59.丸投げ
「素行不良のやつらを捕まえた時のこと、
後々エリー君から聞いていたのでね。
6年クラスでも問題なかろうと
思ったのでな。
まさか木っ端微塵とは…」
校長まで蒸し返さないで!!
「でも、対魔物戦闘魔法は何も魔物を倒す為だけの
授業ではないはずです。」
校長がリンダ先生の方を見る。
「そういうことなら…
私にも教えることが出来るはずです。」
リンダ先生が校長を見て頷く。
「正直、私から教えられるのは、
時間稼ぎの方法くらいだ。
剣術は使わないし、
バリエーションには乏しいが
威力は申し分ない。
正直攻撃手段は教えることがないと
思っていたんだ。」
リンダ先生は私の方を見ながらいう。
確かに攻撃はできたが、
バリエーションはない。
それが使えなかった場合が怖い。
「攻撃阻害や妨害が
ちゃんと出来るようになるといい。
そういうことは
後々やる予定ではいたんだ。
強い魔物が出た想定の練習だがな。
もちろん、どんな効果がでて、
どれほどの威力のものかは私が確認する。」
…信用ないね、私。
「…ところで、校長先生もこの話の為に
来た訳ではないのでしょう?」
黙っていたカールさんが校長に尋ねる。
「そうだったな。浄化魔法の使える
可能性のある生徒がいると
カミラ先生から報告があってな。
担当教諭のところに来た次第だ。」
校長なんだから直接呼べばいいでしょ、
ここに来なくてもとカールさんが零している。
確かに!
でも校長に呼び出される私の身にもなって!
「入学していきなり校長に呼ばれるのも
君だって嫌だろう?
まぁ、来たら、たまたまいたので
都合が良かったが。」
私だって急に来られるのは嫌ですとか
言ってるカールさん。
本人目の前なのに。
こっちが心配になるわ。
「友人の息子の顔ぐらい
見に来てもいいだろうに…」
軽く凹む校長。
お父さんの知り合いなんだ、校長。
そして、あの怖い校長凹ませるとか、
どんだけだ、カールさん。
「本題を忘れてますよ?」
「あぁそうであった。
先日歌った歌、
あれに魔力を乗せて歌ってくれるか?」
「え…」
私はカール先生の方を見る。
「この方が言ってるのだから、
問題ないのでしょう。
でも、魔力は極力抑えてくださいね。」
「…わかりました。」
極力魔力を抑えて歌う。
あの曲は歌詞がないので、
スキャットだ。
イメージは清々しい空気。
歌い終わると校長が頷く。
「やはりそうだった。
これは浄化魔法の一種だろうな。」
そうなの?
浄化魔法はレアなのでは?
「浄化はイメージがなかなか難しい上に、
上手く詠唱できなければ、使うことはできない。
曲を知っているだけではできないだろうな。
詠唱が歌というのが良かったのだろう。」
あの曲、浄化を目的として書かれた曲だったんだ。
イメージもそうなるはずだ。
「という訳だから、
対魔物攻撃魔法の授業の教室の浄化頼んだ。」
そう言って校長は去っていった。
「…結局、あの人仕事減らしたかっただけですね。」
カールさんが言う。
校長、私に仕事投げたの?!
リンダ先生も
え?!と言う顔をしていた。
読んでくださってありがとうございます!
次で60。おかしい、予定では学校編の中盤のはずだったのに。