第四章「聖ヴァルキリー女子士官学校」(9)
Ⅸ
視界が暗い。重く軋む鈍痛が全身に響く。体をゆっくりと起こしながら頭を振り、機内を見渡すと、非常灯の明かりが薄ぼんやりと赤く照っていた。
竜也は額に手を当て、深く溜息をつく。雷神は先に意識が戻っていたようで、心配そうに彼の顔を覗き込んでいた。そんな相棒に気づき、苦笑いしながら頭を撫でてやる。
「悪い、今どういう状況だ?」
幸いメインカメラの破損は大きくなかったようで、雷神が主電源に入れ替えるとモニターは外の様子を映し出す。画像は酷く荒れてはいたが、外は不気味なほど薄暗く、氷の絶壁に囲まれている事は確認出来た。そして目の前には、痛ましいほどに傷ついたサンダルフォンが横たわっていた。競技用の赤い強化装甲もめくれ上がり、本来のハッチが剥き出しになっている。それを確認した竜也の背筋には寒いものがざっと走る。考えるまでもなく、彼の体は動いた。
コックピットから出ると、冷え切った空気が機内に侵入するが、雷神に“待て”と指示し、自身はサンダルフォンのコックピットへと駆けつける。
ふと上を見上げると空はすっかり雪に覆われ、微かに透かし漏れた光が差し込んでいるだけだ。どうやら彼らは巨大クレバスの裂け目に落下したようであった。
「おいっ、無事か?」
竜也は思い切りハッチを叩くが、一向に返事が返ってくる様子がない。
「くそっ!」
竜也は一旦自身の機内に戻り、非常用工具を取り出すと、再びサンダルフォンのハッチ前に立つ。手探りで緊急用開閉バルブの蓋を探し当てると、ドライバーで抉じ開け、バルブをねじりながら引き出す。しかし、ハッチは途中まで開くと、鈍い音を立てて強化装甲に引っ掛かり、そこで止まってしまう。
こうなれば力づくだと、彼は両手を開いた隙間に突っ込み、思い切り引きあげた。皮膚が張り付きそうなほど冷えた機体に、引きつった痛みが手の平に走る。
「――っ!」
歯を食いしばり持ち上げたハッチは、ガリガリと削れる音を立てながら、どうにか入れる隙間を作り出す。竜也の指は皮膚が一部剥がれ血が滲んでいたが、本人はそのようなことは気づきもしなかった。目の前にぐったりと折り重なった誓鈴と戦禮者がいるのだ。さすがの竜也も動揺していた。とにかく息を確認しなくてはなるまいと、サンドラの口元に手を翳す。
「……う」
先に声を出したのは、サンドラの膝の上に失神していた白鳥であった。
「無事か、怪我は?」
竜也はサンドラの息を確認し、少しほっとして彼女の誓鈴に話しかける。
「お嬢様……サンドラ様は?」
自分よりも主を心配する健気な白鳥に、竜也は頷き一応の無事を伝える。
「よかっ……った」
そういうと再び失神してしまった白鳥は、よくよく見ると、右足が本来曲がるべき方向ではない方を向いてしまっていた。
「雷神!お前はこいつを運んでくれ」
「御意」
とにかくこのままこの機体の中には乗せておけない。非常灯も付かない機内では、弱った体はすぐに凍死してしまうと判断したからだ。
雷神は白鳥を優しく咥え、竜也はサンドラを抱え持ち上げる。
「う……っ?」
ぬるりとした感触に思わず眉を顰める。相手の肩には裂傷があったのだ。さらに彼女の冷えた体も、竜也を自然と焦らせた。
ミカエルのパイロット席に座らせ、あまりフラットな状態にはならないが、限界までレバーを押して背もたれを倒した。白鳥は再び彼女の膝に乗せ、自身の体は雷神と共に彼の席に押し込め、ハッチを閉じる。暖房が機内を温め始めるが、いつ救援が来てくれるか定かではない。なるべくエネルギーを温存したい竜也は、機内のライトは付けず、工具箱に入っていた細いライトでサンドラの傷口を確認する。
落ちた衝撃で破損した部品にぶつけてしまったのだろう。白い肌に容赦なく出来た広い痣の中心に、小指ほどの長さの傷が走っていた。
救急箱を取り出し、消毒スプレーを吹きかける。すると、それが沁みたのか、びくりと彼女の体が動いた。
「気がついたか?」
竜也は治療する手は止めずに、彼女に言葉かけした。サンドラはうっすらと目を開けると、ガーゼを包帯で固定する竜也の手元をぼんやりと見つめる。
「指、血が出てますわ……」
竜也はそこでやっと自分の指の皮が剥けている事に気がつく。
「悪い、包帯にちょっとついたか?」
そう言ってやりなおそうとする彼の手をそっと止めた。
「いいですわ、そのくらい……」
竜也は頷き、彼女の処置が終わると、次は白鳥の骨折した足を診る。
「トゥオネラも怪我を?」
「ああ、外傷はないが、たぶん足の骨が折れてる」
竜也は機内でなにか添え木代わりになりそうな物を探る。すると、防寒用のコートの胸ポケットからペンが出てきた。それをそっとトゥオネラの足にあてがい、包帯を巻いてやる。
「とりあえず、俺が出来るのはここまでだ」
「……」
サンドラは急に渋い顔をしてふいと余所を向いてしまう。そしてさめざめと呟いた。
「ついていませんわ。どうしてよりによって貴方とこんなことに……」
助けてもらった礼を言うどころか、悪態をつく彼女に竜也は少しむっとした。だが、その瞬間、脳裏にダナンの言葉が甦る。
『自分から先に折れることも視野に入れておけ』
そのことを思い出し、ここでまた喧嘩してはどうにもなるまいと、自分に落ち着けと言い聞かせ一呼吸置いた。
そもそも竜也は彼女との喧嘩の発端は自分の態度にもあったのだとも反省していた。いくら彼女も彼の事を馬鹿にしたような事を言っていたとしても、その前の自分の苛ついた態度が彼女には非常にぞんざいに映ったのではないだろうか。彼女としては、ヴァルキリーの代表として、他校の一年生である自分に、何かしらの交流を持とうと努力してくれていたのであろう。
そう考えると、自然と謝罪の言葉がするりと喉から発することができた。
「その、あの時は悪かった。――あ、いや、すみませんでした。正直、八つ当たりみないな事してたと……思います。本当に、申し訳ありませんでした。ええと、サンドラ、先輩?」
たどたどしい敬語を無理して使う竜也に、思わずサンドラは意表を突かれ、思わず彼の方に向き直った。そして、堪えられなくなったように、くすくすと笑い始める。
ただでさえ狭い機内で、自分より年下であっても、背は少し高い男子が、縮こまった状態で謝罪しているのだ。しかも、あの高慢とも思える態度を自分にとった少年がである。
「なんですの急に? 別に無理しなくてもいいですわ。貴方にちゃんとした敬語はもう望んでいませんもの。それより、私は一体貴方に何を八つ当たりされたのかしら?」
竜也は口ごもるが、隣の雷神に目で促され、正直に答えることにした。
「俺、兄貴から勘当っていうのかな……。とにかく、もう二度と天野の家に近づくなって言われて。それでなんていうか、天野の名前自体に苛ついてたっていうか、過剰反応したっていうか……」
改めて理由を口にすると、自分は随分と理不尽な八つ当たりをしてしまっていたことに気がつく。そのことが妙に恥ずかしくなり、自然と目が泳ぐ。
「何か悪いことでもしたんですの?」
「いや、ただ、俺がアルバート学長の養子になったことが気に入らなかったらしい」
サンドラが首を傾げたので、竜也はもうどうにでもなれと、半ば自棄になりながらも自身の生い立ちと、それに対しての兄の態度を出来るだけ分かりやすく噛み砕いて説明した。
すると、しばらく黙って聞いていたサンドラは、またむっとした不機嫌な顔を作った。竜也はまた何か彼女の琴線に触れたのかと思い、あまり多くを話すべきではなかったかと後悔しかけた。しかし彼女の発した言葉は彼の予想を裏切った。
「なんて酷い話ですのっ! そんなの、貴方に何の罪もありませんわ。そうではなくって?」
「そ、えっ?」
同情してくれる相手が相手なだけに拍子抜けする。そんな竜也には構わず、もともと正義感の強い彼女は捲くし立てるように続ける。
「大体、その辰巳お兄様と言う方はきっと叔父様の言いなり人間なんですわ。情けない話ですこと。まったく、なんて軟弱なのでしょう! 私そういう殿方は特に嫌っ、あ……」
そこまで言うとサンドラは申し訳なさそうに口元を押さえる。
「ごめんあそばせ。仮にも貴方のお兄様でしたわね」
竜也は構わないと首を振る。寧ろ言ってやりたい事を代弁してもらい、気持ちが少々すっきりとした。
サンドラはふっと落ち着いた顔を取り戻すと、どこか遠くを見る目で語った。
「誰かの功績を一人占めにして笠に着るような人間は最低ですわ。今の世の中、そんな殿方ばかりで……許せませんわ。そういうの……」
しみじみと思い詰めたような言葉に、竜也は「何かあったのか?」と、思わず問うてから、慌てて無理に言うことはないと告げる。それに対して、サンドラは少し悲しげに微笑みながら「お相子様でしてよ?」と前ふりを付ける。
「私のお父様、いいえ、クズ社長とでも呼ぶべきかしら?」
その出だしに、竜也はぎょっとする。クズなどという言葉が、彼女から出て来るとは思ってもみなかったのだ。
「あの人はお母様を裏切った。欲しかったのはお母様の父の椅子、つまり社長の座だけ。その座についてしまえば、お母様なんてただ籍を入れただけのお飾りにすぎませんわ。女中だけでは飽き足らず、社交界の度に愛人を作る始末、見ていて情けなくなりますわ」
そこで一拍置くと、彼女の目にはほのかに揺らめくものがあった。
「竜也様。私も、貴方に謝らなくてはなりません」
彼女は怪我をした方とは反対の手をぎゅっと握りしめた。
「羨ましかったのです。立派なお父様をお持ちの貴方の事が。貴方の事、何も知らないくせに……」
彼女は震える唇で正直に話し始めた。
サンドラは情けない自身の父親に比べ、竜也の父の英雄という誉れが眩しく映った。自身はあんな不出来な父親の元、それに反発するかのように、努力に努力を重ねた末、生徒会会長、学年主席という座についた。それなのに、目の前にいきなり一年の生徒会としてその英雄の息子が入っていた。憧れの英雄の息子が、その栄光を背負って、いとも簡単に自分と対峙している。サンドラはそう思った瞬間、何とも言えない苦い物を感じたという。
「私も、ようは貴方に対して八つ当たっていたのですわ。ごめんなさい」
自分の父親と竜也はまったく別の種類の人間であるのに、自分の中で勝手に同列に置いていた非礼を、サンドラはさらに付け加え謝罪した。 そして、彼女は、そんな自身の父親のせいで、すっかり男嫌いになっていることもついでに告白した。竜也に対しての先入観は、そういったこともあるのだと、多少の言い訳のつもりであった。
「殿方になんて負けたくない。この対戦場所をセッティングしたのも、そんな気持ちからですの。雪なら私たちの方が有利だと思ったのですが、今となっては浅はかな考えだったとしか、言いようがありませんわね」
しばらく二人の間には、お互いなんと声を掛けていいか分からず、気まずい沈黙が流れる。が、急に間の抜けた腹の虫が、機内に響き渡った。
「あ、わ、私ったら……」
恥ずかしそうに顔を染めるサンドラに、竜也はふっと表情を和らげると、防寒用コートの裏ポケットから、巾着袋を取り出す。それは、甘味処の女将にもらった金平糖であった。
「実はあんまり甘いもの得意じゃないんだ。これ、食べてくれないか?」
「まあ、持ち歩いていたんですの?」
「非常食代わりになるかと思ってな。対戦地が雪山だって言うから、一応持ってきて置いたんだ」
その竜也のマメさに、意外性を感じたサンドラは嬉しそうに袋を受け取った。
「ありがたく頂戴いたしますわ」
そう言って一粒摘むと、舌の上に転がす。
「なんだか懐かしい味がしますわね。こんな状況なのに、ちょっと落ち着いてしまいますわ……」
そう、決して仲良く身の上話をしている状況下に二人はなかった。通信は信号を出しているものの、未だデコイの影響下にあるのか繋がらない。
山の天候は変わりやすく、吹雪にでもなったら捜索は困難であろう。穴の中に落ちてしまった自分たちにはそれも知る由がない。ただ、このまま発見が遅れれば、いくら持久力のある作りであるミカエルでも、エネルギーが底をつき、凍死が先か、はたまた餓死が先か、結果は目に見えていた。
「一時間待つ。それでも動きがなければ、先輩の機体のブーストを動かせるか試してみよう。主天使級のブーストでジャンプすれば、片翼でも辛うじて縁に手が届くかもしれない」
「動く望みは、薄いですわね」
「それでも、何もしないよりはましだ」
竜也は言いながらコートを膝のトゥオネラごとサンドラに掛けてやった。サンドラは彼の体を案じたが、怪我人の方が体力を消耗しやすいと返され、黙って好意に甘えることにした。
「そういえば、助けてもらったお礼がまだでしたわね」
サンドラは少し顔を近づけるように竜也を招くと、彼の耳元で「キートス パリヨン」と囁きながら、頬すれすれのリップ音を鳴らす。ごくフランクな北欧式の礼の仕方だったが、文化的にいまいち慣れのない竜也は戸惑う。
そういえば、幼い頃あいさつのハグをしようとしてきたフィッツを、竜也はびっくりして拒否した覚えがあった。その時のフィッツの少し寂しそうな顔が浮かぶ。あの時は悪いことをしたという後悔の念があったため、その事を省みて、竜也は少し恥ずかしそうに俯いてぽつりと「当たり前のことをしただけだ」と答えた。
そのなんともくすぐったい反応に、サンドラは悪い気はしなかった。
時刻は一五時四○分、両校の教官たちはすでに除雪用トレーラーを念のために準備していた。フィッツは貴翔が皆の確認を取っている事をエルンスト教官に伝え、彼は「うむ」と頷いた。
「空中カメラで確認するかぎり、雪崩の瞬間、ミカエルと相手のサンダルフォンが映っていないのが気がかりだが……」
「そんなっ!」
フィッツの悪い予感は的中した可能性が高いことを知る。
――僕が逃げ出したあの場の近くに、二人共きっといたんだ。
自分の立てた作戦の事、あの場で一人だけ逃げ出した事、すべてがフィッツの頭の中をネガティブな思考に染めていく。そんな中、間の悪い事に、空はだんだんと雲に覆われ、雪がちらつき始めた。
「ぼ、僕は先に貴翔先輩のところに戻ります!」
教官はすぐに後を追うと言い、フィッツは頷き再び貴翔のもとへとガブリエルで向かった。
少しでもまだ事実が好転しないかという期待があった。貴翔の信号弾で、竜也たちがみんなのところに集まって来てくれている可能性がまだある。そうだ、運悪くカメラに写っていなかっただけかもしれない。
しかし、その願いは虚しく、貴翔のもとについた時には、やはり竜也とそしてサンドラの姿はなかった。
「こうなった以上、雪が激しくなる前になんとか彼らを探し出さないとなりません」
機体が壊れ、身一つ状態の脱落組は、がっくりと肩を落とす。
「ちくしょう、俺達の機体が動けば少しは掘り起こす足しになったつぅのに……」
ヨハンが軍用トラック内で、苦々しく地団駄を踏む。その彼に対して、アスカは困ったように、どの道自分の機体性能では、雪掻きは困難であると告げた。
「とにかく、両校の教官の手も借り、地道に捜索するしかあるまい。脱落者グループは教官たちの指示に従って、作業の手伝いに当たってくれ」
ダナンの言葉に一同頷き、皆はそれぞれの配置へとつく。
雪崩は山の頂上から中腹に掛けての雪が、北東に放射線状に広がっていた。無傷のアンジェクルスの戦禮者たちは、各自長い捜索用の棒を装備し、各方向から地道に雪を差して、中に埋まっていないかを確認していく。脱落者グループは、自分たちの壊れたアンジェクルスをトラックで回収した後、演習機を借りて、同じ作業に加わった。
――竜ちゃん、サンドラ先輩……どうか無事でいて!
フィッツは必死に自分が待機していた周辺を棒で突いて回った。ルナは余裕のない彼を見て、何か励まさなくてはと思いはするが、掛ける言葉が見当たらなかった。
作業はそれから一時間ほどたち、いよいよ難航の兆しを見せた。ちらちらとした粉雪が、徐々に氷の礫と化し吹きつけ始めたのだ。
ダナンは教官とも連絡を取り合い、苦渋の決断を下した。
「作業は一時中断だ。また明日、天候の様子を見て再開する」
その報告を受けたフィッツは愕然とし、返事すらまともに発音できなかった。普段の明るい彼からは想像も出来ない落胆ぶりに、共に輸送艦へと戻ったセシルは心配そうに声を掛ける。
「フィッツさんあの……」
休憩室の簡易ベッドに座り込み、すっかり言葉を失っている彼の肩にそっと触れた。
「お二人なら、たぶん大丈夫だと思うんです」
その言葉に、フィッツはゆっくりと顔を上げ、どうしてそう思うのかと問う。
「感じるんです。どんなふうにとは説明が難しいですが……」
同輩の一生懸命何かを伝えなくてはという気持ちに触れ、フィッツは力なくではあったが、微笑んで見せた。
「ありがとう、セシル」
余裕がないこんな時にも優しいフィッツが痛ましかった。内心は負わなくともよい自責の念で胸が張り裂けそうであったのにも拘らず、こうして無理に笑って見せるのだ。
セシルには、彼の心の痛みが手に取る様に感覚で分かってしまう。だからといって、それをうまく励ましてやれるほど、セシルは言葉を器用に操れない。それどころが、自分も相手の気持ちに同調して、苦しくて仕方がなかった。
そんな時、先輩たちがぞろぞろと入室する。
「この艦も海の上に待機していたのでは危険だ。今日のところはとりあえず、ヴァルキリーの宿舎にもどるぞ」
ダナンのその言葉にフィッツは思わず立ち上がる。
「そんなっ! もし竜ちゃんたちから連絡があったら?」
「この吹雪では通信もろくに繋がらない。どの道無理だ」
「でもっ!」
「フィッツ!」
貴翔がぴしゃりと割入りながら言い放ち、平手で相手の頬を叩いた。唐突な出来事に、隣にいたセシルは驚き、思わずびくつく。
「助ける側が冷静にならないでどうするのですか? それが分からない貴方ではないでしょう?」
怒鳴る貴翔にその様子を見たアスカとヨハンは狼狽、止めに入ろうとするが、ダナンはそっとそれを制止した。
「いいですか、フィッツ? 私たちは必ず彼らを助けると約束します。彼らとて、今まで共に訓練して来た仲間です。無事でいると信じて、今は好機を待つのです」
フィッツは叩かれた頬に触れながら、ぐっと涙を堪えて、ゆっくりと深く頷いた。
※キートス パリヨン「Kiitos paljon」はフィンランド語で「ありがとう」です。




