78.初ライブ
馬車の場所に着くと、
なぜかカールさんが。
「リリアちゃ…さんが歌うと
ニールから聞いたからね。
私も行こうと思って。」
じゃあ乗りきれないんじゃ?
と思ったら、ニールさんが御者台に座る。
「ほな、乗って。」
ちょっと待て。え?
馬車だよ?出来たっけ?
「ニールさん、大丈夫…?」
「こないだなー、ジョナサンとこで
習ったら乗れるようになってん。
今は下働みたいなもんやから、
これくらいできんと。」
実際、キアバには安全についてしまった。
ここは実はド下手とかのとこでしょ?
なんだ、この高スペックな人。
チートか。コレがチートか!
チクショウ。妬けるわー。
シャロンちゃんがカールさんの隣に座れて
それだけで満足してる。
本題それじゃないよね?
「リリアと俺はジョナサンとこ
行って打ち合わせがあるから、
3人はその間、適当に回っとって。」
「頃合いを見て戻ってこよう。
場所はどの辺りだ」
「あの辺りやと思う。」
「分かった。では、行きましょうか。」
「後でね!」と言って3人と別れた。
ジョナサンさんのところで打ち合わせをした。
踊り場で巫女さんの前座で1曲
歌う事になってしまっていた。
ジョナサンさんは
「どうせなら、人気出て欲しくてねー。」
とか言ってるけど…
いきなり踊り場とか
緊張するんだけど。
すると、ニールさんが近寄って来て、
「酷い顔してんでぇー。」
と言って変顔をしてくる。
ホントひっどい顔をして来たので笑ってしまった。
「そうやって笑っとき。
そうすりゃ大丈夫や。
歌も普段の詠唱のつもりで歌えば大丈夫。」
そうやって私の背を撫でる。
頭ポンポンといい、自然とやってくるあたりが
やはりイケメン。
あれだな、ブラコンの人の気持ちが分かってきた。
兄より素敵な人を見つけるのが難しいってやつね。
…ん?なんか私、この人の事好きな事今肯定した?
気のせい、気のせい!!
なし、今のなし!
どうやら1人百面相をしていたらしく、
ニールさんが笑っている。
「曲は?どれ歌うん?」
そういえば決めてなかった。
うーん、こっちの曲は知ってても、
歌詞がわかるのは童歌とか、子守歌だし、
衣装は普通だから歌はインパクトある方がいいかなぁ…
でも激しくないやつ…
ちょっとまだ寒いし、あの曲にしよう。
「決めた!」
「どれにしたん?」
「ニールさんも聞いた事ないやつ!
本番までのお楽しみ!」
「おぉ、楽しみにしとくわ!」
そろそろ本番。
いつもは見てるだけのジョナサンさんが
喋っている。
「僕の一押しの巫女見習いです!
まだ、どこにも所属はしてません!
所属先を探しているらしいので、
取りたいところは僕に言ってください!」
おー宣伝してくれてる上に、
なぜか窓口にまでなってくれてるし。
私じゃどうしようも出来ないから良かったけど。
でも煽りすぎじゃないかな…?
はー、緊張する。
詠唱のつもりで…
ステージに上がり、
一息吸って歌う。
5人組アイドルの冬の定番バラードにした。
この曲はあまり踊りはせず、
手振りだけだが、最初だし、いいかな。
そして見に来てくれた、
シャロンちゃん、エリーちゃん、カールさん、
ここを用意してくれたジョナサンさんやニールさんに
「ありがとう」の気持ちを込めて歌う。
詠唱のつもりと思いすぎたのか少々魔力が乗った。
またやっちゃった…
ちらちら小雪が舞う程度で
雰囲気が出たからよしとしよう。
してほしい。
こうして私の初めての演目は
幕を閉じた。
読んでくださってありがとうございます!