68.カールの容態
マリーダ、マリオは幸いなことに無傷だった。
私が顔を見せると、
マリーダはホッとした表情を見せた。
「よかった…。」
「それ、こっちのセリフだよ…」
私も2人が無傷であることを
ホッとしたのは私も一緒なのだ。
命に別状がないとは聞いていたが、
なんともなくて本当によかった。
「麗しい君が無事でよかった。」
マリオも通常運転だった。
「あのさ…えーと…」
口ごもっていると、
マリーダが口を開く。
「カール先生は先生であり、
命の恩人。
リリアは友達。
なんであっても変わりはしない。
クラーケンや人魚だからって
なんだっていうの?」
「何者であっても、リリア、
君の美しさは正義だ。」
マリオはほっておいて。
「ありがとう…。
でも、そうは思わない人もいるかもだから…
黙っておいてくれると…」
2人は静かに頷いた。
彼女は学校を休学するようだ。
6年生は授業は研究くらいなので、
もしかしたら、卒業はできるのかもしれないが。
噂では、事故は彼女が原因であることに
なってしまっていた。
確かに彼女の感情が原因ではあったが…
彼女だけのせいではない。
私にも…原因はある気がする。
あの時私がリーブラを使っていなければ、
あんなことにはならなかった。
そんなことを言ってもどうしようもないのだが、
シコリのようなものが私の心にあった。
カール先生はというと、しばらく学校を休むらしい。
実験の事故の責任を負っての休職という形だ。
実際には事故などなかったので、
長期休み明けには元の職に戻る。
授業は少しの間、代わりの先生がやるらしい。
あの直後は会うことができなかったので、
リンダ先生に無理言って、
カールさんに会いに行った。
リンダ先生はあまり気がすすまないようだった。
「カール先生、入りますよ?」
「あぁ」
「リンダ先生、それにリリアちゃ…さんか」
「カール先生、
ここではリリアちゃんでいいんじゃないか?
身内だからここまで連れてきたんだ。
どっちにしろバレるんだし…。」
バレる?
リンダ先生の痛々しそうな視線の先を追うと
カールさんを左足の膝下は無くなっていた。
「え…」
「あまり会わせたくはなかったのは
こういうことだ。
でもどうせシリルさんを通して
後で知るだろう…?」
「足くらいどうってことはない。
今知らせなくてもよかったのでは?」
「 心配くらいさせてやれよ。」
「身内だから、
あまり心配はさせたくないのだが…」
私に構わず、
リンダ先生とカールさんがやり取りをしている。
「あの…カールさん、
偽証石、解くとどんな状況なんですか…?」
「あぁ、こういう状態だ。
大したことはないのだが。」
タコ足の1本が欠けていた。
すぐ偽証石を使うカールさん。
「長いこと、こっちでいるせいか、
あれでは上手く戦え無くなってたのが
しくじった原因だな…
母さんに特訓し直しと言われそうだ…」
カラカラと笑うカールさん。
「しばらく休めと
校長に言われてしまってね…。
私は授業を見れませんが、
しっかり研究やっておいてくださいね。」
カールさんは目細めていった。
「時々、お見舞いに来ていいですか?」
「別に構わないよ。
でも、責任を負っての休職ということになってるから、
その辺はよろしく頼むよ。」
事情を知っているし、
身内ということになっているからここに来れたが、
怪我自体もなるべく話さない方がいいみたい。
カールさんも大怪我を負っていた。
この事実を知って、
私の心のシコリは大きくなっていた。
そんな晩のこと、私は夢を見たのだった。
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