87.別れの朝
ブレイ大陸に着いた。
イグニスさんはここで一泊して待って居てくれるので、
私とニールさんはシリルさんのところに帰る。
急に2人きりになって妙に緊張する。
前は緊張なんてしなかったのに。
船で考えたことが抜けてないのかもしれない。
あれは寂しさからくる気の迷いだと考えたのに。
あまりに無言すぎてニールさんが、
「やっぱ船酔したんか?
大丈夫か?」
と近寄ってくるので、
「大丈夫!」
と行って遠ざかったら、
不満そうな顔された。
なんで?
そんな変な態度だったかな…。
到着すると、
シリルさんが笑顔で迎えてくれた。
「ニール、リリアちゃん、おかえり。」
「「ただいま」」
見ると少し離れて
もう一棟家が建っていた。
「コレは?」
「コッチの新しい家はコールんちやね。
みんなが帰ってくると
狭いから新しく建てたんよ。
あとは夫婦水入らず時間も必要やし。」
同居じゃないあたりはお互い
いい距離を保つ工夫かな。
コールさん、ルルさんも出て来てた。
「「おかえり」」
「「ただいま」」
「わーお腹大きくなりましたね!」
「もう少しで生まれるんよ?
都合つくようだったら会いに来てね。」
「…はい。」
赤ちゃんもうすぐ生まれるんだ。
みたかったなぁ…。
夕飯はみんなで食べた。
楽しい夕食だった。
カールさんもいれば
もっと良かったのにな。
それにオトン。
一度も会えなかったんだけど。
翌朝、ニールさんと私はまた大陸へ戻る。
きっと、しばらく戻れない。
そして、私は
元の世界へ帰る方法が見つかれば、
二度くることはないだろう…。
そんなことは言えないので、
一生懸命笑って出発する。
私の偽証石を受け取る。
シリルさんも少し寂しそうだ。
「約束通り、ちゃんと卒業して、
ちゃんと巫女になって…。
でも、これでお別れやないよ。
いつでも戻っておいで。
困ったらいつでも帰っておいで。
…ニールも元気で。
リリアちゃんをしっかり守るんよ?
2人とも身体には気をつけて。」
「わかっとる…ちゃんと守る。」
私は何も言えなかった。
言っても嘘になりそうで。
言ったら泣いてしまいそうで。
精一杯笑って
「行って来ます!」
そういうのがやっとだった。
それ以上喋るのが無理だったので、
私は歌を歌った。
卒業式で歌った明るい方の
卒業ソングを歌う。
思いは繋がっている。
私の希望を込めて。
読んでくださってありがとうございます!
来週から終章です!
オトン…ごめん。
この際謎のまま終わらせる方がいいのかもと思い始める今日この頃。