84.それぞれの進路
卒業まであと僅かとなった。
イグニスさんと会って以降も、
毎週天の日にはキアバでの演目をこなした。
カミラ先生が授業で言ったこともあって、
学校の子が見に来ていたり、
これまでの活動でファンも少し増えてくれている。
こないだエリオットも見に来ていた。
歌は自由と言われたので、
バラードを中心にやっているが、
時々は身体強化に使ってた2曲や
氷や風を出す時に使う曲など、
コッチの世界で歌ったことのある曲を歌っている。
イグニスさんも何度か見に来て、
「特に問題ありませんね。
今日の演目もよかったです。」
と褒めた後、ニールさんと喋ってから
帰るという感じだった。
ニールさんもキアバの街に馴染んでいた。
むしろ何年もいたんじゃないかと
思うくらいの馴染み具合だ。
ジョナサンさんもいい人だし、
ニールさんも人当たりのいい人って
いうのもあるのかもしれない。
学校の授業も下級クラスは問題なく、
魔法薬学はカールさんの指導もあり、
問題なし。
飴も実は料理上手なシャロンちゃんの
おかげで出来上がった。
対魔物戦闘魔法はリンダ先生や
エリーちゃん、エヴァルドルフ君の
おかげで問題なさそうだ。
最初のうちは阻害が上手く行かなかったけど、
空き時間に練習を行なった結果、
大分上手くなったのだ。
問題は航海学だった。
これだけはどうにもならなくて、
カール先生に泣きついて
出やすいポイントを押さえて
一夜漬けしてなんとか乗り切った。
巫女になってもこれは使える気がしない。
まぁ、世界を回るのは私じゃないはずなので、
そこはリリアに丸投げなんだけど。
リリアは授業内容を
ちゃんと理解してることを願おう…。
ホント色々丸投げでごめんと謝りたい。
…夢に出て来てくれないかな。
食堂で友人達との食事もあと僅か。
いつもの通りのメンツで話ているのは卒業後の話だ。
「とりあえず、実家の稼業を手伝いながら
薬作ったり、手紙の発送の請負とかかなー。」
とシャロンちゃん。
「先生の助手として学校に残って、
まだまだ研究は続けるわ。」
マリーダは言う。
「父上、母上には手紙で伝えてあるが、
帰ってちゃんとエヴァルドルフを紹介する。
それから許しが出れば
ハンターとして大陸を巡る予定だ。」
「エリーちゃん、お許し出るの?
エヴァルドルフ君庶民だよね?」
エリーちゃんの言葉に
シャロンちゃんが反応する。
でも、今更な心配だよね?
「母上は嫁ぎ先の心配をしていたくらいだ、
大丈夫だろう。
父上もエヴァルドルフの実力を見れば
納得してくださるはずだ。」
…ごちそうさまでした。
「プミロア様の総本山に挨拶に行ったら、
本格的に巫女の活動するんだって。」
私が言うと、
「近くに来るようだったら手紙ちょうだいね?」
「見に行くから!!」
「クラリティ大陸での護衛なら任せろ。」
「うん…」
みんなの言葉に私は泣いてしまった。
「泣かなくても…」
「もう2度と会えないわけじゃないんだから!」
卒業してしまったら、
みんなには会えない。
私は元の世界に帰るのだから。
「うん、そうだよね…」
私はその言葉をなんとか
振り絞った。
その晩、ようやくリリアの夢を見た。
「私が帰っても巫女続けてくれる?
みんなに手紙も書いてね?
シリルさん達のところにも時々帰ってね?
航海学丸投げでごめんなさい。」
リリアが消える前に泣きながら早口で言う。
リリアは少し困った顔をしながら
頷いて、私を抱きしめた。
読んでくださってありがとうございます!