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俺は家にいるあの女が誰か最早どうでも良くなった。ただあの人でないことだけはハッキリした
訓練を行いながらあの時を振り返った
彼女に出会えなければ、確実にウィルゴさんも俺もあそこで生涯を終えていたと思う。あとその後のことも助けてくれたことには今でも感謝しきれないが………
「私はユイセント公爵家 当主 カールとデージーの娘 そして 魔法騎士団長 兼 王太子殿下の側近を務めている ランスを兄にもつ魔法騎士団副団長 ユイセント・エリー と申します」
彼女は年下とは思えない隙一つもない騎士の礼をして見せた
ウィルゴさんは、頭を地面に付けながら
「わ、私は、ウィルゴとも、申します」
彼女は困った顔をしながら
「頭をお上げ下さいな。今の私はただの通りすがりの平民上がりの魔法騎士見習いをしてるリリアです。だから畏まられると困るよ」
少女は、いつも本名を名乗ってから別の名を言うのか?
「で、ですが!!」
彼女は可愛らしく首をコテっと横に傾け
「ウィルゴのおねぇさん、皆のもとへ行こう?」
さっきまでの大人ぶった仕草から年相応の言動になった
・・・こいつどっちが本物だ?いいや、本当ならリルちゃん同様親に甘えたい盛りの歳だからこの言動がある意味正しいのか?
ウィルゴさんは立ち上がるといつもと同じ柔らかい優しい笑みを浮かべ俺達の手を握り
「さぁ、二人とも皆の所へ行こうね」
「うん!」
「……はい」
こいつ本当はお子さまなんじゃぇか?さっきまでのあれは、きっと無理やり演じてただけだな。あの魔法も別の誰かが近くで放っただけだな
と1人俺は納得していた
『ギャルル』
魔物が近くで鳴いていることに警戒していたからウィルゴさんの右側で
「そう言えば、お兄ちゃんの名前教えて?」
と可愛い声で聞かれた瞬間
『………キャン!ドサッ』
っと鳴き声と共に何かが倒れる音がした
その音にビクッと肩を揺らし左の木の影に魔物が倒れているのが見てとれた
少女の方を見ると何事もなかったかのように笑顔で、さっきの問いかけの答えを待っていた。俺は、あのとき同様 誰かが俺たちを守るために魔法を放ったと思いった
「俺は リアンユ この村で一・二を争うほど狩りが上手いんだぜ!」
「狩りって何か分からないけど、リアンユお兄ちゃんは強いんだね!!」
「おぅよ!俺は、将来この村を出て魔法騎士になってやるだ!そして、もっとより多くの人を助けるんだ!」
俺は、拳をつくり話していたから気づけなかったが後からウィルゴさんに聞いて知った
魔法騎士は、魔法の才能が高く貴族の後見人が必要だってことを
そうこうしているうちに俺が出てきた穴にたどり着いた。リルちゃんは入ってくるウィルゴさんに気づき駆け寄ってきた。微笑ましく思いつつ両親に怒鳴られることを覚悟した………が親の姿が見つからなかった
「なぁ、村長のおじさん。親父とお袋は何処だ?」
「それは………リアンユ お前を追って出ていってから戻って来てないんだよ」
「何で止めねぇんだよ!!」
俺は、頭に血が登り穴から飛び出し家の方へと近道を使って走り出した
出てくる魔物を一体一体仕留めながら家に着くと両親は魔物の群れに囲われていた
「親父!お袋!」
「お前は逃げろ!」
「無事だったんだね!」
二人は安堵していたが、俺は魔物と魔物の間を縫って弱そうなものから倒しながら親父の元へ駆けつけた
両親の手を掴み引っ張ったが一向に前に進まなかった
「親父、お袋なにやってんだ!?今のうちに逃げるんだ!」
お袋は悲しそうに俺の手を離すと
「私達はねここから動けなくなってしまったんだよ」
と言うお袋の視線の先には足が逆方向に向いていて立つことも出来なくなっていた。親父の方は出欠量が多く座っているのもやっとと言う感じだった
くそ!クソクソクソ!ウィルゴさんを助けにきたときに何故俺は気づかなかった?あのとき気づいていれば、こんなことにもならずにすんだと言うのに!
………そう言えば何処かで魔法士は、気配で魔物の位置や周囲の人の動きも察知できるって言ってたはずだ!それじゃあ あいつは気づいていて放置したのか?あいつが────
『パシン』
お袋に右頬を叩かれて冷静に戻ったが、俺は今何を思った?あの女の子を憎み殺そうと思った?
「リアンユ。お前が何を勘違いしてるか知らねぇが魔法騎士って言っても何でもできる訳じゃねぇよ。普通の人間と同じで出来ねぇことも多くあるんだよ!」
「……親父」
「あの娘を呼んだのは俺達だ。本来ならもっと下の連中が来るはずだったが、あの娘は『自分が行く』と言って実力派の8人を率いて来てくれたんだ。感謝はしても憎んではいけねぇ 分かったな!」
「…ああ」
俺が、ショボくれていると魔物が再び群れをなし俺達を遅いだしてきた
「お前だけでも逃げろ!!」
「でも!」
「でも、も くそも あるか!さっさと行け」
親父に蹴飛ばされ魔物の群れから脱け出し木の側でへたり込んでいると
「あっ!こんなところにいたリアンユお兄ちゃん。皆が心配していたよ」
出会ったときの 真っ白の上下で襟や裾に金のラインが入っていた服が真っ赤に染め上がっていた。それなのに彼女は変わらない笑みのまま
「ここで暫く待っててね。お仕事してこなくちゃね」
と言うと
『パリエース』
俺の周りにあの時と同じ壁が360°出来ていた。彼女は有り得ないスピードで魔物を蹴り飛ばしお袋と親父がいる位置まで到達した
『レセトンベ・オスクル』
いきなり魔物がもがきだしたかと思えば、元の動物の姿に戻っていた
魔物だった動物達は、人間に怯えたように森へ帰っていった
どう言うことだ?今の魔法があればもとに戻せるのか?
『セラピア』
親父達がいる場所に明るい光が発光したと思ったあとお袋は俺のところに来て抱きついてきた。暫く抱き着かれてようやく放されたと思ったら今度は手を繋がれ
「さぁお礼に行くよ」
と言ってお辞儀をしている親父の元へ行き俺もお辞儀させられた
まぁ助けてもらったんだからこれぐらいは……
「魔法騎士団副団長ユイセント様。お助けいただきありがとうございました。何もお礼は出来ませんが、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
「いいえ、それには及びませんわ。魔物討伐が終わり次第我々は王都に戻らなければなりません。復旧のお手伝いが出来ないことを申さし分けなく思いますが、どうぞお許しを」
「いえいえ、こちらこそ無駄な手間を取らせてしまい申し訳ございません」
「それでは、後始末をして参ります──それと」
さっきまでの鋭さがなくなり俺の顔を見るように下から見上げられ
「リアンユお兄ちゃん!王都の魔法騎士団で待ってるね」
と言ってから彼女は姿を消した。
あれから3年………村は魔物に襲われたことが無かったように元の状態に戻っていた。俺は、意を決して王都の魔法騎士団入門試験を受けに行った
会場は城の手前にある魔法士団で第一次審査が行われた
「君、名は?」
「リアンユと申します」
審査員が名簿らしき紙を捲りながら
「平民なら誰かの後ろ楯を貰ってるだろうな」
俺は、彼女の事を思いだし
「はい、貰っております」
「ええっと……リアンユ……リアンユ……あったぞ。お前は、ユイセント公爵家の再従姉妹のユセント辺境伯当主のエリック 様が後ろ楯か。妙な所に目をつけられたもんだな」
ユイセント家じゃない!?彼女が後ろ楯になってくれるんじゃなったのかよ!
「妙なとはどう言う?」
「お前知らないのか?ユセント家は分家でも財産が多い。それにな公爵家の弟が一人立ちするのなら侯爵の爵位を渡す事が定例だ。それを辺境伯が良いと言って国境線のところに邸を構えてる変わったお方だ。それに王とユイセント家当主しか顔を見たことが無いそうだ」
ユセント辺境伯に後ろ楯を頼んだのが公爵現当主なのか?それとも何処かであったか?
「次は魔法実技だ」
「はい」
案内役の彼に付き添いドーム型の訓練に着いた
こんな施設作るのにどれだけの税が使われているんだ?
彼は俺に手招きをするので近づくと小声で
「俺は案内だけしかできねぇ。ただ忠告しておくぜ、ここには平民を蔑む輩が多くいる。目をつけられねぇように気を付けろよ。もし運が良ければ魔法騎士団の方々に会えるかもな」
そう言うと俺の左方に拳を当て
「幸運を祈ってるぜ」
と言って壁際に向かっていった
あいつは、俺を応援してくれてるのか?それともユセント辺境伯に目をつけられていることに同情をしたのか?まぁいっか、魔法騎士団に会えるかも知れねぇってことはあの子にも会える可能性が有るってことだな
「リアンユ。こちらへ」
「はいっ!」
銀色の髪をした19そこそこの男性がいる方へ向かった
「これから魔法実技を始める。規定された魔法量より少なければ、本格的な入団試験は受けられない」
「はい。よろしくお願いします」
「では、得意魔法を発動させろ」
はぁ?呪文さえ知らねぇのにできるわけないだろう
周囲を見ると発動呪文を教えたり、水晶を使ったりして行ってるって事は彼が言っていた嫌がらせか?
男を見るとニヤついていた
うん?確か3年前彼女がなにか唱えていなかったか?………えっと
『グローム』
彼女のように強い殺傷力の有るものではなく、ひとつの雷が床を焦がすぐらいのものだった
男は顔を赤くしながら
「不合格だ!!」
「何故ですか!?他の方々は火の玉を出したりしているだけで合格にしているではありませんか!」
「試験官である私に攻撃してきたのだから当たり前だろ!魔力コントロールも出来ない奴が入団できると思うな!」
「それくらい魔法──「あらあらなにやら、騒がしいですわね」」
えっ?まさかこの声は!
「そうだね、可愛い我が妹。また馬鹿が現れたのかな?」
「ふふふ、毎年の事ですものね。さてさて、今年は何方かしらね?」
あの時と違い圧力が強すぎて、俺は無意識に膝を折り頭を下げた。俺に怒鳴りつけていた男は勝ったかのように胸を張って立っていた
こいつはこの圧力を感じないのか?
「あら、ラワーユリッヒ・ミッテ 何の騒ぎですか?」
「はいっ!この平民が私の査定に意義を申しあげくのはてにこの私に魔法を当てようとしたのです!!」
なにを出鱈目な!お前がちゃんと審査をしないのが悪いんだろうが!!
「そこの貴方、表を上げ 何があったか答えなさい」
「はっはい!」
頭をあげるとあの時より凛々しくなった彼女とその隣に兄らしき男性が立っていた
「お久しぶりです。ユイセント・エリー様」
彼女は首を横に傾げると
「あら、何処かでお会いしたかしら?それよりも事の顛末をお話しなさい」
何故俺のことを覚えていない!!たった3年ですべてを忘れたって言うのか!?
「得意魔法をと言われたので雷の魔法を発動させただけです。床に焦げ後が多少着いただけの威力でしたが、不合格 と言われ理由をお聞きしていた次第でございます」
「そう。ミッテ訂正することは何かあるかしら?」
「そいつが言っていることは全て嘘です!!」
「俺は、嘘なんかついていない!」
「黙れ!平民ごときが俺様に口答えをするな!」
「いいえ。黙りません!俺は嘘なんかついていないのだから!」
「ルーク」
「はいよ、お嬢」
案内をしてくれた男性が彼女の元へ向かった
お嬢って事は従者だったのか!?
「ことの結論を話なさい」
「おう!結論から言うとこいつは合格だ。そのミッテとか言う男はそこにいるリアンユがお嬢の特製魔法を使ったことに、敗北感を感じて無理やり不合格に仕様とした」
「そう」
「ち、違う!お 俺はそんなことしてなんかない!本当だ!」
「お黙り!ラワーユリッヒ・ミッテ 貴方を不正の疑いで審査官から下ろします。また、罰として魔法騎士団から除籍し騎士見習いへ降格します。それに新人の魔法を避けれないのならやめてもいいわよ?まぁそこで償い、技術を向上させてから昇格試験に挑む事は許します」
「何故ですか!?平民ごときをお庇いになられる!!」
「貴族は民を守るのが使命です。また、魔法騎士も王族だけでなく民を守ることが仕事です。その民を見下し有力な才能を潰そうとする貴方を許せませんの」
「その男を引っ立てていけ!」
「はっ!」
彼女は悲しげに微笑み
「承認式で会えることを楽しみにしているわ。リアンユお兄ちゃん」
そう言って彼女はもとの道を戻っていった




