ここはあの宇宙とは違うもう一つの宇宙の中にあるたった一つの惑星。奴らは、ここを絶対に逃げ出すことは不可能という意味を込めてこう言う《ソールエス・イシブル》と」


 声が聞こえる。重く低い声。声質は男性のようだ。


「そして、ここから帰る方法は、ない。私たちはそう思っている」


「まじ…かよ…。で、でもちょっと待てよ?あいつらはあの呪文を6人でしていた。今ここにいるのは7人。しかも全員が強者だ。同じことの逆を出来ないのか?」


「あぁ…それはもう6人になった時に試したさ…。でも無駄だったよ、疲れただけだ。ここは時間が止まっている。空間しかない不完全な場所だ。力を使っても時間が経たないから回復できないのさ。老いることも、死ぬことすら叶わない。この宇宙において、殺傷は不可能になっていることも確認済みだ」


「死ぬことも出来ない…?そんなバカな話があるわけ…!」


 咄嗟に俺はナイフを創り出し、自分の喉元へと躊躇なく刺す。が、刺さらない。いや、刺さってはいるが、血は流れず、痛みも感じない。


「わかったか?ここは、肉体と物体が存在している空間が違う空間にあるから物体で肉体を刺すことは出来ない。私たちはお互いに殴り殺すことを決めた。が、これもダメだった。一人一人の存在している空間すら違うんだよ。何をしても無駄。永遠にこの宇宙に閉じ込められているだけの存在と私たちはなった」



「…なんだよ…なんなんだよそれ!こんなの死ぬより辛いし苦しいじゃないか!」


「あぁ、だからこそ、奴らはこの宇宙に私たちを転移させたんだ。今更何を喚くことがある。それぞれ、ここに転移させられるほどの罪を犯している」


「俺は!俺はただ管理局に転移しただけなのに!?」


「はぁ…、お前はどこまでバカなんだ。お前の中にあるそれはなんだ。それは、闇の世界の住人の王、3062代目のサタンだ」


「は…?サタン?そんなものが実在するとでも?」


「実際にお前の中にいるじゃないか」



 俺はもう、わけがわからなくなっていた。全てを否定したい。何もかもなくなればいい。全てを…壊したい。


 そう願った瞬間、俺は、自分を失う。



『我は、闇の王、サタンである。故に、貴様ら暗黒界に住んでいたモノは私に喰われるがいい』


 サタンが目覚めた。周りの6人は逃げ惑う。しかし、逃げることすら出来ない圧倒的なまでの強さの前に、なす術はなかった。


 6人が喰われ、サタンは力を取り戻す。



 《キャンセラー》


 サタンが呟いた途端に、世界から闇が晴れる。目の前の風景が、管理局の奴らに転移させられた場所に移動した。

 そして、俺の意識は保てなくなった…。

 意識を失った(乗っ取られた)俺は、サタンに体を乗っ取られ、勝手に体を動かされた。

 俺は、意識の外側から精神を通して外の様子をみていた。

 サタンはキャンセラーという魔法を使ってあの宇宙から脱出し、あの宇宙に送り込んだ奴らを全員瞬殺している。

 6人全員を倒さずに一人だけ生かす。どうすれば中に入れるのかを聞き出すために。

 もちろん、生き残った者は最後まで口を割らなかった。サタンは強硬手段に出てドアをこじ開ける。

 全員が臨戦態勢をとるが、間に合わない。

 臨戦態勢をとったころには目の前が血に染まっている。


 サタンは真っ直ぐの通路を一瞬で駆け抜け、あっという間にそのフロアの最奥部までやってきた。

 例え魔族の王であるサタンであろうと、敵陣地の真っただ中。油断は禁物である。しかし、それでもサタンは余裕を持てるほどの実力を持っていた。

 体は竜で中身はサタン。

 管理局を助けた経験を持つが闇に染まった犯罪者と闇の世界の住人の王の組み合わせ。

 不意に、目の前の景色が一変する。


「そなたは、完全に闇に堕ちてはいない。今ならまだ引き返せるぞ、竜」


 直接精神に話しかけているというこの声の主はどこにいるのか。声を聞いただけで安心できるようなとても暖かい声。


「闇に堕ちてなくても、俺は管理局に裏切られたってことだけは許せない」


「それはどうして?どうして裏切られたと思っているの?」


 聞き返さなくともわかっているであろうに、聞き返してくる。


「そもそもお前は誰だ。その声の温もりは俺には必要ないんだよ!」


「そうか、残念だ。だが、お前のことは助けさせてもらうぞ。神族として、サタンの悪行をこれ以上見逃すわけにはいかない」


 そういった瞬間、目の前が元の視界に戻った。体も自分の思うように動いている。なら、サタンはどこだ?


「ふっ・・ははは!人間を殺して奪った生気で顕現するのは楽しいなぁ、神よ」


「私は、そんなことを許した覚えはない」


 上から二つの声が聞こえる。上を見ると、そこには、黒い翼の生えたマッチョ野郎と、白い翼の生えた神々しいまでの後光が差している自称神がいた。


 直後、二つの力が交錯する。

 神とサタンの戦いはとても長かったが、ようやく決着がつきそうだ。

 しかし、優勢なのは神ではなくサタンのように見える。サタンは大技を出しては人間から生気を吸い取り力を回復させるが、神のほうは力を回復しない状態でずっと戦っていた。


 そして、神が地面に叩き落される。


「神がこの程度だったとはな。神も力を回復すればいいものを、立場なんぞ気にしてるからそうなる」


「私が、見本にならなければならないからな。お前たちを殺すことは私でさえも許されていない」


「許すってお前が神だろう?」


「そうだ。確かに私は神だが、神よりも上の存在がいるのだよ、この世界には」


「何・・・?それは本当か」


「私は元々人間の生まれだ」


 その会話に、人間が皆固唾を飲んで見守る。神が勝つことを祈って。しかし、先ほどの神の言動に人間は不信感を抱いた。神が人間の生まれであること。こんなこと知らないほうがいいだろう。


「その、お前を神にしたやつはどこにいる」


「形のあるものではない。概念のようなものだ。その概念に力を授かり、私はこうして戦っている。お前たち闇の者には、私も生気を吸って生きていると言われているようだが、それは間違いだ。本当は、概念から力をもらっている。必要な時に必要なだけ」


「必要なだけもらってその程度かよ」


 サタンのテンションが下がったことは誰からみても明らかだ。


「そうだな、もう少しもらうとするか」


 神がそう言った途端に、空気が重くなった気がした。全身の筋肉がこわばり、サタンですら後ずさる。


 不意に、神が「あの技をしてもよいのですか?・・・わかりました」とつぶやいてサタンに向き直る。


「概念より、サタンへの罰が決まった。これより、それを実行する」


「はっ、さっきまでやられてたのにいい度胸だな。俺を倒せるとでも思っているのか?」


 嘲笑気味にサタンは言葉を返す。


 神は機械的に喋りだす。


「神の力、第1臨界点突破。第1臨界点第3魔法、ラプス・オブ・ザ・ワンス。完全消失魔法放出可能」


「完全消失魔法!?お前さっき誰も殺さないと言っていたじゃないか!」


「概念より、この宇宙にお前はいらないそうだ」


 それだけ言うと、神は手を空にかざし「さらばだ、闇の王よ」と言い空からサタンに向けて円錐の光の柱が放出された。


 サタンは何も言えずに跡形もなく消し去られ、管理局から強制転移され元の世界に戻ってきていた。そこには妹の姿がある。

 神が妹を返してくれたのかと思うと嬉しくて涙が込み上げてきた。

 体が少し重いな・・・と思って目を開けて体を起こすと、そこには妹のはるかがいた。


 はるかが帰ってきてから1か月が経とうとしていた。ちょっと前までは命がけで戦っていたりしてのに、それももう過去の出来後。むしろ現実味がなさ過ぎて夢なのかと勘違いしてしまいそうになる。

 はるかは中学校に通っている。俺が事故にあってから半年が経ち、今では昔のような生活を送っている。

 朝起きて、学校で友達と談笑し、放課後は時々寄り道をしたりして。


 そして、月日が流れ、高校3年の進路調査の時期がやってきた。俺が通っている高校は普通科の高校で、特に変わったものはない。

 偏差値も高くもなく低くもないいたって普通な学校である。

 そんな高校からいける大学も限られ、就職先も特に考えがなかった。


 突然それはやってきた。


「ん・・・?なんだこれ」


 ポストには俺宛ての郵便物が入っていた。


 俺は自分の部屋に入り、その郵便物をみてみる。差出人は無し。俺の住所もかいていない、かいているのは名前だけ。


「こんなので届くわけないし、わざわざいれにきたのかな・・・」


 とりあえずあけることにした俺は、封を乱雑に引きぎるかのようなちぎり方であけた。中に入っていたのは一つの招待状。

 そこには、こう書いてある


 拝啓、竜殿。


 実は、先日の件があり、神から竜殿への審判が下った。

 よって、管理局への出頭を命ずる。


 管理局へは、この招待状に念を送ると、念に反応して術式が作動するので、そうやってくること。

 この手紙を見たらすぐにくるように。

 それでは、失礼する。


 管理局一同より。

 」


 平和に暮らしているときにこれか・・・

 実はなんとなくはわかっていた。本能的な何かで。

 だって、サタンと契約したなんて前代未聞の出来事。

 罰がないほうがおかしいとまで言える。

 いつまでもこんな生活が続くと信じていたかった。

 ずっと、妹がいて、家族がいて、学校へ行って、放課後遊んで帰ってくる。

 それを信じたかった。

 でも、希望は儚く砕け散る。


 俺は半泣きのような顔になって、招待状の握り、拳に力を入れる。

 そして、念じた。

 すると、俺は光に包まれ、自分の部屋から姿を消した。


 転送魔法が終了すると、そこは、かつてサタンと神が戦っていた管理局だった。

 中から人影が出てきて、真っ直ぐこちらへとゆっくり歩いてきている。


「今ならまだ帰れる・・・まだ、あの生活に・・・」


 そうつぶやきながらも、両の拳を強く握り、涙があふれるのを止められずにその場で泣き崩れてしまう。


 まっすぐ歩いてきた人ははるかさんだった。


「はるかさん・・・」


 はるかさんは呼びかけに応じない。それも仕方のないこと。なんてったって俺は大犯罪者なんだから。

 悪魔と契約しただけで大罪に問われる。

 王と契約したなんてのは即死刑だろうなと思っていると、はるかさんに「ついてきて」と言われ、後ろについていくことになった。


 はるかさんが立ち止ったのは、大掛かりな仕掛けがありそうな大部屋。

 そこには、たくさんの魔法陣がかいてあり、たくさんの魔法師がいた。

 その魔法師たちは今でも慌ただしく動いている。


「竜、これから判決の結果を言うね?」


「・・・はい」


 俺はまた泣きそうになる。でも、今ばかりは耐えなければならない。

 大勢の人の前で大泣きするなんて恥ずかしい。でも、その恥ずかしさを差し置いてでも泣きたいという気持ちのほうが断然大きかった。


「竜、あなたは、過去に戻ることになったの。私たちと会っていない過去。それから、その日から今日までの記憶をすべて消去するということになったの、それで、あなたの妹は、元々いなかったことになるから、あとね、事故はしないようになってるから、もうここには二度と来ちゃだめだよ」


 はるかさんも泣きながら判決を言い渡す。

 妹にももう会えない。それはつらいけど、元々妹ではなかった。管理局の人間だった。だから、悲しくもなんともない。そう思えば思うほど悲しくなってくる。

 俺が泣き出すと、はるかさんも同時に泣き出す。

 いつの間にか魔法陣はすべて完成していたらしく、魔法陣の中心に俺は縛られた状態で置かれる。万が一にも逃げないようにするためとのことだった。



 そして、詠唱が始まり、最後の一言まで言い綴られた。




 6月27日


「ふぁ~あ」


 俺は大きなあくびをする。

 寝ていたはずなのになんだかとても疲れている気がする。それに、とてつもなく長い夢を見たような気もする。

 とりあえず布団から出て顔を洗い家族のいる居間に行くと、そこには母親と父親がいた。

 父親は今日の朝刊新聞を読んでいて、母親は朝食を作っている。


「母さん、今日はパンじゃないの?」


「え?あぁ、そうよ。昨日和食がいいって言ってたじゃない。忘れちゃったの?」


「あれ、そうだっけ・・・まあいっか」


 俺は寝ぼけた声で返事し、そういえば・・・と昨日の記憶を振り返ろうとする。


 でも、何も思い出せない。冬休みのスキー旅行から昨日までの記憶がない。

 スキー旅行にいったのは覚えている。あれは確か、家族4人で行ったはずだ。

 母さん、父さん、俺。

 あれ・・・・?3人じゃないか、どこで数え間違えたんだろ。

 突然、ズキっと頭が痛む。何かを忘れているような、そんな気がする。しかし、そんなことはどうでもいい。「記憶がなくても困らないし」と思ってると、母さんに「朝食できたよー?」と言われ、居間に戻り、いつもの日常を過ごすことにした。


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