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戦禮のアンジェクルス  作者: 黒須かいと
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第九章「叛逆者」 (2)

 Ⅱ

 かつてシュヴァルツヴァルトと呼ばれていた森がある。鬱蒼としたトウヒの木々に囲まれた奥深き所に、エルンストは貴翔たちと共に何とかたどり着く事が出来た。

「バルムンク、貴方はここまでどこから飛んできたのです? ダナンは一体どうしたのですか?」

 逃走中の上空で発見したダナンの誓鈴である隼は、ぐったりと疲れている。

 その様子からも、主であるダナンの身に何か事件があったに違いないと、貴翔はどこか確信を得ていた。

 バルムンクは彼の膝の上で呼吸を整えながらも、何かが付いた足を手前にすっと差し出して見せる。

「これは……?」

 足にくくりつけてあった丸い筒の中から出てきたのは、小型の記憶媒体であった。

 不審に思った貴翔は、早速自身の携帯端末で中身を見てみようとした時、エルンストがその行動を制した。

「後にしろ、今はとにかく自分たちの現状確認が優先だ」

 運転席から腕を伸ばし、木に偽装させたタッチキーのパスコードを入力する。

 重い装置の動く音がしたかと思うと、地下へと続く道が車一台分、ぽっかりと口を開けた。

「まさかこんな事になるとは予想もしていなかったが、何かあった時の為に、ユグドラシルとヴァルキリーの機体はこっちに搬入をすませておいて正解だったな。さすが、あの方には先見の目がある」

「あの方?」

「我らがアルバート学長閣下だ。まあ、内戦の心配よりも、式典を狙ったパンデミックの奇襲なんかがもし来た時の為に、伏兵として動けるようにという配置だったんだろうが――さあ、付いたぞ」

 薄暗い中に広い空間が広がっている。その中に、アリスの機体以外のアンジェクルスが横たえられていた。

「アリスさん、貴女何か知ってるのよね? なぜこうなったか原因を教えてくれないかしら。私たちがこれからどうするべきか、ここで決めないと」

 車の荷台から降りた丹花は、レニーの後に続いて出てきたアリスを睨みつけるように問う。もちろん、事が事なだけに彼女だけの責任ではないことは重々承知している。だが、どうしても出雲の人間たちが起こしている事件なだけに、彼女一人だけがこうして反対の勢力にいることに、少々の懸念がある事も事実である。

 レニーも真剣な顔つきでアリスの発言を待っている。その間、エルンストと貴翔は、一先ず外部からの情報を得ようと、強化ガラスに四方を囲まれた部屋に入り、モニターの周りの機材をいじり始めていた。

「どこか一つでも映るチャンネルが見つかるといいのですが……」

 放送局の電波を探り当てるべく、貴翔はヘッドホンを片耳に掛けつつ、カリカリと受信機のつまみを慎重に回し始める。

「ジャミングが酷い。これも出雲の奴らがやったとするなら、突発的なんかじゃなく相当計画性があるな。基地を制圧するまでの時間、誰にも邪魔されないよう、一切の情報を遮断する手はずが整っていたという事だからな。――くそっ! そんな大々的な計画を、どうして周りの連中が見逃したんだ……」

 学園との連絡も未だにつかないことに、エルンストの苛立ちが高まる。

「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……」

「謝っていたって仕方無いの。貴女一人でどうにか出来る問題じゃない事くらいは分かってる。正直、出雲の人たちの行動は異常よ。あんなの……無差別に虐殺してるようにしか……」

 丹花は少し感情的になっているようであった。それを察したレニーは、彼女の肩を叩くと「私に任せて」と、アリスに近づき丁寧に問いかける。

「アリスさん、貴女も気が動転しているのよね? 私なんか全然だめ……先輩なのにね。でも、貴女が危険を冒してまでこちら側に来たのは、ただ謝るため? 違うわよね?」

「……はい」

「それじゃ、まず深呼吸して、それから分かる事から順番に話して頂戴」

 アリスは言われた通り息を整えると、ぽつりぽつりと話し始める。

「出雲で、昨日緊急学生朝会がありました。朝会と名が付いているのに、もうすぐ昼になるかという時刻でした。それに、緊急と言っても、その場に集まった士官候補生、ならびに現役の青年士官も数人いる中、半数以上はその集まりがあることを、あらかじめ知っているような雰囲気で、私はなんだか不気味に思ったのを覚えています」

 そこで彼女が見たものは、壇上に立つアキラ、そして、その脇を固めるように同じ舞台にいたのは、真梨奈と辰巳であったという。

「内容は最近の政府の言動についての討論会のようでした。講堂は妙な熱気に包まれていて、皆生徒会長……アキラ先輩の持論に耳を傾けていました」

「じゃあ、この出雲の暴走の首謀者は、まさかゴットフリート元帥の息子さんだっていうの? ありえない……だって、ここは地球防衛の要でしょう? そんなところを攻撃して、彼になんの得があるっていうの?」

 アキラ・フォン・ベルクシュタイン。確かに現役元帥の息子であり、なお且つ生徒会長の彼の名実ならば、学園の若者たちを熱狂させる扇動力には十分であろう。ただ、丹花の疑問ももっともで、国防軍に反旗を翻すということは、彼の立場をかなぐり捨て、なおかつ多大な犠牲を払ってまで、一体何が得られるのか。彼女たちの少ない情報量ではそこまでは汲みとれない。

「分かりません……でも、きっと損得勘定でなんか動いていないんだと思います。彼は朝会で言っていました。正義とは何か、誰の為のものか、何のために奮うべきか。民意や道徳の外れた政府に、我々はこれ以上ただ従っていればいいのか。答えは否であると……」

「なによそれ……っ! 自分たちの勝手な正義感で、こんな……っ! どうしてこうなる前に止められなかったの? 危険思想は通報義務があるはずでしょ? 貴女それでも軍人っ?」

「丹花さんっ!」

 今にも手を振り上げそうな丹花を、レニーは必死に抑える。

「今にして思えば大変な決起集会だったんです……。でも、将来エリート官僚を目指す政治意識の高い学生が多いのも我が校の校風でしたし、なによりも、アキラ先輩のお人柄もありますが、真梨奈先輩や辰巳ちゃんまで……こんなこと、するだなんて思っていなかったんです――っ!」

 己の認識の甘さを恥、アリスは冷たい床に泣き崩れる。レニーは口には出さなかったが、内心彼女から武器を預かっておいて良かったとさめざめと思った。今の彼女は、良くて一人で現場に戻ろうとするか、最悪責任を取って自害しかねない悲壮感を背負っていたからだ。

「――しっ! 静かにしろ。貴翔が映る放送局を探し当てた」

 エルンストの声に、アリスは必死に嗚咽を堪え、レニーはその背中をさすってやった。丹花は少し冷静になったのか、ばつの悪そうな顔をする。

「いえ、隊長……これは、出雲が番組をジャックしているようです」

「なんだと?」

 画面に映し出された人物を確認した瞬間、アリスの啼泣は口を押さえても漏れ聞こえる。

「ああ……先輩。そんな……もう、やめて……」

 少女が流す涙も虚しく、演説を始めたアキラの口ぶりは、討論会のそれよりもさらに熱を帯びていた。


『地球共同連邦諸君、まずは突然の非礼を詫びよう。そして、どうか聞いて欲しい。この行為はひとえに憂国故旧体制を退ける覚悟の一端である。我々組織は青年同志たちで築き上げた革命軍であり、その代表として、私、アキラ・フォン・ベルクシュタインがここに宣言する――』

 彼の腕には革命軍である証し、流血を厭わず、正義の炎を象徴した、赤い腕章が付けられていた。

『これより、我々同志たちは腐りきった政府の実態を正すべく、粛清を行う。手始めに、旧体制でもっとも堕落していた地球軍、ならびに政界上層部の解体を行った。彼らの罪状は明白である。パンデミックが迫りくる脅威を無視し、己の利益と保身に執着するあまり、本来の目的意識を欠くばかりではなく、政治と軍事を癒着させ汚い金のやり取りを通じ、国の行く先を歪め続けた。情けなくも、我が父、ゴットフリート・フォン・ベルクシュタインもその一人であった。私は自らの手でこれを断罪するに至った。革命軍の代表としてのけじめをつけたつもりだ。そして、これは長年我々だけではなく、地球共同連邦全ての国民の疑問であったであろう、英雄の死の真相も、我々は暴いて見せた。その真実は軍需産業の非人道行為を、政府が黙認していたことを映し出す魔鏡ともなろう。その証人を紹介しよう』

 一旦壇上を下がったアキラの代わりに出てきた人物を見て、アリスは卒倒しかける。彼女の目に映る人物は、紛うことなき幼馴染の姿だった。

『自分の姓は天野、名を辰巳と言います。天野龍一の長子にあたり、革命軍の副代表とさせていただきました。今回、自分がこの革命に参加したのは他でもない、父の無念を晴らすためであります。皆さんも存じ上げている通り、父は交戦終了後と見られる間に謎の戦死を遂げました。当初は事故や裏切りなどと言った説があがりましたが、いつしかその追及も風化しています。しかし、真実はそのような簡単なものではなかったのです。元軍人だった伯父が、NSW社から受け取ったナノマシンという得体の知れない強化剤を、あろうことか初期段階の生体実験の協力として、父の誓鈴、神威に投与したのです。それは時限爆弾のようなもの。誓鈴の脳を支配したのがたまたま交戦終了後であったというだけで、言ってしまえば実験の失敗です。誓鈴は錯乱状態となり、旗艦は航行不能に……そして、かつて最大の火力を誇った熾天使級アンジェクルス、ミカエルの被害を最小に抑えるという父の英断により、隊列を離れての自爆に至ったのだという結論が導き出されたのです』

 沈痛な面持ちで淡々と話す辰巳の瞳には、強い決意と同時に、暗い影も落としている。彼の隣には、タイミングを見計らったように再びアキラが壇上へと現れた。

『諸君、これがこの国の素顔なのだ。こんな事を許しておくことは、もはや我々とて同罪である。同志たちよ集え! 我らと共に、正義の鉄槌を下すのだ! 汚濁の流れる川をその贖罪の血で澄んだ水へと清めたまえっ! 私には時間が無い……私もまた、ナノマシンの生体実験を受けた一人だからだ。この体が朽ち果てる前に必ずやこの国の礎を創ることを、ここに誓おう。どうかそのためには力を貸してほしい。革命の炎はどこにいても灯せるはずだ。そしてその暁には、私の魂は天野龍一提督たち英霊の元へと召されるであろう!』


 アキラの魂は今まさに、尽きる前の最大の輝きをもって燃え盛っていた。政治に不満をもつ誰もが、彼の熱弁に奮い立たされたであろう。

 それが可能なほどに完璧であったのだ。証拠を取りそろえ、自分の立場も包み隠さず、青年たちの代表を務める己自身がまさに現政治の被害者なのだという同情も誘いつつ、天野龍一という英雄の名も借り、これ以上ない演出を施したのだ。しかも、ただの自暴自棄な暴走ではなく、自身の意思を継ぐ者が居ることを、わざわざ辰巳を演説台に立たせた事により印象付けた。天野の姓は、革命軍代表の後継者として十分である。

 貴翔は歯噛みする。この扇動術はまさしく天賦の才だと確信してしまったからだ。このカリスマ性に、民衆は堪らず同色の旗を掲げ、彼らについて行こうとするだろう。

「革命の炎だと……? 馬鹿な、こんな事を発信すれば、あちこちでゲリラ的に暴動が起きるぞっ!」

 エルンストは怒りの感情のままに、近くの机を拳で叩きつけた。

「おそらくそれを計算しての事でしょう。各地の暴動が起これば鎮圧部隊を派遣しなくてはなりません。残った政府軍の戦力分散を狙って……っ? 待って下さい。まだ中継が終わっていないようです!」

 貴翔の言う通り、画面は演説台からスライドし、広い舞台へと変わる。そこには出雲の士官候補生たち二人が、アキラと同じ赤い腕章をつけ、太刀を鞘から抜いていた。その目の前には同じく二人、床に手錠を掛けられ座らされている。

 そして、ついに視聴者の目の前で、彼らの提唱する鉄槌は下された。

『正義は我らにありっ!』

 士官候補生たちの雄叫びと共に、狂気が振り下ろされる。

 捕縛されていた人物たちが、大量の血を噴き上げながら、首のない体でぐらりと力なく倒れて行く。

 そこでようやくぶつりと映像が途切れた。異様に長い時間が過ぎたように感じたが、実際にはものの数分の出来事であった。

「なんてことを……っ!」

 さすがのエルンストも声を震わせる。貴翔はあまりの事に絶句し、丹花は画面が見えぬよう、震える二人を抱きしめていた。

「隊長……今のは……」

 やっとのことで声を絞り出した貴翔は、分かっていながらも確認することしか出来なかった。

「残念ながら、ブランドン・バシェット国家総参謀議会会議長、マキ・テイラー・イリノ出雲士官学校学長の二名で間違いない。奴らは本気で国家を転覆させる気だ。最悪な事に、とんでもなく乱暴な求心力を持ってしてだ……。やられた、完全に奴らの方が先手を全て取って行った」

 状況は絶望的であった。国のトップと出雲をまとめるはずの学長までもが無残に、それもいともあっけなく、青年たちに命を奪われてしまったのだ。

 貴翔は今までの人生で一番動揺の色を湛えた瞳を、隊長エルンストに向ける。

「奴らはっ、奴らは次にどこを狙うと思いますかっ!」

「落ち着け貴翔っ!」

「これが落ち着いていられますかっ! 奴らが次に狙うのは、当然残りの政治家や軍事関係者、それにNSW社を根絶やしになるまで叩き潰すつもりです! 止めなければ……っ」

「瑛っ!」

 丹花も珍しく冷静さを欠いた貴翔に困惑する。

「一人でどこへ行こうというのっ?」

「まずは国会議事堂へ行きます」

 その言葉に、丹花は大きく目を見開いた。

「まさか……養さんまで?」

 呆然とする丹花を尻目に、ラファエルに貴翔は乗り込んだ。中で待機していた偃月が、普段見たこともない表情の主に驚く。

「ちょ、ちょっと、貴翔大丈夫?」

「大丈夫に貴女には見えるんですか?」

「見えないから言ってるのっ!」

「なら黙ってて下さい!」

 理不尽な主に閉口してしまった偃月だが、彼女の代わりに彼を力づくで止めたのは、当然隊長であるエルンストであった。

 丹花と偃月が何か言いかけたが、彼の剛腕が貴翔の眼鏡を飛ばすほど激しく右頬を殴りつけるのが先であった。

「いい加減にしろ! この中で私の次に責任があるのは貴様だ。第一書記は貴様の兄だという事を抜きにしても、会議長が亡き今、政府の指揮をとるのは彼だ。だから生命を守る義務が我々にはある。だがな、貴様がそんな単独で突っ走るような真似をすれば、助けられるものも助けられない!」

 整った顔にくっきりとついた赤みをさすりつつ、貴翔は俯き小声でつぶやく。

「だったら……どうしたらいいのですか……」

 エルンストはその質問には今すぐには答えられなかった。彼にも、今しばらく作戦を考える時間が必要なのだ。

「とにかく、一回頭を冷やせ。貴様一人が行ったところでどうにもならん。なに、あちらには政府軍の守備隊がいる。そう簡単に落ちはしないだろう」

「……はい」

 確かに、今回地球軍の基地が陥落したのは、完全な不意打ちと、内側からの攻撃だったからだ。守備隊と真っ向から対峙するのとは状況が違う。

 そのことを鑑みて、貴翔は一先ず自身を落ち着かせることが出来た。

「申し訳ありません、隊長」

「いや、こんな状況だから致し方あるまい。ただ、こんな時にあいつもいてくれたら、多少は貴様も余裕が出来るだろうに……」

 貴翔ははたと、先ほどバルムンクから受け取った小型の記憶媒体を思い出した。

「隊長、次の行動を考えるにあたり、先にこちらを確認してもよろしいでしょうか?」

 エルンストは一度大きく息を吐くと「そうだな」と答え、コックピットのふちに腰を下ろす。

「何のデータが入っていたの?」

 エルンストとは反対側のふちから丹花が顔を出す。

「……これは、あまり嬉しい情報ではないですね。と、いうより、状況はさらに悪化しそうです」

 携帯端末の画面に映されたデータの一文目には、ダナンのメモであろう『これがバルムンクから渡された時、俺は動けぬ状態にあり、パンデミックの地球での活動拠点が、ドバイであるという証拠だと思ってくれてかまわない』と記されていた。

「どういうこと?」

 丹花が形の綺麗な眉を顰める。

 貴翔が画面をスライドさせていくと、収支報告書の欄が出て来る。それはダナンの実家で行われている、原油の売り上げなどについて示されているようである。

 初めは何の事を伝えたいのかと首を捻っていたが、さらに下へスライドさせていくと、別の欄が出て来るなり、明らかな改ざんの跡が見て取れた。

「ある日を境に急に売上金が上乗せされているのに、それを隠して記載していた?」

 しかも今までになかったネットバンク名からの入金が見て取れる。そこから導き出される答えは、ダナンの一文も踏まえるとこうだ。

「つまり、ダナンの父親はパンデミックの連中に原油を売り渡していた……」

 貴翔はいつもの癖で親指の爪を噛む。

「その推理が本当なら、奴の実家は国の裏切り者ということになるぞ?」

 エルンストの一言に、貴翔は頷く。

「おそらくダナンはその真意を確かめるために、一度実家に戻った」

「え……でも、そんなことを聞いてしまった彼は今……」

 丹花の顔が不安げに曇る。

「秘密が他に漏れないように、部屋にでも閉じ込められているのかもしれんな。仮に、それで済んでいればいいのだが……」

 エルンストも渋い表情だ。

 結局、データを見たことで、貴翔の中で三つの選択肢が生まれた。一つ目はユグドラシルに戻り、学長の指示を仰ぐ。二つ目は、やはり国会議事堂に行き政府軍に協力し、アキラたち反乱軍を迎え撃つ。三つ目はこの少人数でダナンを救出に行くか、である。

「この混乱に乗じて潜伏している敵も一気に仕掛けてくるかもしれない。そうなれば前方は反乱軍、後方はパンデミック……」

「革命軍だけならば守備隊でどうにか出来るかもしれないが、パンデミックまでもとなるとさすがに持つまいな」

 エルンストのその一言に、涙を拭ったアリスが立ち上がった。

「私、ダナンさんのアズライールに乗ります。乗らせて下さい! これ以上犠牲を出さないためにも、私たちで足止めしないとっ!」

 アリスの決意に、エルンスト以外皆頷いて同意する。

「ええ、こうなった以上、我々が出来ることを手当たり次第やってみましょう。隊長、引き続き学園とは連絡を試みつつ、ドバイに移動します。そこでダナンの救出と、敵の兵力を削れるだけ削ってみましょう」

「貴様、だいぶ無茶なことを言っている自覚はあるな? 敵の兵力がどの程度のものか不明なのだぞ?」

「それでも……学園に一度帰還する時間は惜しいです。政府や学長も、ただ手をこまねいているということもないでしょう。きっと連絡は取れます」

 エルンストは黙してしばらく目を閉じていたが、やれやれと頭を振ると、ラファエルから飛び降りた。

「分かった、やってみるとしよう」

 それが、この場に反革命軍の小組織が、密かに結成された瞬間であった。

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