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白猫の正体

俺はこの頃仕事にも白猫─アンブラーを連れて行くことが日常となっていた。王城では、大人しくまるで人の言葉が分かるかのように頷き鳴く真っ白な白猫が人気になっていた


この日も王城の庭でアンブラーと別れ基礎訓練から始めていると魔法騎士団総官長様と宰相様が第3訓練所に入ってきた


全員敬礼し魔法騎士団総官長様が何を言い出すか固唾を飲んで待っていると


「この隊に行儀の良い癒しの白猫を飼っている者がいると聞いたが飼い主は誰だ?」


俺は内心冷や汗をかいていた


アンブラーが何か不味いことでも仕出かしたのか?それとも猫の入城には何か手続きが必要だったか?


不興を買う前に一歩前へ出て


「は 、はい。その白猫を飼っているのは私でございます」


魔法騎士団総官長様と宰相様の射殺さんばかりの視線が全身に刺さることに耐えながら次の言葉を待った


「陛下がその猫を一度愛でてみたいと申されたので、その猫を連れて行くがどこにいる?」


宰相様の言葉に驚き固まっていたら再度


「何処にいるのだ?」


冷たく冷酷な視線と共に問いかけられ


「……は、はい。先程、訓練に向かう際に庭に下ろしました。ですので今、何処にいるかは分かりません」


「そなた名は?」


「は、はい!リアンユと申します。私の故郷は人口250人程の小さな村です」


更に視線が厳しくなり俺は蛇に睨まれた蛙のように体が硬直し動けなくなった


「村の平民と言う事は、お前の後継人は誰だ?」


今度は、魔法騎士団総官長様の問いかけに恐る恐る


「ゆ、ユセント辺境伯当主の え、エリック様です」


俺の回りに物理的な冷気が流れた。宰相様は眼鏡を押し上げると意味深めに


()()()そう名乗ったのか?」


俺は混乱しながらも


「は、はい。入門試験のさいに受付と案内をしてくださった方がそう仰っていました。たしかその方は……ルーク と名乗っていました。補佐官様ともとても親しげでエリック様とも仲が良さげでした」


魔法騎士団総官長様は嘲るように


「そらそうだろう。ところで話は戻すが、白猫を今すぐ連れ戻せ」


そんなこと不可能に決まってるだろう!?彼奴が何処にいるかさえ俺は知らないんだぞ!!後をつけても直ぐに見失うそんなトンでも白猫を見つけられると思うのか!?


「さ、流石に無為でございます。恥ずかしい事ですが、どれだけ後をつけても直ぐに見失ってしまうのです」


「ほう、それでもお主は飼い主か?」


一週間、補佐官のユイセント・エリーが帰って来てないからって俺らに当たるなよ!


「も、申し訳ございません」


「たかが猫一匹の居場所さえ見つけられないのなら辞めたらどうだ?」


「そこまでにしなさい」


宰相様は総官長様をいなすと申し訳なさそうに


「そなたに悪気は無いのだが事が事だけに、ランスは気が立っているだけだ」


そら最愛の妹が勝手に居なくなったら苛立つだろうな。手紙の一つもないなら尚更


周囲にいた者達はいつの間にかその場から居なくなっており親友が耳元で


『お前の猫を探しに行って来る』


それに頷いて見送ると


「いっその事お前を吊し上げればその猫も出てくるかもな」


不穏な言葉に顔を真っ青にして後ずさると


「なに、庭に逆さ吊りにするだけだ」


「ま、待ってください!」


総官長様がおれを透明な魔糸で頑丈にくくり逆さにしようとしたとき


『………ニャァ~』


と言う鳴き声が聞こえ俺は床に落とされ総官長がアンブラーを持ち上げ


「お前が噂になっている白猫か?」


俺は心のなかで


頼むから大人しくしててくれよ


と願うが


『ニャッ!』


「なっ!」


アンブラーは総官長の腕から飛び降りると驚異のジャンプ力で総官長の頬に猫パンチを喰らわせた


不穏な空気が漂う中、宰相様が


「ランスよ。その子はレディのようだな」


と言うと膝をつき


「美しきレディ。私と共に陛下の元へついてきてくれないだろうか?」


宰相様が出した手にそっとアンブラーは手を乗せた。宰相様はそっと持ち上げるが暴れることなく大人しくその腕のなかにおさまった


「練習の邪魔をしたな」


そう言って総官長は宰相様の後を続き訓練所から出て行った


俺は心底ホッとしたがアンブラーが陛下に粗相をしないか心配になったが、無事に戻ってくると信じ訓練を再開すべく探しに出掛けた兵達を連れ戻しに奔走した


◇◇◇◇◇


ランスはあの手紙以降エリーから音沙汰も無いことに日々不安と苛立ちに苛まれていた。だが、手を抜くと次の日には書類が倍増し訓練に出向くことさえ難しいときもあった


一体お前は何処にいるの?エリー、俺は寂しくて仕方ないよ


エリーが居なくなってから親父も俺もストレスが溜まり、有り得ないミスばかり起こすように成っていた。それを心配した陛下が一匹の白猫を愛でてみたいと言い出し、飼い主のところへ向かったが知らないと言われてついに実力行使を行おうとしたとき


『………ニャァ~』


とまるで呆れたような猫の鳴き声で浮かしていた魔力を消しその猫に駆け寄り持ち上げる


「お前が噂になっている白猫か?」


聞くとほんの僅かエリーの魔力を感じ呆然としていたら


『ニャッ!』


と言うと鳴き声と共に頬に痛みが走った


まさか本当にエリーなのか?呆けていると側に来た親父が


「ランスよ。その子はレディのようだな」


と言うと膝をつき


「美しきレディ。私と共に陛下の元へついてきてくれないだろうか?」


親父が出した手にそっと白猫は手を乗せ抱き上げられても大人しくしていた


陛下の元へ白猫を連れていくと書類に追われていた陛下が


「よくぞ来てくれたアンブラー」


白猫は親父の腕から優雅に降りると貴族の令嬢のように軽く膝をおり頭を下げた


『ニャニャニャニャンミャーニャン』


「そんなに堅苦しくしなくても良い」


『ニャン』


陛下は俺たち以外の人払いをさせると防音・盗聴阻害・幻影魔法を室外に向けて放つと


「もう良いぞ。アンブラーいいやエリー嬢」


「陛下何を仰っておられるのですか!?」


驚く俺を無視して親父はエリーの服と視害魔法を一ヶ所にかけ


「そこなら着替えられるだろう」


と言うと白猫はそれに答えるように親父がかけた方へ向き


『ニャ』


と言って中に入っていった


暫くして


「はぁ~、陛下()()()()と言ったではないですか!」


エリーの声が聞こえたと思えば


「お兄様もお父様も陛下お祖父様も床で正座です!」


俺が再び茫然としていたら上から圧をかけられ大人しく正座するとドレス姿のエリーが視害魔法を消して出てきた


「まずはお兄様!あれほど手を抜かないやり過ぎないと忠告致しましたのに見事に無視して実行成されましたわね」


「…………」


現実味がなく沈黙していると頭に軽く鉄扇を置かれ素敵な笑みで


()()()!聴いているのですか!?」


流石に不味いと判断し


「悪かった。可愛いエリーが居なくて気が立ってたごめんね」


エリーは俺から視線をはずし親父の方へ向くと


「何故お兄様をお止めにならないのですか!お父様に私、お願いしましたよね?」


親父は苦笑いを浮かべ


流石に3()()()()()も帰ってこないとは思わなくって動揺してしまった」


「はぁ~。最後に陛下お祖父様。何故もうばらしてしまうのですか!もう少しで情報収集が終わり堂々と戻ってこれたと言うのに!」


陛下は下を向きながら


「仕方ないだろ?この二人が有り得ないミスや殺気を飛ばしまくって城中の皆が怯えてるんだから」


エリーは無言で親父と俺を睨むと諦めたように


「……あと二日で情報確認して戻ってきます。では、失礼いたします」


と言った瞬間ドレスだけ床に残してエリーは姿を消した


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