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戦禮のアンジェクルス  作者: 黒須かいと
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第七章「連邦国立出雲士官学校」 (6)

 Ⅵ

「フィッツさんたちのチームは敵と接触。貴翔先輩たちのチームも、もうまもなくですね」

 並んで飛行しているセシルから近状報告を受けると、ダナンは黙って頷いた。

「……ダナン先輩は大丈夫ですか?」

 遠慮がちだが唐突に質問してくる後輩に、ダナンは少し驚きながらも柔和な表情で「何がだ?」と対応した。

「僕はあれから投薬治療で立ち直りましたが、先輩は、その……」

 おずおずとセシルが言わんとしている事を悟ったダナンは、苦笑しつつ答える。

「俺たちはたまたま皆より先に戦場の末端を垣間見てしまっただけだ。いずれは経験するものだし“戦争とは何か”などいまさら語らずとも、お前は十分理解しているだろう?」

「……はい。でも、僕はやっぱりどこかで割り切れていませんでした。――先輩は、強いんですね」

 その言葉に、少しだけダナンが口を閉ざす。そして、何かを搾り出すように再び会話を続けた。

「セシル」

「はい?」

「この試合も、ようは殺し合いの練習だ。けどな、それに慣れる事があってはいけないと思う。殺戮や紛争があるのが当たり前になんてしてはいけない。残念ながら現状は、五百年間もそれが続いてしまっているがな……。俺はそれに足掻きたい。人間らしさを保ちながら、どこまで自分がやれるのか試してみたいのだ」

 正直甘い考えだと言われるかもしれない。だから別に強いわけではないのだと、そう語るダナンからは信念が感じられた。

「お前もそれなりに己の目指すものを築くといいのかもしれないな。目標もなくただ戦うだけというのは、精神をどうしても削ってしまうものだ」

「僕の……目標?」

 セシルは自然と胸に手を添えながら自身に問いかけた。刹那、二人の間に散弾の嵐が吹き荒れる。

「ピーターかっ!」

 ダナンとセシルは瞬時に相手を把握し、やはり来たかと身構えた。

「ダナン先輩! 約束通り、ここは僕が引き受けます!」

「分かった。無茶だけはするな」

「了解です」

 その場にセシルだけが残ったことを確認した相手は、くつくつと不気味な笑い声を上げる。ぬっとセシルの目の前に現れた機体は、予想通り、あの悪魔のような風貌のマガツヒであった。

「や~っと僕と遊んでくれる気になったみたいだね」

「これは遊びなんかではありません」

 珍しく厳しい口調で言ってのけるセシルに、相手は意表をつかれるが、むしろそれが興奮剤になったようで、彼は散弾銃に例の特殊バレルを装着すると、ルシフェルに向かって構える。

「ふ~ん? だけどさ、僕から言わせてもらえばこんなのお遊びだよ。皆これから起こる事なんてちっとも予想出来てないんだから、笑っちゃうよね」

「これから起こる事?」

 妙な言い回しをする相手に怪訝な顔つきをする。そのようなセシルの心を読んだピーターが、気味が良いとばかりに高笑いし出す。

「やっぱり君は成功作なんかじゃない。あ~あ、残念。だったらここで排除しなきゃ」

 そう易々とやられてなるものかと、セシルは素早く金星の鎖を展開する。だが、相手の発射するエネルギーは、昨日受けたものとは比べ物にならない高出力であった。

 それが意味するところは、明らかなルール違反であり、排除という彼の言葉がそのままの用途として使われているということだ。

 当然、それに対してセシルの防御力は試合規定に則して少し弱めてあったため、吸収しきれないエネルギーに弾き飛ばされる形となった。

「うわっ!」

 バランスを失ったルシフェルは、だが高度すれすれで持ち直し、相手が繰り出す続けざまの砲撃に反応できた。

――おかしい。試合はちゃんと空中カメラで撮られているはずなのに、どうして違反を知らす信号が上がらないんだろう?

 そう、本来ならば明らかな規約違反ともなれば、すぐさま黄色の注意、または即刻退場の赤色、いずれかの信号弾が上がるはずである。

 それがないこの現状を説明するには、セシルの頭の中には一つしか思い浮ばない。

――まさか、カメラを操作した?

 信じられないが、それしか考えの行き着く当てがない。先ほどのなにか含みのある言い回しといい、目の前の相手はどうも不審な言動が多すぎる。それを隠そうともしない態度が、余計にふてぶてしく奇怪であった。

「リリス、彼は本気で僕を殺すつもりだと思う?」

「そうね、あの高出力本気よ。どうするの?」

 信頼する誓鈴に問われ、セシルは自身の良心に問うた。そして見出した答えは――

「本来の放出エネルギー量にプログラムを書き直す。彼に対抗するにはそれしかない」

 普段の主からは想像出来ない思い切った決断に、リリスは驚愕しつつも目を細めた。

「今日の貴方素敵よ。……いいわ、力を解放してあげる。あんな奴とっととやっつけて、言動の真意を根こそぎ吐かせましょっ!」

 お互いに頷きあうと、リリスはアンジェシステムの脳波アクセスから、直接試合用プログラムを実戦用プログラムに変更する手続きを取る。違反を防ぐためのプロテクトが組まれているが、彼女はそれをセシルと共に打ち破る。

 その瞬間、今まで薄い紫色をしていた円盤ユニットが、焔を灯した様に激しく回転し、濃い色へと染まっていく。

「金星の鎖、星明り(スヴェート)による攻撃を開放! いきなさいセシルっ!」

 リリスの掛け声に伴いセシルは機体を前傾姿勢にし、一気に加速、相手を翻弄するように天空を駆けた。

「そうそう、そうこなくっちゃ面白くないよ! さあ、兵器同士、仲良く殺し合いをしようじゃないか!」

 そう宣言するピーターの声は、もはや狂人そのものであった。


 一方、貴翔とアスカのチームは真梨奈たちと接触するなり苦戦を強いられていた。なにしろ、真梨奈の機体は、あの灼熱の車輪“カグツチ”と呼ばれる武器が綺麗に交差しあいながら周りを回転移動し、まるでバリアのように彼女を守っていたのだ。

 おかげで攻撃は次々と弾かれ、ダメージを与える手だてを失いつつあった。

「獲物が貧弱では狩りのし甲斐がありませんね」

 彼女の心底がっかりしたような声音が、スピーカーを通して男子二人の耳へ届く。

「まったく。本来後方支援機だというのに、貴方といると私はいつもピンチな気がします」

 貴翔がむすりとしながらアスカに小言をいうので、一年後輩としてはとりあえず平謝りするしかない。

「うぅ……、彼女のアンジェクルス反則だよ。去年あんなのついてなかったんじゃない?」

「泣き言はどうぞ終わってからいくらでもおっしゃってくださって構いませんよ」

「またそうやって遠まわしに突き放すんだもんなぁ、副会長のいけずぅ~……」

「いけずで結構。それよりもふざける余裕が残っているようで安心しました」

 そのような無駄口の叩き合いを、相手側が許すはずもなく、真梨奈のイザナミが振るう大鎌と、縦横無尽に飛び交うレーザー光線が二人同時に襲い掛かる。

 どうにか攻撃を避けきったが、二人の身代わりとなった木々は実に無残な姿となり果てた。

――あのレーザーは明らかに彼女からの攻撃ではない。まるで天から降り注いでいるような……。いや、でも完全飛行タイプの主天使級はピーターのマガツヒだけだったはず。ならば……。

 貴翔は何を思ったか、急に敵に向かって走り出す。

「えぇえっ! 貴翔先輩っ?」

 あまりのことに大声で動揺する書記に、副会長は命じた。

「私を狙ってくるレーザーの軌道を追いなさい! 貴方なら出来るはずです!」

 彼の読みどおり、レーザーはまるで慌てて真梨奈を援護するように貴翔目掛けて飛んで来る。その際に貴翔のラファエルは真梨奈の操るイザナミの猛攻を、長刀で受け止めた。

 貴翔としてはそのまま流すように避けるつもりであったが、本来飛行に要する主天使級のジェットを、勢いづけるためだけに改造されているイザナミの機体は、そのものの重量にプラスして、大きな重圧をラファエルに与える。

――しまったっ!

 強烈な攻撃に機体の足が地面にめり込み、後ろから照射されたレーザーは着弾するかに思えた。

「貴翔っ!」

 偃月が悲鳴のように主の名を呼ぶと、機体は寸でで直撃を避けたものの、レーザーはこともあろうにカグツチへとぶつかり、跳ね返ったそれはラファエルの肩口を貫いた。

「ぐっ!」

 コックピット内部は警戒音が鳴り響き、左腕が機能不能になったことを知らせる。

「そこだっ!」

 しかし、貴翔の捨て身な作戦は辛くも成果をなした。アスカは自慢の洞察力ですぐさまレーザーの出元を辿り、めぼしい場所を次々と狐火(スピットファイア)で撃ち抜いた。

「きゃっ!」

 ガラスの割れるような音が連続して辺りに響く。ばらばらと反射板が地へと崩れ落ちていくのと同時に、なんとも儚げな少女の声と、もう一体のアンジェクルス、アマテラスが姿を現す。

「げっ、その声アリスちゃん?」

 アスカはぎょっとして目を見開いた。紛れもなく耳にした声は、文化祭の時に出会った可愛らしい巫女さん姿の女子士官候補生である。

 思わずスピーカーを通して唖然とした声を発してしまったアスカに対し、辛くもイザナミと距離を取ることに成功した貴翔が怒鳴る。

「いい加減になさいっ! 貴方は真面目にしていれば出来る人なのですから、もう少し真剣に対峙なさいっ! 相手にも失礼だと思いませんかっ?」

 見れば貴翔のラファエルは左腕を力なく垂れ下げ、両足膝からは敵の重みにやられたのか、バチバチと電流が火花を散らしている。どうにか長刀を杖代わりに立っているその姿は、誰の目から見ても半壊状態、いや、ほぼ戦闘続行不可能と見なしても良いくらいであった。

「ぐぬっ……。ご、ごめんアリスちゃんっ! ムラクモ、たまには本気出すよっ!」

「拙者は割といつも真剣勝負のつもりでござったが……まあ、良かろう」

 ムラクモは主の物言いにやれやれと言った様子であったが、本気を出すとの言葉どおり、集中するように目を細めた。

「アリスさんは私の後ろについていてください」

 もはや反射板のない能天使級アンジェクルス、アマテラスは、剣も盾も失った丸腰の状態である。

 実験性の高い機体という意味では、アスカのウリエルと似通ったものを感じざるを得ない。それは、肝心の強力な武器を一種類失えば、ほぼ戦術的価値を失うと言う点に尽きる。

 だが、ウリエルはアマテラスよりも先輩機である。その辺りの問題点は、今回折込済みであった。

 真梨奈は瀕死状態の貴翔の機体は一先ず外野と見なし、後輩を狙うアスカの機体に襲いかかる。

「バトルファン展開!」

 アスカが今回新しくモーリスにつけてもらったシステムを入力する。すると、真梨奈の振り下ろした鎌の刃は金属を弾き返す高い音を立てる。それと反発するように、アスカの機体が一気に後退した。

「今のは?」

 珍妙な動きに真梨奈は目を瞬かせる。

「うはっ、結構反動きついなぁ。危うく舌噛むとこだったよ」

「だが、うまく避けられた」

 ウリエルに新しく備わった能力、それは、瞬時に一点に凝縮した空圧を衝撃物にぶつけることにより、その反動で自身を高速で移動させるというものであった。

 半浮遊状態のウリエルだからこそ出来る、特徴ある回避行動である。攻撃は当たりさえしなければダメージは受けない。当たり前であるが、防御する方向性ではなく、こういった方面に改良したのは、アスカの提案が採用されたからであった。

「日本のアニメで良くあるでしょ。真空波っていうの? あれっぽくてカッコいいでしょ?」

 技の出典はともあれ、活用次第では大いに期待できそうな能力である。

「ええ、なにやら面白いアイディアですね」

 真梨奈はくすりと笑みを浮かべると、鎌を振り上げる。すると、今までガードに回っていたカグツチが、彼女から離れ激しく回転しながらアスカへと向かって来た。

 さすがにこれ自体にバトルファンを使えば、連続して弾き返すうちに遠くへと飛ばされ兼ねない。しかし、アスカはこの瞬間こそ待っていた。

「がら空きだよっ!」

 ヴァルキリーとの対戦時は防御用に半数を割いていた狐火を、アスカは今回全砲台攻撃に据えた。結果、カグツチという守りをなくしたイザナミの背中を一斉射撃することに成功する。

「くっ、あぁああっ!」

 真梨奈は必死に回避行動に移ろうとしたが、何せ数が多すぎる。背後からの衝撃に体が跳ね飛ばされ、前面エアバックと強化シートベルトのおかげで大事には至らないにしろ、強い振動に見舞われた。

 イザナミは力なく膝を折ると、そのまま前のめりに地面へと突っ伏した。

「真梨奈先輩!」

 易々と敵の攻撃を目の前に割り込ませてしまったアリスは、罪悪感と不安がない交ぜになった叫び声を上げる。

「アリスちゃん、白旗上げてくれる? さすがに武器も防御もない相手を攻撃するのは趣味じゃない」

 アスカにそう言われ、アマテラスはじりじりと後方へ下がる。その姿が追い詰められた少女そのもので、試合だというのになんだか悪いことをしてしまっているような気にすらさせる。

「ア、アリスさん。機能していれば一個体生存と認可されます。ここからすぐに離脱を……」

 真梨奈の呼びかけにアリスは一回頷くと、とにかく全力で森の中を走り去っていく。

「あっ! ちょっと!」

 アスカは追おうとするが、貴翔に制止された。

「もしあの方を追って貴方がアキラにでも遭遇したらこちらの戦力の大幅ダウンに繋がります。それに、あの装備で何が出来るわけでもないでしょう。こちらがあちらより多い数生き残っていると判定されれば私たちの勝利です。深追いは禁物ですよ」

 それもそうかと納得していると、直接背中への攻撃で本来ならば戦闘不能判定となっているはずの真梨奈がイザナミを立たせることが出来てしまう。

「えっ! 待って待って、ストップ! プログラム書き換えた? 普通明らかに戦闘不能判定出たら一時システムダウンするはずじゃっ?」

 真梨奈も不思議そうな声音でそれに答える。

「ええ、貴方の攻撃は直撃していました。だから私もまさか動くとは思っていなかったのですが……」

「自分の反射神経を読み取ってしまったらしく、機体が立ち上がりました。つまり、主の不正ではなく、試合用のシステム不良と考えた方が正解でしょう」

 倭がそう主を庇う。その証拠に、イザナミは棒立ちになり反撃してくる様子はない。

「貴翔先輩、こんなことってあるんですか?」

 貴翔はふむと親指の爪を噛みながら思考する。そして、一つの可能性に行き着いた。

「ピーターが始めに攻撃を仕掛けてきた時、出力が規約の六十パーセントという常識より上回っていました。その時、黄色い注意信号弾が上がったのを、アスカ、貴方は確認しましたか?」

 言われてみれば、皆があの攻撃には驚いたくらいである。大幅なルール違反でないにしろ、しっかり教官たちが遠隔で試合を観察していたならば、あの行為は注意を受けても仕方のない行為だ。だが、あの時をよくよく思い出してみても、黄色の煙が尾を引いて打ちあがった様子はまったくなかった。

「まさか、空中カメラが機能していない?」

「映っている画像がまったく無いのなら教官たちが飛んでくるでしょうけど、それがないということは……」

「カメラがハッキングされ、誤魔化すための映像が流れているのかもしれません」

 最後続けられた真梨奈の言葉に、他の二人だけならず、本人までもが固唾を呑みくだした。



――変だ、この試合なんだかおかしいよ……。

 この状況に疑問符を浮かべたのは何も貴翔たちだけではなかった。

 フィッツは現在水中戦を余儀なくされていた。射撃攻撃が難しいとなると、いっそ地上戦はヨハンに任せ、自分だけ敵の思惑に乗ってしまおうと考えたのだ。

 彼は砂浜にいるツクヨミを大ジャンプで跳び越え、そのまま海へと潜った。案の定、彼の読み通り、そこには自身と同じ海中戦を行える機体が待ち伏せていた。だが、さすがに相手もまさか海中に直接アタックをかけてくるとは思っていなかったらしく、丸みのある機体をばたつかせてフィッツとの間を取ろうとする。

 フィッツは先制攻撃が有効とし、速攻で魚雷を発射した。その狙い通り、相手は直撃を免れたものの、肝心の潜行用スラスタが故障してしまう。

「ど、どうしようノーム。あたしのウズメちゃんもう駄目なの?」

 カリンが弱気な声を出し、自身の愛機、ウズメを心配する。

「大丈夫、進む速度は落ちるけどサブファンがまだ動くよ」

 誓鈴ノームの言葉を信じて、カリンは反撃を試みる。複数の魚雷が機体の腹の辺りから射出されると同時に、ウズメはとにかくガブリエルから遠くへ離れようとした。

 フィッツは予想以上のことをして来ない相手に安堵を覚えつつ、落ち着いて水中でも発射可能なマシンガンで魚雷を次々打ち落としていく。そして速度の遅い相手に間髪居れず近づくと、背後から羽交い絞めにする。

「白旗宣言をしてください。これ以上の水中戦闘は危険です」

「えぇえっ! あたし今回まったく見せ場なしじゃん。ショック~……」

 がっくりと項垂れつつも、カリンは降参ボタンを仕方なく押した。これにより、教官たちに脱落の意思を送信することが出来たはずなのだが、なぜか機能停止した様子が見受けられない。

「あれ? どうしました?」

 フィッツも不思議に思い相手に問いただす。

「なんだろ? 水中だから安全装置かなんかが作動してるのかな? とにかく地上に一回上がろうよ。大丈夫、やっぱり降参なしっ! とかズルしないから」

「分かりました」

 しかし、フィッツはその瞬間、海底から何か物音がする気がした。

――……なんだろ。水中が大きく動いた? 僕たちの戦闘で巨大な深海生物でも目が覚めたのかな?

 とにかく陸に二人して上がってみると、何やらヨハンとボルジャンが揉めていた。

「だぁから、そっちが先に負け判定だろうよ!」

「いいや、そっちが先に当たったはずだ」

「ど、どうしたの? 二人とも……」

 フィッツが声を掛けながら、二機の姿をよくよく見てみた。すると、なんとお互いにコックピットの試合用特殊装甲板が剥がれているでは無いか。

 これなら二人とも戦闘不能と判断され、システムがダウンするはずが、ツクヨミとメタトロンはきびきびと動いていた。

「エラーかな? でも、どのみち二人とも失格ですよ」

 フィッツが二人の間に入り仲裁に回るが、その後ろからカリンの気の抜けた声が響く。

「ねぇ、こっちも駄目だぁ~。降参って送信できないよ?」

 いよいよそこでフィッツが顔を顰める。エラーが三人連続して起こるなど、事前の徹底した整備点検からしてまずありえない。

 こちらの送信されるはずの戦闘データが機体に反映されないという現状だけ見れば、それが起こり得る可能性は一つだ。

――まさか、この島を覆うようなジャミングを受けてるんじゃ……。

 フィッツはそう思案した直後に、その場に端を発する。

「明らかな異常事態だよ。何が起きようとしているか分からないけど、とにかく皆に事情を説明するためにも一箇所に集まろう!」

 他の三人もそれに同意し、四人は一先ず両校の会長が居るであろう親島の北を目指して移動し始めた。

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