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戦禮のアンジェクルス  作者: 黒須かいと
33/83

第五章「其々の朱夏」 (3)

 Ⅲ

 ヴァルキリー戦が終わり、竜也たちがユグドラシルへと帰ってくると、教室にリューベックの作った新聞が後方モニターに掲示されていた。

『速報! 雪山で遭難? ユグドラシルチーム勝利!』

 そのような見出しで始まっている記事は、遭難した竜也が命がけで通信を繋いだ事、それを間一髪で助けたフィッツの事が概ねの筋として記載されていた。

 どこで手に入れた情報なのか、リューベックの取材力に竜也とフィッツは少し驚いた。どうもヴァルキリーに知り合いがいるらしく、そこからの情報提供らしい。そして、その記事のおかげで竜也は一夜美女とすごしてどうだったかなど、散々にクラスメイトから質問攻めに合い、手や足に巻いた包帯には、無遠慮に落書きをされる羽目になった。

 特にメルレインの書いた落書きは、ピンクのハートの中に『スケベ』と書いてくれたので、竜也はお礼に一発彼の頭をしこたまぶん殴る。そうしてから、あまりの手のしびれに気づき、余計な事をさせてくれるなと、さらに腹を立てる竜也を見て、フィッツはリューベックと共に笑い転げた。ライオネルはその様子を見て、少しつまらなそうにしていたが、後でこっそりフィッツに「あいつ、無事でよかったな」と、声をかけてくれるのであった。

 そんな騒がしい日常があっという間に過ぎた夏休み初日。竜也とフィッツは、三カ月と数日ぶりにムーンヴィレッジへと帰宅した。

 良く整備された芝生の広がる玄関口から出迎えてくれたのは、彼らが幼い頃からずっと世話になっている、家政婦のミモザであった。

「まあまあ、フィッツ坊ちゃんに竜也坊ちゃん。あれから何も連絡がないので、学校でどうしているかと心配していましたよ?」

 老婦人はころころとした体型に人の良い優しい笑顔を乗せて、二人の姿を確認すると、竜也の負傷にたまげる。

「竜也坊ちゃんっ! そのお怪我は?」

「ああ、まあ、色々あって……」

 怪我の治療をしていた当初は大げさなほど巻かれた包帯も、今は竜也の回復力の早さも相まって、随分と薄手になっていた。それでもおろおろと心配するミモザに、何から説明するべきかと竜也は悩む。

「ミモザさん、とりあえず家に入ろうよ」

 フィッツはぐいぐいと彼女の背中を押し、白い玄関の門を潜る。

 二人はそれからミモザが入れてくれたココアと、手作りのアップルパイを馳走になりながら、士官学校での出来事を話してやった。

 ミモザは楽しげに出来事を語るフィッツに相槌を打ちながらも、時に悲しんだり、時に驚いたりしながら、基本的には笑顔で対応する。竜也の怪我の原因も話すと、彼女は「ご無事でよかった……」と、寧ろ胸を撫で下ろしたのだった。

 竜也とフィッツはミモザの「お母様にもご報告を」とのすすめもあり、雷神とルナを連れて、散歩がてらイザヤの墓参りに向かった。

 フィッツは母親の顔を殆ど覚えていない。それほどに、イザヤが事故死した時、彼はあまりにも幼かった。しかし、どのような人柄だったのか、好きだった物などは、父から良く聞いていたので、フィッツは母が好んだというマドンナリリーの花束を買い求めた。

 花屋からほどなくして、小奇麗な墓地につく。

「お母さん、ただいま」

 フィッツは目の前の石灰岩で出来た白いシンプルな十字の墓石に、花を置いて手を合わせ組んだ。竜也もそれに習い、同じようにする。

 一通り、胸の内で母に語りかけると、フィッツはふと足元を気にする。

「う~ん?」

「どうした?」

 竜也も気になって、イザヤの墓の周りを見てみる。雷神とルナも鼻をひくつかせ、地面の様子を調べた。

「なんだか墓石がね、ちょっとだけ浮いている気がするんだよね」

 確かに、十字の石の下にある蓋が少し外れ、隙間が開いているような気がする。だが、本当に僅かなので、今まで二人とも気がつかなかった。

「風化して、ちょっと地面が捲れたんじゃないか?」

「そうなのかなあ?」

「誰かが引っ掛かって躓いたとか?」

「それはさすがにどうだろう……」

 竜也はたいして気にはしていなかったが、フィッツはどうにも気になってしまう。

「ほら、もういいから帰るぞ」

「あ、うん」

 フィッツは後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。しかし、翌日も、その翌々日も、フィッツは夏休みの宿題を竜也に教えている時、寝る前ですらも、あの僅かな隙間が気になって仕方がなかった。まるで何かに“確かめろ”と急かされているような気すらする。

 フィッツはとうとう、夜中に起きて、一人で実行することにした。

――お母さんごめん。

 そう祈りながらも、ゲージで眠るルナと、隣の部屋で眠る竜也を起こさないように、スウェット姿のままこっそりと家を出る。

 外の犬小屋に繋がれていた雷神がふと目を覚まし、フィッツをじっと見つめた。

「雷ちゃんお願い。皆には黙っててね?」

 こそこそと話すフィッツに、雷神は不思議そうな顔をしていたが、そっとそのまま寝たふりをしてくれた。

――ありがとう。

 雷神に礼を述べると、フィッツは足早に母の眠る墓地へと向かった。当然夜中は誰もおらず、真っ暗なこのような場所に、多少なりとも恐怖心を覚えなくはない。だが、それよりも探究心の方が勝り、フィッツは母の墓の前へとやってきたのだ。

 息をふうと吐いて、意を決し、墓石の隙間に手を滑り込ませ、そっとずらす。

 多少柔らかさの感じる土を掘り返すと、なんと錆びたクッキーの缶が出てくる。恐る恐るその蓋を開けると、そこには――

「え……?」

 古ぼけ、少し折れ曲がった封筒と、その横には小箱のような記録装置、ブラックボックスが押し込まれていた。

 フィッツの脳裏に、ライオネルの言葉が浮かぶ。まさかこれが、父が査問会で見つからなかったと言い貫いたという、行方知れずになったはずのブラックボックスではないのか。

 フィッツはしばらく驚愕に打ち震えていたが、深呼吸をして、小型懐中電灯をポケットから出し、封筒の中身を確認した。それは間違いなく、竜也の父、龍一自筆の遺書であった。

 まずい事をしているという自覚はあった。しかし、ここまできたら中身を読むしかない。それでしか、今目の前にあるブラックボックスの意味を知らしめるものが無いような気がしたからだ。

 旧日本語の文は読み辛かったが、竜也の文化圏の言葉だと聞いて、興味本位から随分と独学していたので、なんとか一通り読解し終わった。

 フィッツは次に、ブラックボックスの接続端子を開く。黒い小箱型のそれをねじる様に開くと、露わになったそこに、自身の通信端末を接続する。ポケットからイヤホンを出して再生すると、そこには、生々しい当時の様子が、克明に録音されている。

 フィッツは何かを決意した瞳で、そっと元通りにその場を収めた。なるべく丁寧に、二度と誰かが此処を調べぬように、堅く蓋を閉じたのだった。

――お父さん。

 父、アルバートが自らここにこれらを隠した事実は明白であった。他に考えようにも、その方がこじつけである気がするほどである。

 フィッツは夜空を見上げた。月から見える地球は昔誰かが言ったように、青く輝き美しい。

――僕も、きっと何か出来る事があるはずだ。だから、どうか一人で抱え込まないで……。

 妻の墓に、親友の死のヒントを隠した父の心中はいかほどのものだったのか。フィッツはそれを思うと胸が締め付けられた。

 きっと必死に隠したのだ。自分にしか出来ない事だと腹をくくって、亡き妻にその秘密を預けるようにして。

 フィッツはそこでふと迷った。この事実を竜也に言うべきかどうか。しかし、さっと首を振って思いとどまった。まだ何も分からない状況で、断片的な情報を彼に提供するのは酷だ。もう少し、はっきりと見当がつくまで、親友には黙っておく事にした。

 そして考える。自分に何が出来るのかと。

 家に忍び込むようにして帰ると、フィッツは自室に戻る前に風呂場前の脱衣室で手を洗い、何事もなかったかのように、ベッドへと潜り込んだ。

――僕に、今出来る事……。

 フィッツは瞳を閉じ、自問自答した。そして導き出した答えは、意外なほど単純なものだった。

――竜ちゃんは僕が守る。それで良いよね? お父さん。

 母の真相は自分が調べるという選択肢もあったが、きっとそちらも父が動いていないわけがない。下手に自分が出て行ったら父の身が危うくなってしまう可能性がある以上、あくまで自分は何も知らぬふりをするべきだと考えたのだ。そしてその中で出来ることと言ったら、微力ながら、竜也の身の安全をはかる事に尽きると思ったのだ。

 なんとも歯痒い話だが、自分の立場の弱さを理解出来ないほど馬鹿ではない。無謀な事はせず、物事の動向を見守るということも必要なのだ。


 眠りに堕ちたフィッツは夢を見た。


 またあの夢だ。

 母だと思われる白衣の女性。

 相変わらず忙しなく働いている様子である。

 こちらに気づきやってくる。

 目の前の視界は水面のように揺れる。

 彼女に近づきたいと思った。

 しかし、次の瞬間場面が歪む。

 いきなり視点が変わる。

 何やら実験用の器具がそろった部屋であった。

 銃声が響く。

 はっとして振り向いた。

 そこには白衣を真っ赤に染めた、あの女性が倒れている。

 母の光を失った瞳が、こちらを見つめていた。


「う、うわぁあああっ!」


 びっしょりと汗をかいて飛び起きたフィッツの顔は青ざめていた。その声で同時に起きたルナが、驚いてこちらを見つめる。

「なに? どうしたっていうのよ?」

「あ……」

 昨日、遺書など読んでしまったせいだと、フィッツは思った。今は気にしないと心に決めていても、深層心理下でどうしても気になってしまっているのだろう。まさか、夢にまで出て来るとは思わなかった。

 それとも、母が自分に何か知らせようとしているのだろうか。フィッツはベッドから足を投げ出し、顔を両手で押さえた。

「ねぇ、大丈夫?」

「う、うん。なんか怖い夢見ちゃって……」

「そう。シャワーでも浴びてきたら?」

「そうだね。そうするよ」

 フィッツはふらふらと立ち上がると、自室から階段を下りバスルームへと向かう。するとそこから出てきた竜也と鉢合わせし、思わずどきりと心臓がはねた。秘密を保有するとはこういうことかと、改めて父の苦労を思い知る。

「お、おはよう竜ちゃん」

「ああ、おはようって……お前顔色悪いぞ?」

 習慣であるランニング後にシャワーを浴びたのだろう。濡れたままの頭にタオルを乗せ、服はしっかりと普段着に着替えが済んでいる。

「大丈夫、大丈夫。変な夢見ちゃったから。うん、それだけ」

「そうか? とりあえず朝飯作っとくから終わったらこっち来いよ」

 そう言いながら、竜也はキッチンへと向かった。

「は~い」

 フィッツは返事をしながら一先ずほっとする。


 ミモザは二人が一通りの事を出来るようになってからは、住み込みではなく通いの勤務になった。そのため、こうして朝は竜也が作るのが基本形となっている。

 冷蔵庫を覗くと、ミモザが買い置きしてくれた食材が並んでいた。竜也は卵と牛乳と野菜、それにベーコンを取り出して、フライパンを火にかけた。

 朝から甘いものを食べたがるフィッツのために、牛乳と卵、さらに蜂蜜を溶いたものに、棚の中にしまってあった食パンを浸す。それをバターで焼いて砂糖を振れば、立派なフレンチトーストの完成だ。

 自分用には凍らせてある白飯を解凍し、プレートによそうと、その隣にベーコンエッグを並べた。あとは適当にサラダボールを盛り付け完成である。

 竜也が湯沸かし機のスイッチを入れると、フィッツがバタバタと階段を登る音が聞こえた。

――あいつ、また服用意してから入らなかったな……。

 呆れながらも、あっという間に沸いた湯でインスタントのコーヒーを淹れ、そのマグカップを持ってダイニングテーブルに移動しながらテレビを付けた。

 そこには貴翔の兄だという、司馬養国家総参謀議会第一書記の姿が映っていた。こうして改めて見ると、歳は離れてはいるが、良く似た兄弟であった。違う点を上げるのなら、さっぱりと切りそろえた髪型と、眼鏡ではなく、古風なモノクルを掛けている点であろうか。

『第一書記! 今年の軍事予算案に、国防を軽視しているのではないかとの世論がありますが、そのあたりはいかがでしょうか?』

 専用の壇上でインタビューを受ける表情は非常に落ち着いており、そのあまりの沈着な態度ゆえに、少し冷たいものすら感じる。しかし、この表情には見覚えがある。初めて会った時の貴翔そっくりなのだ。

――あれは赤の他人用の表情なんだな、きっと。

 竜也は勝手にそう納得すると、来るのが遅いフィッツを待たずに、食事に手を付けた。

『新兵器のパンデミックへの発砲は、政府は許可したのですか? あれは抑止力行為なのですか? 様々な憶測がなおも飛び交っていますが?』

 司馬養は次々と質問を浴びせる記者たちに、咳払いすると、手をそっと前に置いた。

『順番にお答えします。まずは軍事予算案ですが、これは既決したものであり、来年の予算案提出まで変更はありません。備蓄された兵力で十分に間に合うという計算を出しています。国民の皆様はご安心ください。次に新兵器ですが、報告は受けています。しかし、今はまだ詳しくお話することは出来ません』

 その答えに一気に過熱する質問に、彼はいつもの科白でこう答えた。

『会議長の意向です』

 竜也は思わずチャンネルを変える。どうにもこういったシーンは見るに堪えない。というより、いまいち政治に関して理解が示せない。自分はただ、その軍事予算内とやらで、国から動かされるのみなのだ。第一、まだ直接戦力にはならない立場なのだし、今聞いたところで仕方がない気がした。こういうことの噛み砕いた解釈はフィッツに任せることにして、竜也は温かいコーヒーを啜る。

「ごめん、ごめん。部屋に戻ったらダナン先輩からスケジュール表届いてて、返信してたら遅くなっちゃった」

 そう言いながらだぼついたパーカー姿のフィッツが席に着く。竜也に自身の携帯端末を渡すと「いただきま~す」とフレンチトーストに用意してあったナイフを入れる。

「五日後か」

 竜也がそうつぶやくと、フィッツはもごもごと口を動かしながら、思いついたように話す。

「あ、そうそう。サンドラ先輩も来れるって。良かったね」

 ダナンの家に泊まるプランは、竜也とサンドラは後日其々の仲間から聞かされた。竜也は「まあ、フィッツが行くなら」と、すんなり了承したのだが、サンドラは他人の家に泊まるなど今までに経験したことが無かったらしく「お母様に許可を頂かないと……」という返事だったのだ。

 にやにやとするフィッツに、竜也は鬱陶しそうに一瞥する。

「良かったねってなんだよ。俺はだなっ」

「またまたあ、気になってたくせに」

「そうやって周りのお前らがけしかけて意識させてるだけだろう。いい加減にしろ」

 ため息交じりに、竜也は早々に食べ終わった食器を片づけ始める。

「え~? 本当に興味ないの? うっそだあ~」

「あのなあ、あれで恋愛感情うんぬんって話になったら、俺はなんだ? 人助けしたらそいつの事一々好きにならなきゃいけないのか? 馬鹿ばかしい」

 散々サンドラとの関係性についてクラスメイトにいじられた竜也は、言葉の端々に棘がある。自然と食器洗い機に下洗いした汚れ物を入れる手つきも乱暴になる。苛々としている竜也に溜息をつきながら、フィッツは頬杖をついた。

「もう、意地っ張りだなあ。助けた人を好きになっちゃいけないってルールもないんだよ?」

「うるさい、黙れ、しつこい、ウザい」

「酷っ!」

 悪態をつきながらも、フィッツのために食後のカフェオレを作る竜也は、ふとサンドラと二人きりになった医務室を思い出す。


 やっとのこと泣きやんだサンドラは、しばらくの沈黙後、顔を赤らめながら竜也を呼ぶ。なにかと首を傾げれば、彼女はもじもじとしながら言った。

「あの、もしよろしければ、またどこかで会ってくださいませんこと?」

「ああ、着任後会うこともあるだろう。あんたの方が上官で――」

「いえ、そうではなくて。その、個人的にといいますか、私的にといいますか……」

 上手い事言えなさげな彼女は、なにやら焦っている様子であった。しかし、竜也は非常に鈍感な男である。それに付け加え、気の利いた科白といったボキャブラリーにも欠けてもいた。

「ああ、合同文化祭もあったな」

「あ、う。それも、その、楽しみではあるのですが……」

 困り果てている様子の彼女に、思わず竜也は顔を顰める。それを見かねたサンドラは、一度がっくりと項垂れ、意を決したように、というより、これでわかってくれと祈る様に頼み込んだ。

「れ、連絡先を、交換しませんことっ?」

「え? ああ、別に良いけど」

 だめだ、真意が伝わっていないと、彼女は別の意味でまた泣き出しそうになったが、相手の方が年下であることと、これが天野竜也という人物像なのだから仕方がないという諦めで、なんとかその場を堪える事が出来たようであった。

 アドレスと電話番号を交換し終え、彼女はとにかく喜んだ。

「ありがとうございます竜也様。こちらから連絡を入れてもよくって?」

 竜也が頷くと、サンドラはにこにことして、その場を後にした。


 竜也は思った。あれからさっぱり連絡はない。やはり、周りの皆が言うほど、相手だって意識していないようだし、恋愛感情などお互いに存在しないのだと。

 ほっとしたような、少し物足りないような、妙な感覚が広がり始めた頃合いだった。その渦中の人物から、竜也の携帯端末に着信が入った。机の上でガタガタと揺れ動くそれを掴んで、フィッツが慌ててキッチンへと持ってくる。

「竜ちゃん、竜ちゃん! サンドラ先輩だよ!」

「なんでお前が嬉しそうなんだよ」

 むすりとしながら、竜也は端末を相手からもぎ取る様に受取ると電話に出た。

「はい、もしもし。え、色? なんで?」

 電話の向こうはどうやらキュリアと一緒らしく、竜也の言葉に口ごもるサンドラと電話を変わる。

「はあ、黒か白、またはピンク、水色系も捨てがたい……って、何の話だ?」

 鈍い竜也にキュリアのガミガミとした口調が飛んで来た。

「え、とにかく選べって? じゃあ、アンジェの色も白いし、白とか? ――は? そんな決め方って、じゃあ、他に何を基準にしたらいいんだ?」

 相手はあんまりな竜也の反応に諦めたのか、サンドラに電話を返す。彼女は申し訳なさそうに竜也に謝罪すると、電話を切った。

 一連の流れを見ていたフィッツは何かを感じ取ったのか、人の悪い笑顔を浮かべる。

「っんだよ?」

 不機嫌面な竜也はフィッツを睨んだ。

「べっつにぃ~? ちょっと羨ましいなあって思っただけだよ」

 フィッツはこれ以上何も言うまいといった態度で、湯沸かし器の隣に置かれたカフェオレに口を付けるのだった。

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