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戦禮のアンジェクルス  作者: 黒須かいと
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第二章「アンジェ学科戦禮コース」(2)

 Ⅱ

 一通り政暦伝書やアンジェクルスの由来について語っていたが、ユリウスは新一年生のほとんどが、たらたらとした話に限界を感じ始めているのを悟った。

 要はこの子らには、常に英雄メシアが力を貸してくれるのだという概念が理解出来ればいい。そうすれば、死と隣り合わせの戦の中に遭っても、パンデミックの脅威に立ち向かっていけるだろう。

 ユリウスはくすくすと笑うと、次の提案をした。

「皆さんそろそろ長いお話に退屈なされたでしょう? ここまでは触りです。どうぞこちらへ、アンジェクルスのドッグへご案内いたしましょう」

 その言葉に、待っていましたとばかりに、学生たちから「おお!」と声があがる。

 アスカが再び先頭に立ち、一年生たちを案内し、チャペルを出て座学校舎も抜けると、フェンスに仕切られた大きな空港の滑走路のようなところに出た。

「ここで実機訓練や試験を行います」

 その時、一陣の風が吹いた。目を瞠ると、そこには無骨で頑丈そうなメタリックの体が、稼働音を響かせながら、滑走しているではないか。

 まさしくそれは、新一年の憧れ、アンジェクルスのテスト機であった。

 フェンス越しから目を皿のようにして見学する。アンジェクルスの両腕には、巨大な二砲身が装備され、足は太く台形に近い。動きは鈍そうだが、攻撃力は計り知れない。それに、歩く動作は鈍そうでも、それを補う滑走機能が理にかなっていた。

 アスカが徐に端末から連絡を入れる。

「ヨハン、一年生連れてきたから、パフォーマンスよろしく」

 すると遠くにいた無骨なアンジェクルスが、滑るように近づいてくる。轟音の滑走音は大迫力で、人型のマシンの手は、人など簡単に握りつぶせてしまいそうなほど大きい。

「おっす、来たなぁ~。今からアレ撃つから、よぉ~く見てろよ!」

 アンジェクルスのスピーカーから調子の良い元気な声が響いた。すると、コンクリートの地面から、生えるようにして白と黒の丸い的がせり上がってくる。

「あくまでパフォーマンスだから実弾じゃねぇけど、一応耳は塞いどけ」

 そう言い残すやいなや、また滑走して、的のある奥にまで移動する。よく見ると、アンジェクルスの後ろには、タイム計測器が置かれていた。

「はい、みんな耳抑えて!」

 アスカが大声で叫び、自らも耳を手で塞ぐ。

「いっくぜぇええっ!」

 雄叫びを上げ、ヨハンのアンジェクルスがスタートを切った瞬間、計測器も秒数を刻みだす。両腕の二砲身から発射された演習弾は、破裂音を響かせながら、確実に四つ的を射抜いた。さらに連続して脚部のカバーが勢い良く開き、そこには砲身が五つずつ付いている。

「こいつでフィニッシュ!」

 合計一〇発の演習弾が、数通りの的を落とし、測定が終了する。そこには下に過去のタイムが示され、上に現在のタイムが刻まれていた。

 一年生は開いた口が塞がらず、一拍置いてから、はたと気づき拍手喝采を上げた。

「おめでとうヨハン。一秒タイム縮んだじゃないか」

「うおっ、マジか! やりぃっ!」

 ゴールにシュートを放ち、一点取ってやったようなヨハンの喜びように、アスカは「観客がいるとあいつ調子出るみたいなんだよね」と、ひっそり竜也たちに教えてくれた。

「さて、みなさん、ここからドッグに入りましょう」

 ユリウスは細い鉄塔に付いているパネルに手の平を押しつける。すると、地面が四角く割れ、エレベーターが出現した。どうやら、教官たちの手形認証でドッグへの入口が開くシステムらしい。

 倉庫のようなエレベーターは、地下へと降りていく。竜也の眠気も、先ほどの迫力のパフォーマンスと、これから見る物への好奇心から、すでに無くなっていた。

「貴様ら、よく来たな」

 照明はあるものの、少し薄暗いドッグに待ち構えていたのは、鬼教官ことエルンスト特務大佐であった。特務という階級は、士官学校が彼個人を指定し、是非教官へと招いた証である。

「それではみなさん、ここからはエルンスト教官へお任せ致します」

 授業をバトンタッチすることは、本日のプログラム通りなのだろう。ユリウスは軽くエルンストに会釈すると、一人でエレベーターに乗り、戻って行った。

「さて、貴様ら、クレールス・ユリウスは知っての通り軍人ではない。対して、私は幾多もの戦地を潜り抜けてきた根っからの軍人だ。彼のように優しくは出来ないので、あらかじめそのことを頭に叩き込んでおけ」

 一気に周りの空気がぴりりとする。しかし、竜也はなんとなく懐かしさを覚えた。父を始めとして、彼を取り囲んでいた戦友たちを、顔までは無理だが、感覚や雰囲気で思い出したのだ。

「アスカ、図解のセッティング」

「はっ、こちらです」

 準備万端とばかりに、円盤型のホログラム装置を教官の前に置き、起動スイッチを押す。すると、光の線が昇り、裾が広がるように、逆三角円柱の画面が現れた。皆がよく見えるように、アスカは装置を取り囲むように座ることを指導する。

「貴様らがさっき見た機体がこれだ」

 そう言うと、エルンストは手元のリモコンで、ホログラフィーを映しだす。三角円中の真ん中に、先ほどヨハンが操縦していたアンジェクルスの全貌が現れた。

「こいつは力天使(ヴァーチュズ)級という種類のアンジェクルスだ。火力重視の典型的な前線実用兵器だ。一言に火力重視と言っても、ヴァーチュズ級の中にも癖や攻撃目的が違うものもある。例えばこの機体の場合は弾薬満載で、そのものの攻撃力でごり押しするタイプだが、中には操縦者の技能に左右されやすい近距離専門のヴァーチュズ級アンジェクルスもある。この階の別室に、シュミレーターがある。色々なタイプを、まずは体験してみることだな」

 そう言いながら、リモコンを再び操作すると、次に出たアンジェクルスの図解は、人型というには無理のあるデザインだった。後方に向かって幾重もの流線型に伸びた翼のような、または何本も生えた尻尾のような、全体的に見ると水鳥にもフォルムが似ているかもしれない。とにかく予想外の図解に、皆が驚いていると、アスカがにやにやしながら「あ、これ僕のね」とあっさり言いのけた。

「この機体は主天使(ドミニオンズ)級だ。タイプとしてはオールラウンダー、もしくは特殊装備付きのものが多い。ちなみにこいつはかなり特殊だ。遠隔操作出来る特殊型火力兵器を搭載している。この武器を使用できる才能の持ち主は稀なので、SW社から寄贈された中でも、もっともテスト的な意味合いが濃い機体と言える。つまり実戦にはまだ採用されていない兵器だ。服装が乱れがちでも、生徒会になれたのはその才能を評価され、テスト戦禮者に選ばれたからだぞ、アスカ」

 ちくりと棘を刺されても、それでもへらへらと笑っているアスカは実に大物だった。

「次はこれだ」

 画面に移されたのは、スマートなボディに似合わず、薙刀のような長い武器を持ったアンジェクルスだ。腰に円盤状の装備があるが興味をそそる。

能天使(エクスシアイ)級アンジェクルスの一例だ。これもテスト機で、現副会長がテスト戦禮者だ」

 竜也は貴翔のことを思い浮かべ、なるほど、たしかにお似合いのビジュアルだと思った。細い体に大きな武器。このアンバランスさが実にあの人らしい。

「このタイプは防御力、攻撃力、ともに他の二タイプとは劣るが、索敵能力、回避機能、ステルス能力に長けているものが多い。まぁ、それも個体差はあるが、あくまで基本的な知識として頭に入れておけ。ちなみに今見せている機体の場合、地雷工作が可能な機体だ。仕掛ければいいってものじゃないから、なかなか使いどころが難しい機体でもある」

 卒後、戦禮者はこの三タイプのいずれかに搭乗することとなる。様々な能力査定の結果、タイプ分けされ、戦地に配属されることだろう。

 アンジェクルスを乗りこなし、英雄の申し子として聖人扱いされるか、はたまたただの鉄屑の棺桶にしてしまうかは、戦禮者の腕と運次第である。

「アスカ、ここで生徒会の要綱こいつらに教えてやれ」

「はっ、では早速……」

 アスカは教官からリモコンを受取り操作すると、画面が正方形へと変貌する。そしてそこには、文字が箇条書きされたものが表示された。

「生徒会に入るには、総合成績優秀者でなくてはならないんだけど、さっき教官も言ってた通り、テスト機の特性ってのもあるから、そりゃ全てが好成績だったら言うことないんだけど、全部が全部満点じゃなきゃダメってわけじゃないんだよ。大体、それを言ったらヨハンなんて役員になれてないし」

「おいこら、そらどういう意味だよっ!」

 奥の整備室から鉄階段を下りてやってきたヨハンが、目くじらを立てて怒鳴る。滑り止めの付いた軍手をはめた手にはインカムを下げ、服は上下デザート柄の演習服だ。入学式の華美な印象は一欠片も残っていない。その彼の後を従順についてきた雄ライオンは、昨日の傷であろう、首元に包帯が巻かれ、痛々しい姿だ。だが足取りはしっかりしたもので、ダメージはいたって軽度のようである。

 一年生はその姿を見て、先ほどのパフォーマンスのお礼とばかりに、彼らに向って拍手を送る。するとヨハンは困ったように苦笑いし、頭をがしがしと掻いた。

「さっき皆見て分かったと思うんだけど、ヨハンは射撃の腕がめちゃくちゃいいんだよ。アンジェクルスの操作技能では今のところ彼を抜く奴はいないね」

「おめぇに褒められるとなんだかむず痒いぜ……」

「ただ、座学のテストはいつも赤点ギリギリで」

「いらねぇ情報を流すんじゃねぇよっ!」

 まるで漫才のような二人のやりとりに爆笑の渦がどっと起きる。今が平和な時代なら、彼らはコメディアンになれていたかもしれない。しかし教官だけはむすりとした顔で二人を睨みつける。それに気づいたアスカがごほんとわざとらしい咳払いをした。

「つまり、どっかしら特化した能力を持ち合わせていたら、みんなテスト戦禮者になれる可能性があるってこと。で、こっからが本題なんだけど。生徒会に入るとまず違うのはテスト機乗り放題ってところかな。テスト機はデータとってなんぼだからね。乗れば乗るほどSW社には感謝されるってわけ。で、テスト機対テスト機の対校試合なんかもあるから、それに向けて日々鍛錬って感じかな。ここまでで何か質問ある人いる?」

 竜也が手を上げようとすると、先にライオネルが真っ直ぐ手を上げる。竜也はすぐに質問を諦めたが、そう言えばライオネルは結局誓鈴候補生をどうするのだろうかとふと考えた。だが、すぐにそんなことを気にしても栓無いことだと思い直す。どうにも昨日のことで竜也は、ライオネルだけとは絶対に友人にはなれないと踏んだようである。

「テスト戦禮者、つまり生徒会役員には具体的にどう選ばれるんですか?」

「候補学生を成績順に教官と僕ら生徒会が二〇人ほどに絞り込んで、SW社にデータを送信するんだ。で、SW社がさらに五人くらいまで絞り込んで送り返してくるから、そこからは校内選挙で二名を決定する。卒後僕たちの階級は少尉だからね。人の上に立つ人間は、人望がある方が望ましいでしょ?」

――つまり、ライオネルには無理だな。

 竜也は内心で毒づいた。確かに、ライオネルがどんなに成績優秀でも、竜也は彼に一票を投じないだろう。投じるならば、隣で真剣に話を聞いている親友一択である。

 フィッツはムーンヴィレッジの中学校でも成績優秀で、テストの結果を貼り出されれば、常に一番であった。スポーツも水泳を趣味としているためか、体育の成績も良かった。ただ、もちろん彼も人間なので長所ばかりとは言えない。とりわけ難点とされる短所として上げられるのが、ドジなのと不器用なところだ。習い事のフェンシングの成績が悪いのも、たぶんこの短所が災いしてのことだと考えられる。

 いくら成績が良くても、この短所がなかなかに厄介だった。例えば小学生の時、運動会のマラソンでは、アンカーに選ばれたのにも関わらず、肝心なところで派手に転び、フィッツのクラスはビリに。中学二年の期末テストでは、答案用紙を全部正解で埋めたのにも関わらず、名前を書き忘れて〇点に……と、いった具合だ。さすがにこの時は教師が情状酌量してくれ、なんとか点はつけてくれたのだが、なんとも間の抜けた話である。

「他に質問がなければ、早速実物見学に行くが、良いか?」

 エルンストが見渡すと、学生はしんと静まり返る。それを見て一つ頷くと、教官はアスカとヨハンの背中をばんっと勢いよく叩く。

「貴様ら“ふざけずに”引き続き我が校の“誇れる先輩”として案内するように」

 耳元で囁くように重低音の注意を受け、二人は同時に鳥肌を立てた。

「イ、 イエッサー……」


 メインドッグには数名の兵器学科の学生たちが右往左往していた。広々とした全体的に無機質な灰色に覆われた場所で、先ほど説明された機体中二体が表に出ている。ヨハンの機体は横たえられ、整備班が先ほどのパフォーマンスデータを取る作業をしていた。そしてもう一体、アスカの機体は、特殊な収納カタパルトの上に鎮座している。

 新一年生は前列と後列で別れ、アスカの機体チームと、ヨハンの機体チームに分かれた。そのため、竜也とフィッツはアスカの機体を見学することとなる。

「はぁい、皆こっち来てぇ」

 歩道橋のような階段を登ると、目の前には丁度アンジェクルスの胸部より少し下にあるコックピットが見られる位置に来た。

「僕の機体はこの変な形のせいで横たえられないから、わざわざこうやって来ないとコックピットに乗れないんだ。今でこそ地上仕様になってるけど、もともとこいつは宇宙用として開発されてた機体らしいよ」

 そう言いながら、アスカはハッチに手を触れる。すると、表面からすっと浮き出るように電子文字で『戦禮名を入力せよ』と出てきた。

「ウリエル」

 アスカがそう発声すると、声紋と手形の両方でロックが解除され、プシュンと空気が抜ける音と共に、ハッチが開く。すると、中から顔を出したのは、雄狐のムラクモだった。

「待ちくたびれたぞ」

 ふさふさの尻尾を左右に振りながら、一声「クゥン」と鳴いた。思わずフィッツの顔が緩み「かわいい」と呟く。

 コックピットの内部は機体の巨大さに比べ、意外なほど狭い。それでも、人間の座る位置の左横には、誓鈴の席もしっかりとある。この席は誓鈴の大きさによって、多少の変更が出来るようになっており、サイドと奥に椅子を広げられる仕組みになっていた。

 誓鈴をインターフェイスとして機能させるには、椅子の前に垂れ下がっているコードを、誓鈴の証に挿し込むことで起動する。

 人間だけでアンジェクルスを動かすことは可能だが、アンジェシステムの都合上、反応速度や敵機捕捉機能をはじめ、総合機能がうまく均衡をとれないため、誓鈴が負傷したりしない限り、一人で操縦することはまず無謀であろう。

 逆に、誓鈴だけで操縦することも出来なくはないが、そもそも感覚が人間用に作られた代物なので、歩きなどの基礎運動を初め、武器を持って戦うという、戦闘において必要不可欠な動作があまりにも不自然な動きになる。

 人間と誓鈴、二つがリンクしてこそ、初めて発揮されるシステム。それが、アンジェシステムなのだ。

 新一年生は順繰りにまじまじとコックピットの内部を見学する。ためしにアスカとムラクモが、この機体特有の特殊遠距離型火力兵器、通称、狐火(スピット・ファイア)を、一年生が見えるようにハッチが開いたまま操作してみせる。

 尻尾のようなユニットの一つから、球体の小型レーザー砲が飛び出す。このような個体が無数にユニットの裏に仕組まれているのだ。そのため、普通の操縦桿では追いつかないので、ヘッドセットを被り、戦禮者と誓鈴の脳波を直接リンクさせ操作している。強いイメージ力が必要な操縦法なので、誰しもが彼のように狙い通りに動かせるとは限らない。下手をすると、ところ構わず球体兵器が飛び交い、誤射しかねない危険な品だ。こうして一個だけぷかぷかと浮かせておくことが出来るのは、アスカとムラクモのコンビだからである。

 コツを教えてくれという学生がいたが、アスカは困り顔をして答えた。

「こればっかりは相性だからなぁ。シャドウボクシングみたいなもんだよ。明確な目的を目の前に想像するんだ。え~と、それで僕がトスして、ムラクモが上げて、僕がアタックするみたいな?う~ん、やっぱりうまく説明できないなぁ」

 竜也には解る気がした。剣術が下手な奴に「どうしたらうまくなるのか」と聞かれても、練習しろとしかいいようのない、所謂向き不向きの問題なのだ。さらに付け加えるなら、このアンジェクルスの特性上、第六感という才能が優れていない限り、乗りこなせないはずだ。物との距離感、動きの大小、すべてを脳内で処理しなくてはいけない。常人には理解できない想像構築が、アスカにはやってのけられるのだろう。

 その後もアスカはいくつもの飛び交う質問に四苦八苦しながら答えていると、ドッグ内に校内放送が流れてきた。救われたとばかりに、アスカはほっと一息つく。

「これより新一年生対象の身体検査を行います。学科別に、指定の場所に集合してください」

 その放送を聞きつけ、エルンスト教官が笛を鳴らしたので、皆一斉に集まる。

「アンジェ学科は体育館で検査だ。二列に整列したまま進め」

 言われた通りに並び、アスカを先頭に移動しながら、フィッツがあからさまに嫌そうな顔をする。

「どうした?」

「……やっぱり、下着で検査するのかな?」

 竜也は親友のどうでもいい質問に呆れながら答える。

「そりゃ、男しかいないし、パンツとシャツで十分だろ」

「だ、だよねぇ……」

 その会話は、列の後ろを受け持っていたヨハンが聞きつけ、すかさず茶々を入れる。

「なんだなんだ? やっぱり実は女の子でしたぁ~。なんていう漫画みたいなこと言うなよな?」

「ちっ、違いますよ!」

「フィッツ、有らぬ誤解が広がる前に質問の意図を説明しろ」

 竜也が少し苛付いた様子でフィッツを睨む。それに相手は顔を真っ赤にしながら、もじもじと答えた。

「その、朝寝ぼけてたから、着替えたとき、一緒に脱いじゃったみたいなんだ」

「は、何を?」

 ヨハンと竜也はほぼ同時に問い詰める。

「……パ、パン……ッ……」

「……は?」

「今、穿いてない……かも」

 その瞬間、三人を纏う空気が凍てついた。

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