第七章「連邦国立出雲士官学校」 (4)
Ⅳ
ユグドラシルのチームはスタート地点の立地条件を生かし、追い詰められた時の最終防衛ラインは子島ということに決まっていた。
海を自力で越えられない貴翔のラファエルとヨハンのメタトロンで親島の囮となり、残りの四人はその間に子島へと後退する。子島は親島よりも明らかに土地が狭いため、最初に陣取り出来ていれば、敵への集中砲火が可能であるのだ。
しかし、これはあくまで最終手段である。出来れば後退はせずに済ませたいというのが本音であった。
とりあえず、まずはスタート地点の海岸にいたままではすぐに敵に見つかってしまう。皆一様に樹海へと足を踏み入れた。
「出雲の三機ある内主天使級中二機はアスカのウリエルと同様、高度上空を移動は出来ません。さらには陸戦を得意とし、二足歩行が基本です。そこで、海岸線と浜には一応地雷原を仕掛けておきました。なのでフィッツ、アスカ、海を渡ろうとした時に自分たちで踏むなんて醜態はさらさないでくださいね」
貴翔が注意を促すと、二人はモニター上で顔を見合わせた。
「出来ればそこまで戦線を後退させたくないよねぇ、フィッツくん?」
「ええ、けど、十分ありえるからこその備えですから」
アスカが困り顔で頭を掻くので、フィッツも同じく眉をハの字にして答える。
「なあ、ダナン先輩。ここの島って北から東にかけて断崖絶壁だろ? そっちに追い詰められたらどうするんだ?」
ヨハンが不安げに聞くが、ダナンは冷静に答えて見せた。
「お前の機体は飛行能力がなく、逃げられないのだから踏みとどまって応戦するしかないだろうな」
やっぱりなというふうにヨハンは項垂れた。要するに、ピンチになりかけたら、とにかくスタート地点に敵を誘き寄せなくては、自身のチームに勝ち目はないと踏んだのだ。
この親島の形状は全体を通してみると勾玉のような形をしている。西側にぐにゃりと曲がった中心から南にかけては海岸。そして、ヨハンの言うとように、大きな弧を描く外側はすべて断崖絶壁である。そのため島は緩やかだが傾斜の続いている地形となっている。感覚としては、一度樹海に足を踏み入れれば、山の峰を目指すような足取りとなるだろう。
「あちらが進むルートは恐らく海岸沿いの樹海を選ぶと思います。その方が私たちを断崖に追いやり攻撃しやすいですからね。けれどあえて私たちは敵の思惑に乗ろうと思います」
貴翔のその言葉を聞き、ぎょっとする表情のヨハンとアスカに対し、フィッツは納得したように頷く。
「斜面の高い方から攻撃が出来るという利点と、うまく敵を欺き迂回出来れば、背後に回ることも可能……と、いうことですよね?」
「その通りです。対戦日時が三日と定められている以上、なるべく一日目から二日目の午前中には遭遇したくないですからね。勝負は二日目の午後辺りが妥当でしょう。それまでの陣形組みが肝心だということです」
アスカがなにやらそれに対して難しい顔をしながら尋ねる。
「敵が今日中にでも速攻してくるっていう可能性は?」
「もちろん、無いとも限りませんね」
さらりとそう答えられ、アスカは渋い顔をする。丁度その時であった。ダナンが竜也からの通信を受け取る。
「皆、頭上に注意しろ。一機こちらに向かっている」
「ええっ? やっぱり来たの? でもまだ周り暗くなりきってないよ?」
アスカがタイミングの違和感を指摘する。たしかに闇に覆われた機に夜襲というなら道理が分かるのだが、まだ夕方の太陽が沈みきっていないこの時間帯に、しかも一機のみとはどういったことだろうか。
「……あ」
すると、今まで黙りこくっていたセシルが口を開く。
「この感じ、僕に似ている?」
「どういうことだ?」
ダナンが尋ねると、セシルは首を横に振る。
「いえ、でもあの人じゃ、アキラ先輩じゃない。なに? 僕を、呼んでいる?」
セシルが今まで樹海に隠れていた機体を、ふわりと浮かばせた。
「セシルっ! 頭を見せたら危険だよ!」
フィッツが叫ぶが、その声が届く前に、敵の射程内へ入ったらしく、散弾が飛び込んでくる。
「みぃつけたっ!」
ピーターは血色の悪い唇を喜々として三日月型に曲げ、慌てて樹海から飛び出したセシルのルシフェルを追った。
「貴方は? 僕を知っているのですか?」
「あれぇ? おっかしいなぁ。僕のこと、ヴァレンチナ博士から聞いてない?」
二人は脳内のみでこの会話を行っている。それは隣の誓鈴たちもなにやら意思の疎通をしているのだろうということくらいしか、感じ取ることは出来ない。
「僕はお前より先に成功例って呼ばれた実験体だよっ!」
ピーターの戦禮名はマガツヒといった。鉄紺色のその機体は、対熾天使級として作られたルシフェルの前にNSW社で試作されたもので、目的は厚みのある装甲を大破させることである。そして自身の機体はというと、主天使級のわりには大変頑丈な装甲を有しており、華奢な作りのルシフェルと比べると、デザインの凶悪さが際立つ。
まるで悪魔のような機体が、執拗にセシルに迫り来る。
「僕はお前の噂を聞いていたよ。いやあ、まさか成功するなんてね。でも、それもこれも僕があったからこそ君がいるようなものだ。さあ、勝負しようじゃないか。どっちが優秀か、その方が手っ取り早く分かるだろう?」
「成功例って貴方は言いましたよね? 僕は、僕の前に成功と呼ばれた被検体を知らされていません。一体貴方は何者なんですか? DCではないのに、ナノマシンを完全に安定した形で保有出来たのですか?」
その言葉に少し触るところがあったらしく、ピーターはただでさえ攻撃的な色合いの瞳をより血走らせる。
「ああ、ウザイ、うざいなぁ、お前。博士にも散々言われたよ。DCこそ完璧な構想だって。DC、DC……そればっかり! 最初の成功作はこの僕だ! 僕だけ認められればそれでよかったんだ! お前なんか必要ない。いいや、そもそも構想自体が馬鹿げているんだ!」
酷く自己中心的な言葉でセシルを罵りながら、ピーターは散弾銃に特殊バレルを装着し、トリガーを引く。
その瞬間、空を劈くような音が響き渡った。巨大な柱状の閃光は雲を割ると、しばらくして途切れ、セシルはその攻撃を辛うじて避けていたが、地上で見ていたユグドラシルのメンバーは皆己が目を疑った。
「な、なにあれ? 明らかに試合用の仕様じゃないっ!」
「おいおい! 違反行為だろあんなのっ!」
フィッツとヨハンが口々に文句を垂れるが、ダナンは口を動かす前に機体を動かした。
「ああ? 何、僕たちの邪魔しようっての?」
「セシル」
ピーターの言葉を遮る様に、ダナンは二人の間へとアズライールの機体を割り込ませる。
「今の出力は試合規定に反しているか?」
「……普通は規定の六〇パーセントの出力に抑えておくのが常識ですが、一応ぎりぎりライン内ではあります」
「そうか、ならば助太刀しよう。二人で早めにこいつは倒しておいた方が得策だ」
セシルはそれに同意するが、相手の方は非常に不服そうに眉根を顰めた。
「はあ? 空気読みなよ。僕はこいつと話があるからわざわざ来てやったのにさあ……」
「それはお前のエゴだ。話があるなら試合後に平和的に対話しろ」
「僕は勝負を付けたいって言ってるんだよっ!」
ピーターは銃口を重なっている二人に向ける。ダナンとセシルは目だけでコンタクトを取ると、左右へと散った。
「はあ、気分削がれるよまったく……っ!」
それでもピーターは一直線にセシルを追いかけた。その後ろをダナンが挟み撃ちにするが、彼の繰り出した斬撃はビーム状の鞭で応戦される。その対応とほぼ同時に、ピーターは照準をロックする。
「壊れちゃえよっ!」
しかし、セシルも流石に黙ってはいられなかった。
「金星の鎖展開。リリス、やるよっ!」
「うふふ、男の子だものね。売られた喧嘩は買ってあげなくちゃ示しがつかないわ」
黒猫の瞳が魔性のように煌く。それに呼応するようにして、背負っているように浮いていた円盤型のユニットが、素早く機体の前方へと移動した。
ピーターの放った閃光と、ユニットが衝突したように思えた。だが、閃光は徐々に細くなり、とうとう消え去る。
「なっ、何が起きた?」
信じられないものを見る目で、ピーターは呆気に取られる。
「貴方のくれたもの、そのままお返ししますっ!」
展開していたユニットはそれぞれに広がると、真ん中の空間を中心に回り始める。そしてすっと窄まると、バチバチと音を立てエネルギーを集中し放出する。
それは言葉通り、ピーターの攻撃をそのまま吸収し、発射したのだ。例えるなら、ボールをラケットで打ち返すような反撃であった。
「へぇ、その玩具はそうやって使うんだ?」
ピーターは何やら急に嬉しそうににやけた。反撃は軽々と避け、そのまま宙を面白がるようにくるくると飛び回る。
ぴたりと蝙蝠のように逆さになったまま、セシルの脳内に直接語りかけた。
「また遊ぼうね。今度は邪魔の入らないところでさ?」
そう言うと、今までのことが嘘だったかのように、あっさりと逃げ帰っていってしまった。セシルは追った方が良いかとダナンに目で指示を仰いだが、チームのリーダーである彼は、黙って首を横に振った。
単独行動のピーターをもし追って、虎の尻尾を踏んでは適わない。とにかくここは、まだ我慢すべき時だということだろう。
「嫌だなあ……。去年より凶悪化してるよね。あれ、ピーターでしょ?」
アスカはいつでも加勢できるように展開していた狐火を格納しながら怪訝な顔つきを見せた。
空中での戦闘を、思わず新兵器の威力を目の当たりにして眺めてしまっていたフィッツは、はっとして思い当たる人物を割り出した。と、いうより一人しかそんな人間は浮かばない。
「ひょっとして初日の挨拶にもいなかった……」
「そう、そいつ。フルネームはピーター・ラップビート。同じ二年生だけど、素行不良っぷりは僕らの比じゃないよ。ね? ヨハン」
「ありゃただの不良ってんじゃねぇよ。性格破綻者って言うんだ。一回だけ顔見たことあっけどよ、青っ白いツラした陰険な野郎だぜ」
フィッツに語る二人は、心底苦手そうな顔をしている。その様子だけでも、相手に会わずして相当にあくの強い人物だということが、手に取るように伝わってくる。
「それはそうと、貴方たち、自身が素行不良だと感じる自覚があるなら、もう少し改善する姿勢を見せなさい」
貴翔のもっともな突っ込みに目を反らす二年生二人組みに、フィッツは思わずくすりと笑ってしまう。だが、その視線はすぐに空中からそっと降りてきたセシルに向けられた。
「大丈夫? セシル……」
「はい、なんとか」
モニターに映る顔は辛うじて笑っているが、無理をして作り出していることはすぐに分かった。
「何か言われたの?」
フィッツの問いかけに、セシルは搾り出すように答える。
「……彼は自分が僕以前に出来た成功体だといいました。でも、僕は本当にそんな情報は知らないんです。そしてそれよりも、もっと気になることが――」
セシルは一度俯けた顔を、モニターのフィッツへと向ける。
「彼の魂の形が分からないんです。なんだかあまりにも混ざり気が多すぎて……、こんなこと初めてです」
フィッツにはセシルの言葉の意味をそのまま理解することは出来なかったが、目の前の友人が特殊な能力を持つゆえに苦しんでいることだけは理解できる。
「大丈夫だよセシル、君がわざわざあの人の事で悩んだりしなくても良いんだ。今は試合のことだけ考えよう?」
同級生であっても彼にとっては目上の心を許せる存在であるフィッツに、セシルは自然と胸を撫で下ろすことが出来た。
「はい、そうします。ありがとうございます」
そのため、今度の笑顔は無理のない自然なもので表現出来ていた。
――セシル以前の成功体で、しかもその事実を同じ被検体には知らされていない。さらに魂の形が分からない……か。
フィッツの脳内にはありとあらゆる可能性が駆け巡っていた。その中でも唯一事柄に一致するものがあったが、彼はそれを頭から追い払った。
――まさか、そんなことはないよね。だってそれじゃああまりにも……。
そこでふとフィッツは親友の動向が気になった。ダナン以外のメンバーには、今回竜也は遊撃のためどこかに潜んでいるということだけが伝わっている。
もちろん、当の本人に入れ知恵をしたフィッツには遊撃とは名ばかりの、非常に私事な事情故の個別行動だということは分かっているのだが、彼には親友の行動理由を抑えるすべが無かった。
『とにかく“あいつ”のところに近づければ良い。何とか方法はないか?』
そう相談されたのは、出雲についてすぐのことであった。あまりに真剣な訴えに、つい今回のような作戦を彼に教えてしまったが、近づいて、それから何をどうするつもりなのかは、正直なところ不鮮明である。
――無茶だけはしないでよね、竜ちゃん。
季節は冬だ。当然夜ともなると樹海は冷え切り、木々は吹き付ける風に寒々しい音を響かせている。日本地区の中心地より、この島は南側に位置しているのだが、それでも今日の気温は身に凍みる。
アキラはその中でコートの裾を靡かせて、自身の愛機、イザナギの手の平に立っていた。真っ直ぐに月夜を見つめているかと思うと、すっと瞼を下ろす。
「……嫌な潮風だ」
そう言いながら少し咳き込んでいると、下の方からおずおずとした声が届く。
「アキラ先輩、夕食の準備が整いましたが……、大丈夫ですか?」
「ああ、もう皆は済んだのか?」
「はい、後は自分と先輩だけです」
辰巳の呼びかけに表情を和らげると、アキラは誓鈴のヤツフサと共に地に降り立つ。辰巳は自身の機体、スサノオをしゃがませた足元を風除け代わりにしたと手招いた。
そこから夜風に乗って、温かなスープの匂いが漂ってくる。簡易発熱剤で温めた湯で、粉末を辰巳がコップへ溶いたものだった。
二人はアンジェクルスの足を背もたれ代わりにし、インスタントスープの他に、メインの缶詰飯と足りない栄養を補うサプリメント入りのビスケットという、普段に比べ大変簡素な食事を取った。それでも、冷えた体は胃の腑を満たすことと、隣にいてくれる誓鈴たちの体毛のお陰で、束の間の休息を得ることが出来た。
この間も周りへの警戒を怠らないため、食事の摂取時間のローテーションを組んだのも辰巳だ。
「貴様がいると楽が出来て良いな」
アキラが冗談めかして言うので、辰巳も負けじと言い返してやった。
「どこかの誰かさんがこれからの前線をすべて請け負ってくれるんです。これくらいしなきゃやる気を起してくれないでしょうから」
辰巳の返答に、アキラは一瞬目を丸くしたが、何やらツボにはまったらしく、珍しく明瞭な声を出して笑った。
「ははは、それは私のことか。いいだろう。貴様の期待に答えてやるとしよう」
一頻り笑い終えると、アキラは人差し指を辰巳の目の前に一本立てる。
「一つ、貴様に良いことを教えてやろう」
「なんです?」
「貴様の良く知っている人物が、どうもこの辺りに隠れているらしい」
食後で余った白湯で、ぼそぼそとしたビスケットを飲み下していた辰巳は、思わず咽返る。アキラがわざわざ“貴様の良く知っている”などという枕詞を使うのは、一人しか思い当たらないからだ。
「な、なぜそれに気づいていて今まで黙っていたんですかっ! この場で奇襲を掛けられたら……っ!」
「いいや、それにはまだ少し距離があるな。それに、奴も今夜は動く気配はない」
辰巳がそれに対して不思議そうに首を傾げるので、アキラは困ったような顔をした。
「第一、この情報源は私の言わばドーピング行為だ。試合においてこの力を使うことは、本来ならば私としても不本意なのだ」
ナノマシン保有者が人知の及ばぬ力を発揮するという説を思い出し、辰巳は、ならばなぜその不本意な力を使わねばならなかったのかが気になった。
「辰巳、貴様は何かここ最近、明確では無いが、何となく嫌な感じを肌に受けたりはしないか?」
それはつまり、虫の知らせというものであろうか。しばらく辰巳は考えてはみたが、これと言って思い当たる節がない。
「私は今も尚、海の辺りから感じるのだ。誰かに見られているようなそんな気配を……」
なにやら怪談話めいた話し方に、また冗談でも言うつもりだろうかと溜息をつく。
「先輩はその力のせいもあって敏感に成り過ぎているのではないですか? こんな孤島、第三者が寄りつくメリットなどないでしょうに」
「そうだな、私の思い過ごしだと良いのだが」
普段自信に溢れているような彼の不安気な表情に、辰巳も少なからず動揺を覚えるのだった。
夜も更け、どのチームも交代で睡眠をとっている頃、竜也はこそこそと移動を始めた。省エネルギーモードのまま、すり足のように地を踏む移動方法は、竜也の卓越した操縦技術があってこそである。
「なあ、雷神」
慎重に操縦桿を握りつつ、竜也は低い声でつぶやくように言う。
「お前も何か感じないか? 出雲に着いた時から、なんかびりびり肌にくるっていうか……」
「うむ、嵐の前の静けさとでも言うのだろうか、主の言わんとしている事は分かる」
しかし、双方ともそれ以上原因を探る当てもなく、後は黙々と敵陣深くまで忍び込む。ぎりぎり稼動音が聞こえないであろう範囲に一旦ミカエルを止めると、竜也は雷神に機内で待つよう指示し、自身は単身目測を付けた地点の偵察へと向かう。
――……前方に見回り二機。
両方とも赤を基調とし、SW社製にしては細身のアンジェクルスである。その後ろにもう二機あり、一つは丸みを帯びた潜水艇のような不恰好な機体、もう一方はすらりとした流線型の足を持ちながらも厳しい顔つきをしたアンジェクルスであった。
竜也は敵の位置関係を脳に叩き込みながら、草木に隠れて尚も偵察を続ける。あまり近づきすぎてしまうと、ライカンスロープの鼻に探知されても不思議ではない。ナイトスコープ片手に、一定の距離を保ちながら着実に進む。
――あっちもこちらと同じで、一先ず団体行動ってところか。
不足の事態に対処出来る様に、今は固まっていた方が得策というのは基本らしい。
――……ん? あれはっ!
見知った機体を確認し、竜也は身を硬くする。
白銀の悠然としたそのフォルムは忘れることは出来ない。それは学園都市に侵入した敵を、真一文に叩き切ったアキラの機体であった。そして、そのすぐ横には、なんとミカエルとそっくりな姿形をしたアンジェクルスが屈んでいるではないか――
背中に格納している強くカーブのかかった装備品以外は、竜也の愛機と酷似しているのだ。
――まさしく兄弟機ってことか。
サンドラの乗りこなすサンダルフォンとヨハンのメタトロンも兄弟機であったが、戦闘タイプの基本コンセプトを空タイプと陸タイプで違いを持たせたため、形状はかなり異なっていた。
しかし、目の前の機体は何処に違いを持たせたのかすらぱっと見ただけでは分からない。どうにもあの背中の武器らしきものが大きな違いと言えそうではあるが、それほどまでに竜也のものと類似しているのだ。
それが意味さすところは、もはや一つであろう。
――あれが辰巳ので間違えないだろうな。
竜也は唇を固く結ぶ。そう、彼がそもそも単独行動をしているのは、辰巳を団体行動から引き離し、一対一で勝負することが最大の目標であったからだ。
――早朝が勝負だ……。首洗って待ってろ、馬鹿兄貴。




