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遠出


第1練習場に近づくにつれて騒がしい声が聞こえた。

いつも通り愛馬を預け訓練場に入ると誰かを囲むように円が出来ていた。その円の外側にいたマクシムに

「マクシム、この騒ぎはなんだい?」

と聞くとざわつきも収まるほどの声で

「エリック!今まで何処に行ってたんだ!団長がお前を探してたぞ!」

「団長が僕をかい?」

「そうだ!その前に______」

マクシムが何かを言おうとしたときそれを際切るように輪の中央から

「エリーやっと来たのか?」

と声が聞こえた。

一瞬回れ右して外に出そうになったがそれを堪えて、近づいてくる人物にため息をついた。

足音が目の前で止り顔をあげるとやっぱり予想通りの人がいた。


「エリー、遅かったな。私の護衛を頼みたい。構わないだろうか?」


膝をつき臣下としての礼をとりながら

内心猫かぶりだ!穏和かな王子の仮面を被った毒蛇がいる~。と思った。


「まだ訓練中の身でありながらそのような申し出もったいない限りです。ですがこの後1時間ほどしたら出向かなければならない私用がございます。それまでならば、慎んで護衛をさせてもらいます。」


「そこまで長くはない。頼んだエリック。」

「はっ。このまま行かれますか?」

「時間が惜しいこのまま行く。」

「はっ。畏まりました。直ちに殿下の馬をお連れいたします。」


と言って自分の愛馬を連れリアムの馬がいる馬小屋にいき、リアムが外出することを伝え馬を連れて訓練場の前に戻ってきた。


「殿下。」

「ありがとう。エリックさて行くか。」

「はっ。」


城門を抜け敵国と自国の境界線がある砦付近に着くとそのまま森の方へ駆け出した。


「エリー。」

リアムに呼ばれたので斜め後ろから横へ移動し。

「はっ。どうされましたか?」

「その話し方そろそろやめろ!苛々するいつも通りにしろ。」

ため息をついてから

「リアム様、貴方様が私を臣下として護衛として私を指名した。」

苛立った表情でリアムが

「それがどうした。」

僕は真剣な表情で

「臣下として護衛として私を指名した。それだけで普段のように馴れ合うことは、出来なくなります。」

「いい加減にしろ!普通に話せこれは命令だ‼」

僕は呆れながら

「…わかった。その代わり話を聞いてくれるね?」

渋々と言う感じで

「あぁ。」

「もう一度言うけど、リアムが殿下として僕を指名すると言うことは任務を与えられたってことになるんだよ。回りは僕が学園に通ってることを知らない。そしてリアム達と仲が良いことも知らない。」


リアムがムスッとした顔で

「それなら全て言えば良いだろう?

学園に通い俺達と仲が良いことを。」

「僕が学園に通っている理由を言ったらどうなるか分かるだろう?」

「………だが、お前はそんなことしないだろう?」

「僕がしなくても彼等は勝手に動き出すよ。そうすれば、この平和も崩れ去るだろうね。そしてこの好機を隣国は逃さない。たちまち火の海に成り大勢の死者が出るだろうね。」

「………」

黙りこんだリアムを見てから

「話は戻すけど、リアムが殿下として僕を選んだんだから城に無事に帰す責任がある。例えこの身が割かれようともね。優先すべきは自分の身の安全じゃなく、リアム_殿下の身の安全が最優先事項になる。だから今後の事を考えリアムにとって僕が足枷にならないように、相手に弱味を知られないようにしてたんだよ。」

「………かった。」

「リアム?何て言ったんだい?」

「悪かった。俺が考えなしだった。どいつも俺が王族だからといって一線を必ず引いている。それが煩わし、唯一お前だけが一線を引かず王族としてではなくリアムと言う一人の人として見てくれた。それが嬉しくってずにのった、お前に言われて気がついたよ。」

「僕も悪かったよ。リアムが一線を引かれることを怖がっているのを知っていながら、リアムを守るため なんて口実をつけ君を傷付けてしまったんだから。ごめんねリアム。これからは、二人きりの時や自分達の事を知っている人達の前だけはいつも通りにするよ。それでも良いかい?」

「あぁ。それで、お前の本名はエリーなのか?エリックなのか?」


僕は苦笑いを浮かべながら

「やっぱり忘れてくれなかったんだね。この際だから言っておくけど、本名はエリーだけど任務が増えたりするからエリックと言う偽名を使ってるんだよ。近衛の人達にもエリックと呼ぶように言ってあるから、仕事中はリアムもエリックと呼んでほしい。」

「分かった。仕事中はエリックと呼ぶことにする。」

「ありがとうリアム。」


僕は先程から何者かにつけられているのを感知しながらリアムに気付かれないように話しを続けた。


「ところで、何処に向かってるんだい?」

「その先に泉があるそこで息抜きをしようと思ってな。」

「へぇ~こんな奥に泉があったんだね。」

「そうだ。視察最中に見つけた。」


ヤバイな数が40近くか。僕の能力を使えば一掃出来るけど……リアムにも『あの』事を伝えないといけなくなる。そうするときっと不安に押し潰されるだろうね。リアムが僕らと同じではなければね。


リアムと話ながらもどう行動するか考えていた。その時頭の中で

『エリーよ。妾が奴等を一掃してやるぞ?妾ならそやつにも見つからずに始末してやれる。』

『駄目だよ。彼等は牢屋で尋問するから生かさないといけない。それにもしリアムが生まれ変わりなら覚醒してなくても見えるだろうから危険だよ。』

『リュミエール、ここはエリーに任せてはどうだ?』

『ドラガオン、そなたに指図されとうないわい!エリーが望むならその通りにするだけじゃ!』

『二人ともありがとう。今回は私一人で片付けるから』

『エリーが言うなら。何かあれば直ぐに呼ぶんじゃぞ!』

『頑張れよエリー。』


さてとどうしようかな?

泉で身代わりをリアムと一緒に居させてその間に片付けよう。


泉につき近くの木に馬の紐をくくりつけ自分に全くそっくりに言動をする身代わりに満足した。

身代わりをリアムの所へ向かわし、何も怪しまれていないのを確認してから防音魔法で音がリアムに届かないようにした。


森をかけリアムと結構距離が空いたところで

「そろそろ出てきて貰えるかな?町を出た辺りからこそこそとつけてきているのは分かってるけど。」

その言葉に、黒ずくめの男達が一斉に攻撃を仕掛けてきた。

僕は近づいてきたのを剣の柄で気絶させ遠くにいる人らには、幻獣達にお相手させた。暫くしてずっと姿を隠していたリーダーらしき人が、一瞬にして幻獣を消し去った。


へぇ~あの人結構強いね。僕の幻獣を一瞬で消し去るなんてね!


「確認させてもらいました。」

「やっぱり貴方達が『グリムザ・アサシネイション』ですね?」

「その通りです。我らと共にいる間貴女の呼び名は『デア・ザラーム』我らはザラームを歓迎します。では後程」


そう言って消えた。


僕はリアムの元にいる身代わりと交代し

「さてそろそろ戻らないと。」

「もう、そんな時間か?」

「そうだよ。」

「また、誘っても良いか?」

「構わないよ。」


と言って馬に跨がり城へ戻った。

次回は、『グリムザ・アサシネイション』の一員としての仕事についてです!

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